2015年10月22日 01:38
個人的国内イヤミス傑作ベスト3+海外1、読んでいてラストで「あああああああ!!」ってなる小説。
なんか最近近年出版された小説を読んでいて感じるのは、「日本の作品に嫌な後味の作品が増えたなあ」ということでして、特にミステリー小説に顕著です。多分、「ミステリー界のイヤミス(嫌な後味のするミステリーの事)ブーム」「昨今のミステリは王道的な作品よりもメフィスト賞的な外連味溢れる作品の方が見栄えがして人気が出る」ということが複合して、昔に比べると読後感の悪い作品が増えているのかなと。
自分はそれほどイヤミスを評価している訳でもイヤミスを読んでいる訳ではありませんが(普通にガイドブックとか使って評価の高い順に読んで行き、イヤミスが入っていたらそれも読む程度)、そんな自分でも、『これは他のただ読後感が悪いだけのイヤミスとは違い、読後感が最悪なことも含めて、いやそれによって面白さが増しているぞ』と思う作品もあり、今回はそんな『読後感最悪がゆえに面白い』作品をご紹介させて頂きますね。
ちなみに、海外のイヤミスというのは「隣の家の少女」みたいな桁外れのイヤミス作品以外は最近あまり読んでいないので(全般的に日本に比べるとイヤミスの割合が低いように思います。イヤミスブームは日本だけのブームなんだなと感じる)、海外の作品は今回、1作品と短編一つだけご紹介致しますね。
では、ここより、傑作イヤミスの世界へ…。
小林泰三「記憶破断者」
記憶破断者
著者:小林 泰三
幻冬舎(2015-08-06)
販売元:Amazon.co.jp
数十分しか記憶を保持できない前向性健忘症の患者「田村二吉」が主人公の長編作品。この主人公は連作短編集「忌憶」「モザイク事件帳」にも主人公や脇役として出てきますが、いわゆる二吉シリーズの中で本作がダントツで完成度が高いと感じましたね。
本作は狭義のミステリの範囲を超えている超能力SFサスペンスミステリーで、ジョジョの奇妙な冒険的な能力者バトルに一ひねり加えた展開、すなわち
『他人の記憶を操作する圧倒的な力を持った殺人鬼超能力者対前向性健忘症で数十分しか記憶を保持できず日常生活にすら事欠く有様のハンディを持った主人公(超能力とかは一切ない)』
という、ヘビー級ボクサーと赤ん坊が戦うが如き、圧倒的能力差のある戦いを主人公が強いられる物語。
ただ、主人公は非常に慎重かつ洞察力と判断力がなかなか優れた人物で、努力家でもあって、懸命に、自身の記憶に等しいいつも手持ちのノート(前向性健忘症になった後で起きた重要なことを書き記している)と個々の瞬間の判断で、ピンチを切り抜けながら殺人鬼超能力者と戦っていくんですね…。
ちなみにこの殺人鬼の能力は、『他人に触れた状態で喋ったことをその他人に記憶として植え付ける能力(何々を忘れろなどといえば忘却させることもでき、極度に矛盾した記憶を植え付けて相手の精神を破壊することもできる、記憶操作系としてはかなり万能クラスの力)』でして、「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンド使い岸辺露伴や「極黒のブリュンヒルデ」の斗光奈波に近い能力ですね。常人からしてみれば恐るべきとしか言いようのない能力です。しかもこの殺人鬼は、良心とか良識といったものが一切なく、能力を使って平気で人を殺戮していく真に邪悪で凶悪な奴でしかも頭もそれなりに切れるんですね…。
そんな超人的な殺人鬼相手に、淡い恋心を抱く女性を守る為に、田村二吉は一生懸命頑張るんですね。読んでいてどうしても田村二吉に感情移入してしまう。そして、やっと…やっと、殺人鬼超能力者に勝利し、奴を司直の手に引き渡し、淡い恋も成就するのかなと思ったら…
ラストの一行があああああああああ!!
普通の人間なら「よくもだましてくれたなアアアア!!」
ってなるところですが、前向性健忘症の二吉の場合、騙されていることにすら全く気づけないのが…
あああああああ!!
って感じですよ。読んでいてラストで「ああああああ!!」って感じになりましたよ!!
