2014年07月03日 05:00

宮内悠介「ヨハネスブルグの天使たち」読了。凄く面白かったです。ただ初音ミクイメージはいらなかったかも?

伊藤計劃のさん傑作短編、戦争SF文学として見事に優れた作品「The Indifference Engine」。それに連なる物語であるとして岡和田晃さんがThe Indifference Engineの解説にて紹介していた宮内悠介さんの連作SF短編集「ヨハネスブルグの天使たち」読了。凄く面白くてたった今、徹夜で読了してしまいました。凄く面白いんだけど、うーんって感じがするところもあって、複雑ですね…。

本作「ヨハネスブルグの天使たち」は、美少女型アンドロイドDX9の大群が天から地に落ち続けるというイメージをリフレインする連作短編の数々。美少女型アンドロイドDX9は、ボーカロイド初音ミクを立体化して超高度な人工知能を掲載したようなイメージのロボットでして、これらのロボットが天から地へ落ち続けるということが連作短編の中で繰り返し描かれます。なんか、このイメージの強迫的な反復は、特になくても良かったんじゃないかと感じますね…。

連作短編自体は、主に戦争・内紛・テロリズムなどをテーマにしており(最終作のみやや異なる)、短編自体はどれも凄く面白いのですが、何度も挟み込まれる美少女型アンドロイドが落下するというイメージがそれぞれの短編に必要だったのかなという疑問がどうしても否めない。「The Indifference Engine」に比べると、無理に極端なロボットテーマ(ボーカロイドが立体化したロボット達)を落とし込んでいる分、リアリティが感じられないところがあって、うーん…。凄く技量のある作家さんと感じるので、子供兵から見た紛争をダイレクトにテーマにした「The Indifference Engine」のように、短編のテーマそれ自体で勝負して欲しかったなと感じます。本作の場合は、作品の本質的テーマとロボットのイメージが乖離しているように感じるのですね。

初音ミクが立体化した超高度なロボット達というのは、野尻抱介さんの連作SF短編「南極点のピアピア動画」にも出てきますが、この作品(ピアピア動画)においては、同作家の「ふわふわの泉」と同じく、『宇宙人のオーバーテクノロジー』によって、それらのロボットが生まれたと描かれているので、描かれる世界とロボットの間に乖離があっても、納得できるファンタジーとして読める。宇宙人のオーバーテクノロジーはドラえもんの四次元ポケットみたいなもので、『これはファンタジックな要素で、現実離れしていますよ』ということを示して、物語をファンタジーとして入りやすくしている。物語の本筋や背景自体もふわふわした感じの軽いものなので、夢物語(意志を持つボーカロイドが立体化した夢のロボットが現れる)な願望充足ファンタジーとの親和性が高い。

本作の連作短編の場合は、物語の本筋としては戦争や紛争、テロリズムといった凄く重い国際問題テーマを描いているのに比べ、そこに登場するオーバーテクノロジーなロボット達(ロボット達は日本製の富裕層向け歌姫トイロボットという設定ですが、オーバーテクノロジー過ぎて無理を感じる)が凄くふわふわしてる感じで、乖離を感じるんですね。先にも挙げましたが、「The Indifference Engine」のように、ダイレクトに重いテーマと勝負してほしかったなと感じますね…。

ただ、非常に面白い読み応えのあるSF作品であることには間違いないです。一読の価値があると心から言える連作短編集、面白かったですね。お勧めです。最近、SFを余り読んでいなかったのですが、こういった作品が出てきていたことを知り、とても喜ばしいとSF好きの一人として感じましたね…。もっとこの作家さんの本を読んでみたいと思います。

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

盤上の夜 (創元SF文庫)
盤上の夜 (創元SF文庫)

The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)
南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)
ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)

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