2016年06月

2016年06月29日 18:23

モナドの領域

なんか、イギリスがあくまで国民の権利として行った国民投票なのに、日本のマスメディアで、イギリスのEU離脱批判が凄いですね。日本のマスメディアの論調だと、「イギリスの偉大なるエリートの決断(EU残留)に従わなかった愚劣なる大衆達」「愚劣な大衆に国家の先導を任せる国民投票という仕組みが間違っている」みたいなエリート信仰とイギリス大衆蔑視が酷く、見ていて気分が悪くなります。

個人的には、「愚劣な大衆が国を滅ぼしてきた例」よりも、「愚劣なエリートが国を滅ぼしてきた例」の方が、遥かに数が多く社会全体の惨禍も激しかったと思いますが、まあそれは置いておきます。

ネットだと日本のマスメディアの酷い部分がさらに拡大している感じで、いわゆる政治エリート本人ではなく、政治エリートの金魚の糞みたいな人や、更にそういったエリートにまとわりつく周辺エリートの金魚の糞みたいな人が、無自覚に「エリートは正しく、大衆は間違っていて、エリートに従うことこそ正解であった!」みたいなことを述べていますね。前述のタイプの典型である脳科学者の茂木健一郎氏や後述のタイプの典型であるアルファブロガーのessa氏のブログとかまさにその代表例と言えると思います。

EU離脱は、英国の終わりの始まりなのか
http://lineblog.me/mogikenichiro/archives/4214564.html
何よりも当惑するのは、今回の、国民投票から離脱への動きが、英国の最良の伝統と齟齬を起こしていることだろう。英国は、国民投票のようなむき出しの多数決でものごとを決める、というやり方とは違う何かで、国を動かしてきたように感じる。(中略)EU離脱は、英国の終わりの始まりなのだろうか。今までの英国の伝統が、根底から覆されようとしているように感じる。
 
「上級国民」の失敗としてのEU離脱」
http://d.hatena.ne.jp/essa/20160626
世の中が複雑になって、「上級」の人たちがうまくその複雑性をさばけなくなっている。大衆は、それぞれが独自の「上のやつら」というものを敵視している。私はそれは誤解だと思うのだが、誤解の気分はみんな共通しているのに、誤解の形はみんな違っていて、それぞれが違う「上級国民」に怒っているので、論理的な説得ができないのだ。

こういった論調は典型的なエリート信仰者達のバックラッシュとしか感じられないんですね。彼らの論調に特徴的なのは、自分で考えることを一切放棄して、「『権力機構側のエリート対大衆』という枠組みであれば、常に前者が正しい」という教条的ドグマに陥っていることです。エリートという律法的真理が存在すると考えられる彼ら、常に権力エリートの立場に付くことを超越的正義と信仰する彼らはパリサイ人か何かの思想的子孫であられるのかな?

ヤフー知恵袋「イエスと律法学者・パリサイ人の違いはなんですか?」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12130548997
律法学者・パリサイ人について、なぜイエス様が否定的だったのかは、マタイによる福音書第23章に長々と書かれていますので、まずはお手持ちの聖書でお読み下さい。長いので、ここには書きません。

イエスと律法学者・パリサイ人の大きな違いは、「そこに愛があるか否か」でしょうね。

本来、律法とは十戒を基本とした正義、慈悲、誠実の為の教えなのですが、パリサイ人は律法を重視するあまり、本質からそれ、律法を守る事のみに執着したからです。

律法を重視するあまり、解釈が細分化し、「せねばならない」項目が248、「してはならない」項目が365と増え、これらの律法を守り抜かなければ天国には行けないとしました。

その為なら人を見捨てる事もありましたし、そもそも貧乏人には律法を守る事は困難なのです。

十戒には、「安息日を心に留め、聖別せよ。主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。」とありますが、ユダヤ教では安息日中は調理や明かりを灯す事も労働とされ、これを守ろうとすると食事が出来なくなってしまいますので、お金持ちは貧者を雇い安息日を守りました。(現在は、タイマー付きの調理器具や照明で全て解決)

お金持ちはその財力により律法を守り通し、神殿にたくさんの捧げ物をする事で正しい人、天国へ行く人とされ、貧乏人は生活の為とはいえ律法に背きますから正しくない人、天国には行けない人とされました。

お金持ちの為の宗教になってしまい、貧乏人や弱者が決して救われる事の無い宗教になってしまったのです。

お金持ちにとって都合の良い世になるのは今に始まった訳ではなく、昔からそうだったのですね。


「安息日に律法で許されているのは、善を行うことか、悪を行うことか。命を救うことか、殺すことか。」
(新共同訳聖書 マルコによる福音書 第3章4節)

そこでイエスキリストは、罪人を招き、安息日であっても病人を癒されたのです。

これはパリサイ的信仰では正しくない行いですが、律法の本質としては正しい事でした。

神の教えを守る為、パリサイ人の律法をことごとく破り、否定しましたので、人々を惑わし神を冒瀆したと見なされ逮捕、処刑されたのです。

国や宗教により虐げられていた貧者や弱者を取り入れ、急速に勢力拡大したイエス教団は脅威だったのでしょう。

お金持ちにとって都合の良い世を変えられるのは嫌だったんだと思います。

「心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして神を愛し、また隣人を自分のように愛するということは、どんな焼き尽くす捧げ物やいけにえよりも優れています。」
(新共同訳聖書 マルコによる福音書 第12章33節)

