2008年08月20日 18:40

F・W・ムルナウ監督のサンライズを見ていました。赦しと愛情を描いたとても良い映画です。

サンライズ クリティカル・エディション

先日に引き続き、昨日は酷く調子が悪く、1日中寝込んでいました。先日ギフト券を贈ってくださった方のおかげで、昨日、更新あせらずに、休養を取ることができました。本当にありがとうございます。今日はなんとか起きあがって、テオドール・ドライヤー監督フリッツ・ラング監督に並んで僕の好きな映画監督であるF・W・ムルナウ監督(とても綺麗で心に残るカットを撮る監督です)の「サンライズ」を見ていました。見るのはこれで三回目くらいですが、心が癒されます。

「サンライズ」はF・W・ムルナウ監督の代表作、最高傑作として名高い作品ですが、僕はちょうど、同じくムルナウ監督の映画「タブウ」が、ちょうど、対極的なセットみたいな感じ、表と裏みたいになっていると昔から考えています。悲劇的な「タブウ」や他にもムルナウ監督の「吸血鬼ノスフェラトゥ」なんかも好きなんですが(ちなみにノスフェラトゥはよく出来た映画ですが、今は500円という吃驚定価です)、今の調子だと見るのが辛い(どちらも見るのに体力がいる映画)なんで、心がホッと優しくなれる映画である「サンライズ」を見ていました。

「サンライズ」は、キリスト教の赦しと愛情の精神を、西欧における聖なる女性の精神(女性の愛情)としてとても見事に描いた映画で、最初に「これはどこにでもある普遍的な物語である」という言葉がありますが、現代は、残念ながら、そう思える牧歌的時代を遠く離れてしまっている時代であることを、寂しく思います。

物語は、牧場をやっている農夫の旦那さんと農夫の奥さんが、暮らしている田舎に、都会から、妖艶な女性が避暑にやってくることから始まります。この女性は、農夫の旦那さんをたぶらかし、牧場を売って二人で都会に行こう、と誘いをかけるのですね。
そして、そのために、奥さんを殺せと唆す。そのために、肉体的に旦那さんをメロメロにしちゃうんですね。

奥さんは(この奥さんがとても大きな澄んだ目をした素晴らしく美しい人、外見だけじゃなく魂の清らかな女性で、この素晴らしい女性を裏切るなんて、まあ物語ですけど、でも普通あり得ないよなと思います)、旦那さんが浮気をしていることを知って嘆き悲しんでいるんですね。それだけじゃなく、村の牧場を売るということは、村を都会化することで、田舎の純朴さの滅びと金の支配を象徴している出来事です。

それから、旦那さんが都会の女性に完全に唆されてしまい、奥さんをボートから突き落とそうとするんですね。だけど、ちょうどそのとき、教会の鐘がなるんですね。

the church bells are ringing:
 How all the world breathes praise and prayer!

ああ、教会の鐘が鳴っている……
 聞くがいい、全世界が神を讃え、神に祈っている!
(ジェイムズ・トムソン「五月に」「イギリス名詩選」より)

みたいな感じで、旦那さんが、今、自分はとんでもないことをしようとしていた、かげがえのないものを自らが失わせようとしていたと、ハッと目が覚めるんですね。

だけど、奥さんは物凄い怖がっちゃって(当たり前ですが)旦那さんのところから逃げるんですね。それから、赦しと、愛情の絆と、そして奇跡が描かれます。キリスト教、とくに男女の愛情と神聖なる結婚を非常に素敵な視点から捉えた見事な優れた映画です。

僕は、この映画は先にも挙げました通り、ムルナウ監督の「タブウ」と対になるものだと思っていて、新約の神と旧約の神、赦し、愛する神(聖性)の物語(聖性をヒロインの奥さんが象徴します)として「サンライズ」があって、裁き、罰する神としての物語として、対になる「タブウ」があると思うんですね。ですので、「サンライズ」はご視聴お勧めの映画ですが、「サンライズ」が気に入られた方は、「タブウ」もご視聴お勧め致します。ただ、「タブウ」は悲劇なので、心がホッとする映画をみたいということであれば、「サンライズ」だけのご視聴お勧め致します。とても、美しくて、見終えた後、心が優しくホッとする映画です。

参考作品(amazon)
サンライズ クリティカル・エディション
F・W・ムルナウ コレクション タブウ クリティカル・エディション
吸血鬼ノスフェラトゥ 新訳版
イギリス名詩選 (岩波文庫)
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