2011年03月06日 17:53

魔法少女まどか☆マギカ二次創作SS「空を見上げると」

amazonまどか☆マギカ関連商品一覧
魔法少女まどか☆マギカ関連グッズ一覧
ニンテンドー3DS

魔法少女まどか☆マギカ二次創作
「空を見上げると」

ワルプルギスの夜。応援に駆けつけた各地の魔法少女達が魔女に殺され、ほむらも重傷を負う。

まどか
「もうやめて…キュゥべえ、これ以上、みんなを不幸にするのはもうやめて！！」

キュゥべえ
「少数の犠牲のおかげで宇宙が救われるんだ。素晴らしいことだと思わないかい」

まどか
「わたし、魔法少女になる！！だから契約の願いを――」

キュゥべえ
「やっとその気になったんだね、まどか。君が絶望して魔女になるときのエネルギーは、宇宙全体の寿命を延ばすに値するエネルギーとなるだろう。さあ、君の願いを言うといい」

まどか
「みんなが不幸にならない世界を――」

キュゥべえ
「その願いは抽象的すぎて叶えることはできない」

まどか
「……私が魔法少女になったとき、私の魔法の力が、最も大きくなるようにして！！」

キュゥべえ
「君の願いを叶えよう」

魔法少女まどか
「キュゥべえ、私はあなたの思い通りにはならない。私は絶望して魔女になることはないし、もう誰も魔法少女にも魔女にもさせないわ。そして宇宙を救ってみせる」

キュゥべえ
「お手並み拝見と行くよ、まどか」

魔法少女まどか
「私の最初で最後の魔法で世界を…この宇宙の在り方を――」

―――

学園へのいつもの通学路。仲良しのかしまし三人娘が、いつものように楽しげに歩いている。

巴マミ
「今日のお茶会、仁美さんとさやかさんも来てくれるのよね？」

美樹さやか
「もちろん！マミさんのお茶会はあたしにとって最高の安らぎさっ」

志筑仁美
「くすくす…。マミさん、昨日もラブレターもらってらしたでしょう。そちらの方はいいのですか？」

巴マミ
「男の子と交際とか、まだそういうこと考えたことないのよね。だからね、お断りさせてもらったわ」

美樹さやか
「さっすがマミさん！！マミさんはあたしの嫁になるのだーっ！」

志筑仁美
「くすくす…」

黒髪の一人の女の子が、思いの詰まった声を挙げる。

暁美ほむら
「………っ！！みんな…忘れて…！！」

怪訝な顔をする三人。

マミ・さやか・仁美
「……？」

そのまま、黒髪の少女は、駆け去って行く。

―――

誰もいない木陰道まで走ってくると、ゆっくりと、熱い涙がこみ上げてきた。「ああ、まどか…」と彼女――暁美ほむらは一人呟いた。「何もかも、本当はこうじゃなかったはずだわ。そうでしょう？あなたのいない世界が、あなたの望みなの？」

痛む胸を押さえながら、彼女は顔をうつむけた――隠した顔から泣き声は洩れて、優しく明るい日差しが涙をキラキラと照らした。「これじゃ不公平よ！」、全てを忘却している世界に対して、彼女は叫んだ。「これじゃあ、不公平じゃない！」

その時、暖かい日差しが彼女のうなじにそっと触れた。

……ほむらちゃん……悲しまないで……。私達は……みんな自分にできることをやった……きっと、それで良かった……。もしよくないことがあっても……私達がみんなできることをやったなら……それは仕方のないことなんだよ……。私は……いつまでも…ずっと…ずっと…ほむらちゃんの傍にいるよ……。永遠に…みんなの傍にいて…みんなを暖めているよ……。みんなの幸せを願って……。

彼女は、目を一杯に見開きながら、かすれた音を立てて息を吸い込んだ。「まどか…そこにいるの…？」

後ろを振り向いた。そこには誰もいなかった。彼女は辺りを見回したが、誰もいなかった。だが、彼女にはまどかの存在が感じられた。「いるのね…まどか…いつも、そこに…」彼女が空を見上げると、いつものように、太陽が二つ、優しく輝いて地表を照らしていた。

END

後書き
魔法少女まどか☆マギカが始まったばかりの頃、まどか＝かまど＝竈＝炉＝魔法のエネルギーではないか、という説がありましたが、今思うと、この説は完全に正鵠を射た説だったんですね…。このSSの世界は、まどかが、エントロピー増大とは関係のないエネルギー（別宇宙の物理定数によってエネルギーを放射する太陽）となっているので、宇宙の熱死は防がれ、キュゥべえが元々地球に来なかった世界です…。だからみんな助かっています…。まどか以外は…。

テッド・チャン
「わたしの考える魔法と科学の本質的な違いはこういうことだ。魔法の効力は、その行使者に依存する。魔法は、だれもがおなじようには使えない。天賦の才を持つ人間しか使えない魔法もあれば、長年の研究によって魂を浄めた人間にしか使えない魔法もある。正しい心を持つ人間にしか使えない魔法もあれば、使う人間の善悪によって違うふうに作用したりもする。科学では、こういうことはまったく起きない。銅線のコイルに磁石を通せば、あなたがだれだろうと、あるいは心の善悪にかかわらず、電流が流れる」
（「SFマガジン」2008年1月号）

J・L・ボルヘス

「チェス」

静まり返った一隅でチェスプレイヤーたちは
ゆっくりと駒を進める
チェス盤は彼らを明け方までひきとめる
憎しみ合う二つの色がぶつかる過酷な世界に

内側に魔術的な強さを秘めた駒たち
堂々たるルーク、駿足のナイト、
武装したクイーン、全てを決するキング、
斜行するビショップ、攻撃的なポーン

プレイヤーたちはその場を去り、
時が彼らを呑み尽くしても
儀式はまだ終わるわけではない

東方で火の手が上がったこの戦いは
今では全世界がその戦場となった
もう一つの戦い同様、この戦いにも終わりはない

気弱なキング、邪まなビショップ、血に飢えたクイーン、
屹立するルーク、悪賢いポーン、
彼らは白と黒の境界を越え、
略奪し、戦いを始める

彼らは知らない、プレイヤーの巧みな手が
自分たちの運命を握っていることを
彼らは知らない、厳格な規則が、
自分たちの意志や、自由を支配していることを

プレイヤーもまた囚われの身だ
いにしえのペルシャの詩人は言った
黒い夜と白い昼という
もうひとつのチェス盤の

神がプレイヤーを動かし、プレイヤーが駒を動かす
その神の背後にいる神は、土埃と時間と夢と苦悩から
いったいどんなゲームを始めようというのだろうか？

│アニメ | 同人

ねこねこ

記事検索

ねこねこブログ

2011年03月06日 17:53

魔法少女まどか☆マギカ二次創作SS「空を見上げると」

「アニメ」カテゴリの最新記事

ねこねこ