「二人の人が祈るために神殿に上った。一人はファリサイ派の人で、もう一人は徴税人だった。
ファリサイ派の人は立って、心の中でこのように祈った。
『神様、わたしはほかの人たちのように、奪い取る者、不正な者、姦通を犯す者でなく、また、この徴税人のような者でもないことを感謝します。
わたしは週に二度断食し、全収入の十分の一を献げています。』
ところが、徴税人は遠くに立って、目を天に上げようともせず、胸を打ちながら言った。
『神様、罪人のわたしを憐れんでください。』
言っておくが、義とされて家に帰ったのは、この人であって、あのファリサイ派の人ではない。
だれでも高ぶる者は低くされ、へりくだる者は高められる。」
(新共同訳聖書 ルカによる福音書 第18章 10〜14節)

「律法学者に気をつけなさい。彼らは、長い衣をまとって歩き回ることや、広場で挨拶されること、会堂では上席、宴会では上座に座ることを望み、また、やもめの家を食い物にし、見せかけの長い祈りをする。
このような者たちは、人一倍厳しい裁きを受けることになる。」
(新共同訳聖書 マルコによる福音書 第12章38〜40節)

イエス様は姦通の罪を犯した女性をも赦し、もう罪を犯さないように助言した上でパリサイ人の手から逃がしてあげました。

パリサイ的にはその場で一発アウト、モーセの律法に従い石打ちによる死刑です。

キリスト的には、罪を犯したか否かよりも、罪を悔い改めたか否かが重要なようです。

律法を守るに越したことはありませんが、大事なのは罪の意識であり、おごり高ぶる事なく謙虚に生きなさいって事ですね。

パリサイ人の信仰には赦すという概念がありません。律法を守る為、常に人を裁きます。

「律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。人々の前で天の国を閉ざすからだ。
自分が入らないばかりか、入ろうとする人をも入らせない。」
(新共同訳聖書 マタイによる福音書 第23章13節)

「佐藤香代さん。わしはあんたが言うキリストではない。そして、お前さんは特に信心深くもないが、わしはお前さんが考えているような神様でもない」

教授は顔を宙空に向けたままで言った。

「その子は、佐藤弾君は、三十七ヶ月と四日前に、お前さんの不注意から自動車事故にあって足が不自由になった。だからそれは自然なことだったんだ。その子の足が(超常的な奇跡で)治ればそれは不自然なことになってしまう。この子にとっては不幸だが、不幸な子供というのはだいたい、よくない両親のかわりに社会から罰せられているんだが、その罰を与えているのはわしではなくお前さんたち人間なんだ。この子がその不幸を乗り越えるかどうかもお前さんたち次第だ。そしてまた、いわゆる信心深い者たちは、善良な者が不幸な目に遭うのはそれがお前さんたちの罪の連帯責任によるものだと思っていることが多いが、これもまたそうではない。だいたい連帯責任なんてことも、そもそも責任なんてものも存在しない。架空のことだ。罪とか罰とかもだ。罪も罰もお前さんたちが好きに作って好きにやっとる」
(筒井康隆「モナドの領域」)

最後についさっき読んだイギリス人の方のブログが、とても良かったのでご紹介致しますね。こういうの読むと英語はちゃんと勉強しないとだめだなあと感じますね…。日本語だけだとネットの視野はどうしても狭まってしまいますから…。

特権エリートに英国民が翻した反旗、イギリス人として投票直後に考えたこと
http://www.newsweekjapan.jp/joyce/2016/06/post-109.php
今回の国民投票に向けたキャンペーンは、不愉快な選挙戦だった。残留派、離脱派どちらもほめられたものではなく、双方が大げさな主張をして相手を侮辱した。1つの事例を取り上げるのはフェアじゃないかもしれないけれど、ガーディアン紙に掲載されたクリス・パッテンの記事は、特に腹が立った。

 パッテンは国民投票を実施すること自体がひどいアイデアだと書いた(「粗野なポピュリストの道具だ」「議会制民主主義への脅威だ」「次は何だ? 死刑制度の是非を問う国民投票か?」といった具合だ)。そして、反EU派の意見を「外国人嫌いの不快なイングランド的ナショナリズム」だと言ってみせた。

 パッテンは1992年の総選挙で国会議員の職を去るまで、公人として比類なきキャリアを築いていた。返還前の香港で最後の総督を務め、欧州委員会委員(素晴らしきブリュッセルの権力者の1人だ)として勤務し、BBCの監督機関であるBBCトラストの会長に就き、貴族院の議員を務めた。これらの役職全てが、権力(いくつかはとんでもなく強い権力だ)と名声と豪勢な生活(高給と恵まれた「特権」)を彼に与えてきた。そしてそのどれも、選挙不要で就くことができた役職だ。

彼は今、オックスフォード大学総長を務めている。少なくともこの職に就くためには、選挙で選ばれる必要があった。それでも投票できるのはオックスフォード大学卒業生だけ。「エリートのお仲間」による選挙だ。

 だから僕は、イギリスが今まさに直面する最重要問題について一般国民が投票で意思表示をすることすらパッテンが認めないのは、あまりにひど過ぎる話だと思った。それはつまり、彼や彼の同類たちは、僕たち国民にとって何が最良なのかは、国民でなく彼らが決めるべきだと考えているということだ。

 記事を読んだとき、僕はムカついた。でも思い返せば、僕はパッテン卿が率直に胸の内を明かしたことを称賛すべきだった。まさにイギリス国民は、そんなお高くとまった国民蔑視に、反旗を翻したのだ。

