2010年01月28日 15:26
J-POPの衰退により音楽は豊かに。近現代音楽の大きな流れ、技術と共に進歩するインストゥメンタル・DTM。
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上記の「音楽業界が〜」、物凄くJ-POPより、レコード会社よりの意見で、僕は違和感を覚えますね…。上記によるとエイベックスなどの巨大なレコード会社が支配する音楽業界が廃れているそうでして、それは事実としてその通りだと思います。僕としては日本の大手レコード会社が出すいわゆる「J-POP」を聴くのが、鬼束ちひろさんらごく一部のアーティストを除いては子供の頃から苦手でして、J-POPは縮小して、インストゥメンタル(人間の声のない器楽曲)が拡大して欲しいと常々願っていましたので、J-POPが廃れて音楽が多様化してゆくのは大歓迎という感じです。詳しくは後述しますが、J-POPのクオリティ低下に連動して、他のジャンルのクオリティが低下するわけではないですし、J-POP=音楽業界でもありません。上記ではボカロ界隈はレベルが低いと言っていますが、虚心坦懐に色々聴くと、現在のJ-POPの若い歌手達の歌は余りにも下手すぎて(歌声を抜いて背景音楽だけ聴いていたいと思ってしまう、背景音楽もレベルは低いが歌よりはまだ良い)、聴くのが辛いです。総合的に見るともはやJ-POPのレベルの低さはボカロを含めたあらゆる音楽ジャンルを遥かに凌駕する最下位、最も下の位置にある終わったジャンルではないかと感じてしまいます…。J-POPはマスメディアの宣伝だけで売っているとしか思えないのです…。
J-POPの売り上げが低下することで音楽の質が低下すると「音楽業界が〜」では書かれていますが(確かに現状のJ-POPの質の低さは驚異的です)、J-POPの品質低下が他の音楽の質と連動する訳ではありません。J-POPを聴く人々が減少することで、結果として人々の聴く音楽が若い人々中心に多様化し、J-POP以外の音楽ジャンルの質は年々上がっているように思います。僕は子供の頃からインストゥメンタルをずっと聴いていますが、電子音楽技術の革新的な進歩と、生活に音楽が「水のように溢れている」(byブライアン・イーノ)ことによって、みんな耳が良くなってきて、J-POP以外の音楽のレベルは全体的に上がってきていると思います。日本の音楽シーンにおいて独占的なシェアの支配者であったJ-POPなる時代遅れの巨人にはご退場願ってこそ、更なる多様にして新しいミュージック・シーンの可能性が出てくると思います。優れた歌声を聴くということであれば、サラ・ブライトマンなりエンヤなり、海外に素晴らしい歌い手さん達がきちんといらっしゃいますし…。数十億人のリスナーを持つイーノのインタビューを引用させて頂きますね。
読んでいて最後に笑いましたね。ブライアン・イーノは『レコード会社が音楽を支配する形態はいずれ必ず崩れるし、それによってアーティストとオーディエンスが共に創り上げる多種多様で豊かな音楽が生まれるだろう』ということを何十年も前から述べている作曲家でして、僕はイーノのこの意見は正しいと思います。人々の音楽を聴く耳、音楽感性は無数の音楽が湯水のように出回ることで全体的に豊かになっており、その結果としてレベルの低いJ-POPが廃れてゆくのも必然的なことだと思います。まさに以下の言葉通りです。
J-POPなるものはまさに『過ぎ去ってゆくもの』であると思いますね。クラシックにしても、プレスリーなりビートルズなりの古典的なポピュラー洋楽にしても、僕の好きなミニマル・ミュージックにしても、民俗音楽、例えば演歌にしても、それら様々な音楽の代表的な曲は今から百年後にも今のように聴かれている可能性が高いと思います。しかし、J-POPの曲が今から百年後に今のように聴かれるということはまずないかと…。それはそれで音楽の流れとして然るべき流れだと思います。十年後にも聴きたいと思える曲がはたして現在のJ-POPのトップチャートに存在するでしょうか?
