2011年05月29日 07:07

朝日新聞に進撃の巨人作者諌山創さんインタビュー記事掲載。全文引用してご紹介致します。進撃の巨人と夕凪の街、桜の国。

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)
夕凪の街桜の国

昨日(11/05/28)の朝日新聞夕刊に、漫画「進撃の巨人」作者の諌山創さんのインタビュー記事が掲載されております。僕は進撃の巨人大好きなのでこの記事は嬉しいなあ。全文引用してご紹介致しますね。

11/05/28朝日新聞夕刊
「食われる」絶望との戦い 「進撃の巨人」諌山創に聞く

人間をむさぼり食う巨人との絶望的な戦いを描いた漫画「進撃の巨人」が、単行本4巻で計450万部を超えるベストセラーになっている。連載デビュー作にして脚本を浴びる、作者の諌山創(写真)に聞いた。

現代の閉塞感 重ねる
舞台は、巨人の大群によって人類のほとんどが食い尽くされた世界。生き残った人間たちは、高さ50メートルの壁に囲まれた城塞都市を築き引きこもる。平穏は約100年続いたが、壁を打ち破るほどの超大型の巨人が出現。若者らは命がけの戦いに飛び込んでいく。

無表情に、人間をつまんで、ばりばり咀嚼する巨人が不気味だ。念頭に、東京の繁華街の深夜のネットカフェでバイトをしていた時の記憶があった。「言葉なんか通じない酔っぱらいの客もいた。いちばん身近に接しているはずの人間が、何を考えているか分からないのが怖い」

巨人が襲撃する前、都市には、城塞内の安全を過信し、緩んだ気分が満ちていた。主人公のエレンはそんな雰囲気に危機感を抱く一方、壁の外を見たいと強く願っていた。24歳の諌山からも「閉塞感」という言葉が何度も口をつく。

「詳しくは分からないけど政治もそうでしょうし、(実家の)九州の田舎では商店街はシャッターだらけで、すごいさみしいですよ」

巨人という「想定外の危機」により、人々は「やらねばならない状況」に追い込まれる。エレンや、彼を何より大切に思うヒロインのミカサ、厳しい訓練を共にした仲間たちは、友情を育み、勇敢さを発揮してゆく。だがそれ以上に、恐怖に泣き叫ぶ姿が頻繁に描かれ、重苦しさが作品を支配する。「弱い部分を見せつつのヒーローを描いていきたい」と諌山は言う。

絵は荒削りで、画力は決して高いとはいえない。「勢いでごまかしている部分もある。でもならば破綻させてやろうと思っていて、結果的にそれが時代にあっていたのかもしれない」

実験場「別冊」から話題作
「進撃の巨人」は2009年、「別冊マガジン」の創刊と同時に連載が始まった。老舗の少年マンガ誌「週刊少年マガジン」の編集部が立ち上げた雑誌だ。「手堅いヒットを狙ってか、既存の少年誌に似通った作品が多くなり、新しい表現を発信する場を作りたかった」と編集長を務める朴鐘顕さんは言う。

創刊時、執筆陣に「絶望を描いてくれ」と伝えたという。言葉どおりの「進撃の巨人」、同級生の体操着を盗んだ中学男子が主人公の「悪の華」など話題作を生んでいる。いずれも「週マガで始めるのは難しい作品でしょう」と朴さん。

少子化の影響で既存のマンガ雑誌の部数は落ち込むが、単行本は堅調だ。新雑誌は、単行本のヒットを生む土壌として期待される。青年誌「モーニング」は06年、「モーニング・ツー」を創刊。ブッダとイエスが現代日本に暮らすというとっぴな設定のギャグ「聖☆おにいさん」の大ヒットも生み、不定期刊から月刊化した。

自由がきくのは、作品の中身だけでない。09年からはウェブでの無料公開に踏み切り、現在も発売から一ヶ月遅れで公開している。編集責任者の田渕浩司さんによると、ある掲載作の単行本のサイン会で、参加者にどこで作品を知ったかを聞くと、「書店の店頭」「ツイッターなどのウェブ」「雑誌」の割合が、5対3対2程度だったという。「大部数の雑誌に掲載するという王道以外の、ヒットの仕方が様々生まれている」と指摘する。

以上、朝日新聞の諌山創さんインタビュー記事全文となります。諌山創さんが「結果的にそれが時代にあっていたのかもしれない」とおっしゃっていますが、現実も、東日本大震災、そして福島第一原発事故と、今まで安全だと思われていた社会がぼろぼろに崩れて、現実の死が脅威として姿を現しており、安全な世界が崩壊して、不安と死に満ちた世界に世界が変貌してゆく「進撃の巨人」はまさに時代の予見性を持った作品であるなあと感じますね…。

