2009年05月11日 23:44

子供の頃から三国志大好きな僕のちょっと嬉しいこと。お勧め三国志パロディオマージュ小説酒見賢一「弱虫泣き虫諸葛孔明」。今の少年漫画(少年ジャンプ)に足りないと思う三つのこと。三国志ライトノベルファンタジー論。

泣き虫弱虫諸葛孔明
泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部

僕の二つ名はブレイブブレイド裂空演武だそうで、これは三国志好きとして正直嬉しいといわざるを得ないと久々にちょっと嬉しいです。なんとなく張飛っぽくて嬉しいです。

ねこねこさんの二つ名は・・・
ブレイブブレイド
裂空演武
http://pha22.net/name2/c/%E3%81%AD%E3%81%93%E3%81%AD%E3%81%93

僕は相当ガチな三国志(三国志演義)好きで、一桁(9才、小学生3年生頃)岩波少年文庫の三国志に嵌りまくって、その後、寝ても覚めても三国志のことばかり語り、三国志マニアとして三国志マニアの友人と(三国志のマニアは子供の世界でもクラスに僕含めて3人ぐらい居ました)その頃から三国志について語りまくり、光栄の三国志シリーズをずっとやってきて、10代になってからは完訳三国志と吉川英治版三国志を読了。三国志の解説本だけでなく反三国志とか色物まで読み、自分で脳内武将を作ってパラメーターを設定し、こいつ(架空脳内武将)がいればこうなってああなってと三国志マニアの友人達と一緒に架空三国志戦史を作るほどアレでした…。俗にいう中二病です…。

ゲームの三国志も、光栄の三国志だけでなく、三国志RPGの「天地を喰らう」シリーズも大好きでした。ちなみに第一作のファミコン版三国志RPGの「天地を喰らう」には裏技があり、蜀の国の一番左下の端っこの山岳地帯の一番端っこのギリギリのゾーンを歩いていると、能力値がほぼゼロで戦闘力を持たないのになぜか何万も軍を率いている謎の山賊が現われ、こっちの兵力が数千でも簡単に倒せて、倒すと莫大な経験値が手に張って、最高レベルにすぐに達します。今も覚えています。紙を発明した蔡倫の能力は初期に仲間になるキャラとしては最高に高かったなとか、なんだか色んなことも今も覚えています。

ちなみに僕の面白さの評価は「岩波少年文庫版三国志・完訳版三国志>超えられない壁>吉川英治版三国志」で、吉川版三国志はやけに固くて真面目すぎて三国志のハチャメチャに面白いところをなくしてしまっている実につまらないバージョンと個人的には低評価しています。三国志を読むなら、僕としてはぜひ、岩波の少年文庫版と完訳版三国志(完訳三国志は岩波書店から廉価で全8冊セットで出ています)の方がお勧めです。

岩波の少年文庫版と完訳版は原典に忠実なので、異能者超絶バトルな原典のハチャメチャな醍醐味が活かされており、諸葛孔明は平気でビームを放っちゃう真・三国無双な超人かつ「あわわ敵がきちゃいました〜」とか平気で言い出しそうな燃えで萌えなあわわ軍師(by恋姫無双)なキャラクターとして描かれております。人々を面白がらせる講談を基とする原典の諸葛孔明は明らかに人知常識の枠を超えた超能力を持つオカルト系異能者にて、敵武将にビームを放つくらいのことは普通に行えそうな人物です。描かれ方もどう見ても熱血燃えキャラかつあわわなうっかりさんの萌えキャラです。

講談の三国志演義で、あまりに蜀キャラの面々が無敵すぎると話が盛り上がらないので、実は孔明、原典だと超能力者の天才かつ、結構失敗しているうっかりさんでおちゃめなあわわ軍師さんです。ラストなんか、自分(孔明)の命を延命する大切な超能力儀式(これが成功すれば蜀が天下を取れた)に特に来る必要もない魏延にうっかり乱入されて失敗してしまい、「あわわ…魏延さんが突然やってくるからビックリして儀式の蜀台倒れて、本当なら蜀が天下を取れる筈の超能力儀式に失敗しちゃったよ…」という、うっかりさんなあわわが原因で死んでしまい、蜀はうっかりさんなあわわ軍師の超能力儀式失敗という情けなくも面白い理由で滅亡します。まさに「あわわ軍師」です。

原典の孔明は天才の割にはあわわ軍師でうっかりさん過ぎます。そこがまた愛らしくて素敵さんです。ゲームの三国無双やアニメの恋姫無双のハチャメチャな描き方の方が、実は堅苦しい吉川版三国志よりも、エンタメな面白さに徹した原典三国志の醍醐味に遥かに近いです。堅苦しい吉川版は原典が持つハチャメチャな醍醐味を完全に失っているのが残念です。