『新人のアーティストはレコード会社に支えられてクオリティを保持していた。』という意見は、今のJ-POPを見ると余りにも説得力を欠くと思います。日本のレコード会社はポップス音楽に対する束縛としてしか機能していないように思いますね…。今のレコード会社は少なくとも日本のJ-POP限定で見れば「イデオロギーの重荷」そのものではないでしょうか。
僕は、エイベックスなどの巨大なレコード会社が音楽において占めるシェアが減少し、その分多様な音楽が生まれた方が、音楽の質は全体的に向上すると思います。『今や音楽は水のような存在になってしまった。事実、水より若干安くなっているし、音楽に対してはまったく異なる態度が生まれている。この新たな態度の健全な部分としては、さっき説明したように、偏見をまぬがれた差別のないフィールドが生まれたことだね。』ですね。日本のインストゥメンタルについて言えば、電子音楽機器の圧倒的な性能向上、そしてTVゲーム音楽の隆盛の影響を受け、ここ数十年において凄まじいほどに質が上昇しています。例えば去年の日本のインストゥメンタルでは、真・女神転生ストレンジ・ジャーニーの音楽は非常に良かったですね。quantum leap symphonic choirsという電子オーケストラソフトで作り出した聖書詩篇のコーラスが絶妙です。初音ミク達ボーカロイドと同じように、人間の声ではなく、ソフトウェアが作り出す電子音声合唱を使っています。合唱に調性が効いている、とても心地よい楽曲です。
真・女神転生ストレンジ・ジャーニーサウンドトラックライナーノーツより作曲家目黒将司さん(著名なゲーム音楽作曲家、日本を代表するインストゥメンタルの作曲家の1人と思います、女神転生シリーズ、ペルソナシリーズの音楽を担当)の言葉を引用します。
真・女神転生 STRANGE JOURNEY オリジナル・サウンドトラック
製作者1人(目黒さん1人)で、人間の声を使わない、合唱としてきちんとしたレベルに達している電子音声合唱曲が作れるというのは、音楽技術の素晴らしい進歩だと思いますね。ボーカロイド界隈でもこういった合唱曲は作られています。この例に限らず、ここ数十年での電子音楽の進歩は驚異的なもので、ゲーム音楽が盛んな日本においても驚くべき発展を遂げています。こういった質の向上を見ずに、J-POPの質の低下を音楽全体の質の低下と結びつけることはあってはならないと思いますね。
海外のインストゥメンタルで言えば、マックス・リヒターの作曲した映画音楽、「戦場にワルツを(Waltz with Bashir、2008年製作)」BGM、素晴らしいと思いましたね。聴いていて感銘を受けたインストゥメンタルです。リヒターはクラシックの技法と電子音楽の技法の両方を活かした作曲を行うアーティストでして、その作曲レベルはただただひたすら感服するとしか言い様のないほどに素晴らしいものです。
Waltz with Bashir
音楽は近年も豊かに生まれ続けています。例えば、近年の歌曲ではサラ・ブライトマンのようなずば抜けて優れた歌手の歌は心から素晴らしいと思います。日本国内のみのジャンルであるJ-POP、「沢山売れる」だけが存在価値な部分の大きい、音楽の質的にはいてもいなくても影響のないJ-POPジャンルが廃れることは、あくまでそのジャンルの枠内のことで、歌という大きな世界にも、音楽という更に大きな世界にもマイナスの影響を与えるような事象ではないと思います。寧ろ、質的に見れば有り得ないような大きなシェアをこれまで取っていたJ-POPの衰退は他の多種多様な音楽からみれば歓迎するべきことかと。J-POP=音楽業界、J-POPの危機=音楽業界全体の危機である様にいうのはあまりにもJ-POPしか見えていない意見だと思います。洋楽ポップスもクラシックもジャズもロックもボーカロイド界隈も、J-POP以外の無数の音楽ジャンルも立派な音楽ですからね…。「音楽業界が〜」はJ-POP以外の音楽の質が低いかのように書いてありますが、J-POPの背景音楽のレベルはかなり低いものが多々あります。映画音楽、ゲーム音楽のインストゥメンタルの方が、J-POPの背景音楽よりもレベルが高い作品が多いです。映画音楽で言えばジョン・ウィリアムズやマイケル・ナイマンや日本なら久石譲さん、岩代太郎さんetc、ゲーム音楽なら先に挙げた目黒将司さんやドラクエのすぎやまこういちさんetc、大勢のクリエイターが優れた作曲を行っています。
