2009年07月08日 06:35

今クールのアニメ、前クールから見ているのは「蒼天航路」のみですね。三国志はやっぱりイイです。

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今クールのアニメ、前クールから続いている作品が多い感じですが、僕が前クールから見ているのは「蒼天航路」のみですね。僕は子供の頃から三国志ファンでして、原作のコミック版「蒼天航路」も、原典の「三国志演義&三国志正史」も非常に好きなので、本作は最高です。三国志はやっぱりイイですね。

本作はちゃんと今クールに入っても、バイオレンスな血しぶきが飛んで兵達が死にまくる、原作コミックに忠実かつ、史実にも忠実な感じの血しぶきアニメでいい感じです。原典(演義&正史)からして血しぶき大河ロマンにて血しぶき大河戦史ですからね。

『三国志』は後漢末、黄巾の乱が起きた184年から司馬氏の晋が成立する265年までのたかだか80年の間に起きた出来事なのであり、長寿の人なら治乱興亡の全てを見聞に入れることが出来たろう。

「しかしこいつら、なんでこんなに戦争ばっかりしてるんだ?」

と感想せざるを得ず、大陸人同士が、やめりゃあいいのに人口が半減するほどの殺し合いを飽きもせずに続けるという異様な話なのである。だが中国史とはこのような強烈な話の連続なのであって、三国時代がとりたてて異常なわけではない。(中略)

英雄連中もしょっちゅう二十、三十万の大軍を起こしては火で燃やされたり、河江に沈められたり、得体の知れない罠にはまったりして、虫けらのように殺されてゆく。それを、

「乾坤一擲の大智謀、秘計が当たったわい!」

と喜んだり、褒めたり、けなしたりし合っているのである。人間の知性は『三国志』では、人殺しに用いられるばかりである。(中略)

物語としては、次々にいいキャラが死んでゆくので、(一人を主人公にすると)感情移入が途絶え、全編を一人の主人公を選んで描ききることは不可能であると言える。今後『三国志』をどう書くかは、とくに作家は、いろいろな意味でその手腕を問われることになるであろう。
(酒見賢一「弱虫泣き虫諸葛孔明」)

まあ、僕は人間(人類種)は本質的に同種間(人間同士)の闘争が好きなのだと思いますね。だからそれがあからさまに出ている三国志に惹かれる一面があるのではないでしょうか。先ほど、日本のニュース番組では中国に遠慮してほとんど取り上げられないウイグル騒乱事件を、衛星第一で放映していた香港のTV局のリアルタイム報道で見ていましたが、漢民族の暴徒集団をTVに写していて、物凄くデカくて刃が長い出刃包丁みたいな長剣持った漢民族の暴徒の人が笑みを浮かべながら歩いているのを見て、『どう見ても殺る気満々…』の様子、悠久の時のなか、人間性というのは二千年の刻を経ても変わることはないんだなあと感じました。

あと、余談ですが上述のウイグル騒乱に関しては、日本のマスメディアのダブルスタンダード的スルーは凄まじく、日本のニュースではほとんど取り上げられませんが、ニコニコ動画などでは結構取り上げられているので、興味のある方はこちらを見た方が情報入手が早いと思います。

東トルキスタンとは (ヒガシトルキスタンとは) - ニコニコ大百科
http://dic.nicovideo.jp/a/%E6%9D%B1%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3

閑話休題。本題に戻りますと、本作アニメは原作に忠実でして、原作は原典の演義&正史に忠実ですので、今回(本日放映)の話は、青州黄巾党を降伏させて自軍に編入した曹操が、父を始めとする一族を陶謙に殺されたとして徐州に侵攻し徐州大虐殺を始める話でした。後は公孫讃対袁紹の戦いで、趙雲子龍が初登場。袁紹配下の武将麹義を軽く討ち取って実力をアピールしてました。原作&演義&正史通りの展開ですね。

