2016年12月01日 16:55
うーん、日本に抵抗の文化はないというのは海外の一般教養かも。W・H・マクニールなんかは食糧生産量の差で考えていますね…。
ノーベル文学賞作家の「日本には抵抗の文化がない、ソ連と同じ」に反発を覚えた
http://togetter.com/li/1054491
作家のスベトラーナ・アレクシエービッチが「日本には抵抗の文化がない」と語ったことに対して反発が起きていますね。ただ、この「日本に抵抗の文化がない」発言は海外のインテリの世界史の一般教養的なものなんですね。つまり、日本は権力者同士の戦いによる体制交代は何度も起きているが、草の根の市民革命的な体制変革はこれまで一度も起きていないというのが海外のインテリの一般的な前提認識としてある(「菊と刀」等)。なので、アレクシエービッチをあまり責めるのも気の毒かなと…。なぜ、日本で草の根の市民による政治運動が前近代から現代に至るまで大きな力を持てないのかについては、歴史家のW・H・マクニールなんかは端的に農耕様式の違いから発する食糧生産量の差によるもの、即ち日本の被支配層が貧しい歴史を持つ故である(貧困の為、抵抗するような余力がない体制が長く続いた為)と考察していますね。
農業の様式は、ヨーロッパのそれとはまったく違っていた。中国と同じように、日本では水田の稲作を中心とする集約農耕が一般的だった。したがって、密集して定住した農民層は、一家族あたりヨーロッパの農民よりも少ない余剰食糧しか生産できない為に、日本の社会全体に対し、非常に貧しい、また非常に勤勉に働く大衆の基層を形成したのである。(中略)
浄土宗は、数多くの農民反乱を鼓舞した。これは1400年以後の現象だが、どこでも長い期間の成功をおさめることはできなかった。
日本文化の担い手が比較的大きな種族的等質性を持っていたこと、及び比較的小さな、孤立した地理的範囲に限定されていたことなどで、この新しい文明は、充分な発達を阻害された。
(W・H・マクニール「世界史」)
世界史的には、ある程度の国力(国民の豊かさ・国民の余力)がないと民主主義に基づく市民革命的なものは成功しないと考えられている側面が大きいんですね。日本には、日本人としては悲しいことですが、日本は貧しい為そういった国力はなかった国であり、ゆえに貧しい国が近代化する時に辿りやすい道であるファシズムを大日本帝国として選択した。敗戦後、日本国になり、経済的にある程度成功した後においても、これからも民主主義の発展はないだろうと(日本の民主主義的発展はないだろうと)、国際史などを研究している海外の学者達からはみなされていますね…。実際に、現代の日本はここ十数年でどんどん貧富の差が開き格差が開いていて、一部の支配層だけが富を所有し、被支配層は貧困化しているので(それこそ、日本の格差と貧困状態は、財閥が幅を利かせていた大日本帝国時代にどんどん戻っていっている)、海外の学者達の考察はいまのところ当を得ていると言わざるをえないでしょう…。
結局、権力者にとって一番権力を維持しやすい権力体制を一国のみでみた場合は、北朝鮮的な、支配層だけが大量の富を持って、被支配層を貧困状態に置く=社会保障をカットして貧困によって被支配層が抵抗する余力を削ぐ体制が、一番権力を維持しやすいんですね。徳川家康の有名な言葉『百姓共をば死なぬように生きぬようにと合点いたし収納申し付くるように』です。ただ、こういった収奪体制は権力者に都合が良くても、その国家の国力自体はどんどん削いでいくので、世界史的には隣国に滅ぼされてしまい、国家として存続できないことが多い。日本は島国ゆえに他国からの脅威が薄かった為、こういった体制に人々が馴致してしまったというところはあると思いますね…。
後は余談ですが、「日本スゴイ!」の極致たる映画の「シン・ゴジラ」も海外では不評で人気が全然ないですし、なんでもかんでも日本を美化して肯定する「日本スゴイ!」的なものは、基本的に日本人にしか通じないということは、日本人としてもっと認識して然るべきことだと思いますね…。ちなみに戦前戦中の「日本スゴイ!」の流布は、大日本帝国の国威発揚政策とそれに阿ったマスメディアの動きとしてあり、それは実態に全く則していないただのプロパガンダであったことも、もっと知られた方がいいですね…。
「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜
著者:早川 タダノリ
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世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)
著者:ウィリアム・H. マクニール
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世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)
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マクニール世界史講義 (ちくま学芸文庫)
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菊と刀 (講談社学術文庫)
著者:ルース・ベネディクト
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歴史哲学講義 (上) (岩波文庫)
著者:ヘーゲル
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