2017年01月27日 04:16
けものフレンズとはポスト2001年宇宙の旅であり、サンドスターはまさしくポストモノリスである。けものフレンズが如何に本質的SFであるか。
けものフレンズ1〜3話見返していたのですが、この作品は全体を通して、「2001年宇宙の旅」を彷彿させる作品だと改めて再認識できましたね。2001年宇宙の旅は、地球の生命進化史を宇宙的スパンで俯瞰して眺望する作品なのですが(クラーク自身が、星間史の大スパンとしての物語として語っている)、まさにその象徴しての映像が、「人類の夜明け」のシーンな訳ですね。
2001年宇宙の旅の伝説的な初頭のシーン「人類の夜明け」、これを全く新しい形で再創造したのが、まさしく「けものフレンズ」の第一話なのですね。骨がパンフレットであり、放り投げられる骨が、放り投げられる紙飛行機に相当する訳です。ただ、非常に面白いのは、「けものフレンズ」の場合、全てがポスト・人類史、人類後の歴史を示しているところです。
サンドスター(進化を促すサンドスターがモノリスの象徴であることは自明でしょう)から生まれたフレンズのサーバルちゃんは、サンドスターからではなく、「人類種」と思われるかばんちゃんからインスピレーションを受けて、道具を使うことを認識する、認識の新しい階梯を登る訳です。かばんちゃん自体はあくまで現行の人類種というところにいて、サーバルちゃんのようなフレンズ達が進化の階梯を登っていくお手伝いのガイドとしての役割を果たしている。
「けものフレンズ」は人類種の進化ではなく、人類種の後に来るものの進化(フレンズ達の進化)を描いている訳です。これはまさに、アーサー・C・クラークが描いた「2001年宇宙の旅」や「幼年期の終わり」のテーマであり、人類種の種的終焉の後、すなわちその先を描く、ポスト・アポカリプスSF、ポスト・ヒューマンSFにおける最も壮大なジャンル、人類後の新しき種を描く、進化してゆく種の交代劇なのですね。
そして、「けものフレンズ」の素晴らしいところは、この壮大な観点が、2話、3話と、素晴らしく整合的かつ連続性を持って描かれているところです。2話では、かばんちゃんは「認識進化のガイド」としてフレンズのサーバルちゃんとジャガーちゃんとカワウソちゃんに「目的達成の為の段階性」と「道具を使う為の道具を作ること」の認識を与えている。3話でも同じく、サーバルちゃんとトキちゃんとアルパカちゃんに「他者の視点(空を飛ぶフレンズの視点)を想像して認識するという想像的認識」の認識を与えている。「他者の視点を想像して認識する認識」(他者視点認識)というのは、まさにほぼ人類固有の人類のみが極度に発達させた認識であるとされていて、進化の過程で得た認識の中でも、最も知性をブレイクスルーさせた認識とされているものですね。第2話は目的及び道具の発達を描き、第3話はまさに知性のブレイクスルーを描いていたと言えるでしょう。
そしてこれら人類の進化史をなぞる物語が、前述したとおり、人類の物語ではなく、人類を進化と認識の狂言回しのガイド役にした、人類の後に来るであろう新しい知性種達(フレンズ達)の物語であるというところが素晴らしく面白い。
そして更に「けものフレンズ」の凄いところは、人類文明の痕跡が廃墟となっており、逆に非文明的なフレンズ達はほのぼのと平和に暮らしている姿を描くことで、進化における知性すら批評的な眼差しで俯瞰しているところですね。これは本当に凄い。物語構成が、二重、三重になっているんですね。
本作「けものフレンズ」はまさに、ポスト・ヒューマンSFそのものであり、21世紀のSFアニメにおける現在最も本質的に優れたSFアニメであると断言できますね。世の中にSFとされる作品は山ほどありますが、上述したような、最も本質的な作品、物語の構造自体がSFとして確りと確立している作品と言うのは、実は数えるほどに少ないんですね。
「けものフレンズ」こそは、まさに稀に見る本質的なSF作品であり、このような作品にSFファンとして巡り合えることは望外の幸せでありますね…。また、こういった優れたSF作品を、「この作品は如何に優れたSF作品であるか」ということを解説してゆくことも、SFというジャンルが本質的に人々に理解してもらうためには大切なことであり、早川書房さんらは、SFマガジンなどを通して本作をきちんと取り上げて、本作が如何に優れたSF作品であるかを周知することで、本作とSFファンとアニメファンをきちんとリンクしてゆくことが出来れば、理想だなと思いますね…。
