2008年06月29日 08:17

医学・医療の進歩と命の救済

どうしてもうまく文章書けないので、まず詩を書きました。暗い詩でごめんなさい。

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「夜」

ひたひたしんしんと迫ってくる黒い影

肺腑を通り抜け いつまでも氷の爪痕を残す

中天から果ての最後まで全てが黒い影

万物空間時間世界全てが黒い影

伸び縮みしながらいつまでも追ってくる黒い影



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今僕は、かなり強い抗不安薬とか飲んでますので文章が散漫になるかと思いますがごめんなさい。頑張って、文章書いてみます。

今、僕がかなり心が助かっているのは、抗うつ薬をずっと飲んできて、最近それが、少しずつ効いているみたいで、まだかなり辛いですが、助かっています。うつ病になると辛いことの恐怖と不安で頭の中が真っ黒に塗りつぶされてしまうのですが、抗うつ剤というお薬はそれに光が差し込んでくる感じで、少しずつ、明瞭に合理的に物事を考える力が戻ってきます。僕は、最初は辛くて他の感情・思考が消えてしまい、かなり酷い状況だったんですが、ずっと飲んでるとある日、合理的な思考みたいのが、少しずつ戻ってくる感じです。本当に薬は大切だと実感致しました。もし、お薬がなければどうなっていたかわかりません…。今も辛いですが、一番酷いときに比べると、かなり助かっています。

命を救うお薬は、身体を救うだけじゃなく、心も救うのだと実感しました。身命心霊を救われる、お医者様と医療に携わる方に感謝の気持ちで一杯です。僕は医学の専門家ではありませんが、僕にお薬が効いたということは云えます。

精神科医で精神薬学者のドナルド・クライン博士がデータを分析し、次のような結論を下した。重症のうつ病患者に対して、薬物療法は、二つの精神療法や偽薬より早く効果が現れ、全体として効果が高い。(中略)
中程度より重いうつ病で、自殺を考え、無力感を抱き、日常生活が困難な状況にある人は、第一の治療として統合療法を選ぶべきでない。処方薬による薬物療法を、真剣に検討すべきである。それでいったん回復したら、その時点で統合療法のアプローチを考えても危険はないし、問題ないだろう。
(ブライアン・P・クイン「うつ」と「躁」の教科書)

お薬と医学の進歩とお医者様・医療に携わる方は本当に貴いと思いました。僕は小説が好きなんですが、うつ病で自殺してしまわれたと考えられている作家の方、幾人かいて、お薬を使ってもっと、はやく助けられれば…と思います。お薬の開発自体が時代的に新しいものなので、古い作家には間に合わないのですが、それでも、お薬があれば、死なずに済んだのではないかと思う作家さん、います。

猟銃自殺したアーネスト・ヘミングウェイは双極性障害(躁うつ病)だったと云われていますし、芥川龍之介さんも、僕の好きな作家ですが、晩年の作品、遺稿の「或阿呆の一生」の最後の文章とか、他人事と思えなくて…(引用します)

青空文庫「或阿呆の一生」 五十一 敗北
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/19_14618.html
彼はペンを執る手も震へ出した。のみならず涎さへ流れ出した。彼の頭は〇・八のヴエロナアルを用ひて覚めた後の外は一度もはつきりしたことはなかつた。しかもはつきりしてゐるのはやつと半時間か一時間だつた。彼は唯薄暗い中にその日暮らしの生活をしてゐた。言はば刃のこぼれてしまつた、細い剣を杖にしながら。
(昭和二年六月、遺稿)

これ、今、読んでて、涙がでてしまって。芥川龍之介さんがうつ病かどうかはわかりませんが、うつ病でもこうなっちゃうんですね。頭がずっとボーっとして、時間の感覚が失われて、ただ辛さ・苦しみだけが唯薄暗い中支配するんですね。全てが苦痛に満ちた強迫観念に支配され、ペン(合理的思考)は刃がこぼれてしまう。僕の好きな作家の梶井基次郎さんも、読んでると、うつ病のように思えますね…。

