2013年11月15日 03:02
すみっこソフト「なつくもゆるる」クリア。素晴らしい最高の傑作SF!まどか☆マギカへの「希望あるSF」からの返答。
なつくもゆるる【予約特典:CD】
なつくもゆるる
すみっこソフトの新作SFゲーム「なつくもゆるる」クリア。製作陣が同じである前作のSFゲーム「はるまで、くるる。」がSFとして素晴らしかったので期待しながらプレイしたのですが…
期待に十二分に応えてくれる素晴らしい最高の傑作SFでした!!
すみっこソフト公式ホームページ「なつくもゆるる」
http://www.sumikko-soft.com/natsukuru/index.html
本作は時間SFとしてはある種の頂点を極めていて、今から数えて10の72乗年後(無量大数年の彼方)、宇宙の最終的な終焉(あらゆる元素が崩壊し原子、陽子、中性子などの素粒子までもが崩壊し、エントロピーが究極まで増大して全てが平坦化した熱死した宇宙)まで描いているんですね。そして、そのような宇宙から、知的生命(エントロピーを減少させる秩序存在)がどのようにすれば生き残れるかを描いた、とてつもないスケールのSFゲームです。
やってて感動しましたね…。こういう超大規模の巨大な物語を紡いで感動を与えるのは、SFならではの愉悦ですね…。
前回紹介した「君と彼女と彼女の恋。」のクリエイターズインタビュー(この作品をプレイしたクリエイターに感想を聞く催し)の中で、本作「なつくもゆるる」のシナリオライターさんが『「君と彼女と彼女の恋。」は確かに凄い作品だが、同時期に発売される俺の作品(なつくもゆるる)の方が更に凄いぜ!!』みたいなことを述べていましたが、僕としてはまさにその通りだと思いましたね。僕はこちら(なつくもゆるる)の方に圧倒的高評価を付けます。この作品にはSFの真髄たる愉悦、圧倒的なセンスオブワンダーがある。まどか☆マギカの問題(宇宙のエントロピー問題)にSFというジャンル、すなわち科学的思考とそこから生まれる科学的想像で返答している、本作はまさにそんな作品なんですね。
本作の世界では、人類(ホモ・サピエンス)は宇宙に進出し、科学技術を発展させ続け、種の限界寿命を超えて、果てしない時を生き延びるんですね。けれど果てしない時の流れの中で宇宙が老いてゆき、あらゆる元素が崩壊し、物質そのものが形成できなくなり、恒星はもはや生まれず宇宙は暗黒と化してゆき、エネルギーの移転は起きなくなってゆく…。
無量大数年の彼方、超未来の人類(昔人類だったけれど、もはや人類とはかけ離れた何か)は、物質的形成(肉体)を完全に放棄し、エネルギー(魂)だけの存在として、ブラックホールの蒸発から起きるエネルギー移転を使って自己の形成を保つことで、宇宙の終焉の時(完全なる熱的死)の近くまでなんとか永らえるのですが、もはや、完全に自我とかそういった人間的な意志を失っており、ただ存在するだけで、宇宙の完全な熱的死が迫っても何もしない存在なんですね…。
人類(現行人類ではなく、未来の超科学によって宇宙に進出し変貌した人類)はこうなる前に、人類(知的生命)がこうなってしまうことを予見しており、知的生命が何とかして宇宙の終焉を乗り越えて存続できないか、その可能性を探るプロジェクトを行うのですね。ブラックホールと宇宙ひもを使って、時空間を極度に歪めることのできる観察者を生成し、その観察者は、「人類に宇宙終焉を乗り越えさせる」という目的のために人類の歴史をずっと観察し、干渉する。
ここからが面白いところで、小松左京さんの「継ぐのは誰か?」と「神への長い道」を合成して、超弦理論とM理論で味付けするみたいな、SF好きにはたまらないことになってきます。重力子(グラビトン)を感じとることのできる新しい人類、ホモ・サピエンスの亜種が、宇宙の終焉を乗り越える可能性を持つ。超弦理論において、四つの力のうち、重力だけ、ひもが閉じている(現行の時空間とは繋がらない)ゆえに別宇宙と繋がることができる。