モナドの領域モナドの領域
著者:筒井 康隆
新潮社(2015-12-03)
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2016年06月27日 16:00

求む、有能でないひと

EU離脱はイギリスにとって、経済的にデメリットよりもメリットの方が大きい選択だったという分析が経済専門家の間からもちらほら出てきましたね。

英EU離脱で「英連邦」が超巨大経済圏として出現する
http://diamond.jp/articles/print/93364
英国のEU離脱は、おそらく中長期的にみれば、英国にとって不利益ではない。むしろ、英国に抜けられるEUの不利益となるのではないだろうか。換言すれば、ギリシャなど財政悪化に苦しみ、経済の弱い国を抱えるEUこそ、英国にとって「お荷物」な存在なのだと考えることもできる。英国はEU離脱で、確かに短期的に損失があるかもしれないが、「木を見て、森を見ない」話ではないだろうか。

これはその通りだと思いますね。EUというのは簡単に言えば、国民を守る貿易関税と財政政策、そして国家の再分配機能を弱体化することでEU域内の貿易と財政を平準化(グローバリズム化)するシステムでして、貧しい層(貧しい国)から豊かな層(豊かな国)に所得をガンガン移転するシステム(結果としてEU全体の格差が開き貧困化が進む)で、しかもEU経済官僚をドイツが牛耳ることで、ここでいう豊かな層とはドイツの富裕層とほぼイコールで結ばれるという、ドイツがヨーロッパ中の富を収奪するドイツ第四帝国的システムであることは火を見るよりも明らかな訳で、貧しい人々を経済的収容所へ送るが如き経済帝国主義こそがEUの実態であり、こんなドイツ第四帝国主義が上手く行く訳が無い。歴史は繰り返すの言葉通りで、過去の例で言えば今は1943年あたりじゃないかと思います。

ニーチェが、ヨーロッパは全人類史的に反面教師にされるべき地域だと述べていて、これは道徳の系譜的立場(反キリスト教的立場)からの言葉なので、これとはニュアンスは違いますが、私もやはりヨーロッパは全人類史的に反面教師にされるべき地域だと思います。それは、ヨーロッパの歴史というのは、

1.どこかが全ヨーロッパ征服の野望に燃えて帝国主義的拡張を始める。
2.最初はガンガン拡張して調子が良い。
3.拡張の中枢(帝国の首都)の収奪が酷すぎて周辺が反逆しゆり戻しが来る。
4.中枢(帝国)が敗北し帝国が崩壊してバラバラに分裂する。
5.全ヨーロッパが廃土と化す。
6.再建が始まる。
7.1に戻ってどこかが全ヨーロッパ征服の野望に燃えて帝国主義的拡張を始める。

というのを延々と繰り返している地域なんですね。まさに『二千年のあいだ何も成長していない』…。

ソースが見つからなくて申し訳ないのですが(図書館で新聞読んでいたとき見つけた記事です)、EU離脱に関して、グリーンスパンが、平準化施策によって全体の賃金が低下していることが問題だと発言していました。いま探してたらソースありました。下記です。

米FRB元議長、英EU離脱「氷山の一角」 低賃金憂慮
http://www.asahi.com/articles/ASJ6T41DPJ6TUHBI00P.html
 米国の中央銀行、米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン元議長は24日、米CNBCテレビの番組で、英国のEU離脱について「英国で起きている問題はずっと広がりがあり、氷山の一角に過ぎない」と話した。

 グリーンスパン氏は「我々が直面しているのは、欧州全体に広がる実質賃金の急激な減速だ」と指摘。生産性の低迷で賃金が上がらない状況が「米国だけでなく、(先進国でつくる)経済協力開発機構(OECD)諸国に広がっている」との見方を示した。

 その上でグリーンスパン氏は「通貨ユーロは喫緊の問題だ。欧州の政治的な統合に向けた大きな一歩だったが、ギリシャが深刻な問題にあるという意味でも衰えている」と話した。

EUなどという貧しい層を苦しめることしか考えていない経済帝国主義が崩壊に向かっていることを歴史の教訓として、国家が国民を守るということが再び見直されてくれることを、祈るばかりです。

最後にG・K・チェスタトンのエッセイ「根無し草スナオ」「過去を取り戻す自由」を全文ご紹介致します。まさに今読まれるに相応しい名エッセイと思います。両エッセイ共に「求む、有能でないひと」に収録されています。

G・K・チェスタトン

「根無し草スナオ」

『未来』はいつも暴政だった。

一般の民衆たちは「進歩」の名のもとに伝来の財産を奪い取られた。

地獄から来た破壊者たちは、彼らからパンを取り上げて、その代わりに石ころを与え、それを神様が選んだ貴重な石だと思い込ませた。

もとの田園生活を取り上げて、近代公共建築(アパートメント)が象徴する「平和と経済」の黄金時代を約束する。いまやわずかに残った戸主としての家長としての尊厳すらも取り上げて、そのかわりにいみじくも「未来予測」なるもの、そして何処からともなくもたらす「ニュース」(マスメディア)なるものを信じ込ませる。昔は共同社会であったが今は個人主義だ。昔は民主主義も懐疑も暴力もなんでもあったけれど、未来はまるで分からない世界として完全な専制独裁になる。昨日は「馬鹿」だったけれど、明日なら「超人」になれる(とマスメディアが言う)。