私は時々堪らなくいやな状態に陥ってしまうことがある。おうおうとして楽しまない。心が明るくならない。そう云ったものに実感が起こらなくなる。ものに身が入らなくなる。考えの纏まりがつかなくなる。ひとと話をしていても、自分の云っていることはみな甲所の外れた歯がゆい空言にしかならない。懐の都合は勿論はっきりした買いたさもなしに、とんでもないものを買ってしまったりするのもその時だ。何かなしひとから悪く思われているような気がするのもそんな時だ。普段喜びを感じながらしていたことがみな浅はかなことにしか思えなくなるのもそんなときだ。私はひどくみじめになってしまう。自分がでに何が苦しいのかと訊きたくなる。たちの悪い夢を背負っているようだ。夢のようなとうとつな凶が不意に来そうで脅かされる。身体は自由でありながら、腐れ水のような気だけはどうにもならない。それだけ残酷な牢獄のように思える。
(梶井基次郎「汽車」)

読んでて、悲しくて、辛くて、特に「普段喜びを感じながらしていたことがみな浅はかなことにしか思えなくなるのもそんなときだ。私はひどくみじめになってしまう。(中略)身体は自由でありながら、腐れ水のような気だけはどうにもならない。それだけ残酷な牢獄のように思える。」とか僕も、こういう感じで、お薬のおかげで少し楽になっていますから、梶井基次郎さんにはそういうものはなかった(お酒を飲んでよけい悪化してしまいました)というのは悲しいです。

僕がとても好きな作家に猫好き&うつ病が多いのは、不思議な感じがします…。ただ芥川龍之介さんの「歯車」みたいに妄想的な共時性とまでは感じませんし、そういう妄想的な共時性みたいな不安もあったんですが、そういうのは抗うつ剤飲んで意識が明瞭になって合理的に考えられるようになると少しずつ小さくなっていくんですね。合理的に考えるということは、考えすぎることの逆で、思考を適切な範囲で考えないでいられるってことなんですね。考えすぎると苦しむ。T・S・エリオットの詩のようです。

わたしは祈る――あまりにわたしが
自分と論じ合い、説明しすぎる問題を
忘れることができますようにと。
(T・S・エリオット「聖灰水曜日」)

もし、芥川龍之介さんの時代に抗うつ薬があれば、どれほど救われて、それからどれほどいい作品を沢山書いたかと思うと(僕は芥川龍之介作品大好きです)、時代というものの、かなしい、運命を思います…。江藤淳さんもそうですね…。頭がボーっとする精神薬もありますが、抗うつ剤は頭が明瞭になるのできっと芥川龍之介さんも助かって…。それでも、今、大勢の患者さんが、進歩してゆく医学と医療をお仕事となされる方々のおかげで救われていることは、本当に良かった…。

辛くて気力とかなくて、ほとんど何も出来ないのですが、それでも、文章だけ書こうという気になれるのは不思議ですね。朝は比較的調子がいいのですが、だんだんお薬が弱まってくるのか、だんだん前のようにかなり辛くなってきますが、前よりかは楽です。

もっと明るい話が書ければよいのですが…、今度は、猫のお話でも書こうかと思います。

お勧めの本という題材からずれてしまってごめんなさい。芥川龍之介さんの晩年の作品、特に「歯車」などは、非常に衝動的で神経的なリアリズムの感覚があって、大変な傑作だと思います。青空文庫で読めます。また、梶井基次郎さんの作品は、青空文庫収録のきちんと完成されている作品より、全集(ちくま文庫から全一冊で出てます)に載っている断片的な未完成の作品の方が、極めて生の感覚を伝えてくる様相で、お勧めです。

後、どうしてもお金に困っておりまして、ご機会があってよろしければ、amazonでお買い物してくださると助かります…。

「うつ」と「躁」の教科書
梶井基次郎全集 全1巻 (ちくま文庫)

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