2016年11月

2016年11月30日 19:09

ASKA容疑者 著書執筆中だった テーマは「盗聴国家・日本」
http://news.livedoor.com/article/detail/12345150/
ASKA容疑者は1月、自身のブログに全20章、約9万5000字の長文手記を掲載。これは出版社に持ち込んだが、洋子夫人の反対などもあって書籍化されなかったもの。その後も諦めきれずに自ら出版各社に売り込んだ。断った出版社の関係者は「日本が盗聴国家だと訴えたいASKAさんと、ASKAさんの半生を描きたい版元の意見が折り合わなかった」と語った。出版社が決まったのは半年ほど前だったという。

「ASKA 削除」でグーグル検索するとこの「全20章、約9万5000字の長文手記」を今現在も読むことができますが、読んでみましたら、10章から始まる凄まじい狂気の加速度的進行の緊迫感が凄いですな…。完全に「本物」としか言いようがない圧倒的迫力があって驚きました。読みながらストリンドベリの作品を思い出していました…。12章の周囲から被害妄想的暗号を読み込むところとか、完全にストリンドベリ…。

統合失調症の内的体験を独特の鬼気迫る文学にまで昇華したストリンドベリの自伝的作品の場合、妻・使用人・友人・郵便配達人等の彼の周囲の人々や彼の周囲の環境が統合失調症による被害妄想及びそれに起因する憎悪を投射する対象になっているんですが、ASKA氏の場合だとスマートフォン、パソコン、インターネットなどの彼の周囲の環境が被害妄想及びそれに起因する像を投射する対象になっているのは、時代を感じさせますね…。統合失調症の妄想は時代と共に変遷するのだなと感じさせます。ただ、ストリンドベリと同じく、基本的には被害妄想・追跡妄想・それらに起因する周囲の人々への憎悪が病気が引き起こしている感情の軸になっているのは、時代を経ても変わらないのですね…。

ちなみに日本では芥川龍之介の妄想的な作品群(「歯車」等)はストリンドベリ作品のオマージュ的な要素が強いです。芥川自身は、その腕前が創作の域にまで達した天才的エディターであり神経症を病んではいたが、ストリンドベリやASKA氏のような統合失調症的な狂気ではなかったように思いますね…。

国際日本文化研究センター
「僕はこの暗号を不気味に思ひ…芥川龍之介『歯車』、ストリンドベリ、そして狂気」
http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/forum/text/fn177.html
『歯車』の全体を通して繰り返し現れる顕著なストリンドベリを思いおこさせる特徴は、主人公が本を開け、手当たり次第に読み始めるところです。彼がたまたま出会う文章の行には彼個人宛ての隠された伝言が含まれていると思い込むのです。

精神刺激薬精神病の危険は、大脳辺縁系が非可逆的に変化(条件刺激変化及び器質的変化)することで、妄想に起因する恐怖や憎悪などに行動が先駆的に支配されてしまうことでして(周囲の環境のなんでもないところに被害妄想的暗号を読み込んだりしてしまう)、ASKA氏の症状はかなり進行した状態と削除されたブログを読むと考えられますし、本当にきちんと精神科に掛かって薬物治療しないと危ないですね…。快楽刺激と恐怖反応は脳内メカニズムとして表裏一体(ドーパミン等の過剰分泌信号による状態変化・回路形成)なんですね…。

東北大学「ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明」
http://www.brain-mind.jp/newsletter/04/story.html
音や光のような条件刺激がやってくると、この情報は感覚刺激を大脳新皮質へ伝達する過程の関所ともいえる視床へ到達します。視床は大脳の腹側の奥深くに位置する神経細胞の大きな集団で、情動に関する情報はここで大きく2つに分かれます。一方の経路は大脳皮質に送られ、細かく分析された上で海馬に送られ、長期的に記憶されます。他方の経路では、情報は視床と隣り合った神経細胞の大きな集団である扁桃体へ直ちに送られます。扁桃体では感覚情報が広い意味でわれわれの生存にとって有利であるかどうかの評価、価値判断がおこなわれます。(中略)

扁桃体からは、大脳の帯状回や海馬のような大脳辺縁系へ刺激が伝わり、長期的な記憶にも大きな影響を及ぼします。このように、扁桃体には原初的な情動に関連した記憶が蓄えられ、この記憶と関連した情動刺激がやってくると記憶が引き出され、感情的ならびに身体的な反応が強く引き起こされます。(中略)

強い感動は報酬系からひろがる興奮が、大脳皮質はもちろん、脳の広い領域で同調して強まることによって起こると考えられています。音楽を聴いて快い情動が引き起こされたときに活動の高まる部位についてPETを用いて調べた研究で興味深い結果が示されています。音楽を聴いて“震えるような感動"をおぼえた場合、心臓の拍動、筋肉の緊張や呼吸数が変化し、このような自律神経系の反応が強い場合、側坐核、扁桃体、前頭前野、前頭葉眼窩野、中脳といった報酬・情動系での大きな血流変化が認められることが明らかになっています。これらの領域は、摂食、性交、麻薬・覚せい剤のような快感を引き起こす刺激に反応して活性化されることはよく知られており、音楽と生存本能に関連した刺激が脳内の快感・報酬系回路を共有することは印象的です。

あと、マスメディアは、ASKA氏は音楽活動の為に薬物をやったとか、音楽家には常人を越える狂的な情熱がいるとか、あまりそういういい加減なことをテレビ等で言わない方が良いと思いますね。前述のストックホルム大学のカールソン教授の論文は、ストリンドベリや芥川龍之介を狂気、もしくは狂気の演技的振る舞いによって、最終的な自己破滅に導いたものは、19世紀西欧の狂気に対するロマン主義からの賛美であるという皮肉な結論を導いている面白い論文です。ASKA氏のことを報道する日本のマスメディアを見ると、この西欧ロマン主義の亡霊はいまだに日本をうろついているように感じますね…。ロマン主義的な狂気の賛美は結局は影響された人々の自己破滅しか引き起こさないと思います…。

国際日本文化研究センター
「僕はこの暗号を不気味に思ひ…芥川龍之介『歯車』、ストリンドベリ、そして狂気」
http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/forum/text/fn177.html
既に見てきましたように『歯車』に表される芥川の苦悩はストリンドベリのそれに吹き込まれた点があります。もしそうだったとしたら反対にストリンドベリの苦悩は何なのでしょうか、誰に吹き込まれたものでしょうか。(中略)

十九世紀の終わりにはヨーロッパでは天才と狂気の違いは紙一重だという信念の全盛期でした。そうであれば、すばらしい知性の才能に必要なものは異常な精神状態であるといえるでしょう。この風潮はブルジョアの正常さに対抗するボヘミア文化の出現によって拍車をかけられたのでした。現代芸術がブルジョアによって狂気と診断されるとともに、狂気というものも社会への反逆の文化として何か願わしいものとしての地位を得たのでした。

混乱した感情の動きを経験することは狂ったという印であるのみならず芸術的才能と見られたのです。狂気が精神の市場での流行の商品となった訳です。ストリンドベリは意識的に文学の枠組みの中でのみならず私的な生活でも狂人になる準備をすることによってこの流行をどのようにして自分に優位な方向にするかを知っていました。彼は神秘主義を肥やしとして狂気のイメージを育んでいったのでした。

このように我々はストリンドベリのいわゆる狂気における歴史的、なおかつ文化的背景を確認しました。芥川は多分気づかずに神秘主義思想や半狂気の天才といったイメージをストリンドベリを通して受け入れたのではないかということを述べておきたいのです。(中略)

『歯車』はストリンドベリ風に書かれた芥川の自画像に外ありません。また、ヨーロッパに出現した狂気の天才の信仰が『歯車』の中に投射されていることを認めることが出来ます。私の意見では、このケースはどのようにヨーロッパの世紀末の考え方が近代日本人の自意識に入り込んだかという確固たる例を見せてくれると思うのです。

ストリンドベリ名作集 (書物復権)ストリンドベリ名作集 (書物復権)
著者:ストリンドベリ
白水社(2011-05-20)
販売元:Amazon.co.jp

芥川龍之介全集〈6〉 (ちくま文庫)芥川龍之介全集〈6〉 (ちくま文庫)
著者:芥川 龍之介
筑摩書房(1987-03)
販売元:Amazon.co.jp

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それが実は、マザー・グースの選んだ用語を使うなら、ヴァリス、つまり巨大活性諜報生命体システムだ。
(フィリップ・K・ディック「ヴァリス」)

ASKA容疑者 逮捕直前激白14分(3)「ギフハブがARで僕を監視」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161129-00000117-dal-ent

