2016年09月28日 18:05

小林泰三「ウルトラマンF」読了。これは和製GTS(巨大娘)作品の最高傑作の一つだと思いますね!最高に面白かった!!

ウルトラマンF (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

小林泰三さんの描く小説ウルトラマンシリーズ最新作「ウルトラマンF」読了。昭和ウルトラマンのウルトラマン最終回ごとウルトラマンセブンが始まる前の時期を舞台にしたウルトラマンスピンオフでして、ウルトラマン小説としても素晴らしく面白かったのですが…

この作品の凄いところは、完全にGTS(Giantess,巨大娘)物であるところですね!!巨大娘を完全に物語の根幹に据えた和製小説は「ヴァルキュリアの機甲」シリーズ以来じゃないですかね!!実はこのジャンルはかなり好きなので(漫画「七つの大罪」のディアンヌとか好きです)、その点においてもとても楽しめた小説ですね。

タイトルを見れば勘の良いお方々は予想が付く通り、本作で新しいウルトラマン「ウルトラマンF」になるのは巨大フジ隊員こと科学特捜隊の富士明子隊員なのですが、基本的には巨大化して、肉体が巨大化に合わせて強靭になるだけで、なかなかウルトラマンにはならないんですね。彼女は物語の後半までウルトラマンではなく、普通の巨大娘になるだけなんですが、その肉体の巨大化のメカニズムが非常に精緻にSF考証されて説明されています。

つまりどういうことかといいますと、ウルトラマンの第33話で巨大化した時のような、「服も一緒に巨大化する」というご都合主義的現象は起きないということです!!

これは実に巨大娘ジャンルのツボを突く展開であり、読んでいて山本弘さんの怪獣小説「MM9」シリーズとかアニメの「UGアルティメットガール」を思わず思い出してしまいましたよ…。

まあ流石に何もなしで戦うのは色々と問題があるので、二回目の戦い以降は井出隊員が変身後の巨大フジ隊員用の巨大戦闘アーマーを作ってその中で巨大化して巨大アーマーを身にまとって戦うのですが、この辺の展開が「巨大娘」&「アーマー娘」という、マイナーだけど個人的には最高にツボを突く展開になるんですね!!

あと、本作の特徴として、富士隊員はウルトラマンになかなかならず、物語の大半は、「メフィラス星人の人間を巨大化するナノテクノロジー技術(巨大フジ隊員)」+「様々な宇宙人が残した無数の超技術と科学特捜隊・国連・世界各国の科学技術を融合させて作り出した人類の科学技術」で怪獣と戦う展開となるんですね。それゆえに、人類が知恵を絞ってウルトラマンに頼らずに怪獣を苦労して撃破していくところがとても面白い。本作の語り手であり男性主人公でもある井出隊員が怪獣対策の技術開発のメインであるというところから、プロジェクトX的な技術小説的な読みもできるところが本書の独特の醍醐味であり面白いところですね。

ウルトラマン好きにとっては、昭和ウルトラマンと平成ウルトラマンを上手く繋げているところも読みどころの一つで面白かったですね。某中二病な平成ウルトラマンのとあるラスボスが出てきたときは読んでいて思わず吹きました。ウルトラマンを知らなくても楽しめますが、知っていればいるほどより楽しめる、ウルトラマンスピンオフの傑作、そして何より巨大娘者の傑作です!!ぜひご一読をお勧めするウルトラマン小説ですね。

最後に、本書収録の小林泰三さんのエッセイ「巨大フジ隊員のこと」を一部引用してご紹介致しますね。

そして、巨大フジ隊員である。ハヤタ隊員はウルトラマンに変身できるが、それは彼自身の能力ではない。いわばハヤタ隊員と彼に憑依しているウルトラマンが互いの肉体を交換するようなものだ。つまり、ウルトラマンはふだん、それがどんな状態なのかはわからないが、物理的に外部から観測できない、実体を持たない状態になっている。反対にハヤタ隊員はふだん物理的に観測可能である、実体を持った状態を保っている。しかし、危機が訪れたとき、彼らは互いの存在を入れ替え、ウルトラマンが実体となり、ハヤタは実体のない存在となる。二人は命を共有しているために、同時に存在できないだけで、本質的には別々の存在だと考えることができる。

ところが、巨大フジ隊員はそのようなからくりすらも超越しているのだ。彼女は人間のまま巨大化する。怪獣化するのでもなく、ウルトラマンのような異質な超存在になるのでもない。しかも、単純に人体が巨大化したものではない。少なくとも、人間を構成する素材ではあれだけの巨体を維持することはできないはずだし、劇中で彼女は鉄筋コンクリートのビルを破壊しているし、弾丸を受けても傷つくこともない。つまり、人間の姿を保ったまま、怪獣やウルトラマンに匹敵する存在に変異しているのだ。

そもそも「単純に人体が巨大化する」という言葉自体がおかしいのかもしれない。人間の身体は細胞からできているのだから、巨大化するときには、細胞の数が増えるか、もしくは細胞自体が巨大化するかだろう。しかし、細胞が増えるとしたら、全身の細胞の配置が再構成されることになる。もし細胞自体が巨大化するとなると、様々な分子からなるその内部構造自体が全く新たなものとなるだろう。細胞の構造を全く同じものにするためには、原子自体を巨大化させなくてはならず、それこそ量子力学を制御する超テクノロジーの範疇となる。

いや。巨大フジ隊員の魅力はそれを実現させるテクノロジーだけにある訳ではない。その最大の魅力は美しさなのだ。もちろん怪獣やウルトラマンにも独特な美しさはある。しかし、それは芸術的なそれであり、理念による美しさなのだ。しかし、人間の女性が持つ美しさはそれとは一線を画す。原初的な説明不要の美しさだ。多くの子供達は巨大フジ隊員の美しさの虜になったことだろう。

一口に『ウルトラマン』のファンと言っても、魅かれるところは人それぞれである。

ただ、概ね「怪獣派」「ウルトラマン派」「巨大フジ隊員派」の三つに分類できるのは明白だろう。わたしは三つの派閥すべての要素を持っていたが、あえて言うなら「巨大フジ隊員派」だ。当時、毎日四、五時間は巨大フジ隊員のことを考えており、ウルトラマンと怪獣のことはそれぞれ二、三時間ぐらいしか考えていなかった。

だから、今回のテーマを巨大フジ隊員にすることはすぐに決まった。
(小林泰三「巨大フジ隊員のこと」)

巨大フジ隊員派の巨匠たる会田誠さんが読んだら感涙しながら再び巨大フジ隊員作品を一気呵成に書き上げてしまいそうな巨大娘への愛溢れるエッセイでした!!感動した!!

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著者:小林泰三
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