2025年10月10日 23:14

SF・サイード「タイガー」(東京創元社)読了。ハーラン・エリスンぽくて面白かった!

SF・サイード「タイガー」(東京創元社)読了。デイヴ・マッキーンによる沢山の挿絵が付いたビジュアルノベル(挿絵付き小説)。壮大なパラレルワールドSFファンタジーで面白かった!無数のパラレルワールドが存在し、それぞれが繋がっており、パラレルワールド間を行き来できる超生命体の活動やその超生命体の影響により超知覚を身に付けた各世界の人間達によって各世界は影響を及ぼしあっているアイデアの作品で、ハーラン・エリスンの「世界の中心で愛を叫んだけもの」を彷彿とさせるところが面白い。

物語の舞台は、大英帝国が全世界を専制的に支配する21世紀。現代の歴史とは全く異なる歴史を辿った世界で、民主主義や人権は存在せず、貴族が平民と奴隷を専制的に支配している。そんな世界で、パラレルワールドを渡る能力を持ち、生命体の可能性を広げることを目的とする超生命体「タイガー」と出会った主人公は、タイガーと組んで、世界を専制的に支配する貴族達の側に立ち、タイガーと逆の目的で動いている超生命体「ユリゼン」と戦ってゆくことになる。それは専制政治を打破する革命でもあるという話。主人公は画家で、革命を起こす力が主人公の描く絵(ポスター)であるのは現代的。

ファンタジー次元の話と政治の話が上手く融合しているのが面白い。また、タイガーは善良な火の鳥って感じですが、敵は、火の鳥が描くような全ての生命体が持つ根源的な愚かさではなく、タイガーと同じく超越的な存在、悪の側の超越的な存在が齎す悪であるというのが、日本的(仏教的)な火の鳥とは違う、西欧的な二元論の系譜を感じさせるのも面白い。そして何より、最後の話の膨らませ方が、ハーラン・エリスンの「世界の中心で愛を叫んだけもの」やエリスンの影響を多大に受けたエヴァンゲリオンやエヴァンゲリオンの影響を多大に受けた「まどかマギカ」ぽいのも面白かった。ぜひご一読お勧めです。良質なSFファンタジー。
タイガー
SF・サイード
東京創元社
2025-08-29



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