うみねこのなく頃に Episode1(上) (講談社BOX)
うみねこのなく頃に Episode1(下) (講談社BOX)

「うみねこのなく頃に散」クリア。面白かったですが、ゲーム内のメタ世界が、ゲーム内の現実世界(実際に殺人が起きている世界)に介入しすぎて完全にファンタジー以外の何物でもなくなっているように思います。ゲーム中において作者竜騎士07さんの語る主張は『本作はミステリー』ですが、実際の本作は『ファンタジー』以外の何物でもなくなっちゃっているように思いますね…。意欲作ですが、ミステリとしてみると完全なる大失敗に終わっていると思います。今回は完全にファンタジーになってしまったなあという感じですね…。

例えば、本作では、メタ世界から送り込まれたことになっている自称『知的強姦者』とやらの探偵『古戸ヱリカ』(「ひぐらしのなく頃に」の古手梨花の分身?)が出てきて、『探偵権限』とかいう超能力を使いまくって捜査するんですね…。で、この『探偵権限』は、探偵の行動に他の人間が逆らえないようになる『超能力』としかいいようのない能力で、ほかの登場人物が探偵の行動に反対していても、この『探偵権限』とかいうのを使われると、他の登場人物が古戸ヱリカの言いなりになっちゃうんですよ…。この『探偵権限』は、どう考えても超能力としか云い様のない力で、しかもそれが、古戸ヱリカの視線からも語られている。この『探偵権限』は、古戸ヱリカに登場人物を従わせる以外にも、殺人事件の舞台に探偵小説の掟である『ノックス十戒』を遵守させるのですが、『探偵権限』とやらを使うこの古戸ヱリカの存在自体がノックス十戒に違反しているファンタジックなありえない存在です…。

「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」とは何ぞや?
http://www5e.biglobe.ne.jp/~t-azuma/omake.htm
「ノックスの十戒」
2. 探偵方法に超自然の能力を用いてはいけない。
 つまりこれは超能力や魔術を使って推理してはいけない、と言うことですね。

探偵権限は「超自然の能力」以外の何物でもありません…。古戸ヱリカが『探偵権限』とかいう超能力を使って登場人物を従えて捜査するたびに、「ええっ…この時点でファンタジーだろ…常識的に考えて…」という感じでプレイしていて驚愕していました。『探偵権限』を使うありえない描写は魔法描写と同レベルにファンタジーです。ちゃんと作者の竜騎士07さんにその自覚があればいいのですが、どうもその辺があやふやで、探偵役はプレイヤーを欺くことのない客観的視線を持っているとか、作中で堂々と語らせちゃっていますし、なんともはや…。

探偵役(EP1〜EP4は戦人、今回はヱリカと作中で説明)が客観的視線を持っており、その描写を信用してもいいのならば、ヱリカの使う超能力としか言い様のない『探偵権限』とかいう能力が事実だということになってしまい、その時点でミステリとして破綻していると思いますね…。超常的な能力である『探偵権限』を認めるなら、魔法だってありえるでしょう…。ノックス十戒を持ち出して古今東西のミステリを批判しながら『本作はミステリ』だと語るならば、きちんとノックス十戒に沿った枠内で全ての殺人事件の謎を解明して欲しいなあと思います。探偵が『探偵権限』なんて超能力を使って謎を解いたら興ざめです…。

どうも、作者の竜騎士07さんには「ひぐらしのなく頃に」がミステリとして相手にされなかったこと(ひぐらしのあの展開ならば相手にされないのは当然だと思いますが…)に相当コンプレックスがある模様で、探偵の呼称が「知的強姦者」なのもそうですが(性格の悪い探偵はメルカトル鮎を始めとして大勢いますが、探偵にこの呼称はいくらなんでもないでしょう…)、やたらと自作以外のミステリに対して三流を連呼したり、綾辻行人&純粋推理空間を馬鹿にしたり(少なくとも僕の見る限り、純粋なミステリ作家として今のところ、綾辻行人さんの方が竜騎士07さんの一兆倍くらい構成力に長けていると思いますが…。竜騎士07さんは綾辻さんの代表作である館シリーズをちゃんと読んでいるのでしょうか…。TVドラマ「安楽椅子探偵」のことばかり取り上げられても…)、ミステリ小説好きをいらっとさせる展開が多めなのは、ちょっとどうかなと思いましたね…。

