2012年12月11日 19:07
体調崩しており更新できず申し訳ありません…。上田早夕里「華竜の宮」読了。人類滅亡防止テーマの作としてとても良かったですね…。
華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
体調を崩しており、更新できず、申し訳ありません…。伊坂幸太郎さんのエッセイ「仙台ぐらし」の中に、『人間は生活に余裕がないと娯楽を楽しむこともできない』ということが書いてありましたが、まさにそういう感じの状態で、日々を送るだけで精一杯というような状況でして、更新がなかなかできず、本当に申し訳なく思います…。
何か良いことを書ければと思い、最近読んだ本で、一番良かった本について書きますね…。
上田早夕里さんの長篇SF「華竜の宮」読了。この本は最近読んだ本の中で、一番面白かったですね…。地球規模の大規模な天災により、海面が大幅に上昇した未来世界(25世紀)を舞台に、将来(100年内)、更に壊滅的な巨大天災が発生し、人類を含む地球生命の大規模な滅亡が起きることが分かり、その滅亡をなんとかして防ごうという人々の努力を描いたSF作品です。
このSFの面白いのは、地球を襲う大規模災害自体は防げないと科学的に判断されて、如何にその災害と災害から起きる地球環境の大異変を和らげるか、という努力を行っていくところですね。大規模災害は、地中のマグマの噴出で、それによって噴出物が地球上空全体を覆うことで、地球が長期間、極度に冷却される(いわゆるスノーボールアースになる)ということなんですが、その災害の発生事態は防げない。ゆえに、如何にそれが起きた時、そしてその後の備えを作るかということに主眼が置かれて物語が進みます。
物語の主人公は日本の外交官で、あまり派手な活躍、アクション映画的な活躍はせずに、ひたすら、各勢力との根回しと外交交渉をして、色んな勢力の利害調整を図って、少しずつ様々な策を進めていくのも面白いです。主人公のやってることは凄く地味なんですが、それを凄く丁寧かつ読みやすく俯瞰的に描いているので、地味な外交の根回しと交渉が凄く面白い。SFというより、ノンフィクションの面白い外交ドキュメンタリーを読むような感触があるのが良かったですね。
また、主人公のパートナーである人工知性体も凄く魅力的で、最後に人類は、人類が滅亡したとしても、その生きてきた証を残したいと、生命体である人類とは違って、過酷な宇宙環境に適応できる人工知性体達を外宇宙へ旅立たせるのですが、それが実に素晴らしい余韻を残します…。
本作、ベストSF2010の第一位に輝いた作品ということで読んだのですが、まさに冠に偽りなしの良作でした。様々なアイデアが盛り込まれたSFとしても、群像劇を描く人間ドラマとしても、プロフェッショナルの仕事を描いた作品としても、全てにおいて優れた良作小説、ぜひご一読をお勧めする作品ですね。
華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
スノーボール・アース: 生命大進化をもたらした全地球凍結 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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体調を崩しており、更新できず、申し訳ありません…。伊坂幸太郎さんのエッセイ「仙台ぐらし」の中に、『人間は生活に余裕がないと娯楽を楽しむこともできない』ということが書いてありましたが、まさにそういう感じの状態で、日々を送るだけで精一杯というような状況でして、更新がなかなかできず、本当に申し訳なく思います…。
何か良いことを書ければと思い、最近読んだ本で、一番良かった本について書きますね…。
上田早夕里さんの長篇SF「華竜の宮」読了。この本は最近読んだ本の中で、一番面白かったですね…。地球規模の大規模な天災により、海面が大幅に上昇した未来世界(25世紀)を舞台に、将来(100年内)、更に壊滅的な巨大天災が発生し、人類を含む地球生命の大規模な滅亡が起きることが分かり、その滅亡をなんとかして防ごうという人々の努力を描いたSF作品です。
このSFの面白いのは、地球を襲う大規模災害自体は防げないと科学的に判断されて、如何にその災害と災害から起きる地球環境の大異変を和らげるか、という努力を行っていくところですね。大規模災害は、地中のマグマの噴出で、それによって噴出物が地球上空全体を覆うことで、地球が長期間、極度に冷却される(いわゆるスノーボールアースになる)ということなんですが、その災害の発生事態は防げない。ゆえに、如何にそれが起きた時、そしてその後の備えを作るかということに主眼が置かれて物語が進みます。
物語の主人公は日本の外交官で、あまり派手な活躍、アクション映画的な活躍はせずに、ひたすら、各勢力との根回しと外交交渉をして、色んな勢力の利害調整を図って、少しずつ様々な策を進めていくのも面白いです。主人公のやってることは凄く地味なんですが、それを凄く丁寧かつ読みやすく俯瞰的に描いているので、地味な外交の根回しと交渉が凄く面白い。SFというより、ノンフィクションの面白い外交ドキュメンタリーを読むような感触があるのが良かったですね。
また、主人公のパートナーである人工知性体も凄く魅力的で、最後に人類は、人類が滅亡したとしても、その生きてきた証を残したいと、生命体である人類とは違って、過酷な宇宙環境に適応できる人工知性体達を外宇宙へ旅立たせるのですが、それが実に素晴らしい余韻を残します…。
本作、ベストSF2010の第一位に輝いた作品ということで読んだのですが、まさに冠に偽りなしの良作でした。様々なアイデアが盛り込まれたSFとしても、群像劇を描く人間ドラマとしても、プロフェッショナルの仕事を描いた作品としても、全てにおいて優れた良作小説、ぜひご一読をお勧めする作品ですね。
華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
スノーボール・アース: 生命大進化をもたらした全地球凍結 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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