2016年10月
2016年10月28日 13:57
アニメ「バーナード嬢曰く。」第四話が、ジャレド・ダイアモンドの著書「銃・病原菌・鉄」がテーマで、ネットで要約と感想を読んで読んだ振りをしたり読んだ気になったりするというギャグで、中々面白かったですが、ギャグ漫画原作のギャグアニメですから、ネットで要約と感想を読めば十分じゃないか、なぜオリジナル原典たる本を読まなくてはならないのか、という問題についてはやらないんですね。この問題(なぜネットの要約を読むよりオリジナルの書籍を読む方が良いのか)に関しては、円環少女シリーズの著者長谷敏司さんの回答がとても良いので引用してご紹介致しますね。若者に向けて、なぜ本を読むべきなのかを神坂一、新城カズマ、三雲岳斗などの若者向けラノベなどで活躍する多くの作家が回答している「未来力養成教室」という本に収録された回答で、「日本の若者は本を読まないとこの先生き残れない」と語る長谷敏司さんのこの回答が最も説得力があると感じましたね。
長谷敏司さんの回答の面白いのは、世界全体が不安定になって未来の予測不可能性が増してゆきインターネットなどでの情報化が進むポストモダン社会だからこそ、未来に対応する想像力を鍛えるためには、ネット情報だけに頼るのではなく、書籍を読むべきというところが、とても面白い。他の作家さん達が大体において楽観的で希望的な立ち位置から本を読むことを勧めているのに比べ、長谷敏司さんだけは非常に悲観的な見方から、今後の激動の時代を生き抜く為のサバイバルツールとしての読書を勧めているというのが、流石は円環少女の作者さんと思いましたね。ちなみに長谷さんと同じようなことを述べている知識人(激動の時代だからこそ、ネットではなく書籍がサバイバルツールとして重要と述べる知識人)では浅羽通明さんも長谷さんと同じようなことを述べていますね。ラノベを軽く見ているような人々にも本書は読んで欲しいな。ラノベ作家さん達が如何に社会の未来と日本の若者の明日について真剣に真面目に考えているかがとてもよく分かる良書です。
あと、最後に個人的な意見として述べさせてもらうと、やっぱり書籍、特に紙の本という形態は電子情報の形態に比べて読みやすいと感じますね。長編小説とか、青空文庫で無料で読める書籍でも、がっしりと精読したいなと思うものはやはり紙の本で読みますからね。ある箇所を読み返したいと思ったらどのページにも一瞬でアナログなフィーリングでアクセスできる(指で開くだけでアクセスできる)というのが、紙の本の素晴らしさで、この利点がある限り、紙の本が完全に廃れてしまうということはないと私は感じますね。
未来力養成教室 (岩波ジュニア新書)
岩波書店(2013-07-20)
販売元:Amazon.co.jp
バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)
著者:施川 ユウキ
一迅社(2013-04-19)
販売元:Amazon.co.jp
バーナード嬢曰く。 2 (IDコミックス REXコミックス)
著者:施川ユウキ
一迅社(2015-07-27)
販売元:Amazon.co.jp
バーナード嬢曰く。 3 (IDコミックス REXコミックス)
著者:施川ユウキ
一迅社(2016-10-27)
販売元:Amazon.co.jp
【合本版】円環少女 全13巻<円環少女> (角川スニーカー文庫)
著者:長谷 敏司
KADOKAWA / 角川書店(2015-01-01)
販売元:Amazon.co.jp
My Humanity (ハヤカワ文庫JA)
著者:長谷 敏司
早川書房(2014-02-21)
販売元:Amazon.co.jp
あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)
著者:長谷 敏司
早川書房(2011-06-10)
販売元:Amazon.co.jp
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
草思社(2012-02-02)
販売元:Amazon.co.jp
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
草思社(2012-02-02)
販売元:Amazon.co.jp
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長谷敏司「皆さんに受け渡す未来のバトンについて」
(日本の)現代が、(社会構造が安定していた過去の時代とは違い)想像力を問われる時代になっていると心配しています。2011年以降の震災以降、さまざまな見通しがなくなり、今後も(日本に)大規模な自然災害が控えているからでもあります。1989年まで続いた冷戦という危機の時代から20年以上がたち、再び安全を意識しなくてはならない時期が訪れているということでもあります。厳しい環境の中で、昔ほど豊かではないこの国であなたがたが大人になり、どう人生をまっとうするかを心配しているのです。(中略)
これからの未来は本当に厳しくなる可能性があり、現代の私達はそういう時代になることを止められなかった世代です。当然、現行世代も必死で生き残りを図っています。けれど、そこまでやって薄暗さを払拭できなかった世代から方法を学んでも、それだけでは生き残れないかもしれません。(中略)(近現代の社会変化の激動によって)すでに私達のまわりに想像の余地を挟まないほど強固なものはほとんどなく、今も少なくなりつつあります。
これからを生きる皆さんは、激動の中、かつては強固な立脚点だった肉体すら自分のよりどころにできないかもしれないのです。進歩や変化によって、最低限信じられるはずだったものが、想像の余地を差し挟むものに変わりました。この流れは最近に始まったことではありません。私達は近代市民社会を実現させ、大量生産の手段や科学技術や社会科学を発展させる中、旧来の価値観や倫理を揺るがす様々な出来事を経験しました。(中略)
私達は、心や理解力の隙間に、想像で境界線を引いて、情報を誤読してしまいます。この性質は、予断と呼ばれる判断ミスの発生源です。予断はたくさんの人間に未来を空費させてきた、人類の業病のようなもので、これから完全に逃げるすべはありません。(中略)
私達は(あまりに速く現代社会が変化し激動するため)見通しを失い、安全を脅かされ、貧しくなりつつあり、基準を失いつつあります。今世紀、世界がどれだけ大きな変化を迎えるか、おそらく正確に見えている人間は誰もいません。大人は自分達の限界とせめぎ合いながら、その中で苦闘しているのであって、未来が分からなくても流されるままでは悪化するから劇薬を処方しているのです。
こんな見通しは不明瞭で業病の克服もできず、複雑な利害関係で縛られたものが、皆さんに受け継いでもらおうとしている未来です。嫌な事ばかり言う大人もいたものだと、この本の他の筆者さんと比べて、怒っておられるかもしれませんね。けれど、先にも言ったように、こんなにも大人達は(個々人が)本質的に違っています。にもかかわらず、この本に参加した人々が同じ「(若者の)未来に期待する」という選択に至るほど、未来が刻々と失われるという条件は切羽詰っているのです。(中略)
1980年代、私が小学生だった頃には、未来という言葉には明るい空気がつきまとっていました。当時は、夢や進歩といった言葉とワンセットであることが多かったのです。けれど、(日本経済のバブル崩壊が起き)1990年代中盤に入ると、様々なものが冷え込んでいきました。政治も、経済も、社会も、国際関係も、どの国が豊かでどの国が貧しいかも、軍隊と戦争のありようも、激しく揺れました。21世紀の今は、あまりにも暗い予断がまとわりついていて、想像力と未来について整理する必要にかられる状態になっています。想像力という劇薬を取り扱うにあたって、コンディション変化にともなう計画見直しを迫られているのです。
想像力という友人と向きあうとき、必要なのは、信じることではなく上手く付き合うことです。その手段を身につけるには、積極的に学ぶことです。学ぶことで、予断や幽霊のような想像力の副作用から、どれを受け取るか選り分ける能力を養うことができます。想像力を発揮せねば仕方ないとき、自分のなかにあるものが正しい判断か予断かを切り分けることが、力に振り回されることを防いでくれます。
そして、そのためには本を読んでください。
ネット情報でよいではないかと思うかもしれませんが、本には少なくとも二つ、ネット情報では超えにくい長所があります。
一つ目は、検索を利用してネット情報は日々更新されてゆきますが、この性質は良い面ばかりではないということです。手軽さゆえに内容が書き換わったり、情報共有の精度が下がったりするためです。この点、書籍は簡単には更新がききません。たとえば大勢の人間がミームについて検索で探したとき、検索リスト自体が日々変化しているため、ネット上の情報ではどれが読まれたのか保障されません。けれど、ミームについて『利己的な遺伝子』という本を探したとき、何万人が探しても読まれた内容はリチャード・ドーキンスの著書でしかあり得ません。情報共有の精度が高いことは、良質のブックガイドを見つけられることにも繋がっています。比べて、Wikipediaのような大勢で編集するウェブ辞典は、情報の質が良いか以前に、ネット上で高精度で共有できる情報源がこれしかないから引用されている場合が多いのです。
二つ目に、本ではデータが大きな塊になっています。手軽な小切りの情報のほうが便利に感じられるかもしれませんが、必要な情報が抜け落ちていると、私達はそこを勝手な想像で埋めてしまいがちです。知りたい事柄に予断を入れないためには、さわりだけを知るよりまとまった量の知識を仕入れてしまった方が良いのです。(中略)
長々と書いてきましたが、簡単に言うと、どの程度良好なコンディションの未来を受け渡せるかわからない状態だから、みんなで新しい手立てを見つけよう。そして、想像力は、人間に牙を向きやすいものだから、本を読んで勉強することで飼い慣らそうということです。想像力は、あまりにも人間の生活や文化と密接に繋がりすぎて、まるで人間の本質か何かであるように振る舞っています。けれどこれは未来との厳しい関係を思えば、明らかに劇薬としてしっかり考えて付き合うべきものです。
(「未来力養成教室」より)