近代人は、次から次に理由をつけられて、結婚生活を始めるつもりだった家に永久に入れなくされた男に似ている。この男を仮にスナオと呼ぼう。

スナオが望んだのは、神様から授かるはずの当たり前のものだった。恋愛して、結婚して、コートのように自分にあった小さな家を選ぶ、あるいは建てる。そうして曽祖父となって一族からささやかな敬意を抱かれるつもりだった。

ところが、そうしようとした途端に何かが狂った。人か政治か、非道な何かが彼を「家」から引き離した。それで、彼は庭先でご飯を食べるよりほかなくなった。そこへ、偶然にも彼を「家」から引き離した『哲学者』が通りがかりに立ち止まって、優雅に柵に寄りかかりながら演説した。

「君は今、自然の恵みをたっぷりと受けて、見事に果敢に大胆な個人主義的生活を送っている。それこそが崇高なる未来の生活なのです」

けれどもスナオの方は、庭先の生活は自然の恵みをたっぷり受けるというよりも、あまりにも「大胆」なのに気がついて、次の春にはみすぼらしい小さな小屋に引っ越さなければならなくなる。彼を追い出した『哲学者』は、おそらくは家賃の値上げをするつもりか、たまたまその小屋を訪れてこう演説する。

「君はまことにビジネスの努力に励んでおられる。君と家主との経済競争こそが、『崇高なる未来』にお国の富を生むのです」

スナオは経済競争に敗れて、「公共労働施設」に入る。かの追い出し『哲学者』は、またもやたまたまその施設にやってきて、彼にこう思い込ませる。

「これこそ人類の目標たる輝かしき民主政、これこそ官僚が支配する平等と科学の民主主義国家。まさに『崇高なる未来』の民主国家とはこれである」

けれども、割り切れない思いのスナオは、今でも夜な夜な、当たり前の「家」を持ちたいという昔の理想を夢見ている。彼は夢見たものはささやかなものだけど、彼には巨大なものが与えられた。世俗とシステムが与えられ、エデンとユートピアが与えられた。「家」が欲しかっただけなのに、それは叶わない。

近代の「歴史事実」をかのように寓意したとして、何一つ誇張ではない。

貧乏人は道路に放り出されて、そっけなくそれが進歩の道だと言い聞かされた。

工場で働くしかなくて新型賃金奴隷にされて、それこそが富と文明に至る道だと思い込まされた。

田舎者は、首都には黄金が敷き詰めてあると聞かされて、村の食べ物や酒のある生活から引き離された。

陰気なピューリタン主義の玄関を入ると、暗い産業主義が始まって、どちらも未来へと続く道だと言われた。

そしてまたもや、あの知ったふうな偉そうな口ぶりが、今度は別の真っ暗な玄関口に入れようとする。子供もささやかな財産も父祖の習慣までも、見知らぬ誰かが取り上げてしまうように仕向ける。

これがピューリタン主義や産業主義の幕開け以上の何かの招来なのか、それについては後にゆずる。しかし我々が何かの集団主義に威圧されているのなら、それはやはり、事情に通じた為政者やエリートたちが、一部無関心な、一部暗示に掛かりやすい大衆に付け込んでいるのだと見て間違いない。

G・K・チェスタトン

「過去を取り戻す自由」

復古的でない革命はいまだかつて一つもなかった。

歴史上、未来にたいして本当になにかを為した人物は、みな過去に目を向けていた。未来にばかり目をこらす輩がどうにも怪しげなのは、何よりもこの事実があるからだ。いうまでもなく「ルネッサンス」という語そのものがそのことを証明している。ミケランジェロやシェークスピアの独創は、昔の陶器や写本を掘り起こすところから始まった。詩人が温和なのは、まさに好古家の温和である。中世はローマ帝国の記憶があったから復活した。宗教改革は聖書と聖書時代を振り返った。近代のカトリック運動は初期の教父時代を振り返っている。最たるアナーキーといわれる近代の政治運動は、その意味で最たる保守なのである。

フランス革命ほど過去を尊重したことはない。それは神を権威とする者の確信を持って古代の民主共和制を権威とした。あの過激な革命家たちは、素朴さを取り戻すのが正しいと信じていた。神話的とも思えるほど遥かな昔を深く信じていた。

不思議にも人間は、実りを得るためには常に墓の中に木を植えなくてはいけない。死者のあいだにしか生は見い出せない。人間とは奇怪な生物である。足を前に踏み出しながら頭は後ろを向いている。

未来を豊かにするのならば、過去を考えていなくてはならない。

未来そのものを考えようとすれば、精神は無限に萎んで愚かになる。それを「虚無」と呼ぶものもいる。

「明日」はゴルゴーンだ。「明日」を見るには、「昨日」という輝くアイギスの盾を鏡にしてそこに映し出さなければならない。直接に見ようとすれば人は石になる。

運命と未来は決定的で避けようがないなどと、本当にそう信じる者は石になっているのだ。

求む、有能でないひと求む、有能でないひと
著者:G.K. チェスタトン
国書刊行会(2004-02)
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2016年06月26日 01:25

EU離脱問題で、ネットで見かけたイマジン改変のコピペが秀逸だったのでご紹介致しますね。私は貧しい層を弾圧しているEU残留派の新自由主義者EU官僚達が大嫌いで、EU離脱派に全面的に賛成しているので(日本の株価が下がったのは悲しいことと思いますが、イギリス国民は長期的に見て経済的にも倫理的にも正しい選択をしたと思います)、こういう皮肉のスパイスの効いたコピペ好きですね。