秘密結社ギフハブか…。ASKA氏の独白全文読みましたが、全体的に言っていることが何かヴァリスの登場人物っぽいですな。まあヴァリスは麻薬のやりすぎで統合失調症を発症した人々の妄想が相互作用でよりおかしくなっていく深化の過程をSFと融合させた作品なので、さもあらんって感じですね…。ヴァリスはディック作品の中でも大傑作なので未読のお方々いらっしゃいましたらぜひご一読お勧めですね。新訳版の山形浩生訳は実に素晴らしいので、旧訳で読んだ方も、ぜひ再読お勧めです。

グロリアは温厚で礼儀正しかったけど、LSDをやたらとやっていた。明らかにLSDが、前に話をして以来のこの六ヶ月で、彼女の頭を滅茶苦茶にしたんだ。

「どうしてたの」とファット。

「サンフランシスコのマウントザイオン病院に入ってたのよ。自殺しようとしたらお母さんに入れられたの。先週退院させてくれたわ」

「治ったの?」

「ええ」

これでファットは気が触れはじめた。(中略)

「やつら、あたしの銀行口座を盗んだのよ」とグロリア。

しばらくしてファットは、彼女の計算ずくで雄弁な語り口から、「やつら」なんてのはいないんだ、ということに気が付いた。グロリアが展開したのは、完全で容赦なき狂気の風景で、それががっちり構築されている。歯科工具のように厳密な道具だてで、あらゆる細部を埋め尽くしている。その説明にはどこにも一分の隙もなかった。ファットはそこに何も間違いを見つけられなかったけれど、もちろん唯一の例外がその説明の前提で、それは誰もが自分を嫌っていて、誰もが自分をやっつけようとしていて、自分はあらゆる点で無価値だというものだった。喋るにつれて、彼女は消えていった。ファットは彼女が消えるのを眺めた。オドロキ。グロリアは実に節度ある形で、一言ごとに自分の存在を語り去った。合理性が利用されて――うーんと、非存在に利用されてるのか、とファットは思った。彼女の精神は巨大な優れた消しゴムになっていた。もうホントに残っているのは、彼女のどん殻だけ。つまり、中身の無い死体だけ。

彼女はもう死んでいるんだ、とファットはその日ビーチで気づいたのだった。大麻を吸い終わって、二人は歩きながら海藻や波の高さやらについてあれこれ話した。
(フィリップ・K・ディック「ヴァリス」)

ヴァリス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)ヴァリス〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
著者:フィリップ・K・ディック
早川書房(2014-05-09)
販売元:Amazon.co.jp

聖なる侵入〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)聖なる侵入〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
著者:フィリップ・K. ディック
早川書房(2015-01-23)
販売元:Amazon.co.jp

ティモシー・アーチャーの転生〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)ティモシー・アーチャーの転生〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
著者:フィリップ・K・ディック
早川書房(2015-11-20)
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2016年11月29日 19:01

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

ASKA氏の覚醒剤逮捕のニュース凄い勢いで流れてますね。キャスター達が口を揃えて「なぜASKA氏は薬物に手を出したのか?」と述べていますので、そのこと(人はなぜ薬物に手を出すのか?)を根源的に考えてみたいと思います。薬物乱用がなぜ起きるのかということを根源的に考察した論考としては、「銃・病原菌・鉄」で一世を風靡したジャレド・ダイアモンドが、人類種(ホモ・サピエンス)について考察した本「第三のチンパンジー」において第九章「なぜ煙草を吸い、酒を飲み、危険な薬物に耽るのか」にて考察していますね。この考察自体が、薬物使用に対する重大な歯止めとして働く良い考察だと思うので、以下、抜粋引用致しますね。

危険で有害な化学物質を、なぜこうも多くの人達がわざわざ好き好んで口にしたり、注射したり、あるいは吸い込んだりしているのだろうか。自らを進んで傷つけるこうした行為は、いまも原始的生活をしている部族から、ハイテク都市の住人にいたるまで、現代社会の多くに様々な形で存在している。そして薬物中毒の歴史を辿れば、私達が文字を使って過去を記録するようになった遥か昔まで遡る。一体、薬物中毒はどのようにして人という種特有の性質を為すようになったのだろう。(中略)

(ここで考察するのは)薬物に一度手を出してしまうとなぜ使い続けるのかという問題ではない。使い続けるのは、毒性化学物質の場合、中毒になってしまうからである。いったん使い出せば、薬物は人間の脳に影響を及ぼし、どうしてもやめられなくなってしまう。そもそも人はなぜ毒性化学物質に手を出してしまうのか、その点が謎なのだ。(中略)

(薬物に手を出す動機としての社会的な環境及び個人的な動機は薬物問題に関係するが)これらの動機は私達のパラドクス、つまり有害であることを知りつつもなぜ進んでそれを求めようとするのか(人間はなぜ進んで自己を破壊しようとするのか)という問題の本質を突いたものではない。(中略)

(人間がなぜ薬物に手を出し始めるかの根源的動機は)動物の世界において、一見すれば広く見受けられる自己破壊的特質に関連している。人に見られる危険な行動や自己破壊的な行動もこの動機によって説明することができるだろう。(中略)

(生物の自己破壊行動が何に起因するのかについては)イスラエルの生物学者アモツ・ザハヴィが1975年に発表した論文である。ザハヴィがこの論文で説いているのは、動物の行動について、大きな損失や自滅的な信号が果たす役割に関するこれまでにない理論だった。(中略)

(ライオンの前で誇示行動を行うことで知られるガゼルの)ガゼルが使っている信号は「ストッティング」と呼ばれる行動である。ガゼルはゆっくりと走っては、脚を伸ばしたまま、空中に高く高々と跳び上がることを繰り返すのだ。見た限りでは自滅的行動としか思えない。時間やエネルギーを無駄に費やしてライオンに襲い掛かる機会を与えている。

ザハヴィの理論はこのパラドックス(なぜ生物は自己破壊行動を行うのかのパラドックス)の核心をつくものだ。その信号が長い尾羽やストッティングのような行動のいずれかであれ、動物に危険をもたらすような信号は、それが動物に対して不利を強いるからこそ、偽りではないことを示す格好の指標(誇示行動)となっている。(中略)

ガゼルは数ある信号の中からストッティングを選び、ライオンはライオンでガゼルの信号をよく考え、その上でストッティングがガゼルの脚の速さと正直ぶりを示していると判断を下した――ここまで私は(自己破壊的な)信号をめぐる問題についてそんな調子で説明をしてきた。実際には、これらの「選択」は進化の産物で、遺伝子によって決定されたものなのだ。(自己破壊的な誇示行動信号によって)不要で意味のない追跡を免れたガゼルとライオンは、エネルギーを浪費することなく、一頭でも多くの子孫を残すことに向き合える。

多くの子孫を残せるように遺伝子に組み込まれた特徴や行動、つまりこの場合はストッティングのような(自己破壊的な信号である)行動はおおむね受け継がれていくというのが進化生物学の基礎となる原理なのだ。(中略)

薬物乱用といった更に危険な行動になぜ人が駆り立てられていくのか、その点についてもザハヴィの理論で説明がつくだろう。とりわけ、自分の地位を世間に認めさせようと多くのエネルギーを使い続ける青年期から大人になりかけの時期は、乱用をスタートさせがちな時期である。私が言いたいのは、鳥やガゼルを危険なディスプレイ(誇示行動)に駆り立てたのと同じ無意識の本能を私達人間も共有しているということなのだ。一万年前の昔ならライオンや敵対する部族に挑むことで誇示していたのだろう。現代では、猛スピードで車を運転したり、危険な薬物を使ったりするなど、もっと物騒な別の方法でやはり同じこと(生存を有利にするために偽りなき優秀さを示そうとする本能に基づく自己破壊的な誇示行動)をしている。(中略)

人間が持つ多くの動物的本能と同じく、現代社会においては危険な誇示はむしろ(生存に)不利に作用する。意識の底に埋もれた人間の本能は(自己破壊的行動を行うことは優秀さを示す誇示行動になるという)このメッセージがまがいものであることを見抜くことはできない。しかし、私達は人が持つ学習能力や判断能力を用いることで、この誤ったメッセージを克服し、それとは別の目的を選び取ることができる。

進化の点から見れば、動物の行動と人間の薬物乱用の間には基本的な違いが存在している。ストッティングや長い尾羽など、動物が示す信号にはコストが伴うが、得られる利益はこのコストを遥かに上回る。尾羽の長い雄もコストを払っている。長い尾羽は餌を探したり、捕食者から逃れる時に不利だ。しかし、この長い尾羽のおかげで雌を引きつけることができるので、交配上有利になり、補ってもあまりある利益を雄にもたらしてくれる。結局は、より少なくではなく、より多くの子孫に自分の遺伝子を伝えていくことなのである。一見すると長い尾羽は自己破壊的でしかないが、実際はこの鳥の遺伝子の生存には大いに役立っているのだ。