長谷敏司さんの回答の面白いのは、世界全体が不安定になって未来の予測不可能性が増してゆきインターネットなどでの情報化が進むポストモダン社会だからこそ、未来に対応する想像力を鍛えるためには、ネット情報だけに頼るのではなく、書籍を読むべきというところが、とても面白い。他の作家さん達が大体において楽観的で希望的な立ち位置から本を読むことを勧めているのに比べ、長谷敏司さんだけは非常に悲観的な見方から、今後の激動の時代を生き抜く為のサバイバルツールとしての読書を勧めているというのが、流石は円環少女の作者さんと思いましたね。ちなみに長谷さんと同じようなことを述べている知識人(激動の時代だからこそ、ネットではなく書籍がサバイバルツールとして重要と述べる知識人)では浅羽通明さんも長谷さんと同じようなことを述べていますね。ラノベを軽く見ているような人々にも本書は読んで欲しいな。ラノベ作家さん達が如何に社会の未来と日本の若者の明日について真剣に真面目に考えているかがとてもよく分かる良書です。
あと、最後に個人的な意見として述べさせてもらうと、やっぱり書籍、特に紙の本という形態は電子情報の形態に比べて読みやすいと感じますね。長編小説とか、青空文庫で無料で読める書籍でも、がっしりと精読したいなと思うものはやはり紙の本で読みますからね。ある箇所を読み返したいと思ったらどのページにも一瞬でアナログなフィーリングでアクセスできる(指で開くだけでアクセスできる)というのが、紙の本の素晴らしさで、この利点がある限り、紙の本が完全に廃れてしまうということはないと私は感じますね。
未来力養成教室 (岩波ジュニア新書)
岩波書店(2013-07-20)
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バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)
著者:施川 ユウキ
一迅社(2013-04-19)
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バーナード嬢曰く。 2 (IDコミックス REXコミックス)
著者:施川ユウキ
一迅社(2015-07-27)
販売元:Amazon.co.jp
バーナード嬢曰く。 3 (IDコミックス REXコミックス)
著者:施川ユウキ
一迅社(2016-10-27)
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【合本版】円環少女 全13巻<円環少女> (角川スニーカー文庫)
著者:長谷 敏司
KADOKAWA / 角川書店(2015-01-01)
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My Humanity (ハヤカワ文庫JA)
著者:長谷 敏司
早川書房(2014-02-21)
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あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)
著者:長谷 敏司
早川書房(2011-06-10)
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文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
草思社(2012-02-02)
販売元:Amazon.co.jp
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
草思社(2012-02-02)
販売元:Amazon.co.jp
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2016年10月26日 22:45
名将言行録 現代語訳 (講談社学術文庫)
幕末の館林藩士岡谷繁実が戦国時代の武将達の無数の逸話を集めて編纂した歴史書「名将言行録」読了。それぞれの武将ごとに無数のエピソードが、半ページから一ページ程度の短い記録として多数纏められており、非常に面白い。ちょっと時間あるときに、パラパラっと読むととても楽しい読書になります。一通り全部読んだのですが、それぞれの逸話が短いこともあり、何度でも再読に耐えるコストパフォーマンス抜群の見事な戦国逸話集です。
本書は様々な戦国武将の逸話が武将ごとに纏められているのですが、織田信長だけ明らかに異質なのが非常に面白い。本書は徳川封建時代に編纂されたものであり、基本的に封建的美徳(忠義・武勲・名誉)を美徳として描いているのですが、織田信長だけ、明らかに封建的美徳とは全く異なる人物、封建主義者とはほど遠い、どちらかといえば近代合理主義者に明らかに近い人物として描かれているのが、現代の視点から見ると非常に興味深く読めました。
この書は織田家が力を失った徳川封建時代に編纂されたものですから、本書においては織田信長は封建的美徳の名将として扱うのではなく、封建制度をかき乱す異端児として扱われており、それら信長の逸話が滅法面白くて最高でした。現代から見ると、明らかに封建制度や武家の名誉を逸脱している信長の逸話が武将達の中で一番個性的で魅力的なんですね。幾つか本書から抜粋してご紹介致しますね。以下、引用は全て岡谷繁実「名将言行録」より。
まさに信長の信長たる所以なエピソード。これ、本書に収録されている他の武将達だと考えられない対応なんですね。他の戦国武将なら、戒めるにしても、「笑って戒める」か「怒って戒める」筈です。なぜなら武勲は彼ら戦国武将にとってある種の絶対的なものだからです。冷笑して戒めるなんて俯瞰的な視点を取れる才覚がまさに信長たる所以ですね。
これもまた信長の信長たる所以で、他の武将達も多かれ少なかれ実力主義をとりいれていますが、それはあくまで、既成の勢力や武勲偏重に阿った妥協した実力主義なんですね。信長の実力主義はそのようなものとは違い、身分がどん底だろうか貧しかろうがなんだろうが、とにかく実力のある者は生まれに関係なくどんどん取り立ててガンガン重宝する。そして、個人の武勲よりも、大局的戦略観と実際の戦闘における戦術の優秀さを評価する。当然、既成の武家勢力からは不満と謗りと妬みが爆発するんですが、全く意に介さないばかりか、そういう場合は既成の勢力の方を、古くからの家の忠義とかそういうの関係なしにガンガン潰していくという、これまた封建的な時代の武将とは思えない果断で公平な実力主義を取るんですね。巷には「信長は残酷無比」みたいなイメージがありますが、本書の信長の逸話の多くは、
「優秀だけど身分が低いなどで理不尽に抑圧されている若手武将に身分とは関係なく正当な評価を与えて活躍の場を与える」
「揉め事や訴えに対して情や血縁や地縁に一切流されず公平な審判を下す、血縁や地縁などを頼りに不正をするものはきつく処罰する」
「前例や既成勢力に捉われずに、経済などを根本的に改革する治世、古い既成勢力を利するだけの規制は取っ払う」
「飢饉などで困っている民に対して救済の善政を敷く、領民を害す犯罪者は徹底的に容赦しない」
といったようなものが多くて、個人的に好感が持てましたね。信長の逸話は近代的公平性に基づく逸話が多くて現代から見ても読んでて爽快なんですね。ちなみに「僧無辺を誅す」などの逸話を読むと分かるように、宗教に対しては冷酷で容赦ないです…。信長の近代合理的な思考からは宗教とかまやかしに思えて許せなかったんだろうなあ…。
最後に異色だらけの信長の逸話の中でもある意味、飛びぬけて異色の面白い逸話をご紹介。
なんというツンデレ!!
「家康とお城のみんなの為に馬を下りたんじゃないんだからねっ!」(CV釘宮理恵)
名将言行録 現代語訳 (講談社学術文庫)
著者:岡谷 繁実
講談社(2013-06-11)
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幕末の館林藩士岡谷繁実が戦国時代の武将達の無数の逸話を集めて編纂した歴史書「名将言行録」読了。それぞれの武将ごとに無数のエピソードが、半ページから一ページ程度の短い記録として多数纏められており、非常に面白い。ちょっと時間あるときに、パラパラっと読むととても楽しい読書になります。一通り全部読んだのですが、それぞれの逸話が短いこともあり、何度でも再読に耐えるコストパフォーマンス抜群の見事な戦国逸話集です。
本書は様々な戦国武将の逸話が武将ごとに纏められているのですが、織田信長だけ明らかに異質なのが非常に面白い。本書は徳川封建時代に編纂されたものであり、基本的に封建的美徳(忠義・武勲・名誉)を美徳として描いているのですが、織田信長だけ、明らかに封建的美徳とは全く異なる人物、封建主義者とはほど遠い、どちらかといえば近代合理主義者に明らかに近い人物として描かれているのが、現代の視点から見ると非常に興味深く読めました。
この書は織田家が力を失った徳川封建時代に編纂されたものですから、本書においては織田信長は封建的美徳の名将として扱うのではなく、封建制度をかき乱す異端児として扱われており、それら信長の逸話が滅法面白くて最高でした。現代から見ると、明らかに封建制度や武家の名誉を逸脱している信長の逸話が武将達の中で一番個性的で魅力的なんですね。幾つか本書から抜粋してご紹介致しますね。以下、引用は全て岡谷繁実「名将言行録」より。
蒲生氏郷を戒む
天正二年七月、信長が長島の一揆を伐ったとき、蒲生氏郷は大剛の者と組み打ちして首を取り、実検にもってきた。信長は冷笑(あざわら)って褒めなかった。ややしばらくしていうには、「およそ勝負というものは、時の運によるものであるから、前もって計れないことである。功名は武士の本意であるといいながら、それも内容次第のことだ。いまの汝の功名は、軽率な挙動である。ひとかどの武を志すほどの者なら、けっしてこのような功名を望んではならぬ。身の危険を顧みないのは、それほどの功とはいえないのだ。今後は、そのことを忘れるな」と戒めた。
まさに信長の信長たる所以なエピソード。これ、本書に収録されている他の武将達だと考えられない対応なんですね。他の戦国武将なら、戒めるにしても、「笑って戒める」か「怒って戒める」筈です。なぜなら武勲は彼ら戦国武将にとってある種の絶対的なものだからです。冷笑して戒めるなんて俯瞰的な視点を取れる才覚がまさに信長たる所以ですね。
功名者を賞す
天正十年三月信忠が信州高遠城を攻め落としたとき、山口小弁・佐々清蔵がともに十六歳で功名をあらわした。信長は小弁を呼んで「このたびの高遠での働きは類まれなことである。城介(信忠)が目をつけた通り、期待に沿ってくれたことは、ひとしお満足だ」と褒めた。そして自ら国久の腰物を手渡し、感状を添えてやった。次に清蔵を呼び「高遠の働きは、たいへんな骨折りだったとのこと。ただしお前は手柄を立てるはずだ。大剛の内蔵助の甥だから」といって、長光の腰物に感状を添えて賜った。小弁は伏見の賎人の子であるから、手柄をたて高名をあげるというのはまことに稀代のことである。
