2010年03月31日 21:48
体調が非常に良くないです…。清水義範「偽史日本伝」「疑史世界伝」、酒見賢一「周公旦」読了。
周公旦 (文春文庫)
咽喉が焼けつくように痛く、体調が非常に良くないです…。咽喉の激しい痛みとともに咳が止まらないので、咳するたびに咽喉が傷つく感じで痛みが増して、大変困ったなあという思いです…。風邪による炎症などが原因の痛みで自然に治ると良いのですが、もしもポリープとかの病院に行かないと治らない病だと、生活に医療費を出すほど余裕がないので、本当に困ったとの思いです…。
先日ミステリを何冊か読んでおり、ミステリ尽くしではバランスが崩れるので、昨日今日は歴史物の小説を何冊か読んでいました。清水義範「偽史日本伝」「疑史世界伝」、酒見賢一「周公旦」を先ほど読了。三冊とも面白かったですね。清水義範「偽史日本伝」「疑史世界伝」は、パロディの名手で知られる作者らしい軽いユーモア歴史物で、サクッと読める、ちょっとライトノベル風味の気軽な読み物です。時間潰しに読むにはぴったりという感じですね。
酒見賢一「周公旦」は、とても読み応えのある中国歴史物で、実に面白かったですね。諸葛亮孔明と並んで有名な中国の天才軍師太公望の同僚にして、周王朝を興した武王の臣下、武王の死後は周公として周王朝の基盤を固めた名宰相にして祭司の長、中国思想の基礎である「礼」の製作者の一人にして、中国史最大の書物にして世界中に与えた影響も甚大な「易経」の製作にも関わっているとされる周公旦(周公)の生涯を描いた伝記です。
本書「周公旦」は、軍略の天才にして鬼謀の如き縦横無尽の政略家である太公望の手法とは違う、祭事を取り仕切る祭司の力(日本の皇室の歴史における影響力などを見れば分かるように、神聖な祭事は古代において政治そのもの)、すなわち周囲への宗教的パフォーマンスと儀礼に即した言葉の力を使って、軍隊などの物理的な力とは別の力、人心に与える神秘的イメージの影響力を持って世を平定し治に平和を齎さんと努力する周公旦の姿を見事に描いていて、読んでいて感服しましたね。流石は中国歴史物に定評のある酒見賢一さんの作品と感じ入らせる、今回も見事な出来でした。
面白いのは、神秘的イメージを操ることで周囲に影響を与える神聖祭司の長たる周公旦の内面を、決して神秘主義に溺れることのない、現実に即した知性に溢れた合理的で穏健かつ無欲な理性主義者として描いているところです。ゆえにだからこそ、周公旦は、祭司の長としての宗教的な威光を暴走させることなく、上手に使いこなし、周王朝の基盤を固めることが出来たのですね。後の世において聖人として祭られ、孔子の深い敬愛を受けるのもむべなるかなと。作中において、周の武王の死後、自ら天下を取らんと策謀する太公望と人知れず対決するところなど、最高に面白い一幕です。
酒見賢一「周公旦」、とても面白く読み応えのある中国歴史物で、お勧めですね。心から楽しめた良い出来の歴史小説です。
参考作品(amazon)
周公旦 (文春文庫)
易経 (中国の思想)
世界を変えた100冊の本
偽史日本伝 (集英社文庫)
疑史世界伝
amazonトップページ
咽喉が焼けつくように痛く、体調が非常に良くないです…。咽喉の激しい痛みとともに咳が止まらないので、咳するたびに咽喉が傷つく感じで痛みが増して、大変困ったなあという思いです…。風邪による炎症などが原因の痛みで自然に治ると良いのですが、もしもポリープとかの病院に行かないと治らない病だと、生活に医療費を出すほど余裕がないので、本当に困ったとの思いです…。