そして、僕がもう一つ、非常に優れた予見性を持った漫画であったと感じるのは、被曝をテーマにした漫画「夕凪の街、桜の国」ですね…。進撃の巨人の衝撃は素晴らしいですが、ただ、それはあくまで、少年漫画としての分かりやすさ、目に見える脅威・形ある敵としてある。今後、僕も含めて、日本社会に生きる被曝した大勢の人々に訪れるのは、進撃の巨人の巨人の脅威のような目に見える形の少年漫画的な脅威ではなく、夕凪の街、桜の国が見事に描いたような、淡々と、放射能という目には見えない被害と絶望の中で悲しく滅んでゆく、少女漫画的な寂寥に満ちた終焉でしょうね…。

2003年秋、一時休刊直前の「漫画アクション」に鮮烈な短編が掲載された。「夕凪の街」である。題名から言っても、鮮烈という形容はむしろ当たっていない。一見、ほのぼの、しんみりという感じである。だが、読み進むうちに、深刻なテーマに全身全霊で取り組んでいることがわかってくる。(中略)

わずか30ページの「夕凪の街」の物語は、いたって単純である。昭和20年、広島で少女が被爆する。彼女が十年後ひっそりと世を去る。ためらいがちな小さな恋以外、これといった大事件はない。しかし、この作品が強い感動を呼び起こすのは、作者の死者への共感によるものだろう。自分とは無関係な人にも、まぎれもなく人生があったということへの共感である。想像力というのは、この共感の力でもある。(中略)

(ノンフィクション「未来からの遺言 ある被曝者体験の伝記」の著者)伊藤明彦は、本書執筆当時は、東京の小さな通信社に勤めていた。その前は十年間長崎放送に勤め、被曝者の声を歴史に残す企画に関わった。東京に移ってからは、勤め先の業務とは別に、「被曝者の声を記録する会」を発足させ、一ジャーナリストとして同じ作業を続けた。当時まだ大きくて重いオープンリール式しかなかった録音機を持ち込んでは、在京被曝者の声を記録していたのである。当然、手弁当の作業、使命感だけがこれを支えたのである。

そんな中、伊藤明彦は吉野啓二さんという被曝者に出会う。吉野啓二さんは長崎で被曝し、その後、あちこちの病院で入院退院を繰り返し、1979年44歳で亡くなっている。自殺である。身内はいない。同じ被曝者である姉さんが、入院中の吉野さんを献身的に看病したことがあったが、彼女もずっと前に白血病で亡くなっている。吉野さんの死は孤独な死である。本当に孤独な死である。自らのアイデンティティさえ喪失した孤独な死である。被曝者のこうした真実をも描き出したことで、本書は類のない衝撃の一冊となった。

図書館か古書店で探して、ぜひ一読していただきたい。1945年8月広島・長崎で起きた歴史的な惨事を見る目が、良識を打ち破るほどかわるはずである。
(呉智英「マンガ狂につける薬 下学上達篇」)

現在進行中の福島第一原発事故は既にチェルノブイリ原発事故以上の惨事になることは目に見えてきており、チェルノブイリ・広島・長崎の悲劇は繰り返されるでしょう…。このことを思うと、やりきれない重い絶望を感じます…。

キエフで避難民が集中して住むトロイシェナの第一小児診療所の中に、チェルノブイリの避難民や、被災者から生まれた子供の治療を行う第四部がある。その医師長のスベトラーナ・ベスパロバに、96年1月に会った。彼女の部署で働いているのは、医師も看護婦も全員がプリピャチ市出身の避難民で、そこでは、現在2670人の子供を診ている。

この第四部を訪れる子のデータを見るだけでも、病気の増加がよく分かる。例えば、甲状腺ガンがはじめてこの病院で発見されたのは91年で、現在では6人である。神経系の病気も増えており、疲れやすく、授業中も、だるさを訴えるという。貧血など血管の病気も91年には365人、現在は653人になっている。これは頭痛やめまい、意識を失う子の増加に繋がっている。胃腸系の病気も増え、特に治療の難しいものが増加している。そして白内障は10例である。

悪性腫瘍の子は11人。うち6人が甲状腺ガンで、95年に1人の女の子が別の悪性腫瘍で死んだ。

この子は、タチアナ・ルキナの子供アリョーナの友達だったオルガ(オーリャ)・チメゾーバだ。彼女もプリピャチ出身で、ピアノが上手だった。そしてキエフのコンクールで2位になっている。オーリャは95年5月に、小さな腫瘍が発見された。そしてベスパロバの診療所に連れて行かれ、すぐ、ガンの専門病院で手術を受けたという。しかし、95年8月3日に亡くなったのである。(中略)