人を用いる道
すでに義昭は二条城に移った。そして信長にいった。「最近、戦争はまだやまぬ。よって身の危険もあるゆえ、勇猛なる武将を一人、我が護衛の任に当たらせよ」と。そのとき佐久間信義、柴田勝家、丹羽長秀は老練な武将であるから、信長に厚く用いられていた。だから人々はみな「二条城の護衛はこの三人の将の中から選ばれるに違いない」と思っていた。しかし、信長は木下秀吉(後の豊臣秀吉)に命じたので、一同はみな驚き入った。群臣は秀吉が信長の寵遇を受けていることを妬んで、しばしば讒言したが、信長は彼をますます厚く遇した。そして常にいった。「人を用いる道は、その者の才能のあるなしによって選ぶべきだ。奉公年数の多い少ないを論ずべきではない」と。信長が人の能力をよく知って、適材適所に用いることこのようなものであった。
今川義元を討つ
この役(桶狭間の戦い)で林通勝、柴田勝家、池田信輝らの諸将は、今川勢は大軍、我が方は小勢、衆寡敵せずといって諌めた。ところがただ一人梁田出羽守政綱だけが信長の計画に賛成し「敵は丸根、鷲津の両城を抜いて、まだその陣を変えずにいる。おそらく本隊が必ず後にいるでしょう。兵を潜行させて、これを襲えば必ず義元はお討ちになれましょう」といった。これによって勝利を得たのである。それでその場で(政綱は)すぐさま沓掛村三千貫の地を賜った。一方、毛利秀高は義元の首を取ったが、その褒美は政綱より軽かった。
冑の向き
ある戦のとき、一瀬久三郎が信長の冑を直しているところに、老臣林通勝がきて一瀬に向かい「御冑が北向きになっている。直せ」ときつくいった。間違ったと思い驚いて直そうとしていると、信長が「このたびの敵は一揆であるから、どちらから来るかわからぬ。そのままにしておけ」といわれた。一瀬は恥をかかずにすんだ。このようにしているうちに北の森の影から敵がみえたというので、味方は進んで戦い、ついに大勝利を得た。一瀬は一番にかけあって功名したのである。その晩信長は一瀬を召して「今朝のことはどうだ」というと「御意によって面目を雪ぎました」といった。信長は快く感状と褒美を与えた。また通勝への相当の挨拶をした。
これもまた信長の信長たる所以で、他の武将達も多かれ少なかれ実力主義をとりいれていますが、それはあくまで、既成の勢力や武勲偏重に阿った妥協した実力主義なんですね。信長の実力主義はそのようなものとは違い、身分がどん底だろうか貧しかろうがなんだろうが、とにかく実力のある者は生まれに関係なくどんどん取り立ててガンガン重宝する。そして、個人の武勲よりも、大局的戦略観と実際の戦闘における戦術の優秀さを評価する。当然、既成の武家勢力からは不満と謗りと妬みが爆発するんですが、全く意に介さないばかりか、そういう場合は既成の勢力の方を、古くからの家の忠義とかそういうの関係なしにガンガン潰していくという、これまた封建的な時代の武将とは思えない果断で公平な実力主義を取るんですね。巷には「信長は残酷無比」みたいなイメージがありますが、本書の信長の逸話の多くは、
「優秀だけど身分が低いなどで理不尽に抑圧されている若手武将に身分とは関係なく正当な評価を与えて活躍の場を与える」
「揉め事や訴えに対して情や血縁や地縁に一切流されず公平な審判を下す、血縁や地縁などを頼りに不正をするものはきつく処罰する」
「前例や既成勢力に捉われずに、経済などを根本的に改革する治世、古い既成勢力を利するだけの規制は取っ払う」
「飢饉などで困っている民に対して救済の善政を敷く、領民を害す犯罪者は徹底的に容赦しない」
といったようなものが多くて、個人的に好感が持てましたね。信長の逸話は近代的公平性に基づく逸話が多くて現代から見ても読んでて爽快なんですね。ちなみに「僧無辺を誅す」などの逸話を読むと分かるように、宗教に対しては冷酷で容赦ないです…。信長の近代合理的な思考からは宗教とかまやかしに思えて許せなかったんだろうなあ…。
最後に異色だらけの信長の逸話の中でもある意味、飛びぬけて異色の面白い逸話をご紹介。
下馬
信長は関東に下るとき、家康の城のある岡崎で下馬した。留守居の者たちは「これは、これは」といって痛み入った。信長は「いやいや、おのおの方への礼をつくすために立ち寄ったのではない。このような名城の前では下馬するものだ」といったという。
なんというツンデレ!!
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名将言行録 現代語訳 (講談社学術文庫)
著者:岡谷 繁実
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│書籍
2016年10月25日 12:19
百田尚樹さん、平野啓一郎さんらSNSに投稿 「土人」発言
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161022-00067659-okinawat-oki
この問題は、日本人の全てではなくても多くの人々が、特定の国民を差別する用語に対して鈍感だという側面が一因としてあると感じますね…。日本人を差別する蔑称である「ジャップ(Jap)」という言葉に対する日本人の反応にそれを昔から強く感じます。「ジャップ」って言葉に怒ったりイラっとしたりしてる日本人ってあまり見ないように見受けられるんですね。私なんかは「ジャップ」という言葉が使われていると日本人としてかなり腹立たしく感じるのですが、普通にインターネットで日本人に対する差別語として使われまくってますよね…。それに対して、怒る日本人があまり見受けられなくて、この言葉の本来の意味を知らないのか知っていてスルーしているのか分かりませんが、日本人が自身が差別されても怒らないというのは非常に悲しいことですし、後述しますが日本にとって危険な事態だと思います…。そしてこういう鈍感さが、他者に対して「土人」と言ったりする鈍感さに繋がっているように感じます…。
この日本人に対する差別語の「ジャップ(Jap)」という言葉は、アメリカが第二次世界大戦中の国家的反日プロパガンダとして、「『ジャップ』たる日本人(日本人・アメリカ在住日系人)は「第五列」(いわゆる銃後の敵をより差別的にした蔑称)であり、世界から抹殺すべき敵である」という意味合いを付けた強烈な差別用語にしたんですね。第二次世界大戦中の日本で使われた「鬼畜米英」を、逆に日本の側に向けてたような、そしてそれを更に人種(日系人)差別用語にして危険で凶悪な言葉なんです。第二次世界大戦中のアメリカではこの言葉を使って、日系人に対する差別、弾圧、果ては殺人までもが正当化されました。
ネットで使われまくっている「ジャップ」は第二次世界大戦によって意味づけされた「日本人に対する差別を正当化し、日本人という存在自体を否定する」言葉であって、日本人の多くが考えているより遥かに危険で凶悪な差別語です。少なくとも日本人は「ジャップ」という言葉を平然と使う外国人がいたら、それに警戒しなければならないのに、そういった警戒意識があまりに低いように思います。このこと(第二次世界大戦中の「ジャップ」という言葉の使われ方とアメリカでの日本人・日系人差別問題)をテーマにしたジェイムズ・エルロイの名著「背信の都」は、日本人ならぜひ読んで欲しいですね…。日本人・日系人に対する差別は、人種的な差別意図を含む、極めて危険な差別であることが分かります。日本人・日系人は特徴的な外見ですぐ見分けが付くので、当時のアメリカにとって槍玉の生贄にするのに最も好都合だったんですね…。人種という点において、日本人は、当時の同盟国の人々のドイツ人やイタリア人からすらも差別される訳です…。
日本特有の「ジャップ」という言葉に対する鈍感さ、自身に向けられる差別に鈍感であることは、自身(や自身の属する側)を危険にしてしまう、そして他者もその危険に巻き込んでしまうということなんですね…。現代においても、日本語のインターネットですら「ジャップ」という凶悪無比な言葉が氾濫していることに、日本人はもっと危機意識を持つべきだと思います。それは回りまわって日本全体にダメージを与えているし、こういった差別に鈍感であることは、自身にとっての危険であり、そして今回の無思慮な土人発言で分かるように他者にも危険なことなんですね…。
背信の都 上
著者:ジェイムズ エルロイ
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著者:ジェイムズ エルロイ
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この問題は、日本人の全てではなくても多くの人々が、特定の国民を差別する用語に対して鈍感だという側面が一因としてあると感じますね…。日本人を差別する蔑称である「ジャップ(Jap)」という言葉に対する日本人の反応にそれを昔から強く感じます。「ジャップ」って言葉に怒ったりイラっとしたりしてる日本人ってあまり見ないように見受けられるんですね。私なんかは「ジャップ」という言葉が使われていると日本人としてかなり腹立たしく感じるのですが、普通にインターネットで日本人に対する差別語として使われまくってますよね…。それに対して、怒る日本人があまり見受けられなくて、この言葉の本来の意味を知らないのか知っていてスルーしているのか分かりませんが、日本人が自身が差別されても怒らないというのは非常に悲しいことですし、後述しますが日本にとって危険な事態だと思います…。そしてこういう鈍感さが、他者に対して「土人」と言ったりする鈍感さに繋がっているように感じます…。
この日本人に対する差別語の「ジャップ(Jap)」という言葉は、アメリカが第二次世界大戦中の国家的反日プロパガンダとして、「『ジャップ』たる日本人(日本人・アメリカ在住日系人)は「第五列」(いわゆる銃後の敵をより差別的にした蔑称)であり、世界から抹殺すべき敵である」という意味合いを付けた強烈な差別用語にしたんですね。第二次世界大戦中の日本で使われた「鬼畜米英」を、逆に日本の側に向けてたような、そしてそれを更に人種(日系人)差別用語にして危険で凶悪な言葉なんです。第二次世界大戦中のアメリカではこの言葉を使って、日系人に対する差別、弾圧、果ては殺人までもが正当化されました。