しかし、私達(ホモ・サピエンス)の薬物乱用はそうではない。利益よりコストが上回っている。麻薬中毒患者もアルコール中毒患者も寿命を縮めるだけではなく、配偶者候補の関心を引きつけるどころかその魅力をどんどん減少していく。子供を世話するために必要な能力さえ失ってしまうのだ。ガゼルのストッティングや鳥の尾羽とは違い、人間の薬物中毒の場合、コストを上回る隠れた利益を伴わないので継続はしていかない。しかし、それでも薬物中毒が続くのは、毒性化学物質に依存しているからなのだ。概して言えば、飲酒や喫煙、薬物の使用は、自己破滅的な行動にほかならないということなのである。

ストッティングの際、ガゼルも計算違いをすることはあるだろう。そうやって、ライオンも時にはご馳走にありついている。しかし、ストッティングに伴う興奮がやみつきになり、それで自殺を図ろうとするガゼルはいない。薬物に対する私達の自滅的な乱用は、動物の本能的な行動である起源を遥かに通り越してしまっているのである。
(ジャレド・ダイアモンド「第三のチンパンジー」)

本書は、人間は様々な不合理な動物的本能(現代社会においては不利に働く無数の本能)に支配されているが、それを知性によって認識すること、そして不合理な本能を抑える知性に基づく意志を持つことで、その本能の軛から脱する可能性を持てると説いている本なのですね。まさにその通りだなと思いますね…。

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来
著者:ジャレド ダイアモンド
草思社(2015-12-12)
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文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
草思社(2012-02-02)
販売元:Amazon.co.jp

文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
草思社(2012-02-02)
販売元:Amazon.co.jp

文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)
著者:ジャレド ダイアモンド
草思社(2013-06-04)
販売元:Amazon.co.jp

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来
著者:ジャレド・ダイアモンド
日本経済新聞出版社(2013-02-26)
販売元:Amazon.co.jp

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来
著者:ジャレド・ダイアモンド
日本経済新聞出版社(2013-02-26)
販売元:Amazon.co.jp

文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)
著者:ジャレド ダイアモンド
草思社(2012-12)
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文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)
著者:ジャレド ダイアモンド
草思社(2012-12)
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CHAGE and ASKAのASKA氏が覚醒剤で再度逮捕ということで巷間大騒ぎですが、ちょうどタイムリーに音楽を主題にした宮内悠介さんのSF「アメリカ最後の実験」読了。環境システム論的に音楽を捉えたメタ音楽SFで面白かった!!

本作は、主人公のピアニストが、音楽は感覚器を通して人間を動かす技法であるという、環境システム論的な音楽の捉え方を徹底的にしているんですね。そうするとそういった人体システムにおける音楽の受容と反応のシステムの解析が進んで、それをテクノロジーで代用できるようになれば、人間に特定の感銘を与える音楽演奏などをコンピュータ等のマシンが補助し、いずれはマシンが全て代行して演奏できる未来、音楽から固有性が失われる未来が来るかもしれない。現代を舞台にした本書ではそこまでは行きませんが(そこまで現代のテクノロジーは進歩していない)、そういった可能性の未来を感じさせる小説で、音楽好きとしてとても興味深い小説でした。

「音楽は突きつめれば人間に対するハッキングだ」

音を媒介として、人の感情や欲求をコントロールする。その営為は、ハッカーがウェブを経由してコンピュータを乗っ取る行為に似ているとする。

すると、どのような演奏が聴衆の気分を和らげるのか。あるいは不安をかきたて、暴力性を高めるのか。どんなリズムやフレーズが、和音や構成が、進行が、音色が、音域が、対位と和声が、刺繍音が、通底低音が、持続音が、倚音が、掛留音が、切分法が――。

「こうした視点に一度立ってしまえば、もう音楽はかつてのように響いてはくれない。虚ろな、空っぽの器が後に残されるだけだ」
(宮内悠介「アメリカ最後の実験」)

これは、私みたいにブログを書いている人とか、音楽でも文章でも絵画(CG)でも何でもいいので何かを表現している人なら凄く良く分かるんじゃないかな…。つまり、オーディエンス(受け取り手側)を意識して何かを製作したり表現したりを始めると、表現とは、受け手側の反応を最初から加味した構造、始めからシステム的に受け手の反応を予想して構築の仕方が決定されている技巧、オーディエンスの欲求を反映するための技法になって、それ自体が作り手から離れた、最初から表現するものが限定され決定された虚ろな空っぽの器になるということですね。

主人公のピアニストは確信犯的に、パンドラというシンセサイザーの力を借りてさらにその方向性を進めて、徹底的にオーディエンスを動かすためだけに計算された音楽を極北まで突き進めようとするのですが、本書はその企みが、だんだんと挫折してゆく物語なんですね。

主人公の企みを挫折させるのは、家族との確執だったり、良き友人にしてライバルや主人公と同じタイプのライバルとの出会いであったり、色々あるんですが、最終的に主人公が心から愛せる恋人と出会ってしまうことで、角が取れて丸くなってしまうというのが…何とも…芸術に全てを捧げようとした意志を終わらせるのが異性との安寧というのが、非常にリアルな感じでしたね…。個人的には、主人公が目指す音楽の先にある極北も見てみたかったんですが、主人公はそこまで人間性を捨ててシステムそのものにはなり切れなかった。そういった点で中途半端な感じのする小説です。

ただ、この『主人公が決して新しい世界の最後までは行けず、古典的な人間性の世界に帰還してしまう』

というのが、宮内悠介作品の全てに共通する、まさに宮内悠介作品のオブゼッションとしての固定の通底低音でして、そこも含めて、ああ…いつもの宮内悠介作品だ…という感じで、新味はないけれど、安定して面白かったですね。ちなみに

『主人公が古典的な人間性の世界を完全に排して、新しい世界へ突き抜けていく』

というのが、今は亡き伊藤計劃さんの全作品であって、その点で宮内悠介さんと伊藤計劃さんというのは、それぞれの作品が凄く対照的、両方とも『テクノロジーによる変革が古典的な人間性の世界を超えて行く』というテーマでありながら、着地する方向がそれぞれ正反対なのが面白いなと感じますね。SFファンの間でも、クラシカルな保守的な層には宮内悠介さんの作品の方が受けがよくて、パンクな革新的な層には伊藤計劃さんの作品の方が受けがよいというのは、まさに作品から帰結されるあり方だなと思いますね。

(故伊藤計劃に捧げるに相応しい)テーマはただ一つ、「『テクノロジーが人間をどう変えていくか』という問いを内包したSFであること」です。これは、生前の伊藤氏がサイバーパンクの定義として捉えていたテーマでもあります。(ハヤカワ文庫JA『楽園追放rewired サイバーパンク傑作選』の虚淵玄氏による編者まえがき参照)
(塩澤快浩「伊藤計劃トリビュートまえがき」)

アメリカ最後の実験アメリカ最後の実験
著者:宮内 悠介
新潮社(2016-01-29)
販売元:Amazon.co.jp

伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)
著者:王城夕紀
早川書房(2015-08-21)
販売元:Amazon.co.jp

楽園追放 rewired  サイバーパンクSF傑作選 (ハヤカワ文庫JA)楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選 (ハヤカワ文庫JA)
早川書房(2014-10-17)
販売元:Amazon.co.jp

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)
著者:伊藤計劃
早川書房(2014-08-08)
販売元:Amazon.co.jp

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昨今、ASKA氏が再び覚醒剤で逮捕されたとかで巷は大騒動ですが、個人的にはそのことよりも、岩波ブックセンターがなくなったのが個人的大ニュースであり大ショックでありますね…。

岩波ブックセンターの運営会社破産 「専門書の専門店」
http://www.asahi.com/articles/ASJCX5RZHJCXUCVL02Q.html
本の街・神保町で岩波書店発行の書籍を中心に取り扱っていた「岩波ブックセンター」(東京都千代田区)を運営する信山社(同)が25日、東京地裁から破産手続き開始の決定を受けた。負債総額は約1億2700万円。現在休業中で、今後破産管財人が債権者集会を開いて整理を進めるという。

学生の頃とか、ここと書泉グランデで面白そうな本探すのが好きだったので、残念としか言いようがないです…。寂しいですね…。岩波書店のお勧め作品を幾つかご紹介致しますね。岩波少年文庫を中心に読みやすくて面白いのをご紹介しようと思います。

