2017年02月11日 03:52
けものフレンズは知能を下げる作品ではない。寧ろそういった他者への偏見を打破する優れた作品。
けものフレンズが、ヤフーニュースのTOP記事を始めとした大ムーブメントとなり、けものフレンズを毎回楽しく拝見している一ファンとしてとても嬉しいのですが、ただ、一つだけ気がかりがあるので筆を取らせていただきました。
けものフレンズが大ムーブメントになるにつれ、「けものフレンズは知能を下げる作品」というような言説が巷にあふれ出していますが、決してそんなことはありません。けものフレンズは非常に確りと作られた、製作側の真摯な姿勢を感じる優れた作品で、視聴者の心に残る物語と、可愛らしく魅力的なキャラクター達が織り成す真面目な作品です。決して視聴者を甘く見ているような程度の低い作品ではありません。
吉崎観音さんがデザインした、子供にも親しみやすい可愛らしいけものフレンズのキャラクター達は、アニメにおいて、それぞれ真剣に考えられた確りとしたキャラクター造形が脚本においても演出においても演技においても為されており、キャラクター達はそれぞれキャラクターとして、一生懸命に生きている、その真摯さの上に成り立つ、キャラクター達の優しい信頼関係が胸を打つ物語であるんですね。本作はユーモア作品としても優れており、ほのぼのとした暖かいユーモアが溢れていますが、それもまた、決して、愚かしさを上から笑うユーモアではなく、逆に、あたふたしているフレンズ達に親しみを感じて見ている方が応援したくなるような、優しいユーモアです。
ちょっと厳しいことを書くと、「可愛らしいゆるさを感じるキャラクター」と、その「キャラクター達があまり頭がよくないように見える」(実際はかばんちゃんは聡明ですし、フレンズ達は善良で一生懸命で応援したくなるようなキャラクターです)そして、「優しい雰囲気」というだけで、『見ている人間の知能を下げる』という、一般的にはネガティヴに捉えられる言説を唱えるのは、それこそが偏見に充ちた先入見であり、批判されるべきものだと思います。
こういった偏見に充ちた先入見に苦しめられてきたのは、それこそこれまで創作を楽しんできた人々であるのに、どうしてネガティヴ情報を拡散することで力を得ている一部の問題あるまとめサイト群などに煽られて簡単にそういう偏見に充ちた意識を受け入れてしまう人々が多いのかなと…。
それこそ、これまでずっと、創作者と創作を楽しむ人々は、偏見と差別的意識に充ちた「見識ある現実的な人々」から、「漫画は活字より劣っている」だとか、「18禁作品は須らく愚劣である」とか、「実写映画に比べればアニメは下らない」とか、偏見以外の何物でもない先入見からの差別を受けてきたではないですか。これまで偏見に苦しんできた人々が、どうして、一部のまとめサイト群などに煽られると偏見を持つ側に立ってしまうのか、本当に理解に苦しみます。
頭の悪い作品と呼べるのは、視聴者のことを甘く見ていることが分かる作品、視聴者の程度を甘く見て(製作側が視聴者を馬鹿にしていて)、「こういうパターンを流せば視聴者は喜ぶだろう」みたいなパターンでしか作品を組み立てていないような作品、製作側に創作者としての誇り高さが全くないような作品ならば、頭の悪い作品と呼ぶこともできるかも知れません。しかし、けものフレンズは、そういった作品とは全く逆な訳です。けものフレンズの製作側が真剣に創作に向き合って作られていることが、きちんと見ればきちんと分かる。作品の見事な真摯な出来として伝わってくる。
例えば、作品で描かれるフレンズ達の知性は、フレンズ達が善良であり、衣食住に困っておらず、単独者として自然の中で生きているところから生まれている知性であり、それは、現代日本の人間の知性とは異なる形の知性であるということ(フレンズは我々のような「歴史的な熱い社会・変化蓄積がないと崩壊する膨張世界」ではなく「神話的な冷たい社会・変化蓄積が無くとも安定している平衡世界」に生きているということ)が作品を通してきちんと描かれている。きちんと世界と存在の関係が論理的に構築されている。
それを、作品で描かれる世界を全く見ずに、表層的な描写を馬鹿にする行い、異なる世界(社会環境)から生まれた異なるフレンズ達の知性を、ただ現代日本の知性とは異なっているという理由だけで断罪して嘲笑する行いこそ、反知性的な行いそのものであると思います。私などは、フレンズ達の善良さとその行為(例えばカワウソさんの遊びやジャガーさんの無償渡し舟やアルパカさんの無償カフェやビーバーさんとプレーリードッグさんの協調的分業など)に我々の持つ文明性とは異なった可能性の文明性を感じます。
フレンズ達の、現代日本が考える知能や知性とは異なりながらも、そこに世界の裏づけを感じる真摯な行動、そこにある我々の持っていない文明性を学んでいくことが、見ているときは心から楽しみながら、そして見終わった後は、意識的にしても無意識的にしても、そういったフレンズ達の文明性をいつのまにか学んでいるところが、けものフレンズの真に凄い素晴らしいところの一つだと思います。けものフレンズは、見て楽しめ、また構造としてもいつの間にか新しい視野を学んでいる、作品として優れた多重性を持っている。