EU問題について考えたいお方々には「帰ってきたヒトラー」というユーモア小説がお勧めです。凄く面白い小説で、優れた小説はどれもそうであるように多面的な小説ですが、そこで描かれる一つとして、ヨーロッパにおいて「ポリティカル・コレクトネス」(政治的正しさ、具体例を挙げると「移民を受け入れることは倫理的に完全に正しい」のような言説)の名目の元に人々が弾圧され、苦しんでいるのがよく分かる。

「帰ってきたヒトラー」では、死ぬ寸前に現代ドイツにタイムトラベルしたヒトラーが、再びドイツを再建するために全力で行動をし始める物語。最初はヒトラー自身がヒトラーの物真似コメディアンとして、左派も右派も同じ穴の狢で、ドイツ国民を苦しめることしかしていない、真にドイツ国民の幸せを考えているのは自分だという演説で人気を博していく、そして最後はネオナチに襲撃されて重傷を負ったことで、政界への道が開けてゆくという小説なんですが、この小説の皮肉なところは、ヒトラーのする演説や行動に真実味があるからこそ現代ドイツの庶民の人々の心を打つというところですね。

この小説はヒトラーの一人称で描かれておりまして、ヒトラーの思想には大変な問題がありますが、ただ、この小説のヒトラーは本心で心底からドイツ国民のことを思っている、それもドイツの金持ちではなく、ドイツの貧しい人々や中産階級の人々の生活のことを思って行動しているので、現代のドイツ国民が右派と左派両方の結託した支配に苦しんでいることを喝破できる。それは、左派の「ポリティカル・コレクトネス」と右派の新自由主義が結びついた支配なんですね。左派リベラリストが主張する「ポリティカル・コレクトネス」は、実はただ単に右派エリートが貧しい人々を苦しめながら強権的に支配する新自由主義の道具にしかなっていない、左派と右派が結合して貧しい人々を弾圧して苦しめている問題、日本だってこういった仕組みになっているわけで、そしてその最大の先棒担ぎが日本を含めた各国のマスメディアであること、このことはよく考えないといけないことだと思いますね…。マスメディアが「ポリティカル・コレクトネス」を絶対正義として振りかざすことで貧しい人々が抑圧され苦しんでいることを、もっと人々に考えて欲しいです。

地べたから見た英EU離脱:昨日とは違うワーキングクラスの街の風景
http://bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/20160625-00059237/
そもそも、反グローバル主義、反新自由主義、反緊縮は、欧州の市民運動の三大スローガンと言ってもよく、そのグローバル資本主義と新自由主義と緊縮財政押しつけの権化ともいえるのがEUで、その最大の被害者が末端の労働者たちだ。

だから、「大企業や富裕層だけが富と力を独占するようになるグローバリゼーションやネオリベや緊縮は本当に悪いと思うけど、それを推進しているEUには残りましょう」と言っても説得力がなく、そのジレンマで苦しみ、説得力のある残留の呼びかけができなかったとしていよいよ退任を迫られそうなのがジェレミー・コービンだ。

「貧困をなくし、弱者を助ける政治を目指す」と高らかに言って労働党党首に選ばれた人が、グローバリゼーションと緊縮財政のWパンチで「移民の数を制限してもらわないと、賃金は上がらないし、家賃は高騰するし、もう生活が成り立ちません」と訴えている当の貧民たちに、「そんなことを言ってはいけません。自由な人の移動は素晴らしいコンセプトです」と言っても、いまリアルに末端で苦しんでいる者たちには「はあ?」になる。

Brexit〜「極右」vsネオリベ&リベラル連合
http://totb.hatenablog.com/entry/2016/06/24/233127
エリートはリベラリズム・グローバリズムに反対する人々を「ポピュリスト」「極右」とネガティブなレッテルを貼って批判します。

『欧州の右派ポピュリスト政党には、共通点がある。彼らはイスラム教徒の移民に批判的であり、多文化主義や複数主義に反対する。彼らは自国民の利益を優先し、リベラリズムに批判的だ。さらに、これらの政党は反グローバリズム、反ユーロ、反EUという点でも一致している。ポピュリストにとって、EUによる政治統合や経済統合は、自国の利益をないがしろにする、グローバリズムの象徴なのだ。』

「自国民の利益を優先しない」ことを批判しているわけですが、このロジックにエリートが正気を失っていることが示されています。自国民の利益を追求しない政治を、イデオロギーに洗脳されていない一般大衆が支持するはずがありません。

フランスの国民戦線(FN)のルペン党首は、エリートが移民を歓迎する真意は賃金抑制にあると批判していました。エリートが国民全体の厚生よりも金儲けを重視するネオリベ化したことが背景にあります。

『そのあげく先進国で支配的になったのは経済的合理性。利益率でものを考えるような世界です』

ネオリベが金儲けのために移民を推進し、それに一般大衆が反発すると、ネオリベに代わってリベラルがポリコレを振りかざして「レイシスト」と攻撃するという、ネオリベとリベラルの二人三脚が続いていたわけです

Brexit「イマジン」
https://www.youtube.com/watch?v=dq1z1rkjw-E
想像してごらん 国家を超える主権なんて無いんだと
そんなに難しくないでしょう?
移民が勝手にやってきて権利を主張することも外国人への生活保護も無く
そしてグローバリズムも無い
さあ想像してごらん ブリュッセルの官僚が
選挙も経ずに何でも決めることなんかなくなるって...

