2008年07月27日 00:04

生活が苦しい時の出費の魂が抜け出るような想いと、音楽の癒しについて

昨日、腰痛で外科に掛かりました。ぎっくり腰で数週間の安静が必要とのことでした。うつ病の治療も安静にしていなければいけない(あまり活動してはいけない)なので、安静はいいのですが、医療費・交通費(腰痛くてあまり歩けませんでした)で四千円も掛かってしまい、収入がなくて貯金すり減らして暮らしている生活苦の時の出費は、魂が抜けるような想いでした。四千円がうつ病に掛かる前の何十倍にも感じられて、萩原朔太郎の、「墓と、石と、蟾蜍とが、地下で私を待つてゐるのだ」という言葉を思い出していました…。

萩原朔太郎「虚無の歌」抜粋(萩原朔太郎詩集より)

かつて私は、精神のことを考へてゐた。夢みる一つの意志。モラルの体熱。考へる葦のをののき。無限への思慕。エロスへの切ない祈祷。そして、ああそれが「精神」といふ名で呼ばれた、私の失はれた追憶だつた。 かつて私は、肉体のことを考へて居た。物質と細胞とで組織され、食慾し、生殖、不断にそれの解体を強ひるところの、無機物に対して抗争しながら、悲壮に悩んで生き長らへ、貝のやうに呼吸してゐる悲しい物を。肉体! ああそれも私に遠く、過去の追憶にならうとしてゐる。私は老い、肉慾することの熱を無くした。墓と、石と、蟾蜍とが、地下で私を待つてゐるのだ。

ただ、なんとか一人で外にでかけられたので、猫の餌と猫のトイレ用品と、最近ほとんど何も食べてなかったので、バナナ(バナナはうつ病にいいと聞きました)と牛乳を買いました。食欲自体はないんですが、胃の調子がおかしくて、お腹が変な様子なので、これ以上、食べないでいると危ないと思って、無理にでも食べようと思って買いました。ちょうど、こんな状態でしたので…。

ひどく寒い。
絶え難い絶食状態。
骨と筋だけでできた悪夢の冥府。そこでは、嵐の燐光のなかで、まるで旗のようにばたばたと鳴る胃の働きが感じられる。
(アントナン・アルトー「神経の秤」「ヴァン・ゴッホ」より)

僕の場合は嵐の燐光はなくて、不安と闇が広がっている感じですが、胃がおかしいのは感じるので、家に帰って、バナナと牛乳食べたら、少し落ち着きました。食べ物を食べたら、ほんのちょっと回復した感じです。僕のもともとのHP(ヒットポイント、生命力、行動力や精神力でもいいです)が最大100としたら、うつ病になったらそれがほとんどゼロになって、治療とお薬で、最大HPが10までは回復したけれど、食べてなくて実質HP3ぐらいまで下がってたのが、バナナ食べて牛乳飲んだら4ぐらいになんとか上がった感じです。

それで、昨日はショパンじゃなくてマーラーの交響曲第五番を聞いていました。これは一般的に流布されているマーラー=神経症的みたいな曲ではなく、辛い人を慰めるようなタッチがマーラーの精確な感覚で表されているような音楽です。ただ、やっぱり今の僕には強すぎたみたいで、聴いてて少し疲れました。演奏自体はハイティンク指揮のベルリン・フィルで、決して悪くない、良い演奏だと思います。ただ、まだあまり激しい音楽とかは、難しいみたいです。その後は、ルービンシュタインのショパンのバラードを聴いていました。

聴いていて、ルービンシュタイン&ショパンの組み合せは、格が違う、天才を超えた領域と胸の底から実感しました。趣味的に好きな演奏家はいますが、天才の演奏家は、そういうのを遥かに超えちゃっているんですね…。心に直接伝わってきます。

ショパンがうつ病でも聴きやすいのは、ルービンシュタイン自身が述べていますが、調和が完璧なんですね。一切の夾雑なく組み立てられている。それを天才が弾くと神的領域としかいいようがありません。

ショパンの作品にはインスピレーション、ピアノ的な構想力、さらには古典派的バランス感覚の絶妙な組み合わせが見られます。(中略)一見、非常に衝動的に思えることもこうして理論づけられることがショパンの作品の特徴です。彼はその衝動的な性格やメロディを生み出せる才能にもかかわらず、本質的には非常に理論的(音楽の調和を重視する)な人間だったからです。(中略)(例えばモーツァルトの楽譜には)演奏者に任されている要素がたくさんあります。しかしショパンの作品においては偶然の入り込む余地は全くありません。
(ルービンシュタイン。バラード&スケルツォ全集ブックレットより)

ショパンは最高の調和を持っていると、感じられますね…。ゆえに、すっと聴ける和やかで美しい音です。

この文章書いている今も痛くて辛くて苦しくて眠れなくて不安でたまらず、早く病気(うつ病・ギックリ腰)が治って、働けるようになって、生活苦から脱して、音楽が最大限、心底から全て楽しめるようになりたいです…。

参考作品(amazon)
ショパン:バラード&スケルツォ全集
マーラー:交響曲第5番

萩原朔太郎詩集 (新潮文庫)

ヴァン・ゴッホ (ちくま学芸文庫)

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