思えば、始めて三国志を読んだ岩波少年文庫にはとても影響を受けています。西遊記や三銃士といった東西の古典の傑作を最初に読んだのは岩波少年文庫で、子供の頃は毎月岩波少年文庫の古典作品を読むのが最高に楽しみでした。岩波少年文庫はこれからもずっとあって欲しいなと思います。岩波少年文庫の西遊記とか、子供向けの割には非常にグログロな描写があって、「これは面白い」と子供心ながらに思いました。

ちょうどその頃(僕が小学生の頃)オタク文化は少年ジャンプの最盛期、北斗の拳最盛期で、普通にテレビでたわばっ!で身体が木っ端微塵に裂けるシーン(流石に漫画そのもの的描写はゴールデンタイムのアニメでは無理なので影で木っ端微塵になるシーンを表現していました)とか放映して食卓で悪党がケンシロウに秘孔を突かれて無残に木っ端微塵になるのを楽しく見ていました。放送コードの厳しくなった今はもう、こういうのは無理なのかと思うと残念です。

その頃の子供向けエンタメといったら今のような美少女一本槍ではなく、最盛期こち亀(こち亀1巻〜60巻ぐらいまで)のもはやシュールの域にまで達している筒井康隆的ハチャメチャドタバタ系ギャグの世界と、ドラゴンボールや北斗の拳が代表するようなバイオレンスな熱血炸裂の世界で、面白かったなあと思います。今の少年ジャンプとか、読んでいると、キャラの魅力のみで読ませる開けっぴろげな美少女系作品等が多くて、昔みたいな過剰なハチャメチャで笑えたり、バイオレンスバトルな熱血で心がドキドキしたりするよう作品がないのは残念です。

僕が子供の頃(1980年代)も美少女系少年漫画はありましたが(桂正和「電影少女」等)、今よりも隠微な感じでドキドキしたのを覚えています。今の少年漫画はギャグと燃え(萌えではなく、バイオレンスな戦いの燃え)と性の隠微さが足りないと思います。今の少年ジャンプ連載の美少女系少年漫画は開けっぴろげすぎて、身も蓋もないなあと感じます。少年漫画の美少女作品は隠微さの色っぽさがいいと僕は思います。今の美少女系少年漫画のように身(全裸)がそのままポーンと出される(美少女とのだんだん近づく関係にドキドキするオールドタイプな少年漫画ではなく、美少女がすぐ全裸になって積極的に迫ってくる欲望の即充足系現代の美少女系少年漫画)を読むと、年寄りオールドオタクの僕としてはう〜ん…と思わざるえないところはあります。美少女系少年漫画はエロティシズムを隠微に引き伸ばしてじらしてゆくのが醍醐味であり面白いと思うのですが…。

もう一度、ハチャメチャギャグと血が滾る燃えと隠微なエロティシズムのある最盛期の少年ジャンプ(僕が子供だった頃の1980年代の少年ジャンプ)を読みたいですが、今の少年ジャンプの状態を見る限り、今後、「ハチャメチャギャグと熱血燃えと隠微なエロティシズムの復権」は永遠に無理っぽいのが、少年ジャンプ好きの僕としては非常に残念です。子供の頃、ジャンプ派・サンデー派・マガジン派がいましたが、僕はジャンプ派でした。サンデーやマガジンの面白い作品(サンデーのGS美神極楽大作戦などとても好きでした)はコミックスで読んでいましたが、毎週買っていた雑誌は少年ジャンプでした。

最近の少年漫画は、僕の好きな「ハチャメチャギャグ・熱血燃え・描写が抑制されたゆえにエロティックな色っぽさの魅力」の三つを持つ少年漫画が「金色のガッシュ!」「アクメツ」あたり以降から、僕の知る限りでは、全然出ていない感じで(もし出ていたら、ぜひ読みたいので、そういう近年の作品ありましたら教えてくれると嬉しいです)、僕としては残念感があります。「センゴク」シリーズとか、青年向け漫画ではこれら三つ(ギャグ・熱血・色っぽさ)を兼ね備えた漫画が今もちゃんと出ているのですが…。

もう一度、「ギャグ・熱血・色っぽさ」の三つを兼ね備えた、ドラゴンボール、北斗の拳から金色のガッシュ!やアクメツに至るまでの総合エンタメ系譜の魅力を持った新しい少年漫画が僕は読みたいです…。美少女全裸むき出し系少年漫画はもう食傷です…。

岩波少年文庫の西遊記の話に戻りますと、その後、西遊記の原典読んだらもっとグロかったので、中国四千年のグロエンターテイメントに感動したことがあります。岩波少年文庫の三国志にもグロがありますが、三国志の場合はグロよりもやはり戦争の面白さを描ききった大傑作だと思います。