僕のことを夢想家だと言うかもしれないね
でも僕一人じゃないはず
いつか民族がそれぞれ分かれて各々の主権の下に生きる
きっと国民はひとつになるんだ

いつか民族がそれぞれ分かれて各々の主権の下に生きる
きっと国民はひとつになるんだ

このことこそが、最も大切にしなければならない人間の独立ということ、最も大切なものです。人々が長い歴史の中でずっと戦い、そして勝ち取ってきた民族自決の原則、民主主義です。人間の歴史は、帝国主義的支配に反旗を翻して戦ってきた歴史であり、EUという官僚独裁制による反民主主義的帝国主義は時計の針を逆戻りさせ人間を再び帝国主義の支配の野蛮へ戻してしまう悪夢の仕組みにしか思えません。人間は、生育する生まれ故郷の文化において文化的に生育される。その文化を外部から「正義」の名の下に破壊するものこそ、野蛮な反民主主義的帝国主義であり、人間がずっと戦い続けてきたものなのです。

今回のEU残留派の脅しなどまさに反民主主義的な帝国主義そのものでした。EU残留派(ネオリベラリストとその先棒担ぎとしてポリティカル・コレクトネスを掲げるマスメディア)は「EUを離脱すれば英経済が打撃を受ける。ゆえにEUを離脱してはならない」と脅しつけたのです。これって、映画を中心としたアメリカの大サーガ、「スターウォーズ」で銀河帝国が銀河共和国を滅ぼして帝政に移行するときに使ったロジックそのままじゃないですか。銀河帝国皇帝は、帝政に移行すれば経済的に千年でも繁栄することができる、共和制では経済はガタガタだと脅しつけて共和制から帝政へ移行したのです。このような脅しに屈するということ、それは民主主義の死そのものでした。しかし、経済よりも大切なものがある。それは、民主主義、民族自決の原則を守ることです。EU残留派の卑劣極まりない脅しに負けずに、民主主義を守り、離脱という選択を選んだイギリス国民に心から深い敬意を表します!この選択は、短期的には経済に打撃かも知れませんが、人間、そして人類にとって大きな前進の一歩、人間の尊厳を守る一歩であり、長期的な経済的に、そして何より倫理的に、正しい選択であったと思います。

最後に、「帰ってきたヒトラー」は、現代に裸一貫で放り出されたヒトラーが持ち前のバイタリティとカリスマと先見性と不屈の精神でどんどん成り上がっていくのが凄く面白くて実にお勧めです。「ヒトラーは悪人」みたいな紋切り型の道徳的意識とは全く別次元(この辺は水木しげるさんの「劇画ヒットラー」に近い)のユーモア小説で、北杜夫さんのユーモア小説「父っちゃんは大変人」とかに近い、凄い変人だけどどこか憎めないユーモラスな主人公が大活躍してどんどん世界を変えていってしまうタイプのユーモア小説で、私の大好きなタイプの小説で最高でした。ぜひご一読くださいな。面白さを保証致します。

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2016年06月20日 17:04

恐怖(FEAR)は「Fuck Everything And Run」(何もかもうっちゃって逃げろ)の頭文字だ。
(スティーヴン・キング「ドクター・スリープ」)

アニメ「くまみこ」最終回視聴。くまみこは、これまでの回も「毒のある日常系」みたいな感じで話が進んでいましたが、ついに最終回にて究極のカタストロフィ(主人公まちが妄想と現実の区別がつかなくなり精神的に完全におかしくなる)が訪れ、精神がおかしくなったまちは熊のナツに精神的に異常に依存して物語は終わりました…。後味が非常に悪いサイコホラーとして物語は終焉を迎えましたね…。ほんと驚きました。

見終わって、新井素子さんの傑作サイコホラー「くますけと一緒に」を思い出していましたね。「くますけと一緒に」のバッドエンドバージョンが「くまみこ」ということもできそうだと感じました。「くますけと一緒に」において主人公がくますけ(主人公を手助けする熊の姿をした超常的存在)に依存したまま終わっていたら、「くまみこ」最終回ですね…。

主人公が周囲の世界に恐怖心を抱いていて、熊の姿をした超常的存在が主人公を手助けしているというところでは上記の両者は共通なんですが、「くますけと一緒に」の主人公の周りの人物達はみんな主人公のことを真摯に考えて手助けしてくれる良い人々なのに比べ、「くまみこ」の場合は、まちを自分の出世の為に利用することしか考えていない従兄弟のよしおを始めとして、主人公まちの周囲には彼女を自らのエゴの為に利用しようとする酷い連中しかいないのが、主人公が世界に立ち向かって生きていくハッピーエンドになった「くますけと一緒に」と、主人公が恐怖から逃げて逃避して生きていくバッドエンドになった「くまみこ」の最大の違いかなと思いましたね。

イマジナリー・フレンド的であり、なおかつ超常的な存在が、主人公を手助けして最大の友になってくれるという作品は子供向け娯楽作品の王道であり、その最も成功した例である「ドラえもん」を始めとして無数にありますが、まさか、主人公がイマジナリー・フレンドに依存しすぎて精神的に壊れてしまう作品が出てくるとは…。個人的には今までに無い試みと感じて、毒のある日常系サイコホラーとして面白かったですね。本作「くまみこ」は「ねこぢる」とかのダーク系路線を、日常系の可愛い絵柄でやるアニメでして、なかなか面白い取り組みだったと思います。ただ、毒がありすぎて一般受けはしなさそうな気がしますね…。