そしてその体験は、異なる他者の異なる思考に素晴らしいものがあるという、私達の様々な先入見自体を揺らがして新しい視野を開いてくれる体験となる。虚心坦懐にけものフレンズを見れば、私達の様々な偏見はいつのまにか打破してくれている。新しい視野を開いてくれる作品、本当に素晴らしい作品と感じています。
けものフレンズ関連エントリまとめ。随時更新(最新更新17/2/13)
http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1921487.html
タイガーブックス(1) (手塚治虫文庫全集)
著者:手塚 治虫
講談社(2011-02-11)
販売元:Amazon.co.jp
イシ―北米最後の野生インディアン (岩波現代文庫―社会)
著者:シオドーラ・クローバー
岩波書店(2003-11-14)
販売元:Amazon.co.jp
野生の思考
著者:クロード・レヴィ=ストロース
みすず書房(1976-03-30)
販売元:Amazon.co.jp
はじめての構造主義 (講談社現代新書)
著者:橋爪 大三郎
講談社(1988-05-18)
販売元:Amazon.co.jp
けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック (1)
KADOKAWA(2017-03-25)
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けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック (2)
KADOKAWA(2017-04-26)
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けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック (5)
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けものフレンズBD付オフィシャルガイドブック (6)
KADOKAWA(2017-08-26)
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ようこそジャパリパークへ(通常盤)
アーティスト:どうぶつビスケッツ×PPP
ビクターエンタテインメント(2017-02-07)
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PC18禁ゲーム総合ストア
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けものフレンズが大ムーブメントになるにつれ、「けものフレンズは知能を下げる作品」というような言説が巷にあふれ出していますが、決してそんなことはありません。けものフレンズは非常に確りと作られた、製作側の真摯な姿勢を感じる優れた作品で、視聴者の心に残る物語と、可愛らしく魅力的なキャラクター達が織り成す真面目な作品です。決して視聴者を甘く見ているような程度の低い作品ではありません。
吉崎観音さんがデザインした、子供にも親しみやすい可愛らしいけものフレンズのキャラクター達は、アニメにおいて、それぞれ真剣に考えられた確りとしたキャラクター造形が脚本においても演出においても演技においても為されており、キャラクター達はそれぞれキャラクターとして、一生懸命に生きている、その真摯さの上に成り立つ、キャラクター達の優しい信頼関係が胸を打つ物語であるんですね。本作はユーモア作品としても優れており、ほのぼのとした暖かいユーモアが溢れていますが、それもまた、決して、愚かしさを上から笑うユーモアではなく、逆に、あたふたしているフレンズ達に親しみを感じて見ている方が応援したくなるような、優しいユーモアです。
ちょっと厳しいことを書くと、「可愛らしいゆるさを感じるキャラクター」と、その「キャラクター達があまり頭がよくないように見える」(実際はかばんちゃんは聡明ですし、フレンズ達は善良で一生懸命で応援したくなるようなキャラクターです)そして、「優しい雰囲気」というだけで、『見ている人間の知能を下げる』という、一般的にはネガティヴに捉えられる言説を唱えるのは、それこそが偏見に充ちた先入見であり、批判されるべきものだと思います。
こういった偏見に充ちた先入見に苦しめられてきたのは、それこそこれまで創作を楽しんできた人々であるのに、どうしてネガティヴ情報を拡散することで力を得ている一部の問題あるまとめサイト群などに煽られて簡単にそういう偏見に充ちた意識を受け入れてしまう人々が多いのかなと…。
それこそ、これまでずっと、創作者と創作を楽しむ人々は、偏見と差別的意識に充ちた「見識ある現実的な人々」から、「漫画は活字より劣っている」だとか、「18禁作品は須らく愚劣である」とか、「実写映画に比べればアニメは下らない」とか、偏見以外の何物でもない先入見からの差別を受けてきたではないですか。これまで偏見に苦しんできた人々が、どうして、一部のまとめサイト群などに煽られると偏見を持つ側に立ってしまうのか、本当に理解に苦しみます。