ああ…やはり小林泰三は小林泰三であったという感じです!!全体的に、前向性健忘症になりながらも、基本的なパーソナリティは善人で人に親切で良心のある二吉の一人称で話が進むので、他の小林泰三作品に比べると読みやすく、二吉の助けようとするヒロイン京子先生との淡い恋もあって青春小説的なさわやかさもあり、全編楽しく読んできたところで…ラストの一行でこの仕打ち!!
ああああああああ!!ああああああああ!!ああああああああ!!
今のところ、これまで読んできた小説の中で、圧倒的ダントツでイヤミス度ナンバーワン作品ですね、この「記憶破断者」は!!
麻耶雄嵩「さよなら神様」
さよなら神様
著者:麻耶 雄嵩
文藝春秋(2014-08-06)
販売元:Amazon.co.jp
小林泰三さんと並んで、邪悪な小説を書かせたら天下一品の作家である麻耶雄嵩さんの連作短編ミステリー。「神様ゲーム」の続編ですが、繋がりはほとんどない為、本作単独でも楽しめます。
本作は、神を名乗る鈴木という少年が、超越的に殺人事件の犯人を指摘していきまして、語り手である少女ヒロインとその周囲の人物達がその正否を確かめるというのがどの短編も筋になっているのですが、どの事件も、神の指摘の正しさと、それによって暴かれる事件の陰惨さが、嫌な読後感を齎します。
それが最高潮に達するのがラストの「さよなら神様」でして、ラストに使われるハートマーク、これほど嫌なハートマークの使い方は古今東西他に類をみないでしょう…。なんというか…ぶっちゃけていうとこれって鬼畜系18禁ゲームのバッドエンドな終わり方ですよね…。
語り手である主人公の少女ヒロインは善良さ、潔癖さ、前向きさ、正義感、良心、知性などをきちんと持っていて、そういった主人公の純真な魅力が、全編において強調されているのが、ラストで徹底的に落とす為とか…まさに鬼畜系18禁ゲーム…。
全編、先に挙げた様なヒロインの魅力が、陰惨な物語を中和させて読みやすくする魅力になっているのですが、ラストで『作者=神「もうラストだからお前には用はない。朽ち果てるがいい」』的な超墜落展開…。魅力あるヒロインが男にボロボロにされメロメロになって、全ての美徳を失った堕落した存在=堕落した愚かな女子高生(もちろん女子高生全般が堕落しているということではないが、作中で明らかにそういう描き方がされている)に成り果ててしまうというのが…なんとも…いわゆる「これなんてエロゲ」的な展開で…。ラストのハートマークに、なんとも言い様のない脱力感を感じましたね…。面白くてやがて悲しきミステリです…。
早見和真「イノセントデイズ」
イノセント・デイズ
著者:早見 和真
新潮社(2014-08-22)
販売元:Amazon.co.jp
小林泰三、麻耶雄嵩の両氏の作品に比べたら毒は薄いですが(というか両氏の作品の毒性が異常なレベルなので他の作家が追随できない)、それでも、イヤミスを語るなら外せない作品かなと思っているのがこの「イノセントデイズ」です。
内容はウィリアム・アイリッシュの伝説的な傑作ミステリー「幻の女」の時間軸を引き伸ばしたような話で、殺人犯として死刑を宣告されているヒロインの周囲の人々の述懐をちりばめながら、ヒロインの無実を信じる男性が、その無実を証明するまでの物語に見せながら…
ぬーんって感じになるラスト…。これはラストを明かすと面白さが明白に半減する小説なので、ぜひラストは事前情報なしで読んで欲しいですね。amazonレビューとかでラストについて触れられているので、レビューとかは小説読了前に読まない方がよいと思います。読み終わった後、ぬーんって気持ちになりますね…。
最後に海外ミステリーから一作挙げますね。
アレックス・マーウッド「邪悪な少女たち」
邪悪な少女たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)
著者:アレックス マーウッド
早川書房(2014-11-07)
販売元:Amazon.co.jp
イギリスのミステリー小説です。イギリスというのは、少年法が世界一手厚い日本とはかなり違いまして、イギリスにおいては未成年の犯罪であっても、氏名やその姿などをマスコミが公表することが許されており、遊園地の蝋人形館に未成年犯罪者の実物を象った蝋人形まで作られてしまう国なんですね。
そんな国なので、未成年殺人者は出所後も、もし未成年殺人者であることが世間にばれたら大きくマスコミに騒ぎ立てられ身の破滅な訳です。そんなイギリスで、幼い少女を殺した未成年殺人犯であるアナベルとジェイド。25年後、彼女達は名前と身元を変え、それなりに平穏な生活を過ごしていましたが、偶然にも出会ってしまう。そこから破滅へのロードをひた走っていくんですね…。