ちなみに、曹操の名を落とした徐州大虐殺は、戦略的に無意味というかマイナス以外のなにものでもなく(後の呉との戦いにおける敗因などにも繋がっている)、近現代において曹操を再評価した歴史家・小説家の陳舜臣さんも『これはどう考えても私情に駆られた曹操の大失敗だった、これによって徐州の人材獲得ができなくなり、諸葛亮を魏に仕官させることもできなくなった』と評しておりますね。アニメは基本的に主人公の失敗を描いたりするのが苦手なメディアなので、この辺をこれからどう描いていくか、期待です。失敗も成功も描けてこその乱世の英雄曹操だと思います。

後、本件と比較されることのある織田信長の比叡山焼き討ちとは根本的に違うと思いますね。信長の比叡山焼き討ちは信長包囲網を打破する為の戦略的・合理的意味合いがありますが、除州侵攻&虐殺は戦力を無駄に浪費した戦略的に無意味な非合理殲滅戦です。単に父を殺されて怒った私情による失敗戦略と思われます。曹操は信長のように戦略的合理性の塊という感じとは違い、情が深くてその分非合理的なところのある将ですから。

孔明が十四、五の頃、徐州に曹操軍が大挙侵攻して、民衆数十万を屠殺して泗水に投げ込むという大量虐殺事件が起きている。これは曹操の父曹嵩が除州の太守陶謙に暗殺され、それを聞いた曹操が激怒し、

「かの徐州、陶謙のやつばらに復讐せずんばあらじ。報仇雪恨ーっ!」

という私的な動機でしたことである。叛乱平定の詔勅を受けたなどという大義名分もないし、陶謙は老齢で叛乱など考えたこともない人物である。また戦略的必要上から徐州をおさえるといったことでもない。ただ殺し尽くすために攻め入った北華鬼子の軍隊であった。

『男女数十万、泗水に坑殺し、水、為に流れず』

城市村々では掠奪強姦が随所に行なわれ、死体のほかは鶏犬いっぴきいなくなったという。この時代に核兵器、毒ガス兵器や細菌兵器が存在すれば、曹操は躊躇なく除州にばら撒いたであろう。それくらいに深く狂怒していた。

魏武曹操の戦歴のなかでこの除州戦ほど無意義なものはなかった。陶謙と直接関係がない一般民衆に対する悪質な組織的犯罪行為である。しかも曹操の父の暗殺のことは陶謙のあずかり知らぬことであり、曹操の勘違い(誤情報)であったと後に判明したが、曹操は謝罪ひとつしていない。というか天下を治めし者としては謝罪の気持ちが起きたかも知れないが、すべき相手は皆死んでいたので出来なかった。

そのどさくさに劉備主従は除州にするりと入り込み、陶謙にとって代わったが、しばらくすると呂布に追い出されてしまい、曹操を頼って遁げ走った。蜀の先主、劉備玄徳の半生はこんなことの繰り返しである。少年孔明はそういった情報に日々接したであろう。
(酒見賢一「弱虫泣き虫諸葛孔明」)

なんかここだけ読むととんでもない人物みたいですが、曹操が中国史屈指の優れた英雄であったことは間違いないと思いますね。中国が安定に向かうのに曹操の建国した魏が最も大きな役割を果たし、彼がいなければ戦乱の世はますます続いたかと。そのことを考えると、『英雄』と呼ぶに相応しい人物の一人だと思います。演義だと悪役ですが、史実的に見ると、三国志最大の英雄と言えるかと。演義的には最大の英雄は諸葛孔明ですから、曹操と孔明が三国志における二大英雄ではないかなと僕は思いますね。

孔明に匹敵する男は(三国志において)曹操しかいないのである。魏武曹操は後世から見ても確かに天才的な男である。しかも多才である。軍事、政治の才能はおろか、学問、芸術にも抜きんでている。魏武注と称される曹操の『孫子』の注釈は優れたものとして残っている。また、曹操が残した詩には歴代詩人のものに劣らない名詩がいくつもある。多才の天才とはなかなか探すことが難しい。わたしの知る限り、政治能力と芸術能力の多分野において才能を持ち、業績を残したというところでは、ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテの名が浮んでくる。むろんゲーテは戦闘指揮(すこしやったことがある)や王としての才は示していないが、代わりに科学者としての能力が秀でていた。
(酒見賢一「弱虫泣き虫諸葛孔明」)

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