でも、ホモ・サピエンスは人類亜種を潜在的敵対種として認識し滅ぼしてしまうため(ネアンデルタール等、人類亜種は全て滅んでいる)、未来の人類の手によって、人類を宇宙終焉を越えて存続させるために創造された存在が、現行人類に滅ぼされようとしている人類亜種を守るという、非常に面白いことになってきます。SF好きとしてはこの辺がもうたまらなく好きですね。
物語は、この「現行人類」対「別宇宙に開かれている人類亜種」と言う対立を軸として進むかに見えて、実はもう一ひねりしてあるところが素晴らしい。「人類を宇宙終焉を越えて存続させるために創造された存在」は、人類や亜種を宇宙終焉を乗り越えさせて存続させることが目的な訳で、人類亜種の味方というのともまた違うんですね。この存在は、人類を、人類亜種を含めて、永遠に存続繁栄させるために働いている。この存在は、人類対亜種の対立をループした時空間の中でぐるぐるぐるぐる回し続けることで、人類亜種の能力(重力子に対する感受性)をどんどん高めて、別宇宙への移行の準備をしている。これが実に面白い。やってくれた!!って感じですね。こういうどんどん話が予想外に大きく広がって行くSF大好きです。
面白いのは、本作においては知的存在が物質に準拠した存在ではなくなると(死や個や種を克服した存在になると)、知的存在としては衰退してしまうということですね。エネルギーとなって何もしない超未来の人類のように。ゆえにSFとしては生命賛歌になっている。物質的基盤の上に成り立っている、「死」と「個」があるからこそ、「発展創造」と「愛」(次代の生命)があって、存在が未来へと向かう存続発展があるという思想に本作は貫かれていて、僕はこれはとても健康的で健全な考え方のように感じましたね。
本作のシナリオライターである渡辺僚一さんの作品って、本作や「はるまで、くるる」をプレイして、凄く健康的なSF作品だなって感じましたね。小松左京さんやハインラインが持っている、『科学と人類に対する究極的なところへの信頼』がこのシナリオライターさんにも確かにあるんですね。科学はとんでもない悲劇を引き起こすし、人類は愚かな行為を沢山引き起こしている、けれども、それでも、科学の発展と人類の営みは、時の流れと共に、より良いより豊かな世界を築いていくんだ!!っていうオプティミズムが物語の核としてあって、そこが凄く、作品をプレイして心が癒される感じなんですね…。作品の核として人間、そして人類に対する大きな希望がある。僕はこのシナリオライターさんの作品大好きです。ニトロプラスのシナリオライター虚淵玄さんと、作品を流れる思想が全く真逆に位置する作風ですね。
「なつくもゆるる」とてもお勧めの作品です。特にSF好きなら、これをプレイせずにSFゲーを語るなかれと断言できる、素晴らしいSFゲームだと確信しています。僕が今までにプレイしたSFゲーム、そして読んできたSF小説の中においても、そのスケールの大きさ(果てしなき時の流れの後に訪れる宇宙の熱的死を乗り越える)において、最高峰に位置すると思います。そして、SF史に残る傑作「幼年期の終わり」に対する挑戦的なアンチテーゼになっているところも素晴らしい…。心から感動しました。
なつくもゆるる【予約特典:CD】
なつくもゆるる
はるまで、くるる。
継ぐのは誰か? (ハルキ文庫)
結晶星団 (ハルキ文庫)
果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))
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なつくもゆるる
すみっこソフトの新作SFゲーム「なつくもゆるる」クリア。製作陣が同じである前作のSFゲーム「はるまで、くるる。」がSFとして素晴らしかったので期待しながらプレイしたのですが…
期待に十二分に応えてくれる素晴らしい最高の傑作SFでした!!