高木仁三郎は次のように言う。
「ソ連では今後70年間に通常の発生によってガン死する人の数は950万人と見積もられるので、ソ連やIAEAなどは数万程度のガン死(の被曝による増加)は統計的に意味がなく、深刻なものではないという趣旨の主張をしているが、それは比較すべきでないものを比較した、不適切な議論の典型であろう。この種の議論を認めると、たとえば今ここに1000人の人が死亡する事故が発生しても『日本全体で毎年死亡する人間の70万人に比べればごくわずかであるから、意味のある事故ではない』という屁理屈がなりたってしまう」(高木仁三郎「巨大事故の時代」)

事故の被害の推定には、放射線とガンとの因果関係の立証の困難さがいつもつきまとう。ベルベオークは、こうした問題について、次のように記している。

「ガン患者が以前、大量の放射線被曝を受けたことがあっても、そのガンが放射線によって誘発されたと、確信することはできない。科学的証明はいまだ存在せず、推測しかないのだ。このことは逆に、ガン患者が以前、少量の放射線被曝しか受けていなくても、そのガンが放射線によって誘発されたかも知れないと推測することが可能になる。さらに、子孫に対する半世紀後の損害の影響を確立するためには、極めて長期の研究が必要になる。(原発事故という)犯罪に対する措置を講ずるときには、被害者、加害者ともに死んでしまっているのだ……。チェルノブイリ汚染地域の将来のガン患者も、それが災害によって誘発されたと断言することはできないのだ。この点、核災害とは特に邪悪である」(ベルベオーク「チェルノブイリの惨事」)(中略)

「(プリチャピで被曝して肉腫を発症した)娘は『お父さん、助けて!』と泣いて訴えましたが、私は何もできなかったのです。鎮痛剤は10分ほどしか効きませんでした。私たちは病院にお願いしようとしてあちこち回りましたが、どこの病院も引き受けてくれませんでした。病院は責任を取りたがらなかったのです。痛みだけでも和らげてもらえるようにとお願いしました。病院では麻酔を打ってくれましたが、15分経つと恐ろしい痛みを訴え、その後の15分麻酔で穏やかな状態になり、また15分で麻酔が切れると恐ろしい痛みを訴えるという状態が一ヶ月半も続きました。オーリャは足が利かなくなり、腎臓も働かなくなり、肝臓は腫れ、脊髄が痛みました。そのあげく私たちは病院から追い出されたのです。しかし娘はものすごい苦痛で、人間とは思えないような声で叫んでいました。娘はたった13歳で、大人でも耐え切れないほどの酷い苦しみを味わっていました。(中略)

最後の日、娘は別れの言葉をたくさん言いました。私たちのことを愛しているとか……。私は苦しみは全部過ぎ去るから大丈夫だよ、心配しないで、痛みもなくなるから、と言いました。そして麻酔の影響でしょうけれども、ベッドがぐるぐる回って気持ちがいいと言っていました。今思えば天地の間をさまよっていたのではないでしょうか。唯一よかったのは、彼女が眠るように穏やかに死んだことです。

チェルノブイリのせいで人生がなくなってしまったのです……。

娘は13歳でした。彼女の誕生日は8月13日です。死んだのは8月3日ですから、14歳に、あと20日足りませんでした。葬式は8月5日に行いました。広島の日の前日です。(政府から)治療費を援助する申し出もありましたが、具体的には何もありませんでしたし、何ももらっていません」(中略)

ガーリャは10歳だ。彼女に会ったのは、ルキナの裁縫教室でだった。(中略)彼女の出身地は、チェルノブイリから60キロ南のイワンコフ地区の村だった。事故直後には彼女たちはその村にいた。

ガーリャが聞いていないのを確かめて、私は尋ねた。
「お子さんはガンなんですか」
母親は目を泣きはらして語る。
「そうです。病気なんて全然しない子だったのに、まるで雷に打たれたように、突然病気になってしまったんです」
「お子さんに病気の名は言ってあるのですか」
「残念ながら、彼女は自分でカルテを見つけて読んでしまったのです」

それは辛い話だった。

「その時、お子さんは何と言っていましたか」
「娘は『ママ、私はガンなの?』と聞きました。私は何も答えられませんでした。私たちは病院によく行ってますし、もう10歳ですから、何となく分かったのでしょう」
(広河隆一「チェルノブイリの真実」)

参考作品(amazon)
進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)
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