2009年10月17日 12:37

今日の朝日新聞に機動戦士ガンダム監督の富野由悠季さんインタビュー載ってますね。切通理作さんのガンダム評と一緒に全文引用します。宇宙世紀ガンダムの戦いの大義名分『環境問題』

機動戦士ガンダムUC 1 ユニコーンの日(上) (角川コミックス・エース 189-1)
機動戦士ガンダムUC 2 ユニコーンの日(下) (角川コミックス・エース 189-2)

今日の朝日新聞に機動戦士ガンダム監督の富野由悠季さんインタビュー載ってますね。短いのでインタビューの部分のみ全文引用します。切通理作さんのガンダム評も載っているのでこちらも全文引用しますね。

「アニメファンのための内向きの作品ばかりで、広い層へメッセージを訴えかけようとする作品はほとんどない」と富野さんは日本アニメの現状に不満を抱く。

「ガンダム」第一作のテレビ放映から30周年の今年、東京・お台場に建てられた高さ18mの「実物大」ガンダムを見に415万人が来場し、スイスのロカルノ国際映画祭で日本アニメの大回顧上映に欧州の観客が集まるのを目にした。

「アニメはその記号性、象徴性のおかげで国境や文化を越えていく力があると感じた。『人類の未来』のような大きな問題も、フィクションに乗せて語れば伝わりやすいことが分かった。アニメ製作者はそれを自覚し『有限の地球で人類が生きのびる方法は何か』といった今考えるべき問題を、アニメで訴えるべきです」と富野さん。

「新世紀宣言(1981年のアニメ新世紀宣言)から約30年、アニメというものがようやく一般の媒体として認められてきた。これから本当の新世紀が始まる。30年なんて助走期間ですよ」
(2009/10/27朝日新聞朝刊より)

切通理作さん(批評家)
「分岐する物語を楽しむ」
「ガンダム」の主人公は戦争に参加しているだけで、それを解決できる力を持っていない。ロボットも兵器であり量産可能で、それは架空の戦争の一局面を「たまたま」見ているという臨場感を生み、同じ世界の中の「描かれていない別の物語」を想像させる広がりを持つ。
大きな世界観の下で、様々に分岐していく物語を楽しみ、ファンもまた想像力を使って参加していく。「ガンダム」はパロディーなどの二次創作やゲーム、ライトノベルなどで広がっている楽しみ方の原点でもある。
(2009/10/27朝日新聞朝刊より)

ガンダムに関しては切通理作さんが簡潔かつ見事にまとめておられますが、富野さんはいつもの富野節ですね。ガンダムは環境問題がメインテーマの一つなので、「『有限の地球で人類が生きのびる方法は何か』といった今考えるべき問題を、アニメで訴えるべきです」と富野さんが言うと説得力感じますね…。Zガンダムのシャアのダカール演説を思い出しました。

機動戦士Zガンダム「ダカールの日」より、シャアの演説

「閉会するな!この席を借りたい!
議会の方と、このテレビを見ている連邦国々民の方には、突然の無礼を許して頂きたい。私はエゥーゴのクワトロ・バジーナ大尉であります。

話の前に、もう一つ知っておいてもらいたいことがあります。私はかつてシャア・アズナブルという名で呼ばれたこともある男だ。私はこの場を借りて、ジオンの遺志を継ぐものとして語りたい。もちろん、ジオン公国のシャアとしてではなく、ジオン・ダイクンの子としてである。ジオン・ダイクンの遺志は、ザビ家のような欲望に根差したものではない。ジオン・ダイクンがジオン公国を作ったのでは無い。現在ティターンズが地球連邦軍を我が物にしている事実は、ザビ家のやり方より悪質であると気付く。

人が宇宙(そら)に出たのは、地球が人間の重みで沈むのを避ける為だ。そして、宇宙(そら)に出た人類は、その生活圏を拡大したことによって、人類そのものの力を身に付けたと誤解をして、ザビ家のような勢力をのさばらせてしまった歴史を持つ。それは不幸だ。もうその歴史を繰り返してはならない。

宇宙(そら)に出ることによって、人間はその能力を広げることが出来ると、何故信じられないのか?我々は地球を人の手で汚すなと言っている。ティターンズは地球に魂を引かれた人々の集まりで、地球を食いつぶそうとしているのだ。

