2009年01月17日 20:00

体調悪く、あまり文章書けないことをお許しください。リスト「死の舞踏」「天使だけが聞いている12の物語」

リストピアノ協奏曲第1・2番・死の舞踏

先より極度に体調不良で、あまり文章が書けないことをお許しください。リスト「死の舞踏」を本日聴いていて、まさに本曲「死の舞踏」のような心持で辛いです。

リストの「死の舞踏」は初っ端から、非常に暗く、まさに、ダンス・マカーブルであり、ポーの「赤き死の仮面」を読むときのBGMに相応しい作品で、落ち込んだ今の状態の僕に的確に当てはまる曲です。

――赤き死が国を荒廃させていた。
血がその化身であり、証印であった。
魅入られた者が際会すべきは、
激越な苦痛と不意の眩暈、
毛穴からの夥しい出血、
そして死だった。
(ポー「赤き死の仮面」
「エドガー・アラン・ポー短篇集」より)

今の僕は「天使だけが聞いている12の物語」の最後の物語、「逆風をついて」の主人公のような気持ちです。何もかも閉ざされていてとても寒いです。

この狭い箱のなかは凍えそうに寒い。
(ジョン・オファレル「逆風をついて」
「天使だけが聴いている12の物語」より)

「天使だけが聞いている12の物語」はイギリスで出た慈善的な有志ある小説家達のアンソロジーで、いわゆるチャリティ小説で、イギリスでこの本(英語版原著のみ・邦訳版にはチャリティの仕組みは無し)が一冊売れると1ポンドが福祉にまわされます。西欧などではアーティストのチャリティツアーなどと同じことを作家達もやっておりますが、日本の作家達や日本の出版社はこういうこと(小説を使った社会貢献的な活動)はあまりやっていないようです。

本作は題名通り、「天使だけが聞いている12の物語」、すなわち、他に誰も聞き手がいない人物達(動物含む)の心情を語った物語で、誰も聞き手がいない、すなわち、悲惨的な状況の人々(動物含む)が主人公です。

「天使だけが聞いている12の物語」の最後の物語、それは、理想と情熱を持ったマイム・アーティスト(俳優)の若者(主人公)が、現実の厳しさ(特に不況)の前に叩き潰されて、挫折して、何もかも失って心が折れてゆく物語で、まさに今の僕の境遇(生活苦の前に心が折れる)のようで、とても気持ちがわかるように思います。仕事がないときの主人公の台詞です。

「とにかく、今は不況が続いているし、(収入形態が不安定な)マイム・アーティストはきまってその痛みを真っ先に感じるんだ」そう、そのとおりなのだ。これが学校の教師や消防士(雇用が守られている公務員達)なら、仕事は安泰だ。充分に安心していられる。ところが、マイム・アーティストは――突如、供給の方が需要を上回ってしまうのだ。もっとも、マイムという仕事は、いつの時代にもこの国(イギリス)でとくに過大評価されるということはなかったのだが――医者とかそういう(実用的に求められる)ものとは違うのだ。突然、危機に見舞われた社会のメンバーが「助けてくれ!助けてくれ!外は凄い風だ――誰か、ものすごい逆風をついて歩く方法を教えてくれるマイム・アーティストはいないのか?」などと叫ぶことはないからだ。
(ジョン・オファレル「逆風をついて」)

彼は、貧困になってゆくとともに全てを失い、最後は、アーティストではなく、駐車場のゲート員になって、心が折れて、絶望して終わります。僕の場合は、病気と失業中で就職活動は全部落とされ、彼のようにつける仕事も無いので、更に絶望的です。

職場(駐車場のゲート係)はわたしひとりきりで誰とも口をきかないから、少しだけ前にしていたこと(失業中に職探しの手紙をひたすら書く)と似ている。午前七時から午後三時まで、この狭いブースに座り、車が駐車場に入ってくると、ボタンを押す。すると、ゲートが上がる。その後、べつのボタンを押すと、ゲートが下がる。だから、いまわたしは本物のガラスの箱に押し込められているわけだ!(中略)

リチャードとニールはとうの昔に、公演には来てくれなくなった。キャロルでさえ、この前の公園には来なかった。逆風をついて歩くとはこのことか。いまや世間では、アフリカのエイズ危機に関する私のマイムより、ジュリア・ロバーツの最新映画を観に行きたがる連中のほうが多いようだ――これはわれわれの社会の何を物語っているのだろう?もちろん、連中はパブやカレーハウスに行く金は持っている。でも、想像力を喚起するマイムの夕べに七ポンド五十ペンスを払って欲しい、といってみるといい。彼らはもうその金をチキン・ティッカ・マッサラに使ってしまっている。正直いえば、わたしだってチキン・ティッカ・マッサラってやつをいまこの場で食ってみたい。オニオン・バジャー、ピラフ、いいじゃないか。(貧乏生活苦の)わたしにはそんな余裕がないだけだ。くそくらえだ、マイムなんて。この狭い箱のなかは凍えそうに寒い。リチャードのやつ、本館内の仕事を都合してくれないものだろうか。
(ジョン・オファレル「逆風をついて」)

「天使だけが聞いている12の物語」は、いかにもイギリス小説らしい、シニカルでシビアな救い無き話が多いのですが、僕は、なんとか職につけている「逆風をついて」の主人公よりも更に危機的な境遇(失業中)で、主人公と同じく心が完全に折れている感じです。疲労困憊で辛いです。

「この狭い箱のなかは凍えそうに寒い。」というのは、電気代節約のため部屋に暖房使っていないので、部屋内温度が6度とかで、まさに僕自身の気持ちと同じだと感じます。

僕の好きな作家にショスタコーヴィチという作曲家がいるのですが、彼の歌曲「アレクサンドル・ブロークの詩による七つのロマンス」より、僕の好きな曲「Tayniye znaki」より、歌詞を抜粋引用致します。

私が過去の時間に逃げて、
恐怖に眼を閉じれば、
冷え行く本のページには――
乙女の黄金の下げ髪

頭上に天蓋は既に低く、
黒い夢は、この胸の中に重たい。
私の定められた終末は間近か、
戦争と大火が目の前なのだ。
(ショスタコーヴィチ「Tayniye znaki」)

歌詞を見れば分かるように、死を歌った曲(愛する者は既におらず、自分も戦禍で死ぬだろうという曲)です。背中が痛むと、この曲を思い出します。この曲はとても陰鬱な音調の暗い悲鳴のような歌曲で、僕の今の気持ちのようです。頭痛と喉痛と背中が痛いです。

参考作品(amazon)
リストピアノ協奏曲第1・2番・死の舞踏
ショスタコーヴィチ : チェロ・ソナタ 作品40
天使だけが聞いている12の物語
エドガー・アラン・ポー短篇集 (ちくま文庫)

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