2016年01月08日 14:26
ホルヘ・ボルピ「クリングゾールをさがして」読了。めっちゃ面白いけど最後がアンチ・ミステリ的終焉で凄くもやもやする…。
クリングゾールをさがして
メキシコの作家ホルヘ・ボルピのベストセラー代表作「クリングゾールをさがして」読了。第二次世界大戦直後を舞台に、ナチスの極秘研究を統括していたヒトラー直属の秘密顧問「クリングゾール」の正体を探す元物理学者の若きアメリカ軍中尉ベーコンとドイツの数学者グスタフの物語で、有名な欧米独の天才科学者達(アインシュタイン、フォン・ノイマン、ハイゼンベルグ、ボーア、マックス・プランク、悪名高きシュタルク等々)の影の権力闘争(物理学者達の原爆開発競争)を描いていて、非常に読み応えがあって面白かったです。
余談ですが、本書を読んで知ったんですが、ハイゼンベルグの政敵だった反ユダヤ主義物理学者のヨハネス・シュタルクって日本版ウィキペディアだと四年の禁固刑を受けたように書かれていますが、判決後すぐに控訴して禁固刑は取り下げられて小額の罰金刑を受けたのみで、戦後も悠々自適の生活送ったんですね…。日本版ウィキの記述が誤っている(禁固刑で服役したかのような書き方になっている)ので書き直した方が良いんじゃ…。
以下、思いきりネタばれ感想となります。
本書はミステリとして、『一体クリングゾールとは誰(どの科学者)なのか?』という推理サスペンスの軸がはっきりしていて、最後まで非常に読ませるものになっています。ただ、ラストが…。
最後でいきなり、メタ・ミステリなアンチ・ミステリ的仕掛けが炸裂して、結局のところ、謎が解き明かされないまま終わる…。ラテン・アメリカ文学的と言われれば、その通りかもしれませんが、うーん…個人的には謎を解き明かしてすっきり終わって欲しかったです。
読了した後、少し考えてみました。結局のところ、どのくらい、信頼できない語り手であるドイツ人数学者グスタフ・リンクスのことを読み手が信じるかというところに集約されるんですよね…。最終的には下記ABのどちらかだと思いますが…。
A.語り手グスタフ・リンクスが『根幹的なところにおいては嘘を語っていない』と仮定する。
クリングゾールはハイゼンベルグである可能性が最も高い。
B.語り手グスタフ・リンクスがソ連及び東ドイツの拷問的追及を逃れるために嘘を語っている。
クリングゾールはグスタフ・リンクス。
のどちらかなんですが、最後が宙ぶらりんでどちらとも判断がつかない…。アメリカ軍中尉は、最後、愛の為にグスタフを裏切りますが、グスタフが愛の為にクリングゾールとして裏切りを働いていた可能性も文中からは否定できず、本当に宙ぶらりんで凄いもやもやする終わり方なんですね…。
うーん…間違いなくラストまでは傑作なんですが…物凄い大書ですし、ラストまでは傑作で、最後がもやもやしても良いという方々にはお勧めです。
クリングゾールをさがして
著者:ホルヘ ボルピ
河出書房新社(2015-05-26)
販売元:Amazon.co.jp
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メキシコの作家ホルヘ・ボルピのベストセラー代表作「クリングゾールをさがして」読了。第二次世界大戦直後を舞台に、ナチスの極秘研究を統括していたヒトラー直属の秘密顧問「クリングゾール」の正体を探す元物理学者の若きアメリカ軍中尉ベーコンとドイツの数学者グスタフの物語で、有名な欧米独の天才科学者達(アインシュタイン、フォン・ノイマン、ハイゼンベルグ、ボーア、マックス・プランク、悪名高きシュタルク等々)の影の権力闘争(物理学者達の原爆開発競争)を描いていて、非常に読み応えがあって面白かったです。
余談ですが、本書を読んで知ったんですが、ハイゼンベルグの政敵だった反ユダヤ主義物理学者のヨハネス・シュタルクって日本版ウィキペディアだと四年の禁固刑を受けたように書かれていますが、判決後すぐに控訴して禁固刑は取り下げられて小額の罰金刑を受けたのみで、戦後も悠々自適の生活送ったんですね…。日本版ウィキの記述が誤っている(禁固刑で服役したかのような書き方になっている)ので書き直した方が良いんじゃ…。