ある種、イノセントデイズと同じようなテーマで、マスコミが犯罪報道においてセンセーションな出鱈目報道を垂れ流しているというのが(小説を読んでいると出鱈目報道を繰り返すマスコミ=最悪の屑みたいな認識は日本もイギリスも変わらないんだなあみたいな…)、未成年殺人犯であった二人を追い詰めてゆくんですが(元々の殺人も、殺人というよりは実際は事故であって、救命しようとしたことと死体を隠そうとしたことがが事態を本当にあったことよりも悪く見せている)、それだけではなく、キリスト教的な自己犠牲の精神というのが、ラストに凄く出てくるのが、非常に救いのない残酷な終わり方にも関わらず、なにか、宗教的な、神聖なものを感じさせる終わりですね…。
この小説は、スティーヴン・キングが大絶賛したそうですが、わかるような気がするな…。キングってこういう「どうしようもない破滅的状況において発生するキリスト的自己犠牲の精神」って大好きな感じしますからね…。欧米の小説は、それがイヤミスであっても、キリスト教の精神を感じさせると改めて思いましたね…。
最後に短編から一つご紹介。短編の名手、ヘンリー・スレッサーから
ヘンリー・スレッサー「処刑の日」(下記短編集収録)
うまい犯罪、しゃれた殺人 〈クラシック・セレクション〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
著者:ヘンリイ・スレッサー
早川書房(2004-08-25)
販売元:Amazon.co.jp
死刑判決を勝ち取り意気揚々としている若き検事の前に、「その事件の真犯人だ」と言う男が現れて…。スレッサーらしい、切れ味鋭いイヤミス。スレッサーの短編はどれも素晴らしく面白いのでお勧めですが、なかでもイヤミス的にお勧めなのはこの作品ですね。
今回取り上げた作品は、読後感は最悪ですがそれにも関わらず(もしくはそれ故に)面白い作品ばかりです。ご機会ありましたらご一読お勧めいたしますね。
記憶破断者
忌憶 (角川ホラー文庫)
モザイク事件帳 (創元クライム・クラブ)
さよなら神様
神様ゲーム (講談社文庫)
イノセント・デイズ
邪悪な少女たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)
うまい犯罪、しゃれた殺人 〈クラシック・セレクション〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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アニメーション総合ストア
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パソコン及び周辺機器・消耗品総合ストア
PC18禁ゲーム総合ストア
amazon液晶テレビ総合ストア
クラシック音楽総合ストア
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自分はそれほどイヤミスを評価している訳でもイヤミスを読んでいる訳ではありませんが(普通にガイドブックとか使って評価の高い順に読んで行き、イヤミスが入っていたらそれも読む程度)、そんな自分でも、『これは他のただ読後感が悪いだけのイヤミスとは違い、読後感が最悪なことも含めて、いやそれによって面白さが増しているぞ』と思う作品もあり、今回はそんな『読後感最悪がゆえに面白い』作品をご紹介させて頂きますね。
ちなみに、海外のイヤミスというのは「隣の家の少女」みたいな桁外れのイヤミス作品以外は最近あまり読んでいないので(全般的に日本に比べるとイヤミスの割合が低いように思います。イヤミスブームは日本だけのブームなんだなと感じる)、海外の作品は今回、1作品と短編一つだけご紹介致しますね。
では、ここより、傑作イヤミスの世界へ…。
小林泰三「記憶破断者」
記憶破断者
著者:小林 泰三
幻冬舎(2015-08-06)
販売元:Amazon.co.jp
数十分しか記憶を保持できない前向性健忘症の患者「田村二吉」が主人公の長編作品。この主人公は連作短編集「忌憶」「モザイク事件帳」にも主人公や脇役として出てきますが、いわゆる二吉シリーズの中で本作がダントツで完成度が高いと感じましたね。
本作は狭義のミステリの範囲を超えている超能力SFサスペンスミステリーで、ジョジョの奇妙な冒険的な能力者バトルに一ひねり加えた展開、すなわち