上記、グレン・グールド(スタジオ録音ピアニストの巨匠。徹底して演奏の完成度を突き詰めたピアニスト)が聞いたら卒倒しそうな言葉ですね…。これに関しては、本来レコードってスタジオ録音を(以下略)。スタジオ録音は良質な録音環境での録音であり、なおかつ様々な修正が可能ですから、音楽としての純粋な完成度はライブ録音より高くなります。その利点を忘れてはならないと思いますね…。僕の好きなイーノの環境音楽などはスタジオ録音、電子機器を使ったDTMですが、それについて音楽家アート・リンゼイはこのように述べていますね。
アムラン作曲のピアノ曲サーカス・ギャロップとか、コンロン・ナンカロウ作曲のピアノ曲などの『人間の演奏限界を遥かに超えている、自動演奏ピアノ用に作られたピアノ曲』などもある訳で、科学技術の力を借りて、人間が演奏するライブでは出来ない音楽、人間の限界を超えた音楽というのを探求してきたのが、クラシックの系譜を受け継ぐ近現代の音楽の歴史としてあるんですね。最新音楽技術の結晶たる初音ミクらボーカロイド技術も近現代の音楽の流れに連なる、新しい音楽を探求する試みとして立派にある。そういったことを、レコード会社で商業音楽製作に携わる人にはわかって欲しいなと、ボーカロイド好き、音楽好きの1人として思いますね。
Player Piano, Vol. 6: Original Compositions in the Tradition of Nancarrow
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Waltz with Bashir
真・女神転生 STRANGE JOURNEY オリジナル・サウンドトラック
真・女神転生 STRANGE JOURNEY(ストレンジ・ジャーニー)
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私の考えでは、もはや音楽に歴史というものはないと思う。つまり、すべてが現在に属している。これはデジタル化がもたらした結果のひとつで、すべての人がすべてを所有できるようになった。
(ブライアン・イーノ)
「音楽業界がいかに危ないか俺が優しく教えるスレ」
http://workingnews.blog117.fc2.com/blog-entry-2525.html
音楽って研究職だから数百年も前からパトロンがいて成立してきた文化なんだよ。 それはクラシックでもPOPSでも変わらなくて 新人のアーティストはレコード会社に支えられてクオリティを保持していた。 その音楽を作ってるやつらが自分達でビジネスを考えなきゃいけなくなったら 音楽がどうなっていくか、 質が下がる。 それが問題だ。
上記の「音楽業界が〜」、物凄くJ-POPより、レコード会社よりの意見で、僕は違和感を覚えますね…。上記によるとエイベックスなどの巨大なレコード会社が支配する音楽業界が廃れているそうでして、それは事実としてその通りだと思います。僕としては日本の大手レコード会社が出すいわゆる「J-POP」を聴くのが、鬼束ちひろさんらごく一部のアーティストを除いては子供の頃から苦手でして、J-POPは縮小して、インストゥメンタル(人間の声のない器楽曲)が拡大して欲しいと常々願っていましたので、J-POPが廃れて音楽が多様化してゆくのは大歓迎という感じです。詳しくは後述しますが、J-POPのクオリティ低下に連動して、他のジャンルのクオリティが低下するわけではないですし、J-POP=音楽業界でもありません。上記ではボカロ界隈はレベルが低いと言っていますが、虚心坦懐に色々聴くと、現在のJ-POPの若い歌手達の歌は余りにも下手すぎて(歌声を抜いて背景音楽だけ聴いていたいと思ってしまう、背景音楽もレベルは低いが歌よりはまだ良い)、聴くのが辛いです。総合的に見るともはやJ-POPのレベルの低さはボカロを含めたあらゆる音楽ジャンルを遥かに凌駕する最下位、最も下の位置にある終わったジャンルではないかと感じてしまいます…。J-POPはマスメディアの宣伝だけで売っているとしか思えないのです…。