中国古典は本当に面白いです。三国志も西遊記も水滸伝も金瓶梅も最高に良かったです。特に最高なのが三国志です。日本の古典作品だと打算と欲望に満ちた政治的闘争や戦争の策謀の世界を描いたり、バイオレンスでグロテスクな世界を描いたりする赤裸々な古典とかあまりなくて、それら日本の古典よりも、僕は中国や欧州の陰謀と策謀と打算と戦いとバイオレンスとグロテスクや倒錯に満ち溢れた刺激ある古典作品の方が大好きです。『過剰過ぎて笑ってしまうような展開と血の滾る熱血な燃える展開、歴史的な大舞台の中で豪傑や策士や異能者が活躍するだけじゃなく、女性も大活躍、傾城の美女も出てくるよ』という中国古典の圧倒的なエンターテイメント精神にはまさに『パーフェクトだ、中国古典』と心から称賛を送ります。

そんな三国志好きな僕が今一番好きな小説は酒見賢一さんの三国志を徹底的にパロディ化した三国志オマージュ作品「弱虫泣き虫諸葛孔明」です。三国志を、ビジネスマンの愛読書ではなく、ハチャメチャファンタジックエンターテイメントとして楽しもうというとても楽しい方向性の本で読んでいるとどうしても顔がニヤニヤとほころび、数ページごとに吹いてしまう最高に面白い三国志パロディオマージュ小説です。反三国志あたりとは比較にならない、少なくとも一兆倍はこちらの方が面白く、ぜひ三国志好きにはお勧めです。三国志の小ネタを知っていれば知っているほど楽しめて笑えます。

「泣き虫弱虫諸葛孔明」シリーズは、三国志を企業経営の観点から読むとかいう堅苦しい読み方の正反対、三国志を堅苦しく読むなんて愚行は『バッカじゃね〜〜〜〜の』(byヒストリエ)という感じで進行する、三国志を徹底してエンターテイメントの読みに徹する本、三国志(三国志演義)を総合エンターテイメントなライトノベル系面白ファンタジーとして読む本で、読んでいて最高に楽しい本です。三国志を始めて岩波少年文庫で読んだ頃の楽しさが沸きあがってきます。三国志を知っていれば知っているほど抱腹絶倒です。こんな感じです。引用致します。

さて説きなん。

じつは「三国志」にはにわかには信じがたい(ラノベファンタジーな)裏設定が存在している。

「三国志」自身が自らこのいかがわしい裏設定を抹殺し、表面化しないように努めてきた気配があるのだが、わずかでも隙を見せるとすぐに講談師たちの口をへて浮上してこようとする。「三国志」のアンカーマン・羅貫中もこの裏設定の抹殺に完全には成功しなかったと言ってよい。

この裏設定は「三国志」を、誇張や脚色はあるにせよ、少なくとも史実に依拠した本格歴史小説だと思いたい、企業経営者のようなまっとうな読者たちのせつない希望を容赦なく打ち砕き、なんとなく神秘のダーク・ファンタジー・ゾーンに案内するものである。

しかしいまや日本人はハリー・ポッターを受容すること、万古の歴人の如きであるから、問題なく大丈夫であろう。

その不安と躊躇、不信と困惑を呼ぶ裏設定とは、後漢の初、ある白皙の青年が遭遇した地も凍るような世にも面白おかしい超常現象から始まった……。
(酒見賢一「泣き虫弱虫諸葛孔明第弐部」)

三国志を好きな人ほど、三国志(三国志演義)は史実ではなく、エンターテイメント性を炸裂させた最高のラノベ的ファンタジー超能力バトル戦争戦略戦術政治陰謀謀略美女ギャグ熱血色っぽさSFオカルトetcあらゆる要素兼ね備えた総合娯楽物語であること知っていますから、その点で、「泣き虫弱虫諸葛孔明」シリーズは、最高に笑える三国志パロディオマージュの大傑作、ぜひ皆様方にご一読お勧めする楽しい本です。僕的にはファンタジー小説として「泣き虫弱虫諸葛孔明」シリーズはハリー・ポッターの∞倍面白かったです。ぜひ皆様方にご一読お勧めする最高に面白い本です。「三国志は最高に面白いファンタジー総合エンタメだ!!三国志を史実だとかいう堅苦しい奴らはみっくみく…じゃなくてさっくさくにしてやんよ」という酒見賢一さんの三国志への強烈な愛が伝わってきて三国志ファンの僕は感涙です。三国志好きとパロディ好きとギャグ好きとラノベ好きと熱血好きとファンタジー好きと三国無双好きと恋姫無双好きなお方々は必読の爆笑名著であると思います。

参考作品(amazon)
泣き虫弱虫諸葛孔明
泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部
三国志〈上〉 (岩波少年文庫)
三国志〈中〉 (岩波少年文庫)
三国志〈下〉 (岩波少年文庫)
三国志 8冊セット
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