これはうみねこシリーズのEP1から言えることですが、うみねこの最大の問題として「蓋然性」を無視している問題が挙げられます。『蓋然性を鑑みて判断する、蓋然性があまりに低い事柄は考えから除外する』というのが、現実でもミステリ小説でも当たり前とされていることでして、「うみねこ」はこの観点が抜けているので、読んでいて、あれれと思うことが多いですね…。今回は特にそれが強いように感じました。

蓋然性とは、事象の起きる確率さの度合いです。『蓋然性を鑑みて判断する』とは、簡単に言えば、常識的に見てそれが起こり得るかどうか判断するというということです。例えば、道で上から落ちてきた石に頭を砕かれて死んでいる人がいる。上には団地があって、何者かが石を投げ落とした可能性が高い。そのときに、『これは宇宙から落下した隕石によって頭を砕かれたのだ。その隕石は未知の物質Xで出来ており、何かと衝突することで消滅霧散する特殊な物質で出来ていた為、証拠となる隕石は消えた!!』とかいう可能性は極めてゼロに近いため、通常は考えにいれません。量子力学の世界では物凄い低確率、無視できる低確率で、常識を超えたこと、例えば、水が何も手を加えられなくても突然沸騰するなどの通常ありえない事象が起こる可能性が指摘されていますが、わざわざそんな常識外れのことを考えに入れて行動しませんね。みんな、『蓋然性を鑑みて判断している』のです。

うみねこの世界だと、この蓋然性が無限に適用されており、確率の低い事象も確率の高い事象と同様に扱われているので、う〜んと思うことが多いですね。例えば、今回の「うみねこ散」で戦人が『金蔵は三階の窓から飛び降りて脱出したんだ』というなら、ヱリカは『老体の金蔵が三階の窓から夏妃の眼を盗んで降りられる可能性は低い。飛び降りなどという方法ならなおさらだ』と、常識的な主張をすればいいのに、なぜか、ヱリカまでもが、その可能性を有り得ることとして考えているのがなんだかなあと思いましたね…。常識外れすぎることは考えにいれないというのは、現実でもミステリでも、人が生きる上で当たり前のことだと思います。

あまりにも常識外れな回答は現実世界でもミステリ世界でも否定される、それをある程度公式化したものがノックスの十戒やヴァン・ダインの二十則です。作者の竜騎士07さんは、『どんなに蓋然性の低い事象でも、起こり得る可能性があれば、それは蓋然性の高い事象と等価値である』と考えている感じが、ひぐらしの頃からするのですが、ミステリは基本的に常識の範疇で考える・推理するので、この考え方はミステリとは相容れませんね…。

竜騎士07さんは本作作中にて「魔女は存在する」のような常識はずれな考え方をしないのは愛情がないからだと語られますが、愛情があるかどうかと常識はずれな考え方をするかしないかは全く関係がありません。それを無理矢理=で結んでしまうのは単なるカテゴリの錯誤であり、そういった論理的に筋の通らない錯誤を論理でずばずばぶった切って真実を明かしていくのがミステリですからね。作者さんから「愛ある回答」と称してあまりに突拍子もない常識はずれな回答を出されたら、その『自称ミステリ』はミステリ扱いされなくても当たり前かと思います。この辺のこと(蓋然性の問題・論理の正当性の問題)を竜騎士07さんがきちんと考えにいれて物語をつくらないと、うみねこシリーズ全体が単にファンタジックなだけの物語として、ミステリとしては破綻した大失敗作に終わってしまう可能性が充分あると今回「うみねこ散」をプレイして感じました。

