2011年05月20日 05:18

WHITESOFT「猫撫ディストーション」プレイ。SFとして最高に面白い!!神的母性の楽園と、人間父性の孤独。

猫撫ディストーション
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元長柾木・藤木隻という、ゲーム業界きってのSF小説系シナリオライター二人によるSFアドベンチャー「猫撫ディストーション」プレイ。にゃんこシナリオ・お母さんシナリオ・幼馴染シナリオの三つをクリアしました。

感想としては、最高に面白いです!!特にお母さんシナリオは、度肝を抜かれました。久々にSFならではの無限大のスケールのセンスオブワンダーを感じて、胸が一杯になりましたよ…。しかもその、お母さんシナリオにおいて究極的に進化した人類が時空を超越し宇宙の熱的死(まどか☆マギカのテーマだったですね)すらも乗り越えて、文字通りの無限永遠の幸福(無限永遠の幸福ゆえに、時空の意味はなくなる。時空を超越した神の幸福)を手に入れるという楽園エンドを、幼馴染エンドは否定してしまうという、さらに度肝を抜く展開が…。SF好きは絶対にプレイをお勧めする作品です!!

本作は、三年前、妹が死んでから、家族がその死に絶望しバラバラになってしまった家庭で生きる青年が主人公。彼は、重なり合った量子的ゆらぎの可能性の中から、自らが望む事象を確定させる不可思議な能力、「ゆらぎを観測し確定する」能力を身につけます。この能力は彼の意志とは無関係に、彼の望みを叶えてしまう。この力によって、三年前に死んだ彼の妹、若返って彼と同年代になった彼の父と母、そして性格が変わった彼の姉、それら家族と彼は、彼の望んでいた通りの楽しい家庭生活を送ることになります。

彼の能力というのは、無限の可能性の中から彼の望んだとおりに世界を確定させる能力(ダン・シモンズのSF「うつろな男」も同じ能力テーマでしたね)、そしてこの彼の望みは、彼の無意識的な望みなんですね。彼に愛する人が出来たとき、彼の能力は、愛する人の望みを叶えるために発揮される。彼の能力は、愛する人の望みを叶えることとなる…。そこから、彼自身の意志をも超えた新しい世界が選ばれてゆきます。

にゃんこシナリオは、彼の飼っていた猫が、彼の元に人間として現れます。それは、彼が、猫が人間になってほしいと望んだため。このシナリオでは、動物から人間になったにゃんこは、自分自身の独自の望みは持たず、彼自身の鏡、彼の望みを叶えようとする存在となっている。よって、彼の能力は、にゃんこの願い「彼の望みを叶えてほしい」を叶え、彼に平凡な人間としての幸せを与えるが、にゃんこ自身は、自身の願いが、彼の望みを叶えるという願いだったため、消えさってしまいます…。このシナリオは、主に舞台説明を行う普通の出来でしたが、ここからが凄いです。

お母さんシナリオは、彼の望みにより若返ったお母さんの願いを彼の能力が叶えます。彼のお母さんは、お母さんが若い頃にお父さん(彼の祖父)が亡くなったことに心を痛めており、肉が食べられない菜食主義者で、死の象徴である肉(死肉)と火を嫌い、植物を愛しています。お母さんは、生態系のバランスが調和した森のように、静かに幸せに永遠にみんなの命が続いていくことを望んでいる。お母さんはとても命を慈しんでいる人で、命が永遠に幸せに生きることを望んでいる。彼の能力でこの望みが叶ってゆくのですが、その展開が凄い。

このお母さんは、植物と意志を疎通させる能力、植物との共生能力を得ますが、その力は拡大してゆき、生命の傷を癒し、そして他者の生命同士を一繋がりのものとしてテレパシーで繋げてゆく能力を身に付ける。この力によって、主人公の家族は、家族同士や植物達と緩やかに繋がり、人間を超えた存在に進化してゆく。スタージョンのSF小説「人間以上」みたいな感じですね。

お母さんの力で人格・魂が植物と繋がった家族のそれぞれは、彼らが宿った植物が生き続ける限り、人間としての肉の身体が朽ちても、その人格・魂は滅びることはなく、存続し続けます。お母さんの願いは、大切な家族の命が永遠に悲しみのない世界で、永遠に幸せに暮らすことなのですね。その願いが、主人公の能力によって、叶ってゆくのです。

主人公の家族の人格・魂が宿った植物は森となって広がり、何百万年と時が経ち、人類や現存する他の動物が地球上からすべて滅んだ後も生き続け、地球全土を覆いつくす意識ある森となります。主人公の能力も増大し、あらゆる可能性の中から彼らの命が幸せに生き延びる世界を確定させるようになります。そしてこの森は、小惑星の衝突やガンマ線バーストなどの何度も訪れる絶滅の危機を乗り越え、数十億年後、太陽が膨れ上がり地球を飲み込むときには、意識を宇宙空間に転送し、物質を超えた超越的な意識生命体、オーバーマインドへと進化します。

オーバーマインドとなった彼らは、さらに進化を続けます。なぜならお母さんの望みは、命が永遠に幸せに生きることですから。オーバーマインドすらも永遠の存在ではありません。オーバーマインドの存在を支える宇宙もまた物理法則に支配されている。いつか、何百億年の遥か先には、エントロピーの法則により宇宙が燃え尽きてしまうヒートデス、熱的死が訪れます。オーバーマインドとなった彼らは、宇宙を成り立たせている法則(超弦理論)を探求し理解し、高位次元の中に宇宙が折りたたまれていることを探求し理解し、そして、ついには、高位次元を操作し、時空を操作する能力を身に付ける。