すみっこソフト公式ホームページ「なつくもゆるる」
http://www.sumikko-soft.com/natsukuru/index.html
本作は時間SFとしてはある種の頂点を極めていて、今から数えて10の72乗年後(無量大数年の彼方)、宇宙の最終的な終焉(あらゆる元素が崩壊し原子、陽子、中性子などの素粒子までもが崩壊し、エントロピーが究極まで増大して全てが平坦化した熱死した宇宙)まで描いているんですね。そして、そのような宇宙から、知的生命(エントロピーを減少させる秩序存在)がどのようにすれば生き残れるかを描いた、とてつもないスケールのSFゲームです。
やってて感動しましたね…。こういう超大規模の巨大な物語を紡いで感動を与えるのは、SFならではの愉悦ですね…。
前回紹介した「君と彼女と彼女の恋。」のクリエイターズインタビュー(この作品をプレイしたクリエイターに感想を聞く催し)の中で、本作「なつくもゆるる」のシナリオライターさんが『「君と彼女と彼女の恋。」は確かに凄い作品だが、同時期に発売される俺の作品(なつくもゆるる)の方が更に凄いぜ!!』みたいなことを述べていましたが、僕としてはまさにその通りだと思いましたね。僕はこちら(なつくもゆるる)の方に圧倒的高評価を付けます。この作品にはSFの真髄たる愉悦、圧倒的なセンスオブワンダーがある。まどか☆マギカの問題(宇宙のエントロピー問題)にSFというジャンル、すなわち科学的思考とそこから生まれる科学的想像で返答している、本作はまさにそんな作品なんですね。
本作の世界では、人類(ホモ・サピエンス)は宇宙に進出し、科学技術を発展させ続け、種の限界寿命を超えて、果てしない時を生き延びるんですね。けれど果てしない時の流れの中で宇宙が老いてゆき、あらゆる元素が崩壊し、物質そのものが形成できなくなり、恒星はもはや生まれず宇宙は暗黒と化してゆき、エネルギーの移転は起きなくなってゆく…。
ニコニコ大百科「エントロピー」
エントロピー増大則と宇宙の熱的死
熱力学第二法則とも呼ばれる。「何かの現象が起こるとき、エントロピーは必ず増大する。また勝手に減少する事は無い」という法則である。
ミルクとコーヒーが接触すれば、かならずそれらは交じり合う。熱いものと冷たいものを接触させると、両者は最終的に同じ温度になる。例えば冷たい水の中に熱した鉄の棒を突っ込んだ場合、水が熱せられて鉄の棒が冷める。ぬるいお湯に同じ温度の鉄棒を突っ込んで、水が冷たく、鉄が熱くなることはない。こういう一方通行の出来事、不可逆な現象(逆向きは起こらない)があることをこの法則は意味している。
エントロピーの増大した終焉、世界が平衡状態に達した状態というのは、宇宙のありとあらゆるところが同じ温度、同じ物質の密度となった混沌の海のようなものであると想像された。その世界ではもはや新しい現象は起こらず生命などというものは存在せず、永久にその静かな状態を保つことになる。この宇宙の終焉予想図を熱的死と呼ぶ。
無量大数年の彼方、超未来の人類(昔人類だったけれど、もはや人類とはかけ離れた何か)は、物質的形成(肉体)を完全に放棄し、エネルギー(魂)だけの存在として、ブラックホールの蒸発から起きるエネルギー移転を使って自己の形成を保つことで、宇宙の終焉の時(完全なる熱的死)の近くまでなんとか永らえるのですが、もはや、完全に自我とかそういった人間的な意志を失っており、ただ存在するだけで、宇宙の完全な熱的死が迫っても何もしない存在なんですね…。
人類(現行人類ではなく、未来の超科学によって宇宙に進出し変貌した人類)はこうなる前に、人類(知的生命)がこうなってしまうことを予見しており、知的生命が何とかして宇宙の終焉を乗り越えて存続できないか、その可能性を探るプロジェクトを行うのですね。ブラックホールと宇宙ひもを使って、時空間を極度に歪めることのできる観察者を生成し、その観察者は、「人類に宇宙終焉を乗り越えさせる」という目的のために人類の歴史をずっと観察し、干渉する。
ここからが面白いところで、小松左京さんの「継ぐのは誰か?」と「神への長い道」を合成して、超弦理論とM理論で味付けするみたいな、SF好きにはたまらないことになってきます。重力子(グラビトン)を感じとることのできる新しい人類、ホモ・サピエンスの亜種が、宇宙の終焉を乗り越える可能性を持つ。超弦理論において、四つの力のうち、重力だけ、ひもが閉じている(現行の時空間とは繋がらない)ゆえに別宇宙と繋がることができる。