J-POPの売り上げが低下することで音楽の質が低下すると「音楽業界が〜」では書かれていますが(確かに現状のJ-POPの質の低さは驚異的です)、J-POPの品質低下が他の音楽の質と連動する訳ではありません。J-POPを聴く人々が減少することで、結果として人々の聴く音楽が若い人々中心に多様化し、J-POP以外の音楽ジャンルの質は年々上がっているように思います。僕は子供の頃からインストゥメンタルをずっと聴いていますが、電子音楽技術の革新的な進歩と、生活に音楽が「水のように溢れている」(byブライアン・イーノ)ことによって、みんな耳が良くなってきて、J-POP以外の音楽のレベルは全体的に上がってきていると思います。日本の音楽シーンにおいて独占的なシェアの支配者であったJ-POPなる時代遅れの巨人にはご退場願ってこそ、更なる多様にして新しいミュージック・シーンの可能性が出てくると思います。優れた歌声を聴くということであれば、サラ・ブライトマンなりエンヤなり、海外に素晴らしい歌い手さん達がきちんといらっしゃいますし…。数十億人のリスナーを持つイーノのインタビューを引用させて頂きますね。
ブライアン・イーノ特別インタビュー
http://www.timeout.jp/ja/travel/feature/138
私の考えでは、もはや音楽に歴史というものはないと思う。つまり、すべてが現在に属している。これはデジタル化がもたらした結果のひとつで、すべての人がすべてを所有できるようになった。レコードのコレクションを蓄えたり、大事に保管しなくてもよくなった。私の娘たちはそれぞれ 50,000枚のアルバムを持っている。ドゥーワップから始まった全てのポップミュージック期のアルバムだ。それでも、彼女たちは何が現在のもので何が昔のものなのかよく知らないんだ。例えば、数日前の夜、彼女たちがプログレッシブ・ロックか何かを聞いていて、私が「おや、これが出たときは皆すごくつまらないといっていたことを思い出したよ」と言うと、彼女は「え?じゃあこれって古いの?」と言ったんだ(笑)。彼女やあの世代の多くの人にとっては、すべてが現在に属していて、“リバイバル”というのは同じ意味ではないんだ。
「でも、本当に大事なものはいくらかそこで失われたのでは?」
何かは失われたし、何か別のものが得られただろうね。特に私の世代で失われたものは顕著だね。なぜなら、私たちにとってレコードは極めて重要なもので、レコードによって文化的なポジションが決められていたし、レコードの嗜好によって人との付き合いも決まった。レコードは文化的な会話の中心を占めていたんだ。その理由の一つは、レコードは金のかかる趣味だったからね。当時は高くてたくさん買えなかったから、それだけお金をかけるならば、真剣になるし情熱も持つようになる。そして、真剣になって情熱を持った分だけ、恩恵も受ける。だが、今や音楽は水のような存在になってしまった。事実、水より若干安くなっているし、音楽に対してはまったく異なる態度が生まれている。この新たな態度の健全な部分としては、さっき説明したように、偏見をまぬがれた差別のないフィールドが生まれたことだね。音楽は以前ほどはイデオロギーの重荷を背負わされなくなった。例えば、ABBAを好きな人は政治的に格好悪いとされたり、ベルベット・アンダーグラウンドを称賛するのが不可欠だとされていた頃のことを思い出すよ。そういった多くのものは過ぎ去ったし、過ぎ去って良かったと思う。
「それだけでしょうか?」