あと、完全に余談ですが、今、S・キングの「シャイニング」の続編「ドクター・スリープ」を読んでいて、物語はシャイニングの30数年後の話でして、シャイニングの主人公で霊能力を持つダニー少年が、本作では霊能力を持つ年配のおっさん主人公になっていて、その能力で活躍する面白い話なんですが(本作のダニーはガンダムXのジャミルみたいな感じで、年をとっておじさんになったことで力は相当衰えているがそれでも第一級の霊能力者)、くまみこの主人公のまちも強力なトランス能力を持つ霊能力者な訳で、まちもナツに依存して村に篭るのではなく、その能力で活躍できるようになって欲しいなあと感じますね…。

「多少の『かがやき』(霊能力)を持ってる人間」にはずいぶんたくさん出くわしてきた。例えばビリーがその一人だ。しかし、今夜ダンの頭の中で悲鳴をあげた少女のようなものにはこれまで会ったことがなかった。あの悲鳴には全身をずたずたに切り裂かれるような気分を味わった。

自分もかつてはあれほど強い力を持っていたのだろうか?同等か、ほぼ同等の力があったように思えた。「オーバールック」が冬季休業にはいるあの日、ディックが隣の席の悩める少年にかけた言葉は…なんだった?

ディックは「わしにむかって力を送ってごらん」といったのだ。

《それで、何を考えればいいかとぼくがたずねると、ディックは「ただ強くそれを考えるんだ」といった。ぼくは最後の土壇場で力を――ほんの少しだけ――弱めた。弱めなかったら、あの場でディックを殺してしまったかもしれない。ディックはぎくりと身体をのけぞらせ――ちがう、うしろに叩きつけられて――唇をうっかり噛んでしまった。血が流れていたのは覚えている。それからディックはぼくをピストルだといった。そのあとで、トニーというのは誰かとたずねてきた。目に見えないぼくの友達。だから、僕はトニーのことを話してあげた…》
(スティーヴン・キング「ドクター・スリープ」)

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文藝春秋(2015-06-11)
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2016年06月13日 18:21

フリーゲーム「END ROLL」が素晴らしく面白かったので久々に二次創作を書いてみました。「ハッピードリーム」、SCPオブジェクトとして完全に通用する薬品だ…。ううむ…「時計仕掛けのオレンジ」とか「すばらしい新世界」とか思い出しますね…。全人類にハッピードリームを投与したら世界は平和になるだろうけど、それは果たして良いことなのだろうか…。「END ROLL」、素晴らしく面白い作品です、プレイお勧めです。

END ROLL公式サイト
http://nantekotodesyoune.wix.com/endroll

SCP財団
http://ja.scp-wiki.net/

二次創作「SCPオブジェクト:ハッピードリーム」

SCPオブジェクト:ハッピードリーム

アイテム番号: SCP-888-HD
オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-888-HDはサイト-8080の低危険性SCP保管用薬品冷蔵庫に収納し、常に施錠してください。SCP-888-HDはHDという記名のラベルが張ってあるガラス製のアンプルに詰められた状態で上記の薬品冷蔵庫に施錠保管されています。冷蔵庫の室温は摂氏3℃を維持、冷蔵した状態を保ってください。

概要: SCP-888-HDは「ハッピードリーム」という名称で呼ばれている液状の薬品です。外見は虹色をした無味無臭の液体です。財団の化学チームが内容物の分析を行いましたが、そのほとんどは不明のままです。

SCP-888-HDを10mg以上、被験者の血液内に注入すると、被験者はただちに24時間白昼夢を見続ける忘我状態に入ります。注入から24時間後に被験者は覚醒しますが、夢の中の事は全て鮮明に記憶しています。被験者は夢の中ではっきりとそれを夢であると認識し、夢世界の中で24時間の間、自由に行動する事ができます。夢の内容は被験者によって大きく異なります。

通常の被験者の場合は、夢の中では、被験者の周囲の人物が理想化された状態・被験者に好意を抱いている状態で村人として暮らしている牧歌的な村に被験者が引っ越してきたという設定でその村で一日を過ごすことになります。村人達は基本的に親切でなおかつ被験者に好意を抱いているため、村での暮らしは楽園的で余暇的な生活になります。被験者は夢の中の村人達に親近感と好意を覚えます。

しかし、被験者が殺人行為を起こしている場合、夢の中では、被験者に殺害された人物が理想化された状態・被験者に好意を抱いている状態で村人として暮らしている村に被験者が引っ越してきたという設定でその村で一日を過ごすことになります。村人達は基本的に親切でなおかつ被験者に好意を抱いていますが、村内では被験者の犯罪行為を示唆する暗示的な出来事が多発します。被験者は夢の中の村人達に親近感と好意を覚えますが、それと同時に強い罪悪感を覚えます。

本薬品には中毒性があり、また夢の内容において特殊な連続性を持っています。本薬品を二度目以降投与すると、24時間の忘我状態が再び起こりますが、そこで見る夢は、過去に見た夢の続きとなります。被験者が殺人・傷害などの重大な犯罪行為を起こしている場合、夢の内容は悪夢的なグロテスクなものに変化するとともに、被験者の罪悪感は覚醒時においても極度に増大してゆき、最終的に覚醒状態での自殺に至ります。本薬品で発生した罪悪感はAクラス記憶処理でも消す事ができない特殊なものであり、本薬品によって生み出された罪悪感を消す事は現状では不可能です。

