2014年05月23日 12:52
今日の朝日新聞の天声人語、ホームズの「ノーウッドの建築業者」ですね。ホームズとジョジョの共通性。
シャーロック・ホームズの帰還 (新潮文庫)
本日5月23日の朝日新聞朝刊のコラム天声人語、PC遠隔操作脅迫事件の事をシャーロック・ホームズシリーズの一編「ノーウッドの建築業者」(「ホームズの帰還」に収録)になぞらえていますね。これは中々見事と思いますね。主に毀誉褒貶の貶の方でネットでは非難されることの多い朝日のコラム天声人語ですが、今回は中々の名コラムであったと僕は思いますね。
これは巧いと思わず膝を叩きましたね。確かに今回のPC遠隔操作脅迫事件と「ノーウッドの建築業者」には通ずるものがある。シャーロキアンとして一本見事に取られました。
上記天声人語で挙げられているのはホームズの「ノーウッドの建築業者」ですが、この作品は、真犯人が自作自演によって自分が殺人事件の被害者であると見せかけることで、被害者に濡れ衣を着せて、その被害者を殺人罪という冤罪によって死刑にして殺そうとするというトリッキーな作品です。分かりやすい犯人-被害者の図式で単純な構造の多いホームズシリーズの中では、この作品は異色の作品なんですね。
「ノーウッドの建築業者」の犯人は凄く狡猾な知能犯で、自分を殺人被害者に見せかけて、相手に殺人罪の濡れ衣を被せることで相手を司法の力によって殺そうとするというのが、入れ子構造的に複雑な形になっていて面白い短編です。
ホームズって結構犯人に甘くて(「私は警察の代理人ではないからね」って「青い紅玉」で自分でも言ってます)、魔がさして衝動的にやってしまったという単純なタイプの犯罪者や、やむを得ない事情がある犯罪者は見逃すことも多いんですね(「青い紅玉」等。そればかりかホームズ自身が法律違反の行動をすることもある、「高名な依頼人」等)。
ただ、他人に濡れ衣を着せて警察の力でその被害者を抹殺しようとするこの事件の犯人にはホームズもワトスンも最大に厳しく、これは作者のコナン・ドイルの思いが反映しているんですね。何しろ本短編の地の文でも犯人を「邪悪なる動物」と記しているくらいですから。
この短編では警察も犯人の道具にされている訳で、社会秩序を守るという警察の機能が悪用されている。ある意味において、人々の善意(社会秩序維持の為の負担と信頼)というものを食い物にしている犯人と言っていい。こういった犯人に対して厳しいというところに、僕はシャーロック・ホームズシリーズの良さを感じますね。近代的なヒューマニズムを大切にしているんですね。
この辺、実は漫画のジョジョなんかにも通ずるなと感じますね。周囲の人々を巻き込み人の善意や人生を食い物にするような本当に悪い狡猾な奴(チョコラータ等)には、それこそ最大限のオラオララッシュがぶちこまれるところとか、ジョジョのヒューマニズムなんですね。本当に悪い奴の表現が「人々を食い物にする人間」であるというところと、そういった本当に悪い奴は最大の全力を持って完全に始末するという苛烈なところに、近代的なヒューマニティ(共同体の人々との善意と信頼を大切にする人間性)の一面が現れているところがジョジョの面白いところの一つだと思いますね。
シャーロック・ホームズの帰還 (新潮文庫)
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本日5月23日の朝日新聞朝刊のコラム天声人語、PC遠隔操作脅迫事件の事をシャーロック・ホームズシリーズの一編「ノーウッドの建築業者」(「ホームズの帰還」に収録)になぞらえていますね。これは中々見事と思いますね。主に毀誉褒貶の貶の方でネットでは非難されることの多い朝日のコラム天声人語ですが、今回は中々の名コラムであったと僕は思いますね。
天声人語
http://www.asahi.com/paper/column.html
(上記公式リンク先に5月23日本日のみ全文有り)
狡猾な男が、他人を罪に陥れるたくらみに成功しながら、さらに証拠を偽造してダメを押そうとした。それが墓穴となってお縄になる。「あの男には」と名探偵シャーロック・ホームズが言う。「打ち切るべき時を知るという才能がなかったのだ」。古い小説の話である
時は流れて、真犯人を装った自作自演のメールで、パソコン遠隔操作事件の片山祐輔被告(32)は墓穴を掘った。きのうの公判で一転して犯行を認めた。狡猾なたくらみで無実の4人が誤認逮捕された事件の展開に、驚いた人は多いだろう(略)
〈アナログがバーチャル犯に復讐し〉と朝日川柳にあった。警察の地道な尾行で、埋める姿が目撃されていたからだ。その努力は買いつつ、デジタルの闇に分け入る捜査能力の一層の向上を求めたい