岩波少年文庫版「三国志」
三国志〈上〉 (岩波少年文庫)三国志〈上〉 (岩波少年文庫)
著者:羅 貫中
岩波書店(2000-11-17)
販売元:Amazon.co.jp

三国志〈中〉 (岩波少年文庫)三国志〈中〉 (岩波少年文庫)
著者:羅 貫中
岩波書店(2000-11-17)
販売元:Amazon.co.jp

三国志〈下〉 (岩波少年文庫)三国志〈下〉 (岩波少年文庫)
著者:羅 貫中
岩波書店(2000-11-17)
販売元:Amazon.co.jp

岩波少年文庫版三国志は、日本語訳された抄訳三国志の中でも最も優れた血沸き肉踊る大傑作抄訳なんですね。子供の頃からずっと読んでいて、千回は再読していますね。私は姜維が好きなんで終盤が悲しい…。諸行無常を感じますね…。

岩波少年文庫版「西遊記」
西遊記〈上〉 (岩波少年文庫)西遊記〈上〉 (岩波少年文庫)
著者:呉 承恩
岩波書店(2001-11-16)
販売元:Amazon.co.jp

西遊記〈中〉 (岩波少年文庫)西遊記〈中〉 (岩波少年文庫)
著者:呉 承恩
岩波書店(2001-11-17)
販売元:Amazon.co.jp

西遊記〈下〉 (岩波少年文庫)西遊記〈下〉 (岩波少年文庫)
著者:呉 承恩
岩波書店(2001-11-16)
販売元:Amazon.co.jp

上記で紹介した三国志と同じく、岩波少年文庫版西遊記も、大傑作の抄訳西遊記です。こっちも数百回は読んだかな。猪八戒の行動が毎回毎回予想以上にひどすぎるのも楽しい。

岩波少年文庫版「水滸伝」
水滸伝 上 (岩波少年文庫 541)水滸伝 上 (岩波少年文庫 541)
著者:施 耐庵
岩波書店(2001-06-18)
販売元:Amazon.co.jp

水滸伝 中 (岩波少年文庫 542)水滸伝 中 (岩波少年文庫 542)
著者:施 耐庵
岩波書店(2001-06-18)
販売元:Amazon.co.jp

水滸伝 下 新版 (岩波少年文庫 543)水滸伝 下 新版 (岩波少年文庫 543)
著者:施 耐庵
岩波書店(2001-06-18)
販売元:Amazon.co.jp

上記で紹介した三国志、西遊記と同じく、岩波少年文庫版水滸伝も、大傑作の抄訳水滸伝です。こっちも五十回くらいは読んだかな。豪傑達が全員弾けまくってて楽しい。個人的な好みとしては三国志が一番で、次が西遊記、三番目が水滸伝ですが、この好みは人によって変動すると思います。三作品とも必読と断言できる大傑作ですね。金瓶梅も一応一通り読んだんですが…うーん…。三国志、西遊記、水滸伝とは比べられないかな…。後は、ある程度インテリの中国の人は三国志、西遊記、水滸伝を読んでいるので、中国の人と話題を作りたいときにもお勧めですね。話題の通じる共通教養になります。

ナルニア国物語
「ナルニア国ものがたり」全7冊セット 美装ケース入り (岩波少年文庫)「ナルニア国ものがたり」全7冊セット 美装ケース入り (岩波少年文庫)
著者:C.S.ルイス
岩波書店(2000-11)
販売元:Amazon.co.jp

ファンタジーと言えばこれ!これも子供の頃から千回は読んでますね。ファンタジーは数あれど、やはり永遠のナンバーワンですね。

ともしびをかかげて
ともしびをかかげて〈上〉 (岩波少年文庫)ともしびをかかげて〈上〉 (岩波少年文庫)
著者:ローズマリ サトクリフ
岩波書店(2008-04-16)
販売元:Amazon.co.jp

ともしびをかかげて〈下〉 (岩波少年文庫)ともしびをかかげて〈下〉 (岩波少年文庫)
著者:ローズマリ サトクリフ
岩波書店(2008-04-16)
販売元:Amazon.co.jp

サトクリフの歴史物語は全部素晴らしいんですが、どれか一つお勧めするとしたらこれかな。騎士道という道を良い意味で越えている道を描く作品。

山椒魚戦争
山椒魚戦争 (岩波文庫)山椒魚戦争 (岩波文庫)
著者:カレル チャペック
岩波書店(2003-06-13)
販売元:Amazon.co.jp

カレル・チャペックは面白い作品が多いですが、特にお勧め!現代SFとはまた違った味わいのSFで読んでいて楽しいです。

伝奇集
伝奇集 (岩波文庫)伝奇集 (岩波文庫)
著者:J.L. ボルヘス
岩波書店(1993-11-16)
販売元:Amazon.co.jp

ボルヘスの入門にぴったり。読みやすくて最高に異界的かつ幻想的な傑作揃いの短編集です。

エレンディラ
エレンディラ (ちくま文庫)エレンディラ (ちくま文庫)
著者:ガブリエル ガルシア=マルケス
筑摩書房(1988-12-01)
販売元:Amazon.co.jp

マルケスの入門にぴったり。読みやすくて最高にブラックユーモアに溢れたファンタジックな作品揃い。

ざっとあげるとこんな感じかな(最後になぜか筑摩が入ってしまった)。凄く面白くて読みやすい作品は沢山あるので、ラノベとかと同じような感じで気軽に岩波や筑摩の作品も親しまれると嬉しいですね。

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2016年11月26日 14:05

「(人間を模倣して動作する)hIEがおかしいのではない。我々人間の世が、いい加減なのだ」
(長谷敏司「BEATLESS」)

Lostorage incited WIXOSS第8話を視聴したんですが、最高に面白い!!8話で全てのパラダイムが全部ひっくり返るんですね。つまり、人間が戦う為の道具として作られた人間のパートナーである筈のルリグ(二次元キャラクターのカードであり人間が作った魂を持たない道具)、彼女たちが人間に復讐する為のゲームとして、セレクターバトルが存在する。凄いな。カードゲームアニメの常識をひっくり返しましたね。ちょっとブレードランナー的ですが、ブレードランナーと圧倒的に違う点がある。

ブレードランナーのレプリカントは、それ自体が独立した存在、非常に人間的な存在、魂を感じられる存在として描かれていますが、ルリグは全く逆で、完全に空虚な存在、ただの二次元キャラクターの姿の道具であり、人間の記憶をインストールすることで始めて人間の模倣ができるというところ、まさにルリグは人間の道具であり哲学的ゾンビなんですね。

ルリグが非常に空虚な存在、人間の道具として規定された存在で、人間の記憶をインストールすることで人間的に作動する哲学的ゾンビ(魂を持たないが人間のように動く存在)であり、なおかつ人間への復讐を始めるというところは、人間と哲学的ゾンビの恋愛?を描いた長谷敏司さんの大傑作SF「BEATLESS」みたいですね。8話を見ていて「BEATLESS」思い出していました。人間に支配される道具であり、人間を模倣している道具が、マスターである人間の手を離れて人間に復讐するというのも同じですね。

緑の長い髪を揺らして、環境実験都市を地獄に変えた童女が鼻歌を歌っていた。彼女がアラトを見おろす。

「お兄ちゃん、私が言うまでそこでお座りしてて」

彼女は、たぶん必要なことをしているから邪魔をするなという意思表示をしている。

「ふざけるな!早く行動管理サーバを正常に戻せ」

「怒ることはない。それは自分に適切な行動を行動管理クラウドで発見できないため、フィクションからさがしているだけだ。hIEにとって、人間の振る舞いは、フィクション上のキャラクターの振る舞いと同じ価値しかない」

気味が悪かった。リョウにさっき責められた理由が、胸に染み込む気がした。

「同じじゃない」

「どちらも自分の『振る舞い』を構築するための踏み台だ。ちいさな子供がテレビの『お話』の仕草や台詞を真似るのを見たことがないかね」

すぐ外でスノウドロップの支配したhIEが人間のかたちをしたものを襲っているのに、渡来は観察を続けている。

「hIEがおかしいのではない。我々人間の世が、いい加減なのだ」(中略)

「機械知性は、人間の社会の中で、敵意をもたれることが多く孤独だ。だが、君達高度なコンピュータとの自由な形での共存こそ、人間にも必要なのだ。それには、新しい関係を拓く必要があり、オーナーが間に立つことは君にも有益だ」