最後に余談ですが、SFマガジンの愛読者としては発刊が隔月刊になってしまったことが本当に残念です。毎月出ていた頃は、それこそ、SF界隈で話題になっていることを、パッと迅速に時流に即してSFマガジンに載せていけてたんですね…。今は隔月刊なので、「SFマガジンでけものフレンズを取り上げよう!」ということになっても、実際にSFマガジンに載る記事になるのがそれこそ数ヶ月先になってしまうということがありうる。そうしたらその頃にはアニメ放送が終わってしまっています…。雑誌が隔月刊だと、時流に即した記事掲載というのは難しくなるので、そんな中で、どのようにして若い読者に本格SF、本質的なSFの面白さを伝えていくかというのは、それこそSFファン皆でかばんちゃんのように一生懸命知恵を出して考えなくてはならないことじゃないかなと思っていますね…。
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著者:アーサー・C. クラーク
早川書房(1993-02)
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幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)
著者:クラーク
光文社(2007-11-08)
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スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)
著者:グレッグ・イーガン
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現代語裏辞典 (文春文庫)
著者:筒井 康隆
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Cinemagazin 2001年宇宙の旅 2001: A Space Odyssey
http://www004.upp.so-net.ne.jp/vji/eiga/kubrick/2001.html、
1.「人類の夜明け」この章が意味するもの。
猿は動物と共に草を食べていたのが、群を形成し、家族を作り、群と群が戦い、肉食している。突然現れる石碑、大騒ぎする猿。石碑からインスピレーションを受けて、猿は絶滅しない道具を発見する。それは動物の骨だ。動物を殺し肉を食べ飢えを癒やす。他の動物は滅びる。骨は猿が生き残るための重要な道具でした。猿が動物の骨をうちくだいて、放り上げた骨が宇宙船の形になって未来に切り替わるのは印象的です。
2001年宇宙の旅の伝説的な初頭のシーン「人類の夜明け」、これを全く新しい形で再創造したのが、まさしく「けものフレンズ」の第一話なのですね。骨がパンフレットであり、放り投げられる骨が、放り投げられる紙飛行機に相当する訳です。ただ、非常に面白いのは、「けものフレンズ」の場合、全てがポスト・人類史、人類後の歴史を示しているところです。
サンドスター(進化を促すサンドスターがモノリスの象徴であることは自明でしょう)から生まれたフレンズのサーバルちゃんは、サンドスターからではなく、「人類種」と思われるかばんちゃんからインスピレーションを受けて、道具を使うことを認識する、認識の新しい階梯を登る訳です。かばんちゃん自体はあくまで現行の人類種というところにいて、サーバルちゃんのようなフレンズ達が進化の階梯を登っていくお手伝いのガイドとしての役割を果たしている。
「けものフレンズ」は人類種の進化ではなく、人類種の後に来るものの進化(フレンズ達の進化)を描いている訳です。これはまさに、アーサー・C・クラークが描いた「2001年宇宙の旅」や「幼年期の終わり」のテーマであり、人類種の種的終焉の後、すなわちその先を描く、ポスト・アポカリプスSF、ポスト・ヒューマンSFにおける最も壮大なジャンル、人類後の新しき種を描く、進化してゆく種の交代劇なのですね。
