グローバル・ジハード
世界認識のための情報術

今日(2009年1月5日)の新聞主要各誌を図書館で見てきましたら、朝日新聞に佐藤優氏が書いている文章が興