アラトは胸くそ悪くて仕方なかった。レイシアの姉妹達と戦いたくないことは同じだからこそ、許せない男の方がうまく言葉にすることに苛立っていた。

「わかんないわ」

けれど、スノウドロップが首をかしげる。

「どうして人間と共存しなくてはならないの?」

その甘ったるい声に、アラトは背筋が寒くなった。室内は、スノウドロップの花に覆い尽くされている。ここは『彼女』の領域なのだ。

「ねえ、人間は、環境に過剰に適応するかわりに、道具を進歩させてきたんだよ。私達のことを進化の抜け道にして、自分の身体を変化させる危険をズルして、人間はとっても早く強くしぶとくなった。けど、その危険を押し付けられた『道具』達はどうなったの?」

スノウドロップの瞳は、感情は宿さない。けれど渡来の言う「道具に過ぎない」『彼女』の答えは、峻厳だった。

「私は『進化の委託先』としての道具。私は答えをもう人間なしでも出せるというかたち」

『彼女』の長い緑の髪が、頭頂に近い上半分だけ輝き始める。その光は一秒ごとに強くなっていく。

緑の光を浴びて、渡来の声が震えた。

「量子通信素子?オーナーなしで使えるのか」
(長谷敏司「BEATLESS」)

いやあ…。Lostorage incited WIXOSS、傑作ですね。BEATLESSの作者の長谷敏司さんはこのアニメ見ているのかな?このアニメはぜひこのまま、ダークファンタジーかつダークなハードSF路線で大風呂敷広げまくりながらがんがん突き進んでいただきたい!!最高に面白いです!!

あっちなみに、「BEATLESS」はTo Heartのマルチ(HMX-12マルチ)シナリオとか好きなら必読ですが、こういった『人間に都合の良い人間の道具として作られた哲学的ゾンビとしてのAIと人間の密接な関係』を描いたSFでは、ちょうど

エイミー・トムスン「ヴァーチャル・ガール」――長谷敏司「BEATLESS」――マデリン・アシュビー「vN」

という形で上手く繋がって読めるので、「BEATLESS」を読むときは一緒に「ヴァーチャル・ガール」と「vN」もお勧めです!

BEATLESSBEATLESS
著者:長谷 敏司
角川書店(角川グループパブリッシング)(2012-10-11)
販売元:Amazon.co.jp

BEATLESS‐dystopia(1)<BEATLESS‐dystopia> (角川コミックス・エース)BEATLESS‐dystopia(1)<BEATLESS‐dystopia> (角川コミックス・エース)
著者:鶯 神楽
KADOKAWA / 角川書店(2013-05-25)
販売元:Amazon.co.jp

BEATLESS‐dystopia(2)<BEATLESS‐dystopia> (角川コミックス・エース)BEATLESS‐dystopia(2)<BEATLESS‐dystopia> (角川コミックス・エース)
著者:鶯 神楽
KADOKAWA / 角川書店(2013-05-25)
販売元:Amazon.co.jp

ヴァーチャル・ガール (ハヤカワ文庫SF)ヴァーチャル・ガール (ハヤカワ文庫SF)
著者:エイミー・トムスン
早川書房(1994-10)
販売元:Amazon.co.jp

vN (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)vN (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
著者:マデリン・アシュビー
早川書房(2014-12-19)
販売元:Amazon.co.jp

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
著者:フィリップ・K・ディック
早川書房(1977-03-01)
販売元:Amazon.co.jp

ブレードランナー ファイナル・カット 製作25周年記念エディション [Blu-ray]ブレードランナー ファイナル・カット 製作25周年記念エディション [Blu-ray]
出演:ハリソン・フォード
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント(2010-04-21)
販売元:Amazon.co.jp

Lostorage incited WIXOSS 1(初回仕様版)Blu-rayLostorage incited WIXOSS 1(初回仕様版)Blu-ray
出演:橋本ちなみ
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント(2016-12-21)
販売元:Amazon.co.jp

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表現の自由に制約「当然」 自民、改憲草案撤回せず(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016112590070454.html
衆院憲法審査会は二十四日、憲法で国家権力を縛る「立憲主義」などをテーマに議論した。自民党の中谷元氏(与党筆頭幹事)は、二一条の表現の自由に制約を加えている同党の改憲草案について「極めて当然のこと」と、一定の制約が必要との考えを示した。草案の撤回にも応じなかった。現行憲法の二一条は集会、結社、言論の自由を規定。草案は「公益及び公の秩序を害すること」を目的とした活動は認められないと付け加えた。(中略)「公益及び公の秩序を害すること」という表現が「制限を厳しく限定している」として理解を求めた。ただ、何が「公益及び公の秩序」に当たるかは曖昧との指摘がある。

自民党議員達はアメリカ独立宣言を読んだことがないのか…。自民党憲法下の日本国ではアメリカ独立宣言も禁書にされそうですね…。

米国大使館アメリカンセンターJAPAN公式サイト「アメリカ独立宣言」
https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2547/
われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反するようになったときには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が 最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の権力を組織する権利を有するということ、である。

もちろん、長年にわたり樹立されている政府を軽々しい一時的な理由で改造すべきではないことは思慮分別が示す通りである。従って、あらゆる経験が示すように、人類は、慣れ親しんでいる形態を廃止することによって自らの状況を正すよりも、弊害が耐えられるものである限りは、耐えようとする傾向がある。

しかし、権力の乱用と権利の侵害が、常に同じ目標に向けて長期にわたって続き、人民を絶対的な専制の下に置こうとする意図が明らかであるときには、そのような政府を捨て去り、自らの将来の安全のために新たな保障の組織を作ることが、人民の権利であり義務である。

『われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反するようになったときには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が 最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の権力を組織する権利を有するということ、である。』

『権力の乱用と権利の侵害が、常に同じ目標に向けて長期にわたって続き、人民を絶対的な専制の下に置こうとする意図が明らかであるときには、そのような政府を捨て去り、自らの将来の安全のために新たな保障の組織を作ることが、人民の権利であり義務である。』

こういう建国の思想があるからこそ、アメリカではトランプ大統領のような地産地消を重視する反グローバリズムの革新的な大統領が生まれ、NRAのような団体や、リバタリアン党のような政党も活動できる自由があるんですね。余談ですが、面白いところで言えば、全体主義批判映画であり、全体主義国家に叛逆しようと訴えるアニメ映画「動物農場」(オーウェル原作)にアメリカ政府が制作費を出していたりします。そこには「人権を国家の下に置く全体主義国家はアメリカの敵である」というアメリカ建国理念に基づいた伝統的な国家理念があるんですね。閑話休題。

三鷹の森ジブリ美術館公式サイト「宮崎駿 動物農場を語る」
http://www.ghibli-museum.jp/animal/neppu/miyazaki/
宮崎駿「民主的な社会主義はつくれるのか。つくれるとしたら、グローバリズムとは正反対のところにあるとぼくは思います。それは地産地消(地域生産地域消費の略。その土地で生産されたものをその地域で消費すること)です。スローフード、スローライフのような波は、くりかえしくりかえし、おこりますけど、そのあらわれなんですよ。人間の欲望はコントロールしないといけないんです。人間の欲望を増大していっていいんだという考え方は、地球が有限であるということがわかった瞬間から、変わるはずなんですよ」(中略)

―結末の改変については批判もあるようですが、ジョン・ハラスは、「見る人に未来への希望を与えたかった」と語っていたそうです。

宮崎駿「そうだと思います。同時に、クーデターなり革命をおこして独裁者を追い出して、理想の社会を実現しようとしても、結局、気がつくとまた次の独裁者があらわれる、というのも、人間の歴史を見ればわかることです。それでもやっぱり立ち上がらざるをえないんです。

つまり、反乱する権利はもっている。ぼく自身、六〇年代には労働組合の活動をずいぶんやりました。べつに自分たちのやったことが良いことだとか悪いことだとかいうつもりはないけど、人間はいつでも愚行をおかす危険があるってことをわかりながら、それでもなにもやらないよりは、やったほうがいいと思います。最近になって、若い人たちがまた独立系の労働組合をつくったりしているようですけど、いろんなところで立ち上がって革命をおこしたほうがいいんです」
 
―じつはこの映画化にはCIAが関与していて、資金を提供していたという事実もわかっていますが。

宮崎駿「CIAがかかわっていたかどうかなんて、ぼくにとっては、どうでもいいことです。ハラス&バチュラーは、誰のお金でもいいからつくりたかったんですよ。だと思います。蛇口はなんでもいい。出てきた水を使って、つくれるものならつくる。そういうふうになる可能性は、ぼくも十分にもっていますから」(中略)