『他人の記憶を操作する圧倒的な力を持った殺人鬼超能力者対前向性健忘症で数十分しか記憶を保持できず日常生活にすら事欠く有様のハンディを持った主人公(超能力とかは一切ない)』
という、ヘビー級ボクサーと赤ん坊が戦うが如き、圧倒的能力差のある戦いを主人公が強いられる物語。
ただ、主人公は非常に慎重かつ洞察力と判断力がなかなか優れた人物で、努力家でもあって、懸命に、自身の記憶に等しいいつも手持ちのノート(前向性健忘症になった後で起きた重要なことを書き記している)と個々の瞬間の判断で、ピンチを切り抜けながら殺人鬼超能力者と戦っていくんですね…。
ちなみにこの殺人鬼の能力は、『他人に触れた状態で喋ったことをその他人に記憶として植え付ける能力(何々を忘れろなどといえば忘却させることもでき、極度に矛盾した記憶を植え付けて相手の精神を破壊することもできる、記憶操作系としてはかなり万能クラスの力)』でして、「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンド使い岸辺露伴や「極黒のブリュンヒルデ」の斗光奈波に近い能力ですね。常人からしてみれば恐るべきとしか言いようのない能力です。しかもこの殺人鬼は、良心とか良識といったものが一切なく、能力を使って平気で人を殺戮していく真に邪悪で凶悪な奴でしかも頭もそれなりに切れるんですね…。
そんな超人的な殺人鬼相手に、淡い恋心を抱く女性を守る為に、田村二吉は一生懸命頑張るんですね。読んでいてどうしても田村二吉に感情移入してしまう。そして、やっと…やっと、殺人鬼超能力者に勝利し、奴を司直の手に引き渡し、淡い恋も成就するのかなと思ったら…
ラストの一行があああああああああ!!
普通の人間なら「よくもだましてくれたなアアアア!!」
ってなるところですが、前向性健忘症の二吉の場合、騙されていることにすら全く気づけないのが…
あああああああ!!
って感じですよ。読んでいてラストで「ああああああ!!」って感じになりましたよ!!
ああ…やはり小林泰三は小林泰三であったという感じです!!全体的に、前向性健忘症になりながらも、基本的なパーソナリティは善人で人に親切で良心のある二吉の一人称で話が進むので、他の小林泰三作品に比べると読みやすく、二吉の助けようとするヒロイン京子先生との淡い恋もあって青春小説的なさわやかさもあり、全編楽しく読んできたところで…ラストの一行でこの仕打ち!!
ああああああああ!!ああああああああ!!ああああああああ!!
今のところ、これまで読んできた小説の中で、圧倒的ダントツでイヤミス度ナンバーワン作品ですね、この「記憶破断者」は!!
麻耶雄嵩「さよなら神様」
さよなら神様
著者:麻耶 雄嵩
文藝春秋(2014-08-06)
販売元:Amazon.co.jp
小林泰三さんと並んで、邪悪な小説を書かせたら天下一品の作家である麻耶雄嵩さんの連作短編ミステリー。「神様ゲーム」の続編ですが、繋がりはほとんどない為、本作単独でも楽しめます。
本作は、神を名乗る鈴木という少年が、超越的に殺人事件の犯人を指摘していきまして、語り手である少女ヒロインとその周囲の人物達がその正否を確かめるというのがどの短編も筋になっているのですが、どの事件も、神の指摘の正しさと、それによって暴かれる事件の陰惨さが、嫌な読後感を齎します。
それが最高潮に達するのがラストの「さよなら神様」でして、ラストに使われるハートマーク、これほど嫌なハートマークの使い方は古今東西他に類をみないでしょう…。なんというか…ぶっちゃけていうとこれって鬼畜系18禁ゲームのバッドエンドな終わり方ですよね…。
語り手である主人公の少女ヒロインは善良さ、潔癖さ、前向きさ、正義感、良心、知性などをきちんと持っていて、そういった主人公の純真な魅力が、全編において強調されているのが、ラストで徹底的に落とす為とか…まさに鬼畜系18禁ゲーム…。
全編、先に挙げた様なヒロインの魅力が、陰惨な物語を中和させて読みやすくする魅力になっているのですが、ラストで『作者=神「もうラストだからお前には用はない。朽ち果てるがいい」』的な超墜落展開…。魅力あるヒロインが男にボロボロにされメロメロになって、全ての美徳を失った堕落した存在=堕落した愚かな女子高生(もちろん女子高生全般が堕落しているということではないが、作中で明らかにそういう描き方がされている)に成り果ててしまうというのが…なんとも…いわゆる「これなんてエロゲ」的な展開で…。ラストのハートマークに、なんとも言い様のない脱力感を感じましたね…。面白くてやがて悲しきミステリです…。
早見和真「イノセントデイズ」
イノセント・デイズ
著者:早見 和真
新潮社(2014-08-22)