ネットで使われまくっている「ジャップ」は第二次世界大戦によって意味づけされた「日本人に対する差別を正当化し、日本人という存在自体を否定する」言葉であって、日本人の多くが考えているより遥かに危険で凶悪な差別語です。少なくとも日本人は「ジャップ」という言葉を平然と使う外国人がいたら、それに警戒しなければならないのに、そういった警戒意識があまりに低いように思います。このこと(第二次世界大戦中の「ジャップ」という言葉の使われ方とアメリカでの日本人・日系人差別問題)をテーマにしたジェイムズ・エルロイの名著「背信の都」は、日本人ならぜひ読んで欲しいですね…。日本人・日系人に対する差別は、人種的な差別意図を含む、極めて危険な差別であることが分かります。日本人・日系人は特徴的な外見ですぐ見分けが付くので、当時のアメリカにとって槍玉の生贄にするのに最も好都合だったんですね…。人種という点において、日本人は、当時の同盟国の人々のドイツ人やイタリア人からすらも差別される訳です…。
「きみのいわんとすることはわかる。だが、我々の仕事はだね、ドイツとイタリアの血統を持ち、忠誠心を引き裂かれそうになっている人間を調べることなんだ」
ブライチャートがいった。「それはどうですか、フードさん。私は『血統』なんて知りません。それに見かけだけでドイツ野郎かイタ公かなんてわからないでしょう」
フードとサタリーが目配せを交わした。サタリーは自分のサスペンダーをパチンと弾いた。フードがいった。
「うん、そうだな。相手がジャップの場合とは違う」
ブライチャートは指でテーブルをコツコツ叩いた。
「ドイツの血統は拡散しています。ドイツ人はジャップとはそこが違います」
(ジェイムズ・エルロイ「背信の都」)」
日本特有の「ジャップ」という言葉に対する鈍感さ、自身に向けられる差別に鈍感であることは、自身(や自身の属する側)を危険にしてしまう、そして他者もその危険に巻き込んでしまうということなんですね…。現代においても、日本語のインターネットですら「ジャップ」という凶悪無比な言葉が氾濫していることに、日本人はもっと危機意識を持つべきだと思います。それは回りまわって日本全体にダメージを与えているし、こういった差別に鈍感であることは、自身にとっての危険であり、そして今回の無思慮な土人発言で分かるように他者にも危険なことなんですね…。
第五列 名詞 1941年のアメリカの流行語。直前のスペイン市民戦争に由来する。(反政府軍側の)四個師団が戦闘に投入される一方、敵支配地域内では第五の軍団(第五列)が妨害行為、プロパガンダ、その他多数の目立ちにくい破壊活動を行った。第五列はあくまで潜伏することを旨とした。そのあいまいな、場合によっては完全に正体不明の立場のゆえに、第五列は日々の戦闘に従事する四個師団と同程度に、あるいはそれ以上に危険な存在のように思われた。
(ジェイムズ・エルロイ「背信の都」)」
「オルソン知事は在米のジャップ(日本人・日系人)全員とその同調者と疑われる者の即時抑留を要求しました。(中略)現在、Aリストのジャップ400人が拘束されています。連邦捜査官42人が尋問にあたっています。これらのジャップの収容先はターミナル島の刑務所、フォート・マッカーサーの営巣、ホール・オブ・ジャスティスの拘置所、リンカーンハイツの拘置所、ロサンジェルス市警本部の六管区の留置所です。サンペドロ港内の不審なジャップの漁船は臨検、捜索の上、港に曳航されます(中略)」
ボウロンがいった。
「このジャップの件は、わしが先頭に立って取り組もう。いいな。市の職員名簿に載っているジャップを一人残らずクビにしてやる。やつらはみんな第五列だ。意気地なしでは戦争に勝てん」
(ジェイムズ・エルロイ「背信の都」)」
背信の都 上
著者:ジェイムズ エルロイ
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背信の都 下
著者:ジェイムズ エルロイ
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2016年10月19日 10:02
本日(10/19)の朝日新聞で生活面を一面丸ごと使い、巷を騒がせたPCデポ騒動(PCデポが高齢者に高額のPCサポート契約を結ばせ解約金も非常に高額な商法を行っていること)の特集を大きくしています。朝日新聞によると、今回のPCデポのような悪質な契約を規制できないのは規制に対する産業界の反対によるものとのこと…。この国は悪質な大企業群、まさにリアルな暗黒メガコーポそのものである産業界に牛耳られている…暗澹たる気持ちになりました。以下、抜粋して引用致しますね。
この騒動に関しては日本経済新聞や週刊ダイヤモンド等の諸々の産業界の御用ジャーナリズムが速攻でPCデポの弁解と言い分のみを載せるPCデポ擁護の最低な特集をしており、それらに対する信頼が地面を越えて地獄の底の釜の下まで落ちて御用ジャーナリズムが大嫌いになりましたが、今回の朝日新聞の特集は、なぜ産業界の御用ジャーナリズムが即PCデポ擁護に走ったのか良く分かる良記事ですね。彼らはまさに産業界の走狗ですね…。ただ、全てがそうではなく、東洋経済等、PCデポに厳しく批判的な経済誌ジャーナリズムもあり、そういう真っ当な経済誌の記事は良心的でした。
なぜ豊田商事ばりの悪質な契約に対して法的規制ができないのか、はっきりと分かる良記事でした。日本の産業界=豊田商事であり、それらが日本の国政を牛耳っているゆえに規制できないということですね…。国政がPCデポのようなリアル暗黒メガコーポに牛耳られて高齢者や認知症に対する悪質な契約が跳梁跋扈し(高齢者に対する悪質な契約の消費者相談が年25万件、年間6万件増加)、誰もそれを止めることのできない最低最悪な状況にある日本という国の現状、本当に絶望的な有様で心底暗澹となります…。
こうなると高齢者や認知症の人が外出先で契約を結ばないようにそういった人々を家や施設内に閉じ込めないと、悪質な契約で本人や家族が莫大な損を負うリスクを常に負うという最悪な状況になっていて(悪質な契約であっても契約を解除することは法的に困難)、それらの状況に対する法的規制がリアル暗黒メガコーポ(産業界)の反対で規制できないとか本当におかしい。まさに「美しい国」ですね(反語)。
悪質商法のすごい手口―ここまで巧妙ならみんなだまされる!知っておきたい被害の実態と対処法
徳間書店(2009-04)
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2016/10/19朝日新聞「高齢者 後絶たぬ契約被害」
パソコン専門店「PC DEPOT」(PCデポ)のパソコンの使い方をサポートするサービスをめぐり千葉市の会社員男性(44)が8月、「80過ぎの父が高額契約を結ばされ、契約解除料10万円を支払わされた」などとツイッターに投稿。インターネット上で一気に広まり、PCデポ側への批判が集中した。(中略)
国民生活センターによると、2015年度の65歳以上の契約などのトラブル相談は約25万件あり、5年前から約6万件増えた。全国消費生活相談員教会の増田悦子専務理事は、「高齢者が電話勧誘などで繰り返し勧められ、不本意な契約を結んでしまう例は後を絶たない。手当てが必要だ」と指摘する。
救済策として、契約から一定期間内(8日以内など)なら無償解約できるクーリングオフがある。だが、対象は訪問販売や電話勧誘販売などの契約に限られ、自ら店に出向いての契約は対象外だ。
近年では認知症の高齢者が着物や宝石などを次々と買わされたといった悪質な例が目立つ。被害額が多い場合、訴訟で救済を目指す例もある。
しかし、ハードルは高い。
民法上、契約を理解し、判断する意思能力がない人が結んだ契約は無効とされるが、認知症だから無効になるとは限らない。消費者問題に詳しい池本誠司弁護士は「判断力が全くない状態でないと意思能力がないとはいえない。認知症は時期や症状で判断力のレベルが変わるため、契約時に意思能力が欠けていたのか立証するのは難しい」と話す。(中略)
(現在は高齢者の判断力低下や認知症につけこんだ悪質な契約を結ぶことに関する規制がないため、消費者団体等は高齢による判断力低下や認知症につけこんだ契約を防ぐ為の法的規制として)高齢者らの判断力の低下や、知識・経験不足につけこんだ悪質な契約は取り消せるようにすべきだと求める。
産業界は「高齢者一人ひとりの判断力の違いを営業員がどうやって見極めるのか。取引の安定性が損なわれる」などと反対する。
この騒動に関しては日本経済新聞や週刊ダイヤモンド等の諸々の産業界の御用ジャーナリズムが速攻でPCデポの弁解と言い分のみを載せるPCデポ擁護の最低な特集をしており、それらに対する信頼が地面を越えて地獄の底の釜の下まで落ちて御用ジャーナリズムが大嫌いになりましたが、今回の朝日新聞の特集は、なぜ産業界の御用ジャーナリズムが即PCデポ擁護に走ったのか良く分かる良記事ですね。彼らはまさに産業界の走狗ですね…。ただ、全てがそうではなく、東洋経済等、PCデポに厳しく批判的な経済誌ジャーナリズムもあり、そういう真っ当な経済誌の記事は良心的でした。
産業界は「高齢者一人ひとりの判断力の違いを営業員がどうやって見極めるのか。取引の安定性が損なわれる」などと反対する。
なぜ豊田商事ばりの悪質な契約に対して法的規制ができないのか、はっきりと分かる良記事でした。日本の産業界=豊田商事であり、それらが日本の国政を牛耳っているゆえに規制できないということですね…。国政がPCデポのようなリアル暗黒メガコーポに牛耳られて高齢者や認知症に対する悪質な契約が跳梁跋扈し(高齢者に対する悪質な契約の消費者相談が年25万件、年間6万件増加)、誰もそれを止めることのできない最低最悪な状況にある日本という国の現状、本当に絶望的な有様で心底暗澹となります…。
こうなると高齢者や認知症の人が外出先で契約を結ばないようにそういった人々を家や施設内に閉じ込めないと、悪質な契約で本人や家族が莫大な損を負うリスクを常に負うという最悪な状況になっていて(悪質な契約であっても契約を解除することは法的に困難)、それらの状況に対する法的規制がリアル暗黒メガコーポ(産業界)の反対で規制できないとか本当におかしい。まさに「美しい国」ですね(反語)。
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2016年10月17日 09:44
ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)
突如現れた謎の天才覆面作家「前野ひろみち」の処女作という触れ込みで話題になっていた(朝日新聞等、新聞も書評で取り上げていた)短編小説集「ランボー怒りの改新」読了。
奈良地域ローカルを舞台に、ちょっとした不思議な奇想、とぼけたユーモアと青春、飄々とした人物達が織り成す短編はどれも質が高く、本自体はとても面白かったです。
でもこれ…「前野ひろみち」って完全に森見登美彦さんやないか!!
