2015年10月26日 20:34
阿部共美作品の魅力 -ロジックホラーの真髄-
ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)
空が灰色だから コミック 全5巻完結セット (少年チャンピオン・コミックス)
先日、ブックオフに行った時に100円コーナーで売っていた阿部共美「空が灰色だから1巻」「ちーちゃんはちょっとたりない」、なんとなく手にとって買ってみて、読んでみたら…両方とも衝撃のあまり心が七転八倒する程の傑作で、それまで阿部共美さんという漫画家さんのこと全然知らなかったんですが、急いで本屋にいって、阿部共美さんの出版されている本を全部買ってきて読んだんですが、凄いですね。どれも傑作ぞろいでめっちゃファンになりました。小林泰三や星新一や筒井康隆の著書を始めて読んだ時とか思い出しましたね…。
この阿部共美さん、私的には、短編ホラー、特にロジックホラー(論理を重視した恐怖小説)において、小林泰三さんと並んで天賦の才のある作家さんだと思いますね。この作家さんの描くのは、肉体的苦痛や血や臓物といったフィジカルの恐怖ではなく、超常的なものに追い詰められたり逃げ惑ったりするメンタルの恐怖でもない、論理的な思考の行き着く果てが狂気(阿部共美さんの作品ではそれは往々にしてディスコミュニケーションの恐怖という形を取る)に通じるという人間の思考の恐怖を描いていて、非常に稀有にして実に私好みのホラー漫画家さんだなと(こういう論理面の恐怖を重視するロジックホラーを書ける作家さんは数少ない。日本だと小林泰三、牧野修、貴志祐介、新井素子、望月峯太郎等、海外だとジャック・ケッチャム、トマス・ハリス等)。最高に気に入りました。
先日、小林泰三さんがニコニコ生放送の対談番組に出たとき、「自分(小林泰三)はクトゥルフ神話をずっとSFとして捉えSFとして読んできた」「SFが苦手という風潮には先入見があって、本来のSFは論理的に書かれているので、ミステリと同じように論理的に理解できるものだ」みたいなことを言っていたのですが、この意見に全面的に賛成でして、論理的に分かるからこそ怖いという恐怖を描くのがロジックホラーの真髄だと思っています。
阿部共美作品は凄く論理的に、狂気の世界にすっと入っていくのが、凄い恐怖なんですね。読み手が狂気をトレースできてしまう恐怖、血みどろの残虐ホラーよりも遥かに心に染み入ってくる恐怖。また、その表現技法としての絵が素晴らしい。空が灰色だから2巻に収録の第24話「世界の中心」とか、精神分裂病(統合失調症)を発症した女子高生の内面を、発症から重症化まで描いた作品ですが、これなんか漫画でしか表現不可能なとてつもない傑作だと思いますね。読み手を狂気へと引っ張る重力が凄すぎる。映像で狂気の内面的表現を試みた作品として、「てきとう」(狂気をテーマにしたVIPRPG。http://ux.getuploader.com/viprpg_wiki2_2/download/29/%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%A8%E3%81%86.zipから無料でDLできます)をプレイした時以来の衝撃を受けました。
また、阿部共美作品の特徴としては、人間の原初的な恐怖として存在する、愛と表裏一体の暴力、先に挙げたディスコミュニケーションから引き起こされる三角関係の暴力の恐怖をモティーフにしているのも面白い。1巻の2話とか2巻の18話とか3巻の27話とか31話とか4巻の43話とか5巻の51話とか最終話とか「ちーちゃんはちょっとたりない」とか「タダシ君が大好きは虫の」の表題作とか凄く見事に出来ている。見事すぎて、本当に感嘆するしかない。ぜひみなさんに心から読んで欲しい漫画家さんですね…。
ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)
著者:阿部 共実
秋田書店(2014-05-08)
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空が灰色だから コミック 全5巻完結セット (少年チャンピオン・コミックス)
著者:阿部共実
秋田書店(2013-03-08)
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大好きが虫はタダシくんの―阿部共実作品集 (少年チャンピオン・コミックス)
著者:阿部 共実
秋田書店(2013-01-08)
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死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々(1)(少年チャンピオン・コミックス・タップ! )
著者:阿部共実
秋田書店(2014-12-10)
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ブラックギャラクシー6 (少年チャンピオン・コミックスエクストラ)
著者:阿部 共実
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空が灰色だから コミック 全5巻完結セット (少年チャンピオン・コミックス)
先日、ブックオフに行った時に100円コーナーで売っていた阿部共美「空が灰色だから1巻」「ちーちゃんはちょっとたりない」、なんとなく手にとって買ってみて、読んでみたら…両方とも衝撃のあまり心が七転八倒する程の傑作で、それまで阿部共美さんという漫画家さんのこと全然知らなかったんですが、急いで本屋にいって、阿部共美さんの出版されている本を全部買ってきて読んだんですが、凄いですね。どれも傑作ぞろいでめっちゃファンになりました。小林泰三や星新一や筒井康隆の著書を始めて読んだ時とか思い出しましたね…。