でも、ホモ・サピエンスは人類亜種を潜在的敵対種として認識し滅ぼしてしまうため(ネアンデルタール等、人類亜種は全て滅んでいる)、未来の人類の手によって、人類を宇宙終焉を越えて存続させるために創造された存在が、現行人類に滅ぼされようとしている人類亜種を守るという、非常に面白いことになってきます。SF好きとしてはこの辺がもうたまらなく好きですね。
物語は、この「現行人類」対「別宇宙に開かれている人類亜種」と言う対立を軸として進むかに見えて、実はもう一ひねりしてあるところが素晴らしい。「人類を宇宙終焉を越えて存続させるために創造された存在」は、人類や亜種を宇宙終焉を乗り越えさせて存続させることが目的な訳で、人類亜種の味方というのともまた違うんですね。この存在は、人類を、人類亜種を含めて、永遠に存続繁栄させるために働いている。この存在は、人類対亜種の対立をループした時空間の中でぐるぐるぐるぐる回し続けることで、人類亜種の能力(重力子に対する感受性)をどんどん高めて、別宇宙への移行の準備をしている。これが実に面白い。やってくれた!!って感じですね。こういうどんどん話が予想外に大きく広がって行くSF大好きです。
面白いのは、本作においては知的存在が物質に準拠した存在ではなくなると(死や個や種を克服した存在になると)、知的存在としては衰退してしまうということですね。エネルギーとなって何もしない超未来の人類のように。ゆえにSFとしては生命賛歌になっている。物質的基盤の上に成り立っている、「死」と「個」があるからこそ、「発展創造」と「愛」(次代の生命)があって、存在が未来へと向かう存続発展があるという思想に本作は貫かれていて、僕はこれはとても健康的で健全な考え方のように感じましたね。
本作のシナリオライターである渡辺僚一さんの作品って、本作や「はるまで、くるる」をプレイして、凄く健康的なSF作品だなって感じましたね。小松左京さんやハインラインが持っている、『科学と人類に対する究極的なところへの信頼』がこのシナリオライターさんにも確かにあるんですね。科学はとんでもない悲劇を引き起こすし、人類は愚かな行為を沢山引き起こしている、けれども、それでも、科学の発展と人類の営みは、時の流れと共に、より良いより豊かな世界を築いていくんだ!!っていうオプティミズムが物語の核としてあって、そこが凄く、作品をプレイして心が癒される感じなんですね…。作品の核として人間、そして人類に対する大きな希望がある。僕はこのシナリオライターさんの作品大好きです。ニトロプラスのシナリオライター虚淵玄さんと、作品を流れる思想が全く真逆に位置する作風ですね。
物事というのは、まぁ総じて放っておけば悪い方向に転がっていく。どう転んだところで宇宙が冷めていくことは止められない。”理に敵った展開”だけを積み上げて構築された世界は、どうあってもエントロビーの支配から逃れられないのである。
(虚淵玄。Fate/Zero同人版後書き)
ニトロプラス「君と彼女と彼女の恋。」クリエイターズインタビュー
http://www.nitroplus.co.jp/game/totono/playreview/creator.php
おまえ達(ニトロプラス)はそこまでやった。確かに凄い。だけど、僕達の『なつくもゆるる』だって凄い。やってやる、真っ向勝負だ、ファック!(中略)
僕は全身を震わせ、肌を粟立てながら、歯を食いしばって、想っている。おまえ達はそこまでやった。確かに凄い。だけど、僕達の『なつくもゆるる』だって凄い。方向性は違うがおもしろさでは負けちゃいない。テメーとやりあえるような奇特なゲームは6月じゃ、ウチくらいだ。やってやる! 何をやってやるのかよくわからんが、とにかくやってやる! ファッキン真っ向勝負だ!
渡辺僚一氏
シナリオライター
半端マニアソフト所属
代表作 『なつくもゆるる』(すみっこソフト)等
「なつくもゆるる」とてもお勧めの作品です。特にSF好きなら、これをプレイせずにSFゲーを語るなかれと断言できる、素晴らしいSFゲームだと確信しています。僕が今までにプレイしたSFゲーム、そして読んできたSF小説の中においても、そのスケールの大きさ(果てしなき時の流れの後に訪れる宇宙の熱的死を乗り越える)において、最高峰に位置すると思います。そして、SF史に残る傑作「幼年期の終わり」に対する挑戦的なアンチテーゼになっているところも素晴らしい…。心から感動しました。
なつくもゆるる【予約特典:CD】
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はるまで、くるる。
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