宮崎駿「技術的には、いま見ると、つたないけれども、つたないところも含めて、とてもよくわかる。苦闘したんだと思うんです。長編アニメーションをつくるということは、あの時代、どれほどの覚悟が必要だったか。CIAの資金だけで判断しちゃいけない。そしたら軍閥政治の日本に生きて、そこでごはんを食べていた人たちはみんな薄汚れていたのか、というのと同じです。最初にもいったように、ハラス&バチュラーにとって、この映画をつくることは切実な問題だったんだと思います。CIAの金をうまく使って、結果的に、自分たちのつくりたいものをちゃんとつくったということだと思いますね」

自民党の憲法草案をざっと読む限り、自民党憲法草案下の日本の国家体制は、アメリカのような自由主義国とは全く正反対のファシズム全体主義国家体制となりそうで不安ですね…。特に自民党憲法草案における表現の自由の規制は明らかに「現在の国家=公益」>「個々の人権」なので、アメリカ独立宣言のような、国家よりも上に個々の人間の平等・生命・自由・幸福追求の権利をはっきりと置く人権思想は決して認めないでしょう…。

自民党憲法草案は日本が自由主義国であることと国家の根幹としての人権思想を完全に捨てる気ですが、日本は本当にどうなるのか不安です。日本みたいな個々の人々の人権意識や独立意識の極めて薄い国で、国家が憲法の歯止めなしに自由主義や人権を無視して振舞えるようになったら、あっという間に貧困層やマイノリティの弾圧を国家が率先して平然と始めるような人権感覚ゼロのファシズム全体主義国家に変貌すると思います…。

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動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)
著者:ジョージ オーウェル
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アメリカ建国とイロコイ民主制アメリカ建国とイロコイ民主制
著者:Jr.,ドナルド・A. グリンデ
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2016年11月24日 13:39

時を生きる種族 (ファンタスティック時間SF傑作選) (創元SF文庫)

時間SF傑作選「時を生きる種族」読了。どの収録作も面白かったですが、特にT・Lシャーレッド「努力」が現代的で大傑作!偶然の一致と思われますがシリアス版タイムボカン24(過去の真実の歴史は我々の知る歴史と異なっている)みたいなところがあるのも面白かった。それに、この終盤の展開とラスト…。まさに現代的ですね…。

T・L・シャーレッド「努力」
一発屋という言葉があるが、デビュー作が最高傑作という例は珍しくない。本編はその典型的な例だと言える。

初出は「アスタウンディング・サイエンス・フィクション」1947年5月号。と書けばおやっと思う人がいるかもしれない。同誌の編集長ジョン・W・キャンベル・ジュニアはタカ派で有名であり、軍国主義や偽善的な愛国主義を厳しく糾弾した本編は、同誌のカラーにそぐわないように思えるからだ。

実は、短期間キャンベルの助手を務めたL・ジェローム・スタントンが、独断で本編を同誌に掲載したといわれている。それだけの力を持った作品だということだ。実際、アンソロジー・ピースとなって読み継がれているいる上、ウィキリークスによる公文書暴露のような事件がおきる現在では、ますますその評価が高まっている。
(中村融)

本作は、地球上のあらゆる場所の過去を撮影できるビデオカメラ(過去の時空を現在に投射して見ることができるビデオカメラ)を発明した発明家とそのパートナーが、世界を変革しようとして、世界を歴史の真実によって平和にしようと奮闘する物語。ラストが…。このタイムトラベルビデオカメラを使えば、ありとあらゆる歴史の真実を明かすことができる訳ですね。近現代の外交や条約の裏に隠されたダーティーな裏取引なども全て明らかにすることができる。でも、例えば、ほぼリアルタイムで敵国の軍事基地の様子を見たりとか、ダイレクトな戦争の道具として恐るべきことにも使える。なので、発明家達はこのビデオカメラの存在を世界に明かして誰もビデオカメラが独占できないようにして、世界を変えようとするのですが…。

「ミスター・ラビアダの発見に秘められた可能性や応用範囲が少しでも他人に知られたら、安全が保証される筈の特許をとっていてさえ、現在の体制のもとでは、即座に没収されるだろうと我々は確信していましたし、いまも確信しています。ミスター・ラビアダは特許を申請していません。するつもりさえありません。このような発見は一個人、一グループ、一企業、ひいては一国にさえ属するものではなく、世界と、そこに住む人々に属するものだ、と我々は二人とも考えています。

この国にとどまらず、あらゆる国の内外にわたる諸問題が、自分達の目的に叶うよう政治理論と人々の生活を歪めている一部の権力者集団の影響をこうむっており、ときには操作されていることを、我々は知っていますし、なんとしても証明したいと思っています」

法廷は重苦しい沈黙に包まれた。憎悪と不審で空気がぴりぴりし、息が詰まりそうだった。

「例えば、秘密条約や、邪悪で嘘に塗れた政治宣伝が、あまりにも長いあいだ人間の情熱を操り、憎しみを煽ってきました。名誉を欲しいままにする盗人どもが、あまりにも長いあいだ、相応しくない高い地位について、密かに腐ってきたのです。この機械があれば、裏切りや偽りは不可能になります。核戦争が世界の表面と運命を焼き焦がさないようにするならば、不可能にしなければならないのです」
(T・L・シャーレッド「努力」)

人類の愚かさに絶望せざるえない暗い終わり方も含めてというか、この終わり方だからこそ、まさに現代の人類社会の在り方を示しているような傑作ですね。ぜひご一読お勧めです。タイムトラベルSFに限らずSF短編全体の中でも五指に入ると言っていいんじゃないかなと感じましたね…。

時を生きる種族 (ファンタスティック時間SF傑作選) (創元SF文庫)時を生きる種族 (ファンタスティック時間SF傑作選) (創元SF文庫)
著者:R・F・ヤング
東京創元社(2013-07-20)
販売元:Amazon.co.jp

時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)
著者:R・F・ヤング他
東京創元社(2009-10-10)
販売元:Amazon.co.jp

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)
著者:テッド・チャン
早川書房(2010-09-22)
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2016年11月23日 14:01

「21世紀の資本」の著者で日本でも多少ブームの起きたトマ・ピケティが14日の仏ル・モンド紙でグローバリズムとEU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA)のISD条項を痛烈に批判していますね。抜粋して引用しますね。
トマ・ピケティ「グローバル化 変える時」
http://www.asahi.com/articles/DA3S12671539.html

トマ・ピケティ「グローバル化を変えなければならない」(仏ル・モンド紙14日)

まずはっきりさせておこう。ドナルド・トランプ氏が勝った要因は何をおいても経済格差と地域格差が爆発的に拡大したことにある。(中略)市場を自由化、神聖化する動きはレーガン政権で始まり、ブッシュ親子に引き継がれた。クリントン政権、オバマ政権もこの流れに追随した。それどころかクリントン政権の金融と貿易の規制緩和が事態をより悪化させた。さらに金融業界と密接な関係を持つヒラリーに向けられた疑惑により米民主党とマスメディアの邪悪さが露になった。(中略)

欧州、そして世界が、今回の米大統領選から学ぶべき最大の教訓は明らかである。一刻も早くグローバリゼーションの流れを根本的に変えることだ。今そこにあるグローバル化の最大の危機は格差の拡大と地球温暖化である。この二つを迎え撃ち、公正で持続可能なモデルを打ち立てる国際協定を実現しなくてはならない。(中略)

関税その他の通商障壁を(グローバリストが保護主義として批判することで)無くして行く国際合意の流れを止めなくてはならない。法人減税等による財政ダンピングや環境基準を甘くして生産コストを下げる環境ダンピングに対抗するために、法人税率の下限などの強制力のある数値をあらかじめ協定に盛り込んでおくべきだ。(中略)

この観点から、10月に調停されたEUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)は破棄すべきだ。財政面でも環境面でも拘束力を持つ規制がない。その上、「投資家の保護」のためにあらゆる手立てが講じられ、多国籍企業は国家を民間の仲裁機関に訴えられるようになる(ISD条項)。これにより(多国籍企業は)開かれた公の法廷を回避することになる。

中でも、(ISD条項による調停を行う民間機関の)調停員の報酬という重大な問題は(国際投資紛争解決センターが米国と米企業の影響下にある問題)このままでは制御不能になろう。法的手続きにおける米国(米国多国籍企業)の帝国主義がますます強まり、米国のルールと義務を欧州企業に押し付けることになる。

この時期に司法を弱体化させる(国の司法よりもISD条項に伴う民間調停機関が上位に立つ)など、常軌を逸している。優先すべきはその逆で、(多国籍企業が引き起こす問題を管轄する)強力な公的機関を立ち上げ、その決定を守らせる欧州検察庁のような組織を創設することだ。(中略)