この阿部共美さん、私的には、短編ホラー、特にロジックホラー(論理を重視した恐怖小説)において、小林泰三さんと並んで天賦の才のある作家さんだと思いますね。この作家さんの描くのは、肉体的苦痛や血や臓物といったフィジカルの恐怖ではなく、超常的なものに追い詰められたり逃げ惑ったりするメンタルの恐怖でもない、論理的な思考の行き着く果てが狂気(阿部共美さんの作品ではそれは往々にしてディスコミュニケーションの恐怖という形を取る)に通じるという人間の思考の恐怖を描いていて、非常に稀有にして実に私好みのホラー漫画家さんだなと(こういう論理面の恐怖を重視するロジックホラーを書ける作家さんは数少ない。日本だと小林泰三、牧野修、貴志祐介、新井素子、望月峯太郎等、海外だとジャック・ケッチャム、トマス・ハリス等)。最高に気に入りました。
先日、小林泰三さんがニコニコ生放送の対談番組に出たとき、「自分(小林泰三)はクトゥルフ神話をずっとSFとして捉えSFとして読んできた」「SFが苦手という風潮には先入見があって、本来のSFは論理的に書かれているので、ミステリと同じように論理的に理解できるものだ」みたいなことを言っていたのですが、この意見に全面的に賛成でして、論理的に分かるからこそ怖いという恐怖を描くのがロジックホラーの真髄だと思っています。
論理的って具体的にどういうことだろう?議論の全体が整合的で、誰から見てもその議論の筋道が理解できること、そしてその論理に従えば、他者でも同じ議論を展開できること。それが「論理的」だ。だから一見して逆説に満ちているようでも、その議論の内的な構成と推論の道筋がきちんと辿れるのならば、それは非論理ではない。
(中山元「思考の用語辞典」)
阿部共美作品は凄く論理的に、狂気の世界にすっと入っていくのが、凄い恐怖なんですね。読み手が狂気をトレースできてしまう恐怖、血みどろの残虐ホラーよりも遥かに心に染み入ってくる恐怖。また、その表現技法としての絵が素晴らしい。空が灰色だから2巻に収録の第24話「世界の中心」とか、精神分裂病(統合失調症)を発症した女子高生の内面を、発症から重症化まで描いた作品ですが、これなんか漫画でしか表現不可能なとてつもない傑作だと思いますね。読み手を狂気へと引っ張る重力が凄すぎる。映像で狂気の内面的表現を試みた作品として、「てきとう」(狂気をテーマにしたVIPRPG。http://ux.getuploader.com/viprpg_wiki2_2/download/29/%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%A8%E3%81%86.zipから無料でDLできます)をプレイした時以来の衝撃を受けました。
また、阿部共美作品の特徴としては、人間の原初的な恐怖として存在する、愛と表裏一体の暴力、先に挙げたディスコミュニケーションから引き起こされる三角関係の暴力の恐怖をモティーフにしているのも面白い。1巻の2話とか2巻の18話とか3巻の27話とか31話とか4巻の43話とか5巻の51話とか最終話とか「ちーちゃんはちょっとたりない」とか「タダシ君が大好きは虫の」の表題作とか凄く見事に出来ている。見事すぎて、本当に感嘆するしかない。ぜひみなさんに心から読んで欲しい漫画家さんですね…。
暴力とは何か?レヴィナスはいう。暴力とは人間と人間の関係に、原初的にあるものだと。二者だけの関係は、かけがえのない関係になりうる。ぼくはきみと親密な関係を結ぶことができる。けれど社会はぼくときみだけでは構成されない。だから僕は第三の人とも、ぼくときみのような親密な関係を結ぼうとするだろう。けれどその時には、きみとの間の親密な関係と、他の誰かとの親密な関係に違いがつかなくなる。きみとの親密な関係はこれによって傷つけられるのだ。
これは他者に傷を負わせることで、ひとつの暴力だ。ひとつ愛が生まれれば、ひとつ暴力が生まれる。人間の関係にはこういう原初の暴力が潜んでいるとレヴィナスは告げる。社会の根底に暴力があるのと同じように、他者との愛の関係にも他者への暴力が潜んでいる。忘れてはいけない。メルロ・ポンティがいったように、ぼくたちは、自分が暴力から完全に免れると思った瞬間、別の暴力を振るうことになってしまうのだ。
(中山元「思考の用語辞典」)
「ちーちゃん。わたしたち、ずっと友達だよね?」
(阿部共美「ちーちゃんはちょっとたりない」)
ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)
著者:阿部 共実
秋田書店(2014-05-08)
販売元:Amazon.co.jp
空が灰色だから コミック 全5巻完結セット (少年チャンピオン・コミックス)
著者:阿部共実
秋田書店(2013-03-08)
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大好きが虫はタダシくんの―阿部共実作品集 (少年チャンピオン・コミックス)
著者:阿部 共実
秋田書店(2013-01-08)
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死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々(1)(少年チャンピオン・コミックス・タップ! )
著者:阿部共実
秋田書店(2014-12-10)
販売元:Amazon.co.jp
ブラックギャラクシー6 (少年チャンピオン・コミックスエクストラ)
著者:阿部 共実
秋田書店(2014-05-08)
販売元:Amazon.co.jp
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