2015年09月04日 12:45
ドラクエ10から見るトリクルダウン理論の失敗の理由 −新自由主義国家アストルティア−
すべて高貴なものは稀であるとともに困難である。
(スピノザ「エチカ」)
昨日、ドラクエ10のエントリーを書いていて思ったのですが、ドラクエ10というのは、そのゲーム内におけるあらゆる全ての価値が「ゴールド」によって自由市場で取引され(他MMOと違い、ドラクエ10ではほぼ全てのアイテム・装備がゴールドとの取引に集約されている)、そこには一切の規制や再分配が存在しない、新自由主義国家の極北のような世界なんですね。
その世界において、酷いインフレが続き、全体の富は増えている筈なのに、富は富める一極に集中し、少数の富める層と多数の貧困層の貧富の差は異常なまでに開いていく。まさに、トリクルダウン理論に対する実地的反証そのものの仮想世界として機能しているというのが面白いなと。
ウィキペディア「トリクルダウン理論」
トリクルダウン理論(trickle-down effect)とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする経済理論または経済思想である。サプライサイド経済学における中心的な思想となっている。
しかし、実証性の観点からは、富裕層をさらに富ませれば貧困層の経済状況が改善することを裏付ける有力な研究は存在しない。それどころか、OECDによる実証研究では貧富の格差の拡大が経済成長を大幅に抑制することが結論づけられている。
「貧富の格差の拡大が経済成長を大幅に抑制する」、まさにドラクエ10で今起きていることがこれで、職人していると分かるんですが、VU直後にも関わらず、商品、特に星3高額装備の売れ行きが凄く悪い。貧富の差が異常に開いている上にインフレに合わせた値段設定をせざる得ない為、少数の金持ちしか装備を買えない状況なんだと思います。
ドラクエ10経済を見ていると、小さな仮想世界なので、「トリクルダウン理論」がなぜ失敗するのかということが目に見えて分かります。それはなぜか。それは…
「富めば富むほど、その富んだものは強欲になり、下層からの収奪を強める」
からです。「他者からの略奪」が容易になればなるほど(富めば富むほど)、より人間は他者から多くを略奪しようとするのですね…。
ドラクエ10の場合、それがもっとも大きく現れているのが買い占め転売作業であり、現在の富裕層は所持ゴールドが数十億を超えており(所持できる金額が最大99億なので富裕層はゴールドを複数アカウントに分けて持っていることが多い)高額アイテムの相場を動かすことができるため(装備品は枠が少ないため相場操作は困難)、その相場を買い占めて高額な必需品アイテムの全体的な値を吊り上げ、高値で一気に売りさばいて暴利を貪るというのが最も圧倒的に儲かる作業なのですね。
現在のアストルティアの高額アイテムは常に寡占状態、もしくはいつでも買い占められる準寡占状態にあり、買い占め転売の作業によって相場は乱高下します。それによって全体のインフレが進みながら貧富の差は大きく広がってゆくという悪循環が起きています(安値の時に売ったりした零細供給者や高値の時に買わざるを得ない零細購入者が常に収奪されている。プレイヤーのほとんどは零細である)。
アストルティア経済に独占禁止法を初めとした市場規制は一切ないですから、完全自由主義市場において、もうなんでもやりたい放題なわけですよ。果て無き貪欲と増大する略奪という人間の根底的本性をこれほど表している仮想世界は他になかなかないでしょう。他のMMOはここまであらゆることを経済に依存していないので…。
人間は富めば富むほど容易に下層からより多く略奪することができ、そしてそれを躊躇無く徹底的に行い続けるのですから、トリクルダウン理論は失敗するのが当たり前なのですね。人間の本性は、根底的に貪欲と略奪であり、富めば富むほど、その富を使って、より多くの富を下層から略奪しようとするのですから…。富を自分からより良い形を目指して再分配しようなどと考える高貴な富者などというのは、この世にはほとんどいないということです。
理性はなるほど感情を制御し、調節することはできる。しかし我々は同時に、理性そのものの教える道が実に峻険なものであることを見た。だから、民衆なり、国務に忙殺される人々なりが、もっぱら理性の掟だけに従って生活するように導かれうると信ずる者は、詩人たちの歌った黄金時代もしくは空想物語を夢みているのである。
(スピノザ「国家論」)
まさに「詩人たちの歌った黄金時代もしくは空想物語」(ファンタジー世界)を形作ろうとした仮想世界が、人間の本性によって瞬く間に自然状態の地獄的様相と化すとは、皮肉なものですね…。法なき世界(自然状態)では「人は人に対して狼になる」(ホッブズ)
生物学的心理学(進化心理学)の第一人者スティーブン・ピンカーは、人間は環境によって塗り変わるタブラ・ラサではなく、他のあらゆる生物と同じように生得的な欲動の動き(自己保存生存本能)が生命体として根本的にあって、まあ一言で言えば「弱肉強食、自らを強化し他者を喰らって生き延びることを目指す自己保存生存本能」に生まれたときから突き動かされていると喝破しましたが、その通りだと思いますよ…。人間は本質的(生得の肉体的)に野獣の脳に先天的支配されており、後天的な環境や教育によって、高貴さ(他者への憐憫・慈愛)を身につけることは、人間の生得的本性に反しているがゆえに、まさに「すべて高貴なものは稀であるとともに困難である」でしょうね…。
武力をもった権威者による裁定は、全般的に暴力を減らす手法として、これまで考案されたなかでもっとも効果的である(中略)国家成立以前の社会で殺人の発生率が衝撃的に高く、男性の10〜60パーセントがほかの男性の手にかかって死んでいるという事実がその一つの証拠になる(中略)逆もまた真で、法の執行がなくなると、あらゆる様式の暴力が発生する。
(スティーブン・ピンカー「人間の本性を考える」)
人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)
人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (中) (NHKブックス)
人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (下) (NHKブックス)
暴力の人類史 上
暴力の人類史 下
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