2025年10月13日 19:40

涼元悠一「ノベルゲームのシナリオ作成技法」読了。本音の指南で面白い

涼元悠一「ノベルゲームのシナリオ作成技法」読了。元KEYのシナリオライターで現在はアクアプラスのシナリオライターを務める涼元悠一さんがゲームシナリオについて書いた本。とにかく本音全開で面白い本でした。ゲーム関係の仕事を目指す全ての人にお勧め。「ゲームクリエイターはゲーム会社の雇われ社員or外注のままではまずお金持ちになることはできない、自分の作るゲームの権利を自分が所有する必要がある。それにはインディー(同人)がお勧め」とか「恋愛ゲームを作るなら、現実味はいれずに、徹底して主人公に依存的なヒロインを創造せよ」とか、もう本音全開なのが面白すぎる。少し引用してご紹介。
「ゲーム業界に籍を置き、被契約者としてPCゲームを『作らせて貰っている』限り、残念ながらまず絶対にお金持ちにはなれません(略)シナリオライターに限らないことですが、創作業というのは、作品の権利を自分で握っていなければ大儲けなんてありえないのです(略)昨今の人気同人ゲームの台頭も、このこととは無関係ではないように思います」同書

「恋愛をメインとしたゲームは、なにより夢一杯の砂糖菓子であることが要求されます。そこに『味が締まるから』と塩(女性の自立等の現実味)を入れても、喜んでくれるお客さんはほとんどいないのです。例え本当に味が締まって作品全体として美味しくなったとしても、です。ですから、最初から最後まで均質に、盲目的、あるいは本能的に主人公のことを好きでいる、そういう愛玩動物のようなキャラが好まれます」同書

こんな感じで本音全開で面白い。上記の「作品の権利を自分で握っていなければ大儲けなんてありえない」は、シュライアーの米国ゲーム業界ルポタージュ「リセットを押せ」でも指摘していたね。スタデューバレーのエリック・バロンのように自らのゲームの権利者となることが億万長者への道、アメリカン・ドリームであることが現代のゲーム開発者達に意識されていると。
本書、ゲームシナリオライターを目指す方々には勿論お勧めですし、ゲームが好きな人全般にとっても面白い本と思います。クラナドの一ノ瀬ことみシナリオについて触れているので、クラナド好きにもお勧めだよ。お勧めです。最後に一番面白かったところをご紹介。
最強の『特殊演出』があります。それは、シナリオやゲームの長さそのものです。クリアーに何十時間も掛かるような超長編になると、作風が合わないような人は最初からプレイしません(略)プレイを開始してある程度まで進んだ人は、無意識にその作品に対して肯定的になる傾向があります。おそらく、長々と付き合っている自分自身の行為を否定する訳には行かない、という心理が働くからです(略)(ゲームが合わない)プレイヤーは遥か昔に脱落している訳です」同書

ゲーム批評の本質を突いている!!20万本を売り上げている今年最大のインディーゲーム話題作まのさば(魔法少女ノ魔女裁判)なんかも、まのさば大好き配信者ぺこーら(兎田ぺこらさん)が言うように、めっちゃボリュームがあるのも大きいなと感じましたね。大長編ゲームを最後までやる人は、本当に大好きな人な訳です。ゆえに大長編は熱心なファンが付き、そういったファンは次回作にも買ってくれる、面白いね。

ノベルゲームのシナリオ作成技法 第2版
涼元 悠一
秀和システム
2008-12-18


リセットを押せ: ゲーム業界における破滅と再生の物語
ジェイソン・シュライアー
グローバリゼーションデザイン研究所
2022-06-21



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