SCP-888-HDはアメリカ合衆国■■州■■市において、株式会社プロメテウス研究所の拠点の一つだったと推測される廃病院を捜索した際に、薬品研究セクターだったと思われるセクター内の薬品保管庫からHDというラベルの貼られた14000本以上の大量の注射用アンプルとして発見されました。捜索時、既にこの拠点は放棄されており無人の廃墟でした。「ハッピードリーム治験報告書:ラッセル記録」という書類が院内のダストシュートから見つかり、この薬品の危険性が発覚しました。財団はDクラス職員14人を本薬品の被験者として慎重に実験を行いましたが、被験者14人のうち殺人行為を行った5人は本薬品投与後4〜6日目に全員が自殺した為、上記治験報告書の信憑性は確かめられたとし、これ以上の実験は無期限停止しています。殺人を行っていない被験者は全員、投与から二週間程度で本薬品の中毒症状から脱し、それ以後は副作用も見られません。

付記:本薬品はプロメテウス研究所壊滅前に一部が外部に持ち出された為、日本生類創研及び日本で活動中の犀賀派も所持しており、犀賀派は本薬品を「夢を通じて平行宇宙へアクセスする薬品である」と主張しているとの情報を、日本で活動中の財団エージェント・速水が報告しています。本薬品が外部に流通する事のないように慎重な追加調査が必要と思われます。


すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)
著者:オルダス ハクスリー
光文社(2013-06-12)
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時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)
著者:アントニイ・バージェス
早川書房(2008-09-05)
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ターミナル・マンターミナル・マン
著者:マイクル クライトン
早川書房(1993-04-21)
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時計じかけのオレンジ 製作40周年記念エディション 2枚組 ブルーレイ(日本語字幕あり)[Blu-ray] [Import]時計じかけのオレンジ 製作40周年記念エディション 2枚組 ブルーレイ(日本語字幕あり)[Blu-ray] [Import]
Warner Home Video
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2016年06月09日 08:40

星雲組曲 (新しい台湾の文学)

台湾のSF作家、張系国のSF短編集「星雲組曲」読了。素晴らしく面白い中華SFでして、中華SFって始めて読んだのでとても新鮮でした。テッド・チャンやケン・リュウのような中国系アメリカ人SF作家の作品は、やはり「アメリカのSF」なんですが、こちらの星雲組曲は、台湾・中国、そして中華系の人々の末裔が作った星間国家を舞台にしたSF短編集でして、出てくる人物や文化がみんな中華の人々、中華の文化なんですね。こういう中華SF読むの初めてなんで、新鮮で凄く面白かったです。

本作の様々な短編物語全体は、とてつもなく巨大な一つの未来史の中の各種エピソードという位置づけで、その未来史の中では、中国全体で起きた民主主義革命によって、中国共産党が倒されて中国が台湾と一体となった完全な民主主義国家に生まれ変わっていて、それによって、民主主義的な中国の未来(宇宙に進出した中華の人々の未来)を描いているという仕掛けなんですね。ここなんかは、台湾の作家ゆえにできる自由さを感じましたね。言論統制されている現代中国の内部から中国共産党が倒された世界のSF的未来史を描くなんて絶対に許されないでしょうからね…。

ただ、政治的な要素はあくまでおまけで、本作で最も面白いのは、不可思議でユーモアと諧謔に溢れた魅力的な物語個々の作品ですね。アメリカSF(そしてアメリカSFを直接受け継いだ日本SF)的な「科学偏重」なSFとは全く対極の、科学的な要素は脇に置いて、あくまで面白くて不可思議な未来世界の法螺話を書いているという感じの作風で、凄く面白い。蒲松齢の「聊斎志異」にオリジナルSF要素を入れて未来風に仕立てた感じですね。奇想天外で不可思議な法螺話のSF作品というところがラファティの短編作品とか思い出させます。更に本作収録の「銅像都市」とか、読んでいて物凄く大きな歴史の大局的な流れを感じさせるところは、まさに中国四千年の歴史だなという感じがしますね。

また、日本の娯楽文化もかなり入っている感じで、手塚治虫の「緑の猫」をオマージュした「緑の猫」(本書前書きに手塚へのオマージュのメッセージが捧げられています)とか、オタク青年と人妻の不器用なロマンスを描いていて、とても良かったですね。他にも、転生するたびに鼻が大きくなる好人物の登場人物が出てくる短編とか、手塚作品へのオマージュがあちこちに散見されるのが読んでいて楽しい。この辺は日本の文化と親和性が高い台湾文化ならではという感じで嬉しくなりますね。

本作「星雲組曲」、どの短編も素晴らしく面白い、まさにSFならではの良い意味の「法螺話」が楽しめる傑作SF短編集です。中華SFというところが新鮮ですし、また全体的に楽観的で楽天的な感じで、読んでいて楽しいのも本作の良いところですね。毛色の変わった楽しく面白いSFが読みたいお方々にぜひお勧めの良作SF短編集でした。心からお勧めな良書です。また本作が面白かった方で聊斎志異がまだ未読の方がいらしたら、ぜひ聊斎志異も読んで欲しいですね。

星雲組曲 (新しい台湾の文学)星雲組曲 (新しい台湾の文学)
著者:張 系国
国書刊行会(2007-05)
販売元:Amazon.co.jp

大活字版 ザ・聊斎志異―聊斎志異全訳全一冊 (グラスレス眼鏡無用)大活字版 ザ・聊斎志異―聊斎志異全訳全一冊 (グラスレス眼鏡無用)
著者:蒲 松齢
第三書館(2007-01)
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