被告は愉快犯的に振る舞いながら小心な印象だ。だから尻尾を出したともいえる。ネット世界には、冷徹で無表情な「手強い犯罪者」たちが大勢うごめいている
ホームズに戻れば、捕まった男は「ただのジョークだったんです。悪ふざけですよ」と哀れっぽく訴える。片山被告も初めはそんなつもりだったかもしれない。しかし愚行のツケは、きっちり現実の世界で払うほかはない。
これは巧いと思わず膝を叩きましたね。確かに今回のPC遠隔操作脅迫事件と「ノーウッドの建築業者」には通ずるものがある。シャーロキアンとして一本見事に取られました。
上記天声人語で挙げられているのはホームズの「ノーウッドの建築業者」ですが、この作品は、真犯人が自作自演によって自分が殺人事件の被害者であると見せかけることで、被害者に濡れ衣を着せて、その被害者を殺人罪という冤罪によって死刑にして殺そうとするというトリッキーな作品です。分かりやすい犯人-被害者の図式で単純な構造の多いホームズシリーズの中では、この作品は異色の作品なんですね。
「ノーウッドの建築業者」の犯人は凄く狡猾な知能犯で、自分を殺人被害者に見せかけて、相手に殺人罪の濡れ衣を被せることで相手を司法の力によって殺そうとするというのが、入れ子構造的に複雑な形になっていて面白い短編です。
ホームズって結構犯人に甘くて(「私は警察の代理人ではないからね」って「青い紅玉」で自分でも言ってます)、魔がさして衝動的にやってしまったという単純なタイプの犯罪者や、やむを得ない事情がある犯罪者は見逃すことも多いんですね(「青い紅玉」等。そればかりかホームズ自身が法律違反の行動をすることもある、「高名な依頼人」等)。
ただ、他人に濡れ衣を着せて警察の力でその被害者を抹殺しようとするこの事件の犯人にはホームズもワトスンも最大に厳しく、これは作者のコナン・ドイルの思いが反映しているんですね。何しろ本短編の地の文でも犯人を「邪悪なる動物」と記しているくらいですから。
この短編では警察も犯人の道具にされている訳で、社会秩序を守るという警察の機能が悪用されている。ある意味において、人々の善意(社会秩序維持の為の負担と信頼)というものを食い物にしている犯人と言っていい。こういった犯人に対して厳しいというところに、僕はシャーロック・ホームズシリーズの良さを感じますね。近代的なヒューマニズムを大切にしているんですね。
コンプリート・シャーロック・ホームズ
「ノーウッドの建築業者」
http://www.221b.jp/h/norw.html
「上出来だな!」ホームズが静かに言った。「ワトソン、バケツの水を麦わらにかけてくれ。それでよし、レストレード、見逃された重要証人を紹介させていただきたい。ジョナス・オルデイカー氏です」
警部は真っ白になるほどの驚きで新参者をまじまじと見つめた。相手は廊下の明るい光で、目をぱちぱちさせていた。そして我々とくすぶっている火を覗き込んだ。ずる賢そうな、意地の悪そうな、悪意に満ちた、ずるそうな灰色の目、白髪交じりのまつ毛、・・・・醜悪な顔だった。
「これはどうしたことだ、いったい?」遂にレストレードが言った。「この間ずっと何をしていたんだ、ええ?」
オルデイカーは、警部が怒りに逆上して真っ赤な顔になったのに怯え、わざとらしく笑った。
「実害は何もないですよね」
「実害がない?無実の男を絞首刑に送るために悪知恵の限りを尽くしただろうが。もしこの紳士がいなかったら、お前の思い通りになったかもしれないぞ」
卑劣な男は泣き言を言い始めた。
「ちょっとしたジョークなんで。本当です」
「ほお!ジョーク、そうか?言っておくが、お前の方が笑えることは絶対ないぞ。下に連れて行け。私が行くまで居間に止めておけ。ホームズさん」警官が出て行った後、彼は続けた。「巡査の前ではお話できませんでしたが、ワトソン博士の前なら言っても構いません。これは今までで一番お見事でした。どうやってこれが出来たか、私には謎ですが。あなたは無実の男の命を救いました。そして私の警察での評判を破滅させかねなかった深刻な不祥事を未然に防ぎました」
ホームズは微笑んで、レストレードの肩をポンと叩いた。(中略)