もう、ほんとに、100パーセント中の100パーセント前野ひろみちさん=森見登美彦さんでして、全然隠そうとしていないところ(本小説の内容は舞台が京都から奈良に移っているだけで後は完全に森見登美彦節)、むしろ清々しささえ感じたよ!!
多分、作家友人同士の同人誌で森見登美彦さんが変名の「前野ひろみち」で発表していた奈良が舞台の作品に星海社の編集者が目をつけて、「前野ひろみちを舞城王太郎的な謎の覆面作家として華々しくデビューさせましょうや!」みたいな感じで森見登美彦さんを口説き落として出版のはこびとなったんでしょうね。森見登美彦さんというと京都地域ローカル密接小説みたいなイメージがついちゃってるんで、奈良に舞台を移すことでその辺を脱却したかったというのもあるかも。
しかし、誰がどう見ても森見登美彦さんだとすぐ分かる小説のため…うーん…普通に森見登美彦名義で出しても良かったような気もしますが、まあ作品の話題作りとしては「謎の新人作家現る!」みたいな感じで新聞書評に取り上げられておりますし(読めばすぐに森見登美彦さんって分かる内容ですがその辺は言わないのがプロ書評家のお約束)、出版戦略としてはなかなか成功したと言えるのかな。この辺は星海社の編集者の作戦勝ちってところですね。星海社やるなあ。
ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)
著者:前野 ひろみち
講談社(2016-08-11)
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四畳半神話大系 (角川文庫)
著者:森見 登美彦
角川書店(2008-03-25)
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有頂天家族 (幻冬舎文庫)
著者:森見 登美彦
幻冬舎(2010-08-05)
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突如現れた謎の天才覆面作家「前野ひろみち」の処女作という触れ込みで話題になっていた(朝日新聞等、新聞も書評で取り上げていた)短編小説集「ランボー怒りの改新」読了。
奈良地域ローカルを舞台に、ちょっとした不思議な奇想、とぼけたユーモアと青春、飄々とした人物達が織り成す短編はどれも質が高く、本自体はとても面白かったです。
でもこれ…「前野ひろみち」って完全に森見登美彦さんやないか!!
もう、ほんとに、100パーセント中の100パーセント前野ひろみちさん=森見登美彦さんでして、全然隠そうとしていないところ(本小説の内容は舞台が京都から奈良に移っているだけで後は完全に森見登美彦節)、むしろ清々しささえ感じたよ!!
多分、作家友人同士の同人誌で森見登美彦さんが変名の「前野ひろみち」で発表していた奈良が舞台の作品に星海社の編集者が目をつけて、「前野ひろみちを舞城王太郎的な謎の覆面作家として華々しくデビューさせましょうや!」みたいな感じで森見登美彦さんを口説き落として出版のはこびとなったんでしょうね。森見登美彦さんというと京都地域ローカル密接小説みたいなイメージがついちゃってるんで、奈良に舞台を移すことでその辺を脱却したかったというのもあるかも。
しかし、誰がどう見ても森見登美彦さんだとすぐ分かる小説のため…うーん…普通に森見登美彦名義で出しても良かったような気もしますが、まあ作品の話題作りとしては「謎の新人作家現る!」みたいな感じで新聞書評に取り上げられておりますし(読めばすぐに森見登美彦さんって分かる内容ですがその辺は言わないのがプロ書評家のお約束)、出版戦略としてはなかなか成功したと言えるのかな。この辺は星海社の編集者の作戦勝ちってところですね。星海社やるなあ。
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2016年10月14日 17:12
コミックビームの奥村勝彦氏による出版不況に対する面白い論考対談。筒井康隆さんの短編「くたばれPTA」みたいな感じで雑誌と漫画の今を語る対談が進んで行くのが(対談はポリティカル・コレクトネスによりどんどん虚構の表現は自主規制されて、逆に現実の事象は攻撃的になっていくというテーマになっていく)、なんともよく分かるなって感じですね…。
娯楽作品における表現の自主規制がここ数十年で急速に進んでいるなということは強く感じますね…。例えば、現在放映中のアニメでいうなら「終末のイゼッタ」とか、明らかに敵役はナチス・ドイツそのまんまなんですが、「ゲルマニア帝国」っていう架空の国家を設定して、それを敵役にしている。ナチスを敵役にすると、例えフィクションの娯楽作品であっても色々ポリティカル・コレクトネスの方面からクレームがつく可能性があって(ナチスの敵役将校をカッコよく描いてるとかクレームはなんでも付けられる…敵役の将校の声がダンディで渋い諏訪部順一さんですし)、そのリスクを避けるために自主規制したんだなというのがひしひしと伝わってくるかの如き作品でした…。まあ、どう見てもナチスなのに「ゲルマニア帝国」とか出てきたときは、「世界首都ゲルマニアか!」って突っ込んじゃいましたが…。
また表現発表媒体として紙ベースの媒体が減少しているというのは、先日読んだ「年間日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」でも選者の日下三蔵さんが書いておられましたし、漫画雑誌だけではなく、紙ベースの表現媒体の減少はあらゆる表現にとっての一つの危機だと思いますね…。
くたばれPTA (新潮文庫)
著者:筒井 康隆
新潮社(2015-12-22)
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アステロイド・ツリーの彼方へ (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)
東京創元社(2016-06-30)
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【Amazon.co.jp限定】終末のイゼッタ Vol.1(全巻購入特典:オリジナル歴史解説本引換シリアルコード付) [Blu-ray]
出演:茜屋日海夏
松竹(2016-12-21)
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コミックビームが「緊急事態」宣言 漫画雑誌はこの先生きのこれるのか
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161014-00000023-it_nlab-ent
奥村 おっかながっててなんか面白いモンやれるかというと、そりゃあ厳しいよな。面白いモンってある意味、無意識の中から生まれてくるわけで、そういうのって身体が強ばっている状況だと、まあなかなか出てこないんだよ。最近のテレビなんかそれを一番感じてるんじゃないかな。
―― 最近はすぐ炎上しますからね……。
奥村 昔だったら単体で電話してきて、「ああスイマセンね」で終わってたんだけど、今はスポンサーに電話するからね。文句付ける側が妙に賢くなって、俺ら(表現者側)のクビ飛ばすのなんて簡単だぞってことに気づいちゃった。(中略)
―― 特にPC(ポリティカル・コレクトネス=政治的・思想的に公平公正であること)にはすごく敏感になった。
奥村 あのね、オレはさ、そういう(表現の自主規制による)縮こまりの先に何があるんだろう、ってやっぱ考えちゃうんだよ。で、1つ結論としてあるのは、(現実の)戦争だろうなと。
―― 戦争?