EUは共通の財政基盤を持たない自由貿易圏として創設されたため、財政ダンピングへの対処(通商障壁の復活)と法人税率の下限設定は、パラダイムの完全な転換になるだろう。しかしこの転換を避けることはできない。課税合意については僅かに前進しているが、課税の共通基盤の合意ができても、各国がゼロに等しい法人税率であらゆる企業の本社を誘致するなら、合意の意味は無いに等しい。

今こそ、グローバリゼーションを政治が変えるべきなのだ。貿易は必要であろう。しかし、公正で持続的な発展のためには、公共事業や社会基盤、公共教育や公共医療の制度もまた必要であり、そのためには公正な税制が絶対必要なのだ。それを蔑ろにするなら、トランピズム(トランプ主義)が世界を制覇することになるだろう。

ほんとにこの通りとしか言いようがないと思いますよ。多国籍企業が国家主権を侵害するISD条項はとてつもなく危険とトマ・ピケティがはっきり述べているのは、ISD条項は危険ではないとネットメディアの記事等で虚偽をばら撒くグローバリズムマスメディアの虚偽を暴くことになる、とても良い文章ですね。実は、このピケティの文章を読んで調べるまで知らなかったんですが、ISD条項で調停を行う仲裁機関の資金や人員は多国籍企業群の資金で運営しているんですね…。多国籍企業の起こした悪事を実質的に多国籍企業が運営する機関が国家の上位機関として調停するって、それどんなマッチポンプ?って感じですよ…。酷すぎる…。

『10月に調停されたEUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)は破棄すべきだ。財政面でも環境面でも拘束力を持つ規制がない。その上、「投資家の保護」のためにあらゆる手立てが講じられ、多国籍企業は国家を民間の仲裁機関に訴えられるようになる(ISD条項)。これにより(多国籍企業は)開かれた公の法廷を回避することになる。』

世界中の知識人がグローバリズムに反対しているのに、グローバリズムがどんどん進むのを見ると、世界は富裕なグローバリスト達に牛耳られていて、世界全てがどんどん悪くなるだけで何もかも終わりであるという絶望的な気持ちになりますね…。このままグローバリスト達に格差を無限に広げられ世界が破壊されるのを本当に止めて欲しい…。もうグローバリズムは本当に止めて欲しいですね…。

21世紀の資本21世紀の資本
著者:トマ・ピケティ
みすず書房(2014-12-09)
販売元:Amazon.co.jp

まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」 (まんがでわかるシリーズ)まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」 (まんがでわかるシリーズ)
宝島社(2015-06-12)
販売元:Amazon.co.jp

現代思想 2015年1月臨時増刊号◎ピケティ 『21世紀の資本』を読む -格差と貧困の新理論-現代思想 2015年1月臨時増刊号◎ピケティ 『21世紀の資本』を読む -格差と貧困の新理論-
著者:トマ・ピケティ
青土社(2014-12-12)
販売元:Amazon.co.jp

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時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか

TPP発効へ努力継続を=トランプ氏翻意に期待―産業界
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161122-00000152-jij-bus_all
トランプ次期米大統領が米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱を公約通り進める方針を示したことに対し、産業界からは発効に向けた努力を継続するよう日本政府に求める声が相次いだ。

日本の上記のような状況を見ると、日本の長期的な先行きについて悲観的にならざるえないですね…。トランプ大統領がTPPを大統領就任初日に離脱すると宣言した21日のユーチューブ演説、アメリカの各ニュースサイトだと大多数のアメリカ人が「トランプが選挙公約における最も重大な公約を守った」ということで、トランプ大統領支持のコメント出してるんですよね。日本がそこに外圧を掛けてゆくということは、トランプのTPP離脱を支持している草の根のアメリカの人々を完全に敵に回すということで、ネットの影響力が拡大した現代においては、それこそ1980年代のジャパン・バッシングなどとは比較にならないほどにアメリカの人々の反日感情を大きくかき立てることになると思いますね…。

そこまでしてアメリカとの関係を悪化させてまでTPPによるグローバル大企業群の利益の最大化を図っても、グローバル大企業群は日本のことなど1ミクロンほどにも考えてないですし、日本国に税金を納めることすら考えていないですよ(タックスヘイブンによる脱法的節税)。安倍首相がグローバル大企業群の言いなり政治しかしていないことは、結局、日本国と他国の関係を悪化させて日本国全体に大打撃を与えていくだけ。

だいたい、グローバル大企業群の利益のみを考えて作られた協定であり協定各国の国家主権を制限する協定であるTPPが中国包囲網に使えるという発想自体が意味を為さない幻想であって、グローバル大企業群にとっては国家は、日本であろうとアメリカであろうと中国であろうと、どこでも利益を得るための獲物にしか過ぎない訳です。クルーグマンとかスティグリッツとか経済学者達がそれこそみんな口を揃って述べてますが、そのような代物(国家への帰属意識など元から無いグローバル企業)を国家戦略として使うことは元々できないんですね。グローバル大企業群は利益のためだけに動き、ゆえに利益で誘導されるので、国家間同盟などとは違い、身軽で自由に世界中を動くため、裏切りとかそういう概念は通用せず、ただ利益に誘導されて何処へでも行くだけです。つまり、TPPがあろうがなかろうが、グローバル大企業群は中国に利益があるとみれば中国に味方する。グローバル大企業群というのはそういう存在ですよ。

いい加減、グローバル大企業群と民主主義国民国家は基本的に対立する存在であるということを、日本国も認めるべきだと思います。グローバル大企業群と相性が良いのは開発独裁などを行い資本主義経済を敷いている独裁国家やタックスヘイブン国家などであって、民主主義国民国家とグローバル大企業群の相性は最悪なんですね。日本以外の先進的な民主主義国民国家(欧米諸国)はみんなそのことが分かっているのに、日本だけそのことが全然分かっていないし周知もされていないのは、本当に日本の明日を危機に陥らせることと思います。「グローバル大企業群と民主主義国民国家は基本的に対立する存在」ということについて、ドイツの社会学者のヴォルフガング・シュトレークがとても分かりやすく語っているので抜粋して引用致しますね。

(インタビュー)グローバル化への反乱 社会学者、ヴォルフガング・シュトレークさん
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12669687.html
――グローバル化の盟主だった米国で、世界に背を向ける発言を繰り返してきた人物が大統領に就くことになりました。

「私たちが目にしてきた形のグローバル化が、終わりを迎えようとしているのかもしれません。自由貿易協定も、開かれすぎた国境も、過去のものとなるでしょう」

「米大統領選はグローバル化の敗者による反乱でした。国を開くことが、特定のエリートだけでなく全体の利益になるというイデオロギーへの反乱です。そのような敗者たちはさげすまれ、政治からいずれ離れるというエリートたちの楽観は、一気にしぼみました」

――技術の進歩やグローバル化の恩恵にあずかれず、「置き去りにされた」という不満が、米国だけでなく世界で渦巻いています。

「格差の広がりは、自由市場の拡大がもたらした当然の結果です。国際競争で生き残る、という旗印のもと、それぞれの国家は市場に従属するようになりました。政府が労働者や産業を守ることが難しくなったのです」(中略)

「グローバル化に対する(グローバル化を推進するリベラル左翼からの)一つの答えは、『よし、みんなでスウェーデン(自由資本経済を推進する社会民主主義国家)になろう』です。しかし、スウェーデンは腐敗のない政府や労働市場、教育に対し、半世紀以上にわたり投資を続けてきた国です。小国ゆえ、競争力と社会的平等を両立できるポジションを、世界経済の中に見つけることもできました。ごく例外的なケースであり、ほかの国が簡単にマネできるようなものではありません」

「重要なのは、そのスウェーデンですら1990年代以降、格差の拡大が世界的にも最速で進んだということです。資本の移動が自由になったからです。企業が課税に抵抗するようになり、投資を国内にとどめておくため、政府が税率を劇的に引き下げたのです」

――法人税など企業の負担軽減を競い合う「底辺への競争」から、どの国も逃れられないというわけですね。

 「国家までが国際競争にさらされた結果、福祉国家であることがとても高くつくようになりました。グローバル化した資本は、規制や労働組合、高税率といった『社会民主主義の檻』に我慢できなくなった。資本が動きやすくなる一方、働き手は簡単には移動できない。資本がどんどん優位になり、こうした『檻』が打ち破られてきたのです」(中略)