「その説明はそれほど難しくはないだろう。非常に根の深い、底意地の悪い、執念深い人物が、今階下で待っている紳士なのだ。君は彼がかつてマクファーレンの母親に拒絶されたことを知っているか。知らない!僕は君に、まずブラックヒースに、その後ノーウッドに行くべきだと言っただろう。この屈辱は、 ―― 彼はそうとらえただろうが ―― 、彼の底意地の悪い陰謀好きの頭脳に居座ってうずいていた。彼はずっと復讐を望んでいたが、チャンスは来なかった。しかし去年から一昨年、彼は逆風に見舞われ、 ―― 僕の考えでは秘密投機だ ―― 、深刻な状態に陥いる。彼は債権者を欺くことを決意する。この目的で、彼はコーネリアス氏なる人物に多額の小切手を振り出す。この男は、僕の想像では彼の別名だ。僕はまだあの小切手を調査していないが、まず間違いなく、その金はどこか地方都市の銀行にコーネリアス名義で預金されているはずだ。オルデイカーはその地で、時々二重生活を送っていた。彼は名前を完全に変えるつもりだった。彼は金を引き出し、姿を消し、どこかでもう一度人生をやり直す」
「まったくありそうな話だ」
「彼は突然ひらめいた。殺されたことにすれば、すべての追跡を逃れられるかもしれない。同時に、もし彼女の一人息子によって殺害されたという印象を与えることができれば、かつての恋人にこの上なく破滅的な復讐を遂げる事が可能になる。極悪の名人芸だ。そして彼はそれを名人の手際で実行した。犯罪に明白な動機を与える遺産のアイデア、彼の両親にも知らせない秘密の訪問、杖の確保、血痕、材木の山の動物の残骸とボタン、すべてが見事だった。それは罠だった。僕は数時間前まで、そこから抜け出すことが出来なかった。だが彼は芸術家の究極の才能を欠いていた。どこで筆を置くかという判断だ。彼はすでに完璧なものを一層良くしようと望み、 ―― すでに不幸な犠牲者の首に巻きつけられていたロープをさらに強く引っ張ろうとし ―― 、そしてすべてを台無しにした。下に行こう、レストレード。彼に一つ二つ聞いてみたいことがある」
悪性の動物は自分の客間に座っていた。両側に警官が立っていた。
「ちょっとしたジョークだったんです、警部さん、・・・・悪ふざけで、それ以上ではありません」彼はひっきりなしに泣き言を言っていた。「分かってくださいな、警部さん。ワシは自分がいなくなったときの影響を知りたくてただ身を隠しただけです。これは確かです。私が可哀そうな青年のマクファーレンさんに何か害を与えようとしたと考えるのは不当です」
「それは陪審員に言うことだ」レストレードは言った。「とにかく、警察はお前をもし殺人未遂が適用できなくとも陰謀罪で告訴する」
「そして債権者がコーネリアス氏の銀行口座を差し押さえることになるでしょうね」ホームズは言った。
小柄な男はぎくりとした。そしてホームズに敵意の目を向けた。
「ずいぶん色々してくださってありがとう」彼は言った。「たぶん、いつかこのお礼はさせてもらう」
ホームズは余裕たっぷりに微笑んだ。
「たぶん数年は、あなたの予定は詰まっているでしょうな」
この辺、実は漫画のジョジョなんかにも通ずるなと感じますね。周囲の人々を巻き込み人の善意や人生を食い物にするような本当に悪い狡猾な奴(チョコラータ等)には、それこそ最大限のオラオララッシュがぶちこまれるところとか、ジョジョのヒューマニズムなんですね。本当に悪い奴の表現が「人々を食い物にする人間」であるというところと、そういった本当に悪い奴は最大の全力を持って完全に始末するという苛烈なところに、近代的なヒューマニティ(共同体の人々との善意と信頼を大切にする人間性)の一面が現れているところがジョジョの面白いところの一つだと思いますね。
ピクシブ百科事典
「チョコラータ」
チョコラータにとって人は全て実験動物でしかなく、自らの知的好奇心を満たすためには町の住民を皆殺しにしても何も感じない。罪悪感というものが欠如しているのである。
吉良吉影が、殺人衝動が抑えられない殺人鬼ならば、チョコラータはその衝動を抑える気が全くないどころか、どうやって殺すかということばかり考えている、より悪質な殺人マニアである。
無差別に他者を殺傷する能力を見たジョルノ・ジョバァーナは「悪の限界のない男」と評し、ボスにすら「最低のゲス」といわれた。 (中略)
ボスの正体の手がかりを掴んだブチャラティ達を抹殺するべく、セッコと共に解き放たれた。
案の定、グリーン・デイの能力で漁村を壊滅させ、ローマ市内でも無差別攻撃を行い多くの市民を殺害した。
ボスはこの一件が終わった後に二人を自らの手で処刑するつもりであり、チョコラータもボスの座を奪おうと考えていた。ナランチャを負傷させ、ジョルノとミスタを追い詰めるが、最終的には敗北。
ジョルノのゴールド・エクスペリエンスによる7ページ半に渡る122連発無駄無駄ラッシュを打ち込まれ、その衝撃でゴミ収集車に文字通り「燃えるゴミ」としてバラバラのまま放り込まれ死亡した。
断末魔は「ヤッダーバァアァァァァアアアアア」。
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