2013年09月14日 00:53

9月6日にギフト券をお贈り頂きありがとうございます。時間ループとゲーム世界。「13時間前の未来」「時間ループ物語論」

時間ループ物語論

9月6日にギフト券をお贈り頂きありがとうございます。臥せっていてネットも全然できない状況で気づくのが遅れて申し訳ありません。先ほど気づきました。本当にありがとうございます。凄く生活費に困っていて、身体を壊していることもあり、貧窮しており、とても助かります…。ありがとうございます。

先日よりなんとか頑張って少し本を読みました。アメリカの作家リチャード・ドイッチの時間ループミステリー「13時間前の未来」と、古今東西のあらゆる時間ループ作品について、神話や文学からアニメやライトノベル、コミックまで、ありとあらゆる大量の作品群を俯瞰的に分析した時間ループ物考察の力作大著、浅羽通明さんの「時間ループ物語論」です。

両方とも凄く面白かったです。お勧めですね。「13時間前の未来」は、何物かに殺される最愛の妻を救うために、主人公が1時間ずつ時間を遡る物語。「時間ループ物語論」でいうところのシングル・イシュー型時間ループ作品にあたります。(シングル・イシュー型時間ループ作品=主人公が何らかの目的を達成するために時間ループを利用する。時間ループ物では最も多いパターン。近年の著名な代表作としてゲーム「ひぐらしのなく頃に」アニメ「まどか☆マギカ」映画「バタフライ・エフェクト」ライトノベル「All You Need Is Kill」筒井康隆の短編SF「秒読み」ミステリー「七回死んだ男」等)

「時間ループ物語論」で触れられていますが、ミステリーと時間ループというのは凄く相性が良いんですね。この「13時間前の未来」を読んでいてそれをまざまざと実感しました。なぜ相性が良いかと言いますと、時間ループ世界では、たいした推理能力を持たない凡人でも超人的な名探偵になれるんですね。

ミステリーと言うのは、実に解き難い奇怪な謎を解き明かす所に面白みがありますが、そのような謎を快刀乱麻に断ってゆく古典的名探偵というのは、余りに推理力が超人的過ぎて、常人を越えちゃっている英雄な訳ですね。英雄は憧憬の対象であって、感情移入はしにくい。読者の感情移入を助ける役割(感情移入の相手)として、ワトスン役(凡人の助手)が配置されていることが多いですが、せっかくだから、名探偵に感情移入してみたいと思うのが読者のサガ。

時間ループミステリ(ミステリに限らず時間ループ物全般)というのは、そういった読者の願望を叶えるものとして機能しやすいんですね。ループした時間の中にいれば、失敗の経験を積み重ねることで、次のループでは前回よりも良い選択を行える。そうやって段階的に積み重ねた経験の蓄積(ループ経験を生かす主人公の努力)によって、大団円を迎える最終ループでは最高の選択を行ってハッピーエンドに到達できるわけです。時間ループ物主人公に必要なのは超人的推理能力などではなく、失敗ループを繰り返しながらも努力して経験を蓄積して謎に迫って行く地道な努力なので、最終ループでは主人公は、超人的能力ではなく、経験と努力の積み重ねによって生まれた、超人的名探偵と同等の活躍を行って物語をハッピーエンドに導くことができる。時間ループ物の多くは凡人・常人の成長物語、古典的なビルドゥングスロマンとして機能しているんですね。

「13時間前の未来」はまさにこの王道で、主人公はとても良い人、善人ですが、最初の方は最愛の妻が殺された上に時間ループに巻き込まれている動揺もあって行動はかなり考え無しでして、その結果、自分の行動でどんどん状況が悪化するループを幾つか体験することにもなる。そんなループ経験の中、主人公は成長してゆきます。どうすれば最も良い展開になるか考えて行動するようになる。その辺で実に読みやすくて分かりやすい、面白い時間ループミステリ作品でした。

そう、ループする時間によって実現するのは何よりも、戦闘能力のアップとか、難事件の解決といったシングル・イシュー(一つの目標)なのです。目標が単純でわかりやすい。(中略)

従来の本格ミステリーでは、この爽快感(最終的な解決の爽快感)は事件の解決、謎解きという知的な満足でしかなく、犯人逮捕はできても犠牲者達は帰らない後味の悪さがありました。しかし、時間ループというSF的手法の導入は、犯行前、殺人を生むに到る葛藤以前にまで主人公を遡らせて、犠牲者を出さないようにする解決までも可能にします。「ひぐらしのなく頃に」「七回死んだ男」は、それを試みて成功した傑作と言えるでしょう。
(浅羽通明「時間ループ物語論」)

「時間ループ物語論」を読んでいて面白いなと思ったのは、上記のような、同じ条件の時空間を反復(ループ)して経験を蓄積することで、その時空間の最適解を見つけて行くという時間ループの仕組みは、ファミコンから現代に至るまでのコンピューターゲームのプレイヤー体験に近いと考察しているところですね(「ゲーム的リアリズムの誕生」などにも同様の指摘。とくにアクションゲームなどに顕著、同じ時空間を繰り返し練習することで上手くなる)。これはゲーム好きとして実感を持ってその通りだと感じますね。コンピューターゲームの世界は、プレイヤーが時間を操作できる世界、一種の時間ループ世界なんですね。「時間ループ物語論」によると、鮎川歩さんのライトノベル「クイックセーブ&ロード」がまさにそれを意識したゲーム型時間ループ・ライトノベルだそうでして、なかなか面白そうなので今度読んでみたいと思いますね。

ゲームもできたらやってみたいですが、身体を壊しているのと生活が凄く困窮しているので、ゲームは無理かもしれません…。

時間ループ物語論
時間ループ物語論

13時間前の未来〈上〉 (新潮文庫)
13時間前の未来〈下〉 (新潮文庫)
クイックセーブアンドロード (ガガガ文庫)
クイックセーブアンドロード 2 (ガガガ文庫)
クイックセーブアンドロード 3 (ガガガ文庫)

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