そして、お母さんはついに永遠を手に入れます。オーバーマインドすら超えた存在であるお母さんはもはや人間を超えて、グレートマザー、宇宙の生きとしいける生命の連環を全て慈しむ宇宙的聖母のような存在になる。お母さんは、宇宙を、宇宙が始まり、そして宇宙が終わり、再び宇宙が始まる…という、無限にループし永劫回帰する、永遠に全てが繰り返される永遠の宇宙とする。宇宙全体の慈しみの女神、グレートマザーとなったお母さんに見守られ慈しまれている幸せな生命達の宇宙は無限に永劫回帰する、永遠の円環となったのです。その宇宙では死んでも、それは終わりではありません。宇宙は永劫回帰し、死者も新しい宇宙で再び生まれ、再び出会えるのです。その永劫回帰のループは永遠に続く…。やっと、お母さんがいつも主人公に言っていた謎めいた言葉の意味が分かる。「新しいけどまた会ったね」「また会ったけど新しい始めてだね」お母さんは、既に超越的な永劫回帰の中にいることを知っており、主人公達家族もそれを知る。時空には終わりも始まりもなくなり、宇宙は無限の時空を永劫回帰する。人々は永遠の世界を自然として受け入れる。幸せな宇宙が永遠に続く永劫回帰の世界…「一にして全、全にして一」お母さんエンド。

いやあ…ぶっ飛んだとしか言いようがないです。SFならではとしかいいようのない素晴らしいスケールの大きさですね…。究極の楽園が叶ってしまった、どうするのかなあと思ったら、幼馴染シナリオでこれをひっくり返していて、また驚きました。

お母さんシナリオは、お母さんの望み、人間の限界を遥かに超越した望み「静かに幸せに永遠にみんなの命が続いていくこと」を観測能力で叶えることによって、主人公達はどんどん人間を超えた存在に進化してゆきます。それはお母さんの愛、なんでも優しく包み込んでぬるま湯のような暖かい世界の中でみなを一つにして守り慈しむ母性原理の愛に支えられている。お母さんの愛で、幸せな世界の中で個々の生命はそれぞれ溶け合い、一つのコロニー、群体としてみんな一つに繋がっているのですね。幼馴染シナリオではこれを切断する。あくまで、個であること、個の人間として生きることが、人間が人間として生きることだというシナリオです。幼馴染は、あくまで、個の人間であろうとするのですね。お母さんシナリオが「母性原理のシナリオ・人類補完計画」、幼馴染シナリオは「父性原理のシナリオ・あくまで人間として生きる道」という感じです。こちらのシナリオは、繋がるのではなく、切断します。幼馴染の台詞を引用しますね。

「楽しいことだけを見て、都合のいい世界だけを見ようとして……自分が正しくて、他の人が間違ってるなんて、そんなこと、だめだよ。辛いかも知れないけど、それでも生きないといけないんだよ……。みんな必死に生きていたんだよ。辛いことにも耐えて、幸せになろうと努力した。それを(観測能力で)全部消しちゃう(可能性の世界に戻す)なんて、みんなを消しちゃうのと同じだよ。リセットして、やり直すなんてやっちゃいけないよ……。(中略)(他者と繋がって)完全に理解しあったら、それはもう一人でしかないから……。全てが一つになったら孤独になるだけ。自分で自分を見つめるだけになっちゃう」
(猫撫ディストーション)

これは正論ですが…。ただ、お母さんシナリオの中でも触れられているように、これはあくまでも、「超常的な能力を持たない人間にとっての正論」なんですね…。時空を超越し、あらゆる可能性の中から「みんなが幸せになれる世界」を実現化できる、人知を超えた能力を持つ主人公にとっては、「人間の正論」は通じないと考えるべきではないかなとプレイしていて思いました。主人公の能力は愛する人の願いを叶えますから、このシナリオにおいては、幼馴染の願いを叶えることで主人公は能力を失い、主人公の家族は全員消えてしまいます(主人公の観測によって家族は世界に確定していたので、主人公が能力を失うことで量子的ゆらぎの中の可能性として、確定された存在から、確率的なゆらいだ存在へと還り、消えてしまった)。どう考えてもバッドエンド以外の何物でもありません…。主人公が観測したことで生まれた新しい家族のことを、幼馴染は人間の理を超えたものとしてその家族をどうしても受け入れられず、消してしまった。そこに、彼女の限界と矛盾がありますね…。

人間の限界を遥かに超えた存在にとっては、限られた生しか理解しようとしない限られた人間の正論は、正論ではなく、人々を不幸にする頚木(ニーチェ風に言うなら重力の悪魔)にしかならないのではないか、そんなことを思いましたね…。この幼馴染シナリオがあるおかげで、永劫回帰のお母さんシナリオが、凄く深くなっている。心から感銘を受けましたね…。SF好き、面白いエロゲ好きはぜひプレイしてほしい作品です。本作のお母さんシナリオは、エロゲのシナリオにおいて稀にしか例をみない傑出したシナリオだと思います。みんなが幸せなお母さんエンドの永劫回帰楽園、僕も住みたいなあ…。その世界は死を恐れる必要はない。慈しみに充ちたグレートマザーの見守る幸せな世界、回帰するその世界に永劫再び生まれ、そして過去の世界の記憶(連続性)も持つことができるから…。その世界は円環ですが、同じことを無限に繰り返しているのではありません。無限に巡ってくる新しい幸福を持つ新しい可能世界なのです…。更に他シナリオをクリアしたらまた感想を書きますね。

一切は壊れ、一切は新たに創造される。存在という同一の家は永遠に再建される。一切は分かれあい、一切は再び出会う。存在の円環は、永遠に忠実に己の在り方を守っている。
(ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」)

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