今は中央銀行によるマネーの供給に頼りきりです。いずれも、先駆けたのは米国でした。『時間かせぎ』の間に、危機は深刻さを増しています」

――日本も同じ流れのなかにあるのでしょうか。

「大きな傾向は日米欧とも同じですが、停滞を真っ先に経験したのが日本でした。日本では長期雇用と年功賃金制が社会の安定の源でした。80年代以降、企業が競争力を失っても、政府の支えのもと銀行が融資を続けたのは、長期雇用に手をつけて『内戦』になるのを避けるためです。その結果が不良債権問題であり、長期停滞です。賃金は上がらず、非正規雇用へのシフトが進みました」

「やはり金融緩和に頼ったアベノミクスは、目標をまったく達成できずに失敗しました。他の国も含め『時間かせぎ』はそろそろ限界です。いつかの時点で、借金取りが回収にやってくるのです」

――そもそも長期停滞は避けられないのですか。

「いま成長を阻んでいるのは格差です。お金は、それを使わないお金持ちのポケットにたまっているだけ。人々の不満が高まり政治が不安定化したことで、投資もしづらくなり、人を雇うよりも金融市場で投機的に利益を上げようという考え方が幅をきかせました。現金の山の上に富裕層が座ったまま、雇用が増えなければ、需要など生まれません」

――欧州も米国もナショナリズムの高まりが懸念されています。

「私はさほど問題だとは思いませんね。むしろ国家が機能していないことが問題です。市場経済がもたらす不確実性に生身の人間がさらされるとき、守ってくれるのは政府であり国家です。しかし既成政党は『残念ながら何もできない』と告げるばかり。いやならもっと働け、もっと努力しろ、と」

「私たちがいま直面しているのは、国境のコントロールを失って国が形骸化する、現代国家そのものの危機なのです。英国のEU離脱運動のかけ声は『コントロールを取り戻せ』でした。ここドイツでも、難民問題、資本の流出、パナマ文書が示すような税逃れ、雇用の空洞化と、同様の問題には事欠きません」

――そうした不安が、ポピュリズムの台頭を招いたのですか。

「先進国の投票率は70年代から低下し続けました。政治への満足感とみなす説もありますが、私はむしろ、あきらめの表れだと思います。それが、この数年間で上昇に転じたのです。ポピュリズム政党などが支持を集めたせいです」

「こうした民意の反乱は、エリートが当てにならない場合に出てくる、先々に望みのある反応です。ときに醜い形をとりますが、墓地のような静けさを保ったままでは、なにも変わりません」

――そうは言っても、トランプ氏やポピュリズム政党の政策を見てください。排外的だったり、実現可能性が疑わしかったりして、とても真っ当とは思えません。

「反グローバル化デモに繰り出す人やポピュリズム政党を支持する人たちを、政策がダメなのになどと批判するのはお門違いです。『真っ当な政策』など、政治家や官僚、エコノミスト、国際機関にだってないのだから。ドラギ(欧州中央銀行総裁)やイエレン(米連邦準備制度理事会議長)は、あたかも長期的な戦略があるかのように振る舞っていますが、実際には完璧なプランなどありません」

――この際、さらに「時間かせぎ(更なる世界的金融緩和)」をする手はありませんか。

「金融緩和が行き詰まった後に危機を先送りできる手段は見当たりません。もしドラギが『答えがない』と言えば、翌朝には世界経済は大炎上でしょう。しかし、私は解決策はないと断言させてもらう。(中略)」

――解決策とまではいかずとも、事態を改善するために何かできることはないのでしょうか。

「毎日仕事に出かけ、子育てに追われる普通の人々が、政治から遠ざけられてきました。富だけでなく、政治へのアクセスをめぐる格差の広がりが何をもたらしたのか、政治権力に真剣に考えさせるべきです。彼らは臆病なので、人々が立ち上がれば向き合わざるを得なくなります」

「トランプは問題解決にはほど遠いですが、彼のおかげで、問題を否定し続けることはできなくなりました。人々が利害を軸に集団をつくり、そのために進んで戦うという、生々しい意味での政治制度の復権。そこに私はまだ、希望を持っています」

これ、非常に重要なことを指摘していて、日本を含めて全世界のグローバリズム支持リベラル左翼が持ち上げる社会福祉国家のスウェーデンすら、グローバリズム経済によって、貧富の格差の拡大と社会構造の不安定化(日本で起きてることと同じです)が起きて社会が全体を通して貧困化して国民の生活が厳しくなり国家が混乱してるんですよね。近年の北欧ミステリとか、グローバリズムによる貧困が陰惨な事件を引き起こすみたいなテーマが大きくなってきている。それなのにテレビのコメンテーター連中などは「グローバリズムは素晴らしい!」と、全く世界の現実に即していないたわ言をほざくばかり。日本みたいな社会福祉が全然整っていない国でグローバリズムを進めれば、北欧諸国以上の大惨事になることは当然でありそれは既に起こっているのに、そこから完全に目を背けてグローバル大企業群の言いなりになっているマスメディアには本当に怒りを感じますね…。

――法人税など企業の負担軽減を競い合う「底辺への競争」から、どの国も逃れられないというわけですね。

「国家までが国際競争にさらされた結果、福祉国家であることがとても高くつくようになりました。グローバル化した資本は、規制や労働組合、高税率といった『社会民主主義の檻』に我慢できなくなった。資本が動きやすくなる一方、働き手は簡単には移動できない。資本がどんどん優位になり、こうした『檻』が打ち破られてきたのです」

「いま成長を阻んでいるのは格差です。お金は、それを使わないお金持ちのポケットにたまっているだけ。人々の不満が高まり政治が不安定化したことで、投資もしづらくなり、人を雇うよりも金融市場で投機的に利益を上げようという考え方が幅をきかせました。現金の山の上に富裕層が座ったまま、雇用が増えなければ、需要など生まれません」

「反グローバル化デモに繰り出す人やポピュリズム政党を支持する人たちを、政策がダメなのになどと批判するのはお門違いです。『真っ当な政策』など、政治家や官僚、エコノミスト、国際機関にだってないのだから。ドラギ(欧州中央銀行総裁)やイエレン(米連邦準備制度理事会議長)は、あたかも長期的な戦略があるかのように振る舞っていますが、実際には完璧なプランなどありません」

「トランプは問題解決にはほど遠いですが、彼のおかげで、問題を否定し続けることはできなくなりました。人々が利害を軸に集団をつくり、そのために進んで戦うという、生々しい意味での政治制度の復権。そこに私はまだ、希望を持っています」

欧米諸国の場合は、おそらくシュトレークが希望を抱き、ダニ・ロドリックが「グローバリゼーション・パラドクス」で予想した通り(http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1916039.html)、ボトムアップな民主主義(草の根の国民の声)がポピュリズム政党を通してグローバリズムにストップを掛けて、保護主義によって労働者を保護しながら社会福祉などが拡充されることになり、国民がそれなりの生活を再びできるようになって、国家がこれまで通りの国民国家として存続し続けると思います。ただ、日本国については、悲観的にならざるを得ませんね…。

なぜかといいますと、日本の主要政党はほぼ全てグローバリズム推進派で政治の選択肢がない(反グローバリズムのポピュリズム政党が日本には存在しない)という、非常に詰んだ政治状況があるんですね。そのため日本の場合は、今後十数年はグローバル大企業群の横暴な収奪がもっともっと酷くなって、国内が格差の拡大と貧困化により混乱して、最終的には国家が滅びるような絶望的な予感がしますね…。

日本は地政学的にも厳しい立ち位置にある上に、社会福祉は脆弱で食料自給率も低く人口も減少しており、そしてなにより、与党自民党も野党民進党もグローバリストの集まりで、国家を滅ぼしてでもグローバリズムを進めようとしているグローバル大企業群の一員の連中しかいないという詰んだ状況なんですね。日本には国民の声を反映するポピュリズム政党が存在しない(政権を担う可能性を持つ主要な政党は全て財界の意向を受けたグローバリズム政党)、それにより民主主義が機能しないんですね…。

昔から指摘されている通り、日本の政治は官僚・政治家・財界人によるトップダウンだけの政治で、ボトムアップ(草の根民主主義)は完全にゼロなんですね。グローバリズムというのは、トップとボトムを格差の広がりで分離するので、ボトムアップの民主主義が機能しない国家(大多数の国民の意志が反映されない国家)の場合、それこそ第三世界もかくやのような極端な格差の開いた極端な非民主的階層社会になってしまうんですね…。そのような非民主主義的な国家でグローバリズムが更に進むと、格差の拡大による民衆の反乱とその抑圧が同時に進行して国内情勢が混乱するので、厳しい地政学的条件の中で生き残る可能性はかなり低いと言わざるをえないでしょう…。

時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか
著者:ヴォルフガング・シュトレーク
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