頭の悪い作品と呼べるのは、視聴者のことを甘く見ていることが分かる作品、視聴者の程度を甘く見て(製作側が視聴者を馬鹿にしていて)、「こういうパターンを流せば視聴者は喜ぶだろう」みたいなパターンでしか作品を組み立てていないような作品、製作側に創作者としての誇り高さが全くないような作品ならば、頭の悪い作品と呼ぶこともできるかも知れません。しかし、けものフレンズは、そういった作品とは全く逆な訳です。けものフレンズの製作側が真剣に創作に向き合って作られていることが、きちんと見ればきちんと分かる。作品の見事な真摯な出来として伝わってくる。
例えば、作品で描かれるフレンズ達の知性は、フレンズ達が善良であり、衣食住に困っておらず、単独者として自然の中で生きているところから生まれている知性であり、それは、現代日本の人間の知性とは異なる形の知性であるということ(フレンズは我々のような「歴史的な熱い社会・変化蓄積がないと崩壊する膨張世界」ではなく「神話的な冷たい社会・変化蓄積が無くとも安定している平衡世界」に生きているということ)が作品を通してきちんと描かれている。きちんと世界と存在の関係が論理的に構築されている。
それを、作品で描かれる世界を全く見ずに、表層的な描写を馬鹿にする行い、異なる世界(社会環境)から生まれた異なるフレンズ達の知性を、ただ現代日本の知性とは異なっているという理由だけで断罪して嘲笑する行いこそ、反知性的な行いそのものであると思います。私などは、フレンズ達の善良さとその行為(例えばカワウソさんの遊びやジャガーさんの無償渡し舟やアルパカさんの無償カフェやビーバーさんとプレーリードッグさんの協調的分業など)に我々の持つ文明性とは異なった可能性の文明性を感じます。
人間の思考は一直線に進歩していく、と考えるのがあまりにも単純であること(中略)「未開」社会の人々が、まさか現代数学を知っている訳じゃない。また、文字や数字のような記号も使わない。けれど、彼らの思考は、数学と同じ論理で動いている。そして、「考えるのに便利 good to think」な自然の事物を使って、彼らを取り巻く世界や宇宙について考えている。そう思って、レヴィ・ストロースは、こういう思考を「野生の思考」と呼んだ。ありあわせの材料を使って考えていくので、日曜大工みたいな「プリコラージュ(器用仕事)」になる。
(橋爪大三郎「はじめての構造主義」)
フレンズ達の、現代日本が考える知能や知性とは異なりながらも、そこに世界の裏づけを感じる真摯な行動、そこにある我々の持っていない文明性を学んでいくことが、見ているときは心から楽しみながら、そして見終わった後は、意識的にしても無意識的にしても、そういったフレンズ達の文明性をいつのまにか学んでいるところが、けものフレンズの真に凄い素晴らしいところの一つだと思います。けものフレンズは、見て楽しめ、また構造としてもいつの間にか新しい視野を学んでいる、作品として優れた多重性を持っている。
そしてその体験は、異なる他者の異なる思考に素晴らしいものがあるという、私達の様々な先入見自体を揺らがして新しい視野を開いてくれる体験となる。虚心坦懐にけものフレンズを見れば、私達の様々な偏見はいつのまにか打破してくれている。新しい視野を開いてくれる作品、本当に素晴らしい作品と感じています。
私にとって「野生の思考」とは、野蛮人の思考でもなければ、未開人類や原始人類の思考でもない。効率を高めるために栽培したり、家畜化したりする思考とは異なる野生状態の思考である。
(レヴィ・ストロース「野生の思考」)
「きみは 最新流行の服を着て 自動車に乗って映画や音楽会へ行くのが文明人だと思ってるんじゃないだろうね?」
(手塚治虫「原人イシの物語」「タイガーブックス文庫版1」)
けものフレンズ関連エントリまとめ。随時更新(最新更新17/2/13)
http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1921487.html
タイガーブックス(1) (手塚治虫文庫全集)
著者:手塚 治虫
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イシ―北米最後の野生インディアン (岩波現代文庫―社会)
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野生の思考
著者:クロード・レヴィ=ストロース
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はじめての構造主義 (講談社現代新書)
著者:橋爪 大三郎
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ようこそジャパリパークへ(通常盤)
アーティスト:どうぶつビスケッツ×PPP
ビクターエンタテインメント(2017-02-07)
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