いや、他にも引き起こされたことは、音楽が事実上無料になったことで、コピーできない部分に価値が置かれるようになったことだ。例えばパフォーマンスに関して言えば、ここ数年においておそらく今までにないほどイギリスではライブパフォーマンスが盛んになっていて、バンドはパフォーマンスを真剣に受け止めている。彼らはパフォーマンスのプロモーションをするためにレコードを作るんだ。私たちの時代は、レコードのプロモーションをするためにパフォーマンスをしたものだった。再びパフォーマンスが活性化して注目すべきものになり、全てのレベルにおいて重要になった。大物のバンドがやってくるときはサーカスが街にやってくるときみたいだし、実際に彼らがやっていることその通りなんだ。様々なフェスティバルも以前より増えている。そうした場所は若者にとっての一時的な新しいコミュニティを生み出していて、私はそれが好きなんだ。素晴らしいことだと思うよ。(中略)
(イーノが作曲したWindowsの起動音は)Windows 95のためにずいぶん昔に作ったから、リスナーは数十億人くらいなものだよ…。
読んでいて最後に笑いましたね。ブライアン・イーノは『レコード会社が音楽を支配する形態はいずれ必ず崩れるし、それによってアーティストとオーディエンスが共に創り上げる多種多様で豊かな音楽が生まれるだろう』ということを何十年も前から述べている作曲家でして、僕はイーノのこの意見は正しいと思います。人々の音楽を聴く耳、音楽感性は無数の音楽が湯水のように出回ることで全体的に豊かになっており、その結果としてレベルの低いJ-POPが廃れてゆくのも必然的なことだと思います。まさに以下の言葉通りです。
『今や音楽は水のような存在になってしまった。事実、水より若干安くなっているし、音楽に対してはまったく異なる態度が生まれている。この新たな態度の健全な部分としては、さっき説明したように、偏見をまぬがれた差別のないフィールドが生まれたことだね。音楽は以前ほどはイデオロギーの重荷を背負わされなくなった。例えば、ABBAを好きな人は政治的に格好悪いとされたり、ベルベット・アンダーグラウンドを称賛するのが不可欠だとされていた頃のことを思い出すよ。そういった多くのものは過ぎ去ったし、過ぎ去って良かったと思う。』
J-POPなるものはまさに『過ぎ去ってゆくもの』であると思いますね。クラシックにしても、プレスリーなりビートルズなりの古典的なポピュラー洋楽にしても、僕の好きなミニマル・ミュージックにしても、民俗音楽、例えば演歌にしても、それら様々な音楽の代表的な曲は今から百年後にも今のように聴かれている可能性が高いと思います。しかし、J-POPの曲が今から百年後に今のように聴かれるということはまずないかと…。それはそれで音楽の流れとして然るべき流れだと思います。十年後にも聴きたいと思える曲がはたして現在のJ-POPのトップチャートに存在するでしょうか?
『新人のアーティストはレコード会社に支えられてクオリティを保持していた。』という意見は、今のJ-POPを見ると余りにも説得力を欠くと思います。日本のレコード会社はポップス音楽に対する束縛としてしか機能していないように思いますね…。今のレコード会社は少なくとも日本のJ-POP限定で見れば「イデオロギーの重荷」そのものではないでしょうか。
僕は、エイベックスなどの巨大なレコード会社が音楽において占めるシェアが減少し、その分多様な音楽が生まれた方が、音楽の質は全体的に向上すると思います。『今や音楽は水のような存在になってしまった。事実、水より若干安くなっているし、音楽に対してはまったく異なる態度が生まれている。この新たな態度の健全な部分としては、さっき説明したように、偏見をまぬがれた差別のないフィールドが生まれたことだね。』ですね。日本のインストゥメンタルについて言えば、電子音楽機器の圧倒的な性能向上、そしてTVゲーム音楽の隆盛の影響を受け、ここ数十年において凄まじいほどに質が上昇しています。例えば去年の日本のインストゥメンタルでは、真・女神転生ストレンジ・ジャーニーの音楽は非常に良かったですね。quantum leap symphonic choirsという電子オーケストラソフトで作り出した聖書詩篇のコーラスが絶妙です。初音ミク達ボーカロイドと同じように、人間の声ではなく、ソフトウェアが作り出す電子音声合唱を使っています。合唱に調性が効いている、とても心地よい楽曲です。
