2012年06月12日 06:32

フリーゲーム「Ib」コンプリート。素晴らしく良質なホラーゲーム、傑作です。ED2が強烈、逆さまドリアン・グレイですね…。

ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)

フリーゲーム「Ib」コンプリート。ED5の三パターンのルートEDも含めて、全てのルート・全てのEDをクリアして完全コンプリートです。恐怖と入り混じったテンポの良い展開が実に絶妙、素晴らしく面白くて、昨日の夜から一気にプレイしてしまいました。素晴らしく面白い良作、「囚人へのペル・エム・フル」や「コープスパーティ」「1999ChristmasEve」などの歴史的傑作ホラーゲームと並んで、間違いなくフリーゲーム史に残るであろう傑作ホラーゲームです、お勧めですね。

Ib公式サイト
http://kouri.kuchinawa.com/game_01.html

囚人へのペル・エム・フル公式サイト
http://www.tsukuriya.jp/syuujin_site/

コープスパーティ(ファミ通無料ゲーム)
http://www.famitsu.com/freegame/other/0079.html

1999ChristmasEve(download.co.jp)
http://www.download.co.jp/game/advgame/a0000000111/

絵画に邪悪な霊魂が宿るという話は、オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」を始めとして色々とありますが、一人の画家の描いた作品の数々に邪悪な思念が宿っていて、その画家の絵画展を開いた美術館全体が邪悪な霊群の宿った絵画群に満ちた呪われた異界と化すという本作のアイデアがまず凄い。まさにアイデアの勝利、映画化や小説化して欲しくなる優れた展開です。呪われた美術館の雰囲気が素晴らしい、非常な緊迫感のある恐怖を持って、最初から最後まで不気味な恐ろしい感覚がプレイ中、ずっとひしひしと迫ってきます。特に後半の子供の落書きのような異界のモティーフ、アウトサイダー・アート的世界は強烈な印象でした。

また、コンプリートしての感想としては、ED1、ED3、ED5、ED4、ED2の順番でクリアしたのですが、ED2が一番ホラー的で強烈でしたね…。ED1は呪われた美術館から脱出する爽やかなハッピーエンドですが、ED2がちょうどシンメトリックにその対極になっているのが凄い…。ホラーらしい究極的な後味の悪さでした…しかもこのEDを一番最後にクリアしてしまった…ED1を最後にしておけば良かった…。ED2は最も恐怖を感じるルートなので、ホラー的醍醐味としては一番正解だったのかもしれません…。

ED2は、ちょうど「ドリアン・グレイの肖像」の逆さまのような形になっていて、恐ろしかったですね…。オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」は、邪悪な主人公ドリアンはいつまでも年も取らず若々しいままでいて、逆に肖像画が醜く老いさらばえていくという物語で、ドリアンの肖像画はドリアンの良心が宿っているのですね。ドリアンが邪悪な行為に走れば走るほど、肖像画は醜くなり、ドリアンの外見は美しい美青年となってゆく。そして、ついに完全に邪悪な殺人者となったドリアンが、自らの良心を完全に消し去るため、肖像画を破壊しようとする、そして自身の肖像画を破壊しようとしたことで、ドリアンは醜く老いさらばえた姿になって死ぬという物語です。

これ(肖像画)は俺にとって良心と同じようなものだったのだ。そうだ、良心だったのだ。どうしても抹殺してやる。あたりを見回すと、バジル・ホールウォードを刺し殺したナイフが目に留まった。彼はそれを、血痕が完全になくなるまで何回となくこすった。冴えきった刃がきらりと光る。このナイフは、かつてあの画家を殺したごとく、いまやその画家の作品と、それが持つ全ての意味とを刺し殺すのだ。この一突きで過去はなきものとなる。過去さえ死んでしまえば、俺は自由になれる。この一突きで恐るべき魂の命が消え、魂の呪わしい警告がなくなれば俺は自由になれるのだ。彼はぐっとナイフを握りしめ、目の前の絵を突き刺した。

悲鳴が聞こえ、ものの倒れる音が聞こえた。その叫びのこもった苦悶の凄まじさに、召使達は愕然として目を覚まし、部屋を抜け出した。
(オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」)