奥村 オレ昔から思ってるんだけど、最高のエンタテイメントって何かって考えたら、多分戦争なんだよ。自分とか身内が殺されない限り、戦争って一種のエンタテインメントなんじゃないかって。あの「日本チャチャチャ!」なんて足元にも及ばないくらいの爆発力がある。もちろんこれは極端な考えだよ。でもさ、実際戦争なんてやったら悲惨この上ないからね。人間同士殺し合うわけだから。
―― エンタメが萎縮すると戦争に向かうということですか。
奥村 おれはそう思うよ。メディアってそういうのがモロに最初に出てくるものだから。
人類は皆平等。愛。「私は嘘を申しません」。性善説。戦争はごめんだ。まごころ。先人を敬おう。不幸な人に愛の手を。こういうものはみんな嘘であり、それを嘘と認識したところからドタバタ、スラップスティック、ハチャメチャSFは始まる。人間は差別が好きで、肉欲に生きていて、嘘をつかねば生きられず、悪い事ばかり考える。戦争は大好きである。(平和運動は戦争の第1段階だ)裏切りこそ繁栄につながり、老人を馬鹿にし、早く死ねと思い、不幸な奴がいるため自らは幸福だといって喜ぶのである。この真実を、いまやSF以外の文学は、描こうとしない、否、描けない。自らがそうした虚偽の中に取り込まれてしまっているからだ。ただひとつ、下等にして下品にして半気ちがいで嘘つきと思われていて、そしてなにものからも自由な、ドタバタ、スラップスティック、ハチャメチャSFのみが、この真実を描き得るのである。
(筒井康隆「真実の文学」)
娯楽作品における表現の自主規制がここ数十年で急速に進んでいるなということは強く感じますね…。例えば、現在放映中のアニメでいうなら「終末のイゼッタ」とか、明らかに敵役はナチス・ドイツそのまんまなんですが、「ゲルマニア帝国」っていう架空の国家を設定して、それを敵役にしている。ナチスを敵役にすると、例えフィクションの娯楽作品であっても色々ポリティカル・コレクトネスの方面からクレームがつく可能性があって(ナチスの敵役将校をカッコよく描いてるとかクレームはなんでも付けられる…敵役の将校の声がダンディで渋い諏訪部順一さんですし)、そのリスクを避けるために自主規制したんだなというのがひしひしと伝わってくるかの如き作品でした…。まあ、どう見てもナチスなのに「ゲルマニア帝国」とか出てきたときは、「世界首都ゲルマニアか!」って突っ込んじゃいましたが…。
ウィキペディア「世界首都ゲルマニア」
世界首都ゲルマニア(せかいしゅとゲルマニア、ドイツ語: Welthauptstadt Germania)とは、ドイツ首都ベルリンが広く国内外で「世界の首都」と讃えられるよう、アドルフ・ヒトラーがグランド・デザインを考え、建築家アルベルト・シュペーアが細部デザインを任された都市改造構想である。(中略)シュペーアの回想録によれば独ソ戦開始時点のヒトラーの考えでは、1945年に戦争に勝利した後、1950年に世界首都ゲルマニアを完成させて自身は引退する予定であったと記述されている。肝心のドイツが敗戦した事もあり、完成を迎える事は無かった。
また表現発表媒体として紙ベースの媒体が減少しているというのは、先日読んだ「年間日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」でも選者の日下三蔵さんが書いておられましたし、漫画雑誌だけではなく、紙ベースの表現媒体の減少はあらゆる表現にとっての一つの危機だと思いますね…。
(「年間日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」収録作の)十九本の内訳はこのようになった。
A SF専門誌 3
B それ以外の文芸誌 5
C 単行本書き下ろし作品 3
D ウェブ公開作品 3
E 同人誌掲載作品 3
F マンガ作品 2
Cは書き下ろしアンソロジーや単行本初出の作品など。以前は大半を占めていたAとCの割合が、かなり減っているのである。(SFマガジン隔月間化のように)紙媒体の雑誌が減っていくのが世の趨勢なので、今後はC〜Eの占めるウェイトが、相対的に多くなっていくものと思われる。
(日下三蔵。「年間日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」後記より)
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2016年10月12日 12:47
魔法少女育成計画、第2話視聴…。凄くいい子の魔法少女だったねむりんが営業成績最下位の罰として処刑された…。まどか☆マギカ以降、魔法少女業界、ひいては戦闘美少女業界のブラック企業化が物凄い勢いで進んでいますが、これはやっぱり、現実世界の労働グローバル化とそれによる日本の労働環境の著しい悪化(悪質なブラック企業の現実での増大)を反映しているのだと思いますね…。考えてみるとどんどん酷くなってる感じですから…。魔法少女育成計画の魔法少女達は毎週業績競争させられ最下位は処刑の超ブラック企業の魔法営業ガール達で、キュウべえがまだマシに見えるレベルです…。
まどか☆マギカ
魔法少女となって魔女と命がけで戦う代わりに、キュウべえがオーバーテクノロジーによって一つだけ魔法少女の願いを叶えてくれる。魔法少女はいずれは魔女となって討たれる運命だが、そのことは基本的に魔法少女には知らされない。
WIXOSS ウィクロス
セレクターとなって戦いに勝ち続けることで願いを叶えると言われるが、実は勝ち続けるとセレクターは肉体を奪われてしまい、カードの中に封じられてしまう。願いを叶えるのはセレクターの肉体を奪った別存在なので、セレクターの願いが叶っても、それはセレクターの意に反した状態になる。戦いに負けてしまうと願いが反転して最悪の形でセレクター自身に降りかかり破滅する。
Lostorage incited WIXOSS
カードショップでたまたま購入するなどで呪いのカードを入手した場合、強制的にセレクターにされて戦わされることになる。戦いに勝ち続けるとセレクターから解放され普通の人間に戻る。戦いに負けると記憶を失ってゆき、最後は全ての記憶を失って自身の存在を失う。戦いを拒否し続けるとやはり記憶が失われてゆき、最後は全ての記憶を失って自身の存在を失う。セレクターになるメリットは何も無い。
魔法少女育成計画
一度魔法少女になると解除できず、他の魔法少女達と、延々と営業競争(魔法少女として善行を積む功績が全てデータ化されて営業成績として常に全員にスマホで告知されている)をさせられることになる。毎週、営業成績が最下位の魔法少女は処刑される。魔法少女になるメリットは何も無い。
…現実も幻想も世知辛い世の中であるとしか言いようが無い…。最近の魔法少女業界は魔法少女が暗黒メガコーポのサラリマン並に使い捨てられる超ブラック企業な業界…。最近は魔法少女や戦闘美少女になるのは「ダメ、ゼッタイ」って感じですね…。
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まどか☆マギカ
魔法少女となって魔女と命がけで戦う代わりに、キュウべえがオーバーテクノロジーによって一つだけ魔法少女の願いを叶えてくれる。魔法少女はいずれは魔女となって討たれる運命だが、そのことは基本的に魔法少女には知らされない。
WIXOSS ウィクロス
セレクターとなって戦いに勝ち続けることで願いを叶えると言われるが、実は勝ち続けるとセレクターは肉体を奪われてしまい、カードの中に封じられてしまう。願いを叶えるのはセレクターの肉体を奪った別存在なので、セレクターの願いが叶っても、それはセレクターの意に反した状態になる。戦いに負けてしまうと願いが反転して最悪の形でセレクター自身に降りかかり破滅する。
Lostorage incited WIXOSS
カードショップでたまたま購入するなどで呪いのカードを入手した場合、強制的にセレクターにされて戦わされることになる。戦いに勝ち続けるとセレクターから解放され普通の人間に戻る。戦いに負けると記憶を失ってゆき、最後は全ての記憶を失って自身の存在を失う。戦いを拒否し続けるとやはり記憶が失われてゆき、最後は全ての記憶を失って自身の存在を失う。セレクターになるメリットは何も無い。
魔法少女育成計画
一度魔法少女になると解除できず、他の魔法少女達と、延々と営業競争(魔法少女として善行を積む功績が全てデータ化されて営業成績として常に全員にスマホで告知されている)をさせられることになる。毎週、営業成績が最下位の魔法少女は処刑される。魔法少女になるメリットは何も無い。
…現実も幻想も世知辛い世の中であるとしか言いようが無い…。最近の魔法少女業界は魔法少女が暗黒メガコーポのサラリマン並に使い捨てられる超ブラック企業な業界…。最近は魔法少女や戦闘美少女になるのは「ダメ、ゼッタイ」って感じですね…。
【Amazon.co.jp限定】 魔法少女育成計画 第1巻(完全生産限定版)(全巻購入特典:「特典未定」引換シリアルコード付) [Blu-ray]
フライングドッグ(2016-12-21)
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スタイルマート(2017-03-22)
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魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)
著者:遠藤 浅蜊
宝島社(2012-06-08)
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2016年10月05日 17:18
前クールのアニメを見終わり、今クールのアニメの1話を視聴。前クールでは「クロムクロ」がダントツに面白かった!!これは2010年代のSFアニメの最高傑作だと思いますね。最終二話での話の超絶な広げ方も「まさにSF!」って感動した。
「クロムクロ」のラストが良いのは、二重の仕掛けの終わり方になっているんですね。筒井康隆さんが小説論において「良い小説は二重の仕掛けになっている。全ての読み手が理解できる良い終わり方と、更に深く読み込んでいる読み手だけが分かる良い終わり方が重なりあって終わるのが良い小説の特徴だ」ということを述べていますが、それを思い出しました。
「クロムクロ」のラストでエフィドルグのナノマシン群は、EPR相関によって通常時空の因果律(光速)を超えた超光速的な連携を取っていることが明かされますが、ユキナが宇宙船で旅立つとき、ナノマシンのEPR相関を通じた方法によってケンノスケが健在であることが示された上で、ナノマシンによって廃人にされているオペレータを看病している娘が、廃人のオペレータに何かあったことを一瞬示すカットがあるんですよね。もし廃人にされているオペレータが意識を取り戻したのなら、それはオペレータに寄生しているエフィドルグのナノマシン(ERP相関によって星の彼方のエフィドルグと繋がっているナノマシン)に何か異変があったということ、つまり、ケンノスケ達、星間レジスタンスがエフィドルグとの最終決戦において遥か星の彼方で勝利した可能性(エフィドルグを壊滅させてナノマシンの制御を奪った可能性)を示しているんですよね。
そして見ている方が、ハッとなった、ケンノスケ達が勝ったのか!?と思った瞬間、ユキナが旅立って終わる。語りすぎずに、明日への希望を残して終わる。ERP相関について特に考えなくても希望のある良い終わりですし、ERP相関について考えると、ケンノスケ達が最終決戦に勝利したのかも知れないと、更に大きな希望を感じながら終わる、二重の仕掛けのとても良い終わり方でしたね。これぞまさしく「SF」ですね。「クロムクロ」、本当に良い作品でした。
今クールのアニメも1話をだいたい視聴。1話を見た限りでは新規作品は「魔法少女育成計画」「終末のイゼッタ」「装神少女まとい」「ガンダムオルフェンズ」を視聴継続して後は特に見ない感じかなと…。「魔法少女育成計画」が個人的には一番面白かったですね。男が女体化して魔法少女になるのは、私の知る限り、山田正紀さんの怪作小説「クトゥルフ少女戦隊」以来の快挙かと。「俺、ツインテールになります」とかの女体化小説は魔法少女とはちょっとベクトルが違いますからね。魔法少女ジャンルと女体化ジャンル両方が好きな視聴者として今後がとても楽しみです。
ちなみに「クトゥルフ少女戦隊」はとてつもなくぶっ飛んだ魔法少女物の怪作であり、魔法少女まどかマギカと山田正紀さんの独特の本格SFが悪魔合体して合体事故が起こってしまったという感じの作品です。話としては「超ミクロの環境世界と我々のいる現実世界がリンクしていて、我々の世界の人間が超ミクロ世界では魔法少女のアヴァターとなって戦う」という感じなんですが、凄く説明しづらい小説です。山田正紀さんは小松左京さんから続く日本SFのど真ん中の正統の作家さんで、魔法少女のメカニズムとか物凄く理論的にねちっこく説明しまくるんですけど、よく考えるとその説明はおかしい、でも筆力と迫力でよまされちゃうのが、小松左京的SFイズム(良い意味でのごり押しホラ話SF)で楽しいって感じの小説です。
この小説「クトゥルフ少女戦隊」の大半は物語展開よりも作中世界のSFロジカル的な説明、無理はあるけど非常に面白い説明に費やされており、それらの説明はどんどん転がっていって小松左京論になったりSF論になったりハーレムアニメ論になったり魔法少女論になったり腸内細菌論になったり小松左京イズム的進化論になったりするのが、SF好きで魔法少女好きでアニメ好きという私のような読み手にとっては最高に面白い!!非常に変わった面白い魔法少女SFクトゥルフ小説であり、小松左京さんのSFが好き、魔法少女ジャンルが好き、SFが好き、クトゥルフ作品が好きというどれかに当てはまるお方々なら必ず楽しめるかと思います。もし複合的にこれらが好きならば面白さは更に倍増します!!