ウィキペディア「ヨハネス・シュタルク」
ヨハネス・シュタルク(Johannes Stark、1874年4月15日、バイエルン公国シッケンホーフ(現・フライフンク) - 1957年6月21日、トラウンシュタイン)は、ドイツの物理学者。 シュタルク効果の提唱者。
ナチスによる政権掌握後は、フィリップ・レーナルトと共に反ユダヤ主義の観点から「ドイツ物理学」を提唱し、アルバート・アインシュタインの相対性理論を「ユダヤ物理学」と呼んで唾棄した。この事が原因となり、第二次世界大戦後の1947年に非ナチ化法廷により4年の禁固刑に処せられた。
以下、思いきりネタばれ感想となります。
「(欧米独の著名な物理学者達が原爆開発に率先して関わったのは)ナショナリズムのせい?それは大したことではないが、無視してはいけない。自尊心のせいでそうしたんです!ウワニータス・ウワニーターティス(虚栄の中の虚栄)、ベーコン先生。物理学者達は、軍隊の戦争とは無関係に私的な戦争をしていた。それぞれに最初の原爆を造る人間になりたがった。それができれば、当然、もう一方の側の即時敗北となった。爆発の結果は大したことではなかった。重要なのはもう一方の側の連中を笑いものにすることだった。そしてそうなった。幸運にも、そしてリンクス教授には許してもらわねばならないが、ハイゼンベルグのチームが敗者となった…」
「信じられない」とミス倫理と化したイレーネが言った。「自分の科学競争に勝ちさえすれば、自分がライバルより優れていると証明できさえすれば、人の命がなくなろうが知ったことじゃなかった……。ヒトラーの態度よりむかつくわ……」
「私達科学者は白い鳩であったためしはないんです」とエルヴィン(エルヴィン・シュレディンガー)は若干皮肉っぽく言った。「あなたを幻滅させるんじゃないかと思いますが。あなたは世界最良の人達と一緒に暮らしてはいない」
私はだんだん居心地が悪くなっていったが、どうすることもできなかった。シュレーディンガーが私を煽っていた。
「彼らにとってはゲームみたいなものだった」とエルヴィンは強調した。「チェスやポーカーとあまり違わない。数学的には少なくとも、そうしたもの同様決して重要ではなかった」
(ホルヘ・ボルピ「クリングゾールをさがして」)
本書はミステリとして、『一体クリングゾールとは誰(どの科学者)なのか?』という推理サスペンスの軸がはっきりしていて、最後まで非常に読ませるものになっています。ただ、ラストが…。
最後でいきなり、メタ・ミステリなアンチ・ミステリ的仕掛けが炸裂して、結局のところ、謎が解き明かされないまま終わる…。ラテン・アメリカ文学的と言われれば、その通りかもしれませんが、うーん…個人的には謎を解き明かしてすっきり終わって欲しかったです。
読了した後、少し考えてみました。結局のところ、どのくらい、信頼できない語り手であるドイツ人数学者グスタフ・リンクスのことを読み手が信じるかというところに集約されるんですよね…。最終的には下記ABのどちらかだと思いますが…。
A.語り手グスタフ・リンクスが『根幹的なところにおいては嘘を語っていない』と仮定する。
クリングゾールはハイゼンベルグである可能性が最も高い。
B.語り手グスタフ・リンクスがソ連及び東ドイツの拷問的追及を逃れるために嘘を語っている。
クリングゾールはグスタフ・リンクス。
のどちらかなんですが、最後が宙ぶらりんでどちらとも判断がつかない…。アメリカ軍中尉は、最後、愛の為にグスタフを裏切りますが、グスタフが愛の為にクリングゾールとして裏切りを働いていた可能性も文中からは否定できず、本当に宙ぶらりんで凄いもやもやする終わり方なんですね…。
うーん…間違いなくラストまでは傑作なんですが…物凄い大書ですし、ラストまでは傑作で、最後がもやもやしても良いという方々にはお勧めです。
クリングゾールをさがして
著者:ホルヘ ボルピ
河出書房新社(2015-05-26)
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