「ドリアン・グレイの肖像」だと、邪悪なのは人間ドリアンであって、実は絵画には良心が宿っているという形ですが、本作だとちょうどそれが逆になっているのが面白いです。本作の主人公である少女イヴも男性ギャリーも良心的な善良な人物なんですね。そして、呪われた絵画の中の世界で出会う、虫も殺さぬ顔をした少女メアリーが、実は絵画に描かれた実在しない肖像画としての存在であり、彼女は人間の心魂を殺して邪悪な絵画の牢獄の中に永遠に封じ込めて、自分は人間の振りをして絵画の外の現実世界に出ようとしている邪悪な絵画の霊であるという、善良な人間と邪悪な絵画というコントラストの妙が実に面白かったですね。

可愛い顔をしたメアリーが実は邪悪な霊の宿った絵画であり、彼女が平然と残酷にギャリーの魂を殺して彼を永遠に邪悪な絵画世界の中に封じ込めるED2ルートでは、「心と顔は別物」という「ドリアン・グレイの肖像」の言葉を思い出していました…。

「あれ(肖像画)を見ると、僕はいつもどの芝居だったかの奇妙な一節を思い出したものだ――『ハムレット』だったと思うが、こんなのじゃなかったかな――。

『悲しみは見せかけ
心と顔は別物』

まさに、あの絵はそういったところだ」
(オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」)

ED2がなんとも救いようが無いのが、本作は、イヴとギャリーの二人の主人公を操作して、呪われた異界の美術館から脱出を図る作品なのですが、ED2ルートですと、イヴを助けるために、ギャリーが自分の身を犠牲にして、イヴを異界からの脱出に導くんですね。ですが、呪われた異界から脱出したイヴは異界での出来事全ての記憶を失ってしまう。そして、戻ってきた現実世界では、イヴの姉妹として、イヴの家族に、邪悪な霊であるメアリーが存在している…。呪われた異界の力が、現実世界に作用している訳で、一見ほのぼのとした終わりのように見えながら、非常におぞましい終り方なのが強烈でした…。

ED1ラストとED2ラストの一枚絵はちょうど構図的に似せてある形で(ED1は笑顔のギャリーと笑顔のイヴ、ED2は笑顔のメアリーと笑顔のイヴ)、そしてED1ラスト絵ではイヴの目に生気が戻っているんですね(イヴの目に白いハイライトが宿っている)。そして似た構図だけど、ED2ラスト絵だとイヴの目が呪われた異界にいた時と同じく完全に死んでいる(イヴの目にハイライトがない)のが最後に実に強烈…。ED2では、ラスト、現実世界が呪われた異界と同化してしまっている恐怖を最後の最後で強烈に感じさせるところが最高にうまいです。

ED2ルートでは、絵画に宿った邪悪な霊(メアリー)が、善良な人間の魂(ギャリー)を殺して彼を絵画の中に永遠に封じ込め、自身は外に出てきて人間の振りをして存在し続けるというのが、ちょうどドリアン・グレイの逆の形(邪悪な絵画が善良な人間と入れ替わる)、非常に怖い形で展開して終っており、まさにホラーならではの非常に後味の悪い余韻の残る終り方、ホラーとして素晴らしく見事な終結だと思いましたね…。やはりホラーは、後味悪い鮮烈な終り方してこそホラーであるなあと感じます…。ホラーゲーム好きはぜひプレイしてほしい稀に見る大傑作と言える作品、プレイを心からお勧め致しますね。

最後に余談ですが、BGMにクラシック名曲サウンドライブラリー(フリーのクラシックライブラリ)からコレルリのラフォリア(http://www.youtube.com/watch?v=0T6uVh4HRGI)を使っていたり、BGMのセンスが凄く良いところは、音楽好きとしてとても好感を覚えましたね。先にアイデアの勝利と書きましたが、それだけではなく、本作はキャラクター、シナリオ、音楽、グラフィック、操作性、プレイヤーへの利便性、難易度、本作全てのあらゆる部分が高度な品質でまとまっています。アイデアを実に見事にトータルのクオリティとして活かしている、全体的な完成度が素晴らしく高い作品です。全てに物凄く配慮して製作されていることが分かる、丁寧で見事な作品、ユーザービリティ(プレイヤーの遊びやすさ)が全体に渡って素晴らしく高品質なのですね。ファミ通.comで大きく特集されていますし、ぜひこの高品質なユーザービリティを、商業ゲーム(コンシューマゲーム・PCゲーム)の開発者さんも見習って欲しいなあとゲーム好きの一人として思うところですね…。素晴らしいトータルクオリティ、ゲームとして稀に見るレベルの遊びやすさであるところも、本作のとても素晴らしいところだと思います。

Ib公式サイト
http://kouri.kuchinawa.com/game_01.html

ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)
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