「クトゥルフ少女戦隊」が面白かったお方々には、小松左京さんの小説「果しなき流れの果に」「ゴルディアスの結び目」「結晶船団」「虚無回廊」あたりはぜひ読んで欲しいですね。「クトゥルフ少女戦隊」とテーマが大きくリンクしているので。特に「ゴルディアスの結び目」とは非常にテーマの繋がりが深いように感じました。
クトゥルフ少女戦隊 第一部 (The Cthulhu Mythos Files)
著者:山田正紀
創土社(2014-10-02)
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クトゥルフ少女戦隊第ニ部 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)
著者:山田 正紀
創土社(2014-11-26)
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果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)
結晶星団 (ハルキ文庫)
虚無回廊〈1〉 (ハルキ文庫)
虚無回廊〈3〉 (ハルキ文庫)
虚無回廊〈3〉 (ハルキ文庫)
クロムクロ ブルーレイ 第一集 [Blu-ray]
クロムクロ ブルーレイ 第二集 [Blu-ray]
クロムクロ ブルーレイ 第三集 [Blu-ray]
クロムクロ ブルーレイ 第四集 [Blu-ray]
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「クロムクロ」のラストが良いのは、二重の仕掛けの終わり方になっているんですね。筒井康隆さんが小説論において「良い小説は二重の仕掛けになっている。全ての読み手が理解できる良い終わり方と、更に深く読み込んでいる読み手だけが分かる良い終わり方が重なりあって終わるのが良い小説の特徴だ」ということを述べていますが、それを思い出しました。
「クロムクロ」のラストでエフィドルグのナノマシン群は、EPR相関によって通常時空の因果律(光速)を超えた超光速的な連携を取っていることが明かされますが、ユキナが宇宙船で旅立つとき、ナノマシンのEPR相関を通じた方法によってケンノスケが健在であることが示された上で、ナノマシンによって廃人にされているオペレータを看病している娘が、廃人のオペレータに何かあったことを一瞬示すカットがあるんですよね。もし廃人にされているオペレータが意識を取り戻したのなら、それはオペレータに寄生しているエフィドルグのナノマシン(ERP相関によって星の彼方のエフィドルグと繋がっているナノマシン)に何か異変があったということ、つまり、ケンノスケ達、星間レジスタンスがエフィドルグとの最終決戦において遥か星の彼方で勝利した可能性(エフィドルグを壊滅させてナノマシンの制御を奪った可能性)を示しているんですよね。
そして見ている方が、ハッとなった、ケンノスケ達が勝ったのか!?と思った瞬間、ユキナが旅立って終わる。語りすぎずに、明日への希望を残して終わる。ERP相関について特に考えなくても希望のある良い終わりですし、ERP相関について考えると、ケンノスケ達が最終決戦に勝利したのかも知れないと、更に大きな希望を感じながら終わる、二重の仕掛けのとても良い終わり方でしたね。これぞまさしく「SF」ですね。「クロムクロ」、本当に良い作品でした。
今クールのアニメも1話をだいたい視聴。1話を見た限りでは新規作品は「魔法少女育成計画」「終末のイゼッタ」「装神少女まとい」「ガンダムオルフェンズ」を視聴継続して後は特に見ない感じかなと…。「魔法少女育成計画」が個人的には一番面白かったですね。男が女体化して魔法少女になるのは、私の知る限り、山田正紀さんの怪作小説「クトゥルフ少女戦隊」以来の快挙かと。「俺、ツインテールになります」とかの女体化小説は魔法少女とはちょっとベクトルが違いますからね。魔法少女ジャンルと女体化ジャンル両方が好きな視聴者として今後がとても楽しみです。
ちなみに「クトゥルフ少女戦隊」はとてつもなくぶっ飛んだ魔法少女物の怪作であり、魔法少女まどかマギカと山田正紀さんの独特の本格SFが悪魔合体して合体事故が起こってしまったという感じの作品です。話としては「超ミクロの環境世界と我々のいる現実世界がリンクしていて、我々の世界の人間が超ミクロ世界では魔法少女のアヴァターとなって戦う」という感じなんですが、凄く説明しづらい小説です。山田正紀さんは小松左京さんから続く日本SFのど真ん中の正統の作家さんで、魔法少女のメカニズムとか物凄く理論的にねちっこく説明しまくるんですけど、よく考えるとその説明はおかしい、でも筆力と迫力でよまされちゃうのが、小松左京的SFイズム(良い意味でのごり押しホラ話SF)で楽しいって感じの小説です。
この小説「クトゥルフ少女戦隊」の大半は物語展開よりも作中世界のSFロジカル的な説明、無理はあるけど非常に面白い説明に費やされており、それらの説明はどんどん転がっていって小松左京論になったりSF論になったりハーレムアニメ論になったり魔法少女論になったり腸内細菌論になったり小松左京イズム的進化論になったりするのが、SF好きで魔法少女好きでアニメ好きという私のような読み手にとっては最高に面白い!!非常に変わった面白い魔法少女SFクトゥルフ小説であり、小松左京さんのSFが好き、魔法少女ジャンルが好き、SFが好き、クトゥルフ作品が好きというどれかに当てはまるお方々なら必ず楽しめるかと思います。もし複合的にこれらが好きならば面白さは更に倍増します!!
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2016年10月03日 19:16
東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。おめでとうございます。東京工業大学が特設サイトを作っておられますのでお勧めです。
東京工業大学公式サイト「東工大ニュース 大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞受賞決定」
http://www.titech.ac.jp/news/2016/036278.html
近年、癌の特効薬の技術革新が物凄い速さで進んでおり、人類は今後数十年以内に癌を克服できるのではないかと言われておりますが、その基礎科学において業績を挙げられたということでいいのかなと思います。
基礎科学は科学の発展の為に必須であり、オリンピックの無意味なボート会場に数百億円の予算を投入するなどの予算の投入ではなく、こういった基礎科学の研究助成に国家予算を大きく投入して欲しいですね…。
ちなみに大隅良典さんで検索すると、「わくわく理科」っていう小学生向け教科書が出てきますね。読んでみたいなあ…。
細胞が自分を食べる オートファジーの謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)
著者:水島 昇
PHP研究所(2011-12-02)
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東京工業大学公式サイト「東工大ニュース 大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞受賞決定」
http://www.titech.ac.jp/news/2016/036278.html
近年、癌の特効薬の技術革新が物凄い速さで進んでおり、人類は今後数十年以内に癌を克服できるのではないかと言われておりますが、その基礎科学において業績を挙げられたということでいいのかなと思います。
基礎科学は科学の発展の為に必須であり、オリンピックの無意味なボート会場に数百億円の予算を投入するなどの予算の投入ではなく、こういった基礎科学の研究助成に国家予算を大きく投入して欲しいですね…。
ちなみに大隅良典さんで検索すると、「わくわく理科」っていう小学生向け教科書が出てきますね。読んでみたいなあ…。
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表題通り。以下のヤフーの記事です。
これはその通りだと思いますね。社会保障費は圧倒的に高齢者に掛かる費用割合が大きく、「健康で長生きする人々が多い豊かで平和な社会」=「いつかあるべき理想として目指す社会」に近づけば近づくほど社会保障費は掛かるわけです。それをみんなで負担しましょうというのが現代社会の基本でして、長谷川豊氏はそれを全く無視して「病人は社会の負担なので抹殺せよ」とか異常極まりないことをのたまっている訳です。
ちなみに上記のエントリにさらに追記するなら、「社会の負担」として長谷川豊氏が抹殺を主張する「不摂生な生活で病気になった(かもしれない)人々」には、長谷川豊氏なんぞとは比較にならない、それこそ人類社会全体に貢献した、人類史に残る偉大な人々が大勢いるんですよね…。長谷川豊氏が「病人は社会の負担だから抹殺せよ」とか述べるのは、ゴミが太陽に向かって文句を言っているように感じられて、本当に愚かだなと感じますね…。幾人か「不摂生な生活で病気になったと推察されている人々」についてご紹介致しますね。
アレキサンダー・グラハム・ベル
電話の発明者。彼がいなければ、我々が今使っているインターネットの姿もなかったであろう。彼は若い頃から大食漢で肥満をわずらい、身長180センチだが、体重は120キロ近くあった。暴飲暴食と肥満が原因と推定される糖尿病をわずらい、死去。
オノレ・ド・バルザック
フランスを代表する作家にして世界的大作家。社交界を愛する女好きの美食家で知られ、「バルザックは執筆をしていない時は、社交界でたらふく食べているか、美しいマダム達と愛を語り合っている」と言われた。ベルと同じく美食と肥満が原因と推定される糖尿病をわずらい、死去。
岸田劉生
日本を代表する天才画家。代表作「麗子像」は今もたいへん有名である。とてつもない遊蕩児としても有名で、死ぬときも山口県徳山の料亭栄亭で、友人達と美技十数人を呼んだ大宴会の最中に体調を崩して急死した。死因は放埓な遊蕩が一因と推定される腎臓病。