今回の「うみねこのなく頃に散」をプレイして一番に感じたのが上記の不安です。今回の物語だって、今回のエピソードのみで、赤字とか青字とか金字とかメタ的要素を否定してうみねこの現実世界で起きた事象のみを全体的に見るなら、ヱリカの推理通り、どう考えても夏妃が怪しいと思います。秀吉死亡エピソードで、戦人含めて夏妃以外の人物は一緒にいましたから。ただ、夏妃が犯人ではないと、メタ世界の都合で決まっているようなので、違う人物が犯人なのでしょう。その辺、次のエピソードできっちり筋道立てて謎解きして欲しいですね。

個人的には、今作のようにメタ世界と現実世界を混ぜたりしない方がいいと思います。今回の「うみねこのなく頃に散」は、メタ世界と現実世界が混ざりすぎていて、全般的に完全にファンタジーになっているなあと思いました。ミステリを名乗るならば、メタ世界とは関係なく、現実世界の方では現実世界のみできっちりと現実的な推理をして謎を解いて欲しいなと思います。

全般的に、ちょっと今後に不安が残る出来でした。出されたトリック自体は簡単なものが多かったですが。季節のカードについては、春夏秋冬四枚のカードを最初に隠しておけばいい話ですし(小学生の手品レベルのトリックですね…)、ノックについては食堂の時計がずらされていて、食堂にいた人物達が錯誤したのでしょう。後は、今回「探偵は犯人であってはならない」というノックスのルールが持ち出されており、EP1〜EP4までの戦人は「探偵」ということにされているようなので、戦人はEP1〜EP4の犯人ではないということになるのかな…。どう見ても戦人が一番怪しい感じがしますが。戦人がベアトリーチェの息子であることはほぼ確定で、母親を楼座に殺され、自分も夏妃に殺されかけた復讐と考えると個人的には一番しっくりくるのですが。そうじゃないとすると、下記の推理が一番的を得ているように思います。

うみねこのなく頃にWIKI
http://umineco.info/
933 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2009/08/17(月) 23:00:48 ID:JjvBtyDS Be:
推理をわかりやすくしてみた

楼座がベアト落とす→ 腹の中の子=戦人
戦人、金蔵の手により夏妃に委ねられる
が、事故?により落下 奇跡的に生還(このときのトラウマが落ちるー落ちるー)
その後、そのときの使用人たちにより 赤ん坊とノイローゼ夏妃を守るため
赤ん坊戦人は福音へ、とみせかけてルドルフと取引があり、
ルドルフが明日夢という女性と自分の赤ん坊として育てることに。
(ルドルフは後継ぎにふさわしい子供が欲しかった?)
また、同じ理由で一方、霧江のほうの子供は流産ではなく、福音の施設に預けられる。これが嘉音。
しかし嘉音は誤解しており、戦人ではなく自分こそが落下された赤ん坊なのだと勘違いしている。
ここにクラウス夫妻の裏情報を握った霧江が登場。
霧江も嘉音が夏妃が落下させた赤ん坊だと勘違いしているため、彼を唆して
19年前の男として仕立て上げる。しかし嘉音が暴走したのがEP1.

真面目にフェアなミステリとしてうみねこ推理に挑戦しているプレイヤーは大勢いるので、竜騎士07さんはその期待を裏切らずに、きちんと物語を見事なミステリとして纏めて、今回プレイして感じた僕の不安を杞憂として吹き飛ばして欲しいと願いますね…。うみねこの現実世界において「探偵権限」とかいう超自然の能力で謎を解くのではなく、あくまで登場人物が知性をもって謎を解くことを期待します。

「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」とは何ぞや?
http://www5e.biglobe.ne.jp/~t-azuma/omake.htm
「ノックスの十戒」
2. 探偵方法に超自然の能力を用いてはいけない。
 つまりこれは超能力や魔術を使って推理してはいけない、と言うことですね。

参考作品(amazon)
うみねこのなく頃に Episode1(上) (講談社BOX)
うみねこのなく頃に Episode1(下) (講談社BOX)
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