先日ミステリを何冊か読んでおり、ミステリ尽くしではバランスが崩れるので、昨日今日は歴史物の小説を何冊か読んでいました。清水義範「偽史日本伝」「疑史世界伝」、酒見賢一「周公旦」を先ほど読了。三冊とも面白かったですね。清水義範「偽史日本伝」「疑史世界伝」は、パロディの名手で知られる作者らしい軽いユーモア歴史物で、サクッと読める、ちょっとライトノベル風味の気軽な読み物です。時間潰しに読むにはぴったりという感じですね。
酒見賢一「周公旦」は、とても読み応えのある中国歴史物で、実に面白かったですね。諸葛亮孔明と並んで有名な中国の天才軍師太公望の同僚にして、周王朝を興した武王の臣下、武王の死後は周公として周王朝の基盤を固めた名宰相にして祭司の長、中国思想の基礎である「礼」の製作者の一人にして、中国史最大の書物にして世界中に与えた影響も甚大な「易経」の製作にも関わっているとされる周公旦(周公)の生涯を描いた伝記です。
古代中国では、神意を問うのに、亀甲に熱を加え、割れてできた線によって神託を「読む」亀卜を行っていた。紀元前2000年に伝説の中国天子伏犠が亀甲に八卦の形を見て「易経」の原初形態をつくり、さらに前12世紀ごろ、文王、周公父子が手を加え、前213年に秦の始皇帝がかの悪名高い焚書を命じた頃までには、現在の形に近いものができあがっていたとされるが、いずれも定かではない。焚書はまぬがれ、現代に伝わるものは公式には孔子の改訂版とされるが、実際には「論語」などと同様、孔子派の学者によりまとめられたと思われる。
中国には古来、陰陽の理念があり、二つの相反する現象の呈する緊張を、宇宙を律する力、宇宙の構成そのものとみなした。これが易の根本思想となっている。(中略)
中国人の「命」(運命)の概念は西欧と同じではない。「命」には「全宇宙の総合的存在状態、力」と同じ意味合いがある。運命はわれわれにはいかんともしがたいが、どう生きるべきか決めることや、宇宙の流動的な状態に合わせるよう選択することはできる。
この世は宇宙の理が中心となって種々変化をきたすがゆえに、人間は「易経」の示す運命法則に従うのではなく、それに適応し、運命開拓の努力をなすべきだとするこの書は、占いよりもむしろ哲学的思考を促すものと言えよう。
(マーティン・セイモア・スミス「世界を変えた100冊の本」、「易経」の項より)
本書「周公旦」は、軍略の天才にして鬼謀の如き縦横無尽の政略家である太公望の手法とは違う、祭事を取り仕切る祭司の力(日本の皇室の歴史における影響力などを見れば分かるように、神聖な祭事は古代において政治そのもの)、すなわち周囲への宗教的パフォーマンスと儀礼に即した言葉の力を使って、軍隊などの物理的な力とは別の力、人心に与える神秘的イメージの影響力を持って世を平定し治に平和を齎さんと努力する周公旦の姿を見事に描いていて、読んでいて感服しましたね。流石は中国歴史物に定評のある酒見賢一さんの作品と感じ入らせる、今回も見事な出来でした。
面白いのは、神秘的イメージを操ることで周囲に影響を与える神聖祭司の長たる周公旦の内面を、決して神秘主義に溺れることのない、現実に即した知性に溢れた合理的で穏健かつ無欲な理性主義者として描いているところです。ゆえにだからこそ、周公旦は、祭司の長としての宗教的な威光を暴走させることなく、上手に使いこなし、周王朝の基盤を固めることが出来たのですね。後の世において聖人として祭られ、孔子の深い敬愛を受けるのもむべなるかなと。作中において、周の武王の死後、自ら天下を取らんと策謀する太公望と人知れず対決するところなど、最高に面白い一幕です。
酒見賢一「周公旦」、とても面白く読み応えのある中国歴史物で、お勧めですね。心から楽しめた良い出来の歴史小説です。
参考作品(amazon)
周公旦 (文春文庫)
易経 (中国の思想)
世界を変えた100冊の本
偽史日本伝 (集英社文庫)
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