他にも、社交界との付き合いが多い政治家・芸術家には不摂生(社交界における美食・酒宴)によるもの(糖尿病や腎臓病の他にも肝硬変等)と思われる病気で亡くなった人々が大勢いるわけですよ。どう考えてもこれらの人々は長谷川豊氏とは全く比較にならぬレベルで社会に貢献しており、「病人は社会に負担だから抹殺しろ」と述べる長谷川豊氏の方が社会に貢献どころか、社会にとって危険な人物であることは火を見るよりも明らかです。
だいたい、長谷川豊氏が今回のことに限らず、何か(主に長谷川豊氏が気に入らない弱い立場の人々)を攻め立てる時に常に使っている「自己責任」と言う言葉自体がトリックで、「これは奴らの自己責任だから救済する必要がない」みたいな論法は何にでも使える悪魔の論法なんですね。因果論的責任なんてものは本来的に立証の仕様がない曖昧なものですから、解釈のしようでいくらでも拡大やこじつけができる。上述した人々も、実際に不摂生な生活と病気と因果関係が確実にあるかどうかということは分からないわけです。因果はあまりにも無数のファクターがありすぎるので、それらを解き明かすことは人間には不可能です。大規模統計による大まかな因果論的判断(例えば煙草を吸う層に肺癌が多いというデータ)と、個々人の因果の判断(煙草を吸う人が肺癌になってもそれは煙草が原因かどうかは判断できない)、この二つは全く異なるものであることを留意すべきです。
ゆえに、法律は因果論ではなく、実際の事象によって判断する(例えば、病気の時は一律に公的健康保険の対象になる)訳です。それを、「病気の原因の因果を遡って自己責任かどうか判断して医療費を出すかを選別する」なんてことは論理的にも実際的にもできっこないですし(因果を紐解くことは人間の限界を超えている)、それを無理やりやっている長谷川豊氏の論法はその時点で完全に詭弁であるということを、読み手はきちんと判断しなくてはならないと思いますね。
先日ご紹介した経済学者のアマルティア・センがデータで示していますが、恣意的な権限による国家(独裁国家・軍などの強権が法を無視して振舞う非法治国家)と民主的な法治国家だと、社会保障予算のコストを見たとき、明らかに前者の国家の疾病率や死亡率の方が対コストで跳ね上がるんですね。長谷川豊氏が理想とする強権的な最小国家の方が圧倒的に社会保障のコストパフォーマンスが悪い。逆に民主的な法治国家は貧しくても疾病率や死亡率をかなり抑えることができる。センは恣意的な強権は社会保障に大きくマイナスに働くと述べております。今回の一件に限らず、異常なまでの最小国家論者にして弱肉強食論者である長谷川豊氏の行うあらゆる主張というのは、常に法を無視した恣意的な強権(弱肉強食の最小国家社会を無理やり成立させるための独裁的強権)を肯定するものであり、またその強権を振るうのは常に長谷川豊氏やそのバックボーン勢力として文中に示されていることを考えなければならないと思いますね…。
最後に、有名な人々がどんな死因でなくなっているかについては、山田風太郎さんの「人間臨終図鑑」がお勧めです。人間はやっぱり美味しいものを食べたりお酒を飲んだり異性と愛し合ったりしたいわけで、そういった不養生な生活を行い続けて、そしていずれ病気(癌がやはり圧倒的に死因には多い)で亡くなっていくということに関しては、市井の一般的な人々と偉大な人々に何一つ違いはないということがよく分かる名著です。
人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)
人間臨終図巻2<新装版> (徳間文庫)
人間臨終図巻3<新装版> (徳間文庫)
人間臨終図巻4<新装版> (徳間文庫)
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“やってしまった”という後悔を理解しない長谷川豊氏
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ishikurafuminobu/20161002-00062776/
健康人、病人にかかわらず全ての高齢者に必要なのが年金で、その額は医療費の比ではない。人にもよるが人工透析を開始後の平均余命は、健康な一般人のおよそ半分といわれているので、60歳で導入した人の寿命は70歳くらいである。たとえ医療費がかかろうと、透析患者さんの年金は健康な人よりかなり少ない。透析患者さんの生涯医療費と年金などの社会保障費を詳しく検討したデータはまだないようだが、喫煙者の医療費に関しては多くのデータがある。それによると喫煙者の短期の医療費は確かに高いが、生涯医療費は変わらない、もしくは低いという。喫煙者にはたいへん失礼ではあるが、非喫煙者より寿命が約10年短いので、年金まで含めた社会保障費はむしろ少ないのではないかと考えられている。長谷川氏は健康に留意すれば社会保障費は少ないと勘違いしているだろうが、健康に留意しても病気の発症が遅れるだけで超高齢になるとほとんどの人が医療のお世話になる。しかも80歳を超えると認知症の発症が極めて高くなるので介護も必要になる。高齢化社会の問題は病気、健康にかかわらず、年金が大きな問題である。“健康=社会に貢献している”という妄想は捨てたほうが良い。
これはその通りだと思いますね。社会保障費は圧倒的に高齢者に掛かる費用割合が大きく、「健康で長生きする人々が多い豊かで平和な社会」=「いつかあるべき理想として目指す社会」に近づけば近づくほど社会保障費は掛かるわけです。それをみんなで負担しましょうというのが現代社会の基本でして、長谷川豊氏はそれを全く無視して「病人は社会の負担なので抹殺せよ」とか異常極まりないことをのたまっている訳です。
ちなみに上記のエントリにさらに追記するなら、「社会の負担」として長谷川豊氏が抹殺を主張する「不摂生な生活で病気になった(かもしれない)人々」には、長谷川豊氏なんぞとは比較にならない、それこそ人類社会全体に貢献した、人類史に残る偉大な人々が大勢いるんですよね…。長谷川豊氏が「病人は社会の負担だから抹殺せよ」とか述べるのは、ゴミが太陽に向かって文句を言っているように感じられて、本当に愚かだなと感じますね…。幾人か「不摂生な生活で病気になったと推察されている人々」についてご紹介致しますね。
アレキサンダー・グラハム・ベル
電話の発明者。彼がいなければ、我々が今使っているインターネットの姿もなかったであろう。彼は若い頃から大食漢で肥満をわずらい、身長180センチだが、体重は120キロ近くあった。暴飲暴食と肥満が原因と推定される糖尿病をわずらい、死去。
オノレ・ド・バルザック
フランスを代表する作家にして世界的大作家。社交界を愛する女好きの美食家で知られ、「バルザックは執筆をしていない時は、社交界でたらふく食べているか、美しいマダム達と愛を語り合っている」と言われた。ベルと同じく美食と肥満が原因と推定される糖尿病をわずらい、死去。
岸田劉生
日本を代表する天才画家。代表作「麗子像」は今もたいへん有名である。とてつもない遊蕩児としても有名で、死ぬときも山口県徳山の料亭栄亭で、友人達と美技十数人を呼んだ大宴会の最中に体調を崩して急死した。死因は放埓な遊蕩が一因と推定される腎臓病。
他にも、社交界との付き合いが多い政治家・芸術家には不摂生(社交界における美食・酒宴)によるもの(糖尿病や腎臓病の他にも肝硬変等)と思われる病気で亡くなった人々が大勢いるわけですよ。どう考えてもこれらの人々は長谷川豊氏とは全く比較にならぬレベルで社会に貢献しており、「病人は社会に負担だから抹殺しろ」と述べる長谷川豊氏の方が社会に貢献どころか、社会にとって危険な人物であることは火を見るよりも明らかです。
だいたい、長谷川豊氏が今回のことに限らず、何か(主に長谷川豊氏が気に入らない弱い立場の人々)を攻め立てる時に常に使っている「自己責任」と言う言葉自体がトリックで、「これは奴らの自己責任だから救済する必要がない」みたいな論法は何にでも使える悪魔の論法なんですね。因果論的責任なんてものは本来的に立証の仕様がない曖昧なものですから、解釈のしようでいくらでも拡大やこじつけができる。上述した人々も、実際に不摂生な生活と病気と因果関係が確実にあるかどうかということは分からないわけです。因果はあまりにも無数のファクターがありすぎるので、それらを解き明かすことは人間には不可能です。大規模統計による大まかな因果論的判断(例えば煙草を吸う層に肺癌が多いというデータ)と、個々人の因果の判断(煙草を吸う人が肺癌になってもそれは煙草が原因かどうかは判断できない)、この二つは全く異なるものであることを留意すべきです。
ゆえに、法律は因果論ではなく、実際の事象によって判断する(例えば、病気の時は一律に公的健康保険の対象になる)訳です。それを、「病気の原因の因果を遡って自己責任かどうか判断して医療費を出すかを選別する」なんてことは論理的にも実際的にもできっこないですし(因果を紐解くことは人間の限界を超えている)、それを無理やりやっている長谷川豊氏の論法はその時点で完全に詭弁であるということを、読み手はきちんと判断しなくてはならないと思いますね。
先日ご紹介した経済学者のアマルティア・センがデータで示していますが、恣意的な権限による国家(独裁国家・軍などの強権が法を無視して振舞う非法治国家)と民主的な法治国家だと、社会保障予算のコストを見たとき、明らかに前者の国家の疾病率や死亡率の方が対コストで跳ね上がるんですね。長谷川豊氏が理想とする強権的な最小国家の方が圧倒的に社会保障のコストパフォーマンスが悪い。逆に民主的な法治国家は貧しくても疾病率や死亡率をかなり抑えることができる。センは恣意的な強権は社会保障に大きくマイナスに働くと述べております。今回の一件に限らず、異常なまでの最小国家論者にして弱肉強食論者である長谷川豊氏の行うあらゆる主張というのは、常に法を無視した恣意的な強権(弱肉強食の最小国家社会を無理やり成立させるための独裁的強権)を肯定するものであり、またその強権を振るうのは常に長谷川豊氏やそのバックボーン勢力として文中に示されていることを考えなければならないと思いますね…。
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人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)
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