販売元:Amazon.co.jp
小林泰三、麻耶雄嵩の両氏の作品に比べたら毒は薄いですが(というか両氏の作品の毒性が異常なレベルなので他の作家が追随できない)、それでも、イヤミスを語るなら外せない作品かなと思っているのがこの「イノセントデイズ」です。
内容はウィリアム・アイリッシュの伝説的な傑作ミステリー「幻の女」の時間軸を引き伸ばしたような話で、殺人犯として死刑を宣告されているヒロインの周囲の人々の述懐をちりばめながら、ヒロインの無実を信じる男性が、その無実を証明するまでの物語に見せながら…
ぬーんって感じになるラスト…。これはラストを明かすと面白さが明白に半減する小説なので、ぜひラストは事前情報なしで読んで欲しいですね。amazonレビューとかでラストについて触れられているので、レビューとかは小説読了前に読まない方がよいと思います。読み終わった後、ぬーんって気持ちになりますね…。
最後に海外ミステリーから一作挙げますね。
アレックス・マーウッド「邪悪な少女たち」
邪悪な少女たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)
著者:アレックス マーウッド
早川書房(2014-11-07)
販売元:Amazon.co.jp
イギリスのミステリー小説です。イギリスというのは、少年法が世界一手厚い日本とはかなり違いまして、イギリスにおいては未成年の犯罪であっても、氏名やその姿などをマスコミが公表することが許されており、遊園地の蝋人形館に未成年犯罪者の実物を象った蝋人形まで作られてしまう国なんですね。
そんな国なので、未成年殺人者は出所後も、もし未成年殺人者であることが世間にばれたら大きくマスコミに騒ぎ立てられ身の破滅な訳です。そんなイギリスで、幼い少女を殺した未成年殺人犯であるアナベルとジェイド。25年後、彼女達は名前と身元を変え、それなりに平穏な生活を過ごしていましたが、偶然にも出会ってしまう。そこから破滅へのロードをひた走っていくんですね…。
ある種、イノセントデイズと同じようなテーマで、マスコミが犯罪報道においてセンセーションな出鱈目報道を垂れ流しているというのが(小説を読んでいると出鱈目報道を繰り返すマスコミ=最悪の屑みたいな認識は日本もイギリスも変わらないんだなあみたいな…)、未成年殺人犯であった二人を追い詰めてゆくんですが(元々の殺人も、殺人というよりは実際は事故であって、救命しようとしたことと死体を隠そうとしたことがが事態を本当にあったことよりも悪く見せている)、それだけではなく、キリスト教的な自己犠牲の精神というのが、ラストに凄く出てくるのが、非常に救いのない残酷な終わり方にも関わらず、なにか、宗教的な、神聖なものを感じさせる終わりですね…。
この小説は、スティーヴン・キングが大絶賛したそうですが、わかるような気がするな…。キングってこういう「どうしようもない破滅的状況において発生するキリスト的自己犠牲の精神」って大好きな感じしますからね…。欧米の小説は、それがイヤミスであっても、キリスト教の精神を感じさせると改めて思いましたね…。
最後に短編から一つご紹介。短編の名手、ヘンリー・スレッサーから
ヘンリー・スレッサー「処刑の日」(下記短編集収録)
うまい犯罪、しゃれた殺人 〈クラシック・セレクション〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
著者:ヘンリイ・スレッサー
早川書房(2004-08-25)
販売元:Amazon.co.jp
死刑判決を勝ち取り意気揚々としている若き検事の前に、「その事件の真犯人だ」と言う男が現れて…。スレッサーらしい、切れ味鋭いイヤミス。スレッサーの短編はどれも素晴らしく面白いのでお勧めですが、なかでもイヤミス的にお勧めなのはこの作品ですね。
今回取り上げた作品は、読後感は最悪ですがそれにも関わらず(もしくはそれ故に)面白い作品ばかりです。ご機会ありましたらご一読お勧めいたしますね。
記憶破断者
忌憶 (角川ホラー文庫)
モザイク事件帳 (創元クライム・クラブ)
さよなら神様
神様ゲーム (講談社文庫)
イノセント・デイズ
邪悪な少女たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)
うまい犯罪、しゃれた殺人 〈クラシック・セレクション〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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