編集王 1 (ビッグコミックス ワイド版)

人気サンデー漫画家「美少女を描けない作家はマンガで食っていけなくなる」
http://news.livedoor.com/article/detail/4434215/

「美少女を描けない作家はマンガで食っていけなくなる」、まさにテーマが「編集王」ですね…。「編集王」は熱血漢な新米漫画雑誌編集者(モデルは実在の編集者八巻和弘)を主人公にした「漫画業界を描く漫画」でして、漫画への深い情熱のあるとてもいい漫画作品です、まだ未読のお方々はぜひ一読をお勧め致します。この漫画の舞台、集英社+小学館を描いていると言われ(アンケート至上主義の編集部は集英社のジャンプ編集部がモデル、お色気路線の強要など漫画の内容を編集部が決めてしまう、漫画家に自由のない状況は小学館のサンデー編集部がモデルと言われている)、この漫画のなかで売り上げ優先志向のなか、お色気漫画が他の作品を駆逐する様と、そのことの苦悩が描かれているのはサンデーが小学館の漫画雑誌であることを思うと、予言的ですね…。本作は、バクマンには描かれない漫画業界の裏の本音を描いている作品で、非常に面白いです。

ウィキペディア「編集王」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%A8%E9%9B%86%E7%8E%8B
『編集王』(へんしゅうおう)は、土田世紀による漫画、及びそれを原作とするフジテレビにて放送されたテレビドラマ。青年漫画誌の編集部を舞台に、編集者や漫画家の姿を描いた。小学館『ビッグコミックスピリッツ』週刊1994年2・3合併号から1997年44号までに連載された。単行本全16巻、ワイド版全4巻、文庫本全10巻。
 15年近く打ち込んだボクシングの世界で芽が出ないまま、網膜剥離で引退する事になった桃井環八(カンパチ)が、新たに出発したマンガの編集の世界で『あしたのジョー』の“ジョー”を目指す姿を描く。カンパチのモデルは、小学館の編集者・八巻和弘といわれている。
 マンガ好きの人間ならニヤリとするような実在の人物・事件が織り込まれているが、それを抜きにしても、それまであまり取り上げられる事のなかった1つの「業界」を描いた傑作である。

編集王ワイド版第一巻
                                      

             (土田世紀「編集王ワイド版第一巻」より)

        主人公の編集者や志のある漫画家はこの流れ(売れるために内容よりもお色気だけの漫画にシフトする漫画雑誌)に抗うんですけど、出版社がビジネスの流れとしてお色気化志向を取っている以上、結局は抗えないというほろ苦い話でしたね…。

桃井環八
「(アンケート)1位っていうからどんなスゲエかと思ったら、こんなもんが人気あるの?ねえ、ヒロ兄ィ。この娘ッコがパンツ出したりケツだすと、順位が上がるわけ?」

編集長
「だったらどうだと言うんだ?」

桃井環八
「何かそんなの馬鹿馬鹿しいな。大体どんな人がアンケートを書いているかわかんねえし」

編集長
「アンケートは絶対なんだよ。アンケートの一位が、一番面白い漫画なんだよ」

桃井環八
「へえー知らなかった。まずアンケートありき。それから話や絵を決めてくってわけですね」

編集長
「…当たり前じゃないか。読者のニーズを積極的に紙面に反映させる……そうやって私はヤングシャウトを百万雑誌にのし上げたんだよ」

桃井環八
「へえーっ、そうなんだ。じゃあ、あんた、いらないじゃん!」

編集長
「あン?」

桃井環八
「編集長なんか居なくたって、このアンケートを見れば、売れる雑誌が作れるわけでしょ?編集者はアンケート通り作家を動かす。作家は言われるまま描きさえすりゃ金になる。読者は水でも飲むみたいにパラパラやって…後はポイでしょ。こんなもん、たとえ百万部出そうが便所でケツもふけねえよなぁ…」
(土田世紀「編集王ワイド版第一巻」より)

僕は漫画家楳図かずおさんの大ファンなのですが、楳図さんが筆を絶った一因は小学館編集者との軋轢、小学館が書く内容を指定してきて、それに楳図さんが反抗して切られたという話ですし、漫画業界は昔から、優れた作品を書こうと理想を持って頑張る漫画家にとってあまり良い環境ではないと言えると思いますね…。雷句誠さんの騒動があった小学館サンデー編集部だけでなく、他の出版社でも、編集部・編集者が漫画家に対して圧力(いわゆる「てこ入れ」、連載中の漫画に唐突に意味もなく露出度の高い女性キャラが出てきたりするアレです)をかけて、漫画家が本当に描きたいことを描かせてもらえないということはよく耳にします…。楳図さんのようなアート肌の漫画家の発表の場は現状非常に狭められておりますから…。漫画家がのびのびと自分の描きたい作品を描ける環境が整備されることを願っています。

楳図さんの作品では「おそれ」(楳図かずお恐怖文庫3こわい本「顔」収録)という作品がお勧めです。二十年近く前に読んだのですが、最後にアッといわされた驚きは今も覚えています。漫画の叙述ミステリーにおける最高峰だと思いますね。こんな凄い作品が描ける漫画家さんが編集者との軋轢で漫画の筆を絶ってしまうなんて、無念で仕方ありません…。

参考作品(amazon)
楳図かずおこわい本 (顔) (楳図かずお恐怖文庫 (3))
編集王 1 (ビッグコミックス ワイド版)
編集王 2 (ビッグコミックス ワイド版)
編集王 3 (ビッグコミックス ワイド版)
編集王 4 (ビッグコミックス ワイド版)
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