そして、「けものフレンズ」の素晴らしいところは、この壮大な観点が、2話、3話と、素晴らしく整合的かつ連続性を持って描かれているところです。2話では、かばんちゃんは「認識進化のガイド」としてフレンズのサーバルちゃんとジャガーちゃんとカワウソちゃんに「目的達成の為の段階性」と「道具を使う為の道具を作ること」の認識を与えている。3話でも同じく、サーバルちゃんとトキちゃんとアルパカちゃんに「他者の視点(空を飛ぶフレンズの視点)を想像して認識するという想像的認識」の認識を与えている。「他者の視点を想像して認識する認識」(他者視点認識)というのは、まさにほぼ人類固有の人類のみが極度に発達させた認識であるとされていて、進化の過程で得た認識の中でも、最も知性をブレイクスルーさせた認識とされているものですね。第2話は目的及び道具の発達を描き、第3話はまさに知性のブレイクスルーを描いていたと言えるでしょう。
そしてこれら人類の進化史をなぞる物語が、前述したとおり、人類の物語ではなく、人類を進化と認識の狂言回しのガイド役にした、人類の後に来るであろう新しい知性種達(フレンズ達)の物語であるというところが素晴らしく面白い。
そして更に「けものフレンズ」の凄いところは、人類文明の痕跡が廃墟となっており、逆に非文明的なフレンズ達はほのぼのと平和に暮らしている姿を描くことで、進化における知性すら批評的な眼差しで俯瞰しているところですね。これは本当に凄い。物語構成が、二重、三重になっているんですね。
ちえ[知恵]人類滅亡の素因。
(筒井康隆「現代語裏辞典」)
本作「けものフレンズ」はまさに、ポスト・ヒューマンSFそのものであり、21世紀のSFアニメにおける現在最も本質的に優れたSFアニメであると断言できますね。世の中にSFとされる作品は山ほどありますが、上述したような、最も本質的な作品、物語の構造自体がSFとして確りと確立している作品と言うのは、実は数えるほどに少ないんですね。
「けものフレンズ」こそは、まさに稀に見る本質的なSF作品であり、このような作品にSFファンとして巡り合えることは望外の幸せでありますね…。また、こういった優れたSF作品を、「この作品は如何に優れたSF作品であるか」ということを解説してゆくことも、SFというジャンルが本質的に人々に理解してもらうためには大切なことであり、早川書房さんらは、SFマガジンなどを通して本作をきちんと取り上げて、本作が如何に優れたSF作品であるかを周知することで、本作とSFファンとアニメファンをきちんとリンクしてゆくことが出来れば、理想だなと思いますね…。
最後に余談ですが、SFマガジンの愛読者としては発刊が隔月刊になってしまったことが本当に残念です。毎月出ていた頃は、それこそ、SF界隈で話題になっていることを、パッと迅速に時流に即してSFマガジンに載せていけてたんですね…。今は隔月刊なので、「SFマガジンでけものフレンズを取り上げよう!」ということになっても、実際にSFマガジンに載る記事になるのがそれこそ数ヶ月先になってしまうということがありうる。そうしたらその頃にはアニメ放送が終わってしまっています…。雑誌が隔月刊だと、時流に即した記事掲載というのは難しくなるので、そんな中で、どのようにして若い読者に本格SF、本質的なSFの面白さを伝えていくかというのは、それこそSFファン皆でかばんちゃんのように一生懸命知恵を出して考えなくてはならないことじゃないかなと思っていますね…。
2001年宇宙の旅 [Blu-ray]
出演:キア・デュリア
ワーナー・ホーム・ビデオ(2010-04-21)
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決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)
著者:アーサー・C. クラーク
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幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)
著者:クラーク
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著者:グレッグ・イーガン
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現代語裏辞典 (文春文庫)
著者:筒井 康隆
文藝春秋(2016-05-10)
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