真・女神転生ストレンジ・ジャーニーサウンドトラックライナーノーツより作曲家目黒将司さん(著名なゲーム音楽作曲家、日本を代表するインストゥメンタルの作曲家の1人と思います、女神転生シリーズ、ペルソナシリーズの音楽を担当)の言葉を引用します。
男性コーラスの詩には聖書詩篇から引用していると書きましたが、この男性コーラス、ソフトウェアを使って喋らせています。今は絶版となったquantum leap symphonic choirsというソフト。絶版後に買いましたヤフオクで。絶版後も海外で取り扱っていたので安心していたら、購入の段になってじつはもう取り扱っていないということが判明。ヤフオクの個人出品者様に「(株)アトラス」で領収書を切って頂きました。そして開発も終わりを迎えた頃、新しいエンジンを使ったニューバージョンが発売されました…(中略)
絶版となったquantum leap symphonic choirsを使っての曲作りですが、音程が曖昧なコーラスはこの曲のように前半は音程は曖昧だけれども旋律的なものがあるタイプと、後半の四分音符で野太く叫んでるだけっぽいタイプの2種類に分かれます。これ(quantum leap symphonic choirs)、歌詞を入力して鍵盤で弾くと歌詞に合わせて歌ってくれるというソフトなので、テキストで詩(聖書詩篇)を入力したら鍵盤を弾くわけですが、単音だと全然野太くないんですよね。なので、手のひらで鍵盤を叩く!叩き間違えると詩がずれちゃうからまた最初からやり直し。この作業が客観的に見るとスゴく怪しい。特に野太く叫んでいるだけのタイプを弾くとき。私のブースの前を通った人から、小窓から見える目黒の怪しい行為を何度も目撃されています。
(目黒将司。「真・女神転生ストレンジ・ジャーニーサウンドトラック」より)
Quantum Leap SYMPHONIC ORCHESTRA
http://www.crypton.co.jp/mp/do/prod?id=24430
真・女神転生 STRANGE JOURNEY オリジナル・サウンドトラック
製作者1人(目黒さん1人)で、人間の声を使わない、合唱としてきちんとしたレベルに達している電子音声合唱曲が作れるというのは、音楽技術の素晴らしい進歩だと思いますね。ボーカロイド界隈でもこういった合唱曲は作られています。この例に限らず、ここ数十年での電子音楽の進歩は驚異的なもので、ゲーム音楽が盛んな日本においても驚くべき発展を遂げています。こういった質の向上を見ずに、J-POPの質の低下を音楽全体の質の低下と結びつけることはあってはならないと思いますね。
海外のインストゥメンタルで言えば、マックス・リヒターの作曲した映画音楽、「戦場にワルツを(Waltz with Bashir、2008年製作)」BGM、素晴らしいと思いましたね。聴いていて感銘を受けたインストゥメンタルです。リヒターはクラシックの技法と電子音楽の技法の両方を活かした作曲を行うアーティストでして、その作曲レベルはただただひたすら感服するとしか言い様のないほどに素晴らしいものです。
Max Richter - Waltz with Bashir (fragments)
http://www.youtube.com/watch?v=BlTdzFSP-jc
Waltz with Bashir
音楽は近年も豊かに生まれ続けています。例えば、近年の歌曲ではサラ・ブライトマンのようなずば抜けて優れた歌手の歌は心から素晴らしいと思います。日本国内のみのジャンルであるJ-POP、「沢山売れる」だけが存在価値な部分の大きい、音楽の質的にはいてもいなくても影響のないJ-POPジャンルが廃れることは、あくまでそのジャンルの枠内のことで、歌という大きな世界にも、音楽という更に大きな世界にもマイナスの影響を与えるような事象ではないと思います。寧ろ、質的に見れば有り得ないような大きなシェアをこれまで取っていたJ-POPの衰退は他の多種多様な音楽からみれば歓迎するべきことかと。J-POP=音楽業界、J-POPの危機=音楽業界全体の危機である様にいうのはあまりにもJ-POPしか見えていない意見だと思います。洋楽ポップスもクラシックもジャズもロックもボーカロイド界隈も、J-POP以外の無数の音楽ジャンルも立派な音楽ですからね…。「音楽業界が〜」はJ-POP以外の音楽の質が低いかのように書いてありますが、J-POPの背景音楽のレベルはかなり低いものが多々あります。映画音楽、ゲーム音楽のインストゥメンタルの方が、J-POPの背景音楽よりもレベルが高い作品が多いです。映画音楽で言えばジョン・ウィリアムズやマイケル・ナイマンや日本なら久石譲さん、岩代太郎さんetc、ゲーム音楽なら先に挙げた目黒将司さんやドラクエのすぎやまこういちさんetc、大勢のクリエイターが優れた作曲を行っています。
本来レコードってライブを詰め込んだものなのに、いつからそれが逆転したんだ、って
DTMしかやってないヤツらは当たり前のように知らない。
上記、グレン・グールド(スタジオ録音ピアニストの巨匠。徹底して演奏の完成度を突き詰めたピアニスト)が聞いたら卒倒しそうな言葉ですね…。これに関しては、本来レコードってスタジオ録音を(以下略)。スタジオ録音は良質な録音環境での録音であり、なおかつ様々な修正が可能ですから、音楽としての純粋な完成度はライブ録音より高くなります。その利点を忘れてはならないと思いますね…。僕の好きなイーノの環境音楽などはスタジオ録音、電子機器を使ったDTMですが、それについて音楽家アート・リンゼイはこのように述べていますね。
このアルバム(TEH DROP)は
録音機材の上にのせられたイーノの指の感触と、
機材が的確に動作するのを助長させるイーノの内面
のうつろいを蘇らせる。
イーノほど叙情的精神の持ち主はいない。
(アート・リンゼイ)
アムラン作曲のピアノ曲サーカス・ギャロップとか、コンロン・ナンカロウ作曲のピアノ曲などの『人間の演奏限界を遥かに超えている、自動演奏ピアノ用に作られたピアノ曲』などもある訳で、科学技術の力を借りて、人間が演奏するライブでは出来ない音楽、人間の限界を超えた音楽というのを探求してきたのが、クラシックの系譜を受け継ぐ近現代の音楽の歴史としてあるんですね。最新音楽技術の結晶たる初音ミクらボーカロイド技術も近現代の音楽の流れに連なる、新しい音楽を探求する試みとして立派にある。そういったことを、レコード会社で商業音楽製作に携わる人にはわかって欲しいなと、ボーカロイド好き、音楽好きの1人として思いますね。
Player Piano, Vol. 6: Original Compositions in the Tradition of Nancarrow
参考作品(amazon)
Waltz with Bashir
真・女神転生 STRANGE JOURNEY オリジナル・サウンドトラック
真・女神転生 STRANGE JOURNEY(ストレンジ・ジャーニー)
Player Piano, Vol. 6: Original Compositions in the Tradition of Nancarrow
Player Piano 1: Nancarrow Vol. 1
グレン・グールド 坂本龍一セレクション
初音ミクDVD~impacts~[DVD]
初音ミクDVD~memories~ [DVD]
EXIT TUNES PRESENTS Vocalolegend(ボカロレジェンド)feat. 初音ミク(ジャケットイラストレーター なぎみそ)
はじめての初音ミク ボーカロイド2 オフィシャルガイドブック(DVD-ROM付) (キャラクター・ボーカロイドシリーズ)
メーカー非公式初音みっくす 1 (CR COMICS DX)
メーカー非公式 初音みっくす2 (CR COMICS DX)
はちゅねミクの日常ろいぱら! (1) (角川コミックス)
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ねんどろいど 初音ミク (ノンスケール ABS/PVC塗装済み可動フィギュア)
ねんどろいど 初音ミク はちゅねフェイスver
ねんどろいどぷらす ぬいぐるみシリーズ02 「はちゅねミク」
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