人は長い間、この地球と言う揺り籠の中で戯れてきた。しかし!時はすでに人類を地球から、巣立たせる時が来たのだ。その後に至って何故人類同士が戦い、地球を汚染しなければならないのだ。地球を自然の揺り籠の中に戻し、人間は宇宙(そら)で自立しなければ、地球は水の惑星では無くなるのだ。このダカールさえ砂漠に飲み込まれようとしている。それほどに地球は疲れきっている。

今、誰もがこの美しい地球を残したいと考えている。ならば自分の欲求を果たす為だけに、地球に寄生虫のようにへばりついていて、良い訳がない。

現にティターンズはこのような時に戦闘を仕掛けてくる。見るが良い、この暴虐な行為を。彼らはかつての地球連邦軍から膨れ上がり、逆らうものは全てを悪と称しているが、それこそ悪であり、人類を衰退させていると言い切れる。

テレビを御覧の方々はお分かりになる筈だ。これがティターンズのやり方なのです。我々が議会を武力で制圧したのも悪いのです。しかしティターンズはこの議会に自分達の味方となる議員がいるにも関わらず破壊しようとしている。」

宇宙世紀ガンダムの戦いの大義名分って地球環境問題ですね。元々、人類の大半を宇宙へ移住させる地球連邦の計画自体が環境問題を大義名分とした計画であり、地球連邦に戦いを挑んでくるジオン公国もネオジオンも、地球連邦から派生して地球圏・宇宙圏の覇権を得ようと争いあう連邦分派組織のティターンズもエゥーゴも、みんな『地球環境を守る為に地球圏・宇宙圏の覇権を手に入れなければ』ということ(作中のジオニズムやエレズム、地球出身者のエリートで構成されたティータンズも地球を聖地とするエレズム系の組織)を大義名分にして、戦争を正当化しますから…。ただ、史実の戦争と同じく、大義名分は結局のところ大義名分にしか過ぎず、ガンダム世界の戦争も実際のところは権力者達の身勝手な権力闘争による戦争なんですが…。そういうところもきっちり描写しているのがガンダムのいいところですね。

2010年にアニメ化される最新のガンダム、福井晴敏さんの小説「ガンダムUC」(全10巻)も、宇宙世紀作品だけあって、メインテーマの一つは地球環境問題ですね。「ガンダムUC」はエンターテイメント系のベストセラー作家の福井さんが書いているだけあって、とても面白い小説でして、一読お勧めです。最後に、エレズムとジオニズムについてガンダムUCより引用してご紹介致します。

(地球環境を守るという大義名分に拠って、エリート層以外の人間を宇宙に強制移住させる地球連邦の計画が進み)いつしか宇宙移民者(スペースノイド)と地球居住者(アースノイド)の数は逆転し、牧畜も農業もコロニーで行われるようになると、経済も生産も宇宙なしでは成り立たない時代が到来した。

地球への出入りには厳しい規制が設けられ、スペースノイドが再び大地を踏みしめる機会は皆無といってよく、彼らの間にはエレズムと呼ばれる思想が定着した。地球を聖地とみなし、人類発祥の地として永遠に遺すべきとするその思想は、地球への未練を断ち切ろうとするスペースノイドの哀歌であり、いまだ地球に残る特権階級に手向けた意趣返しでもあった。

実際、連邦政府が推進する宇宙移民計画は、第一段階の計画が達成された0050頃から歪みを表出し始めていた。本来、環境回復に必要な最低限の人員だけが残るとされた地球に、いまだに多くの人々が居残り、新たな土地開発(環境汚染)まで行われるようになっていたのだ。連邦政府自体も地球に拠点を築いて動こうとはせず、その関係者だけが地球に留まり、中央政府の片務的な立法で縛られたコロニー群が声も出せずに地球の周囲を廻り続ける、という構図。(中略)当然、スペースノイドの不満は高まり、その不満を凝縮したかのように、一つの思想が宇宙の片隅で誕生した。

提唱者である政治思想家、ジオン・ズム・ダイクンの名に因み、その思想はのちにジオニズムと呼びならわされるようになった。スペースノイドの自治権要求運動をサイド国家主義に編纂し、エレズムを加えて体系化したジオニズムは、人類の進化にまで言及した壮大な思想であり、歪んだ宇宙移民計画の結果を生きるスペースノイドに自意識の喚起を促すものだった。
(福井晴敏「機動戦士ガンダムUC ユニコーンの日」)

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機動戦士ガンダムUC 2 ユニコーンの日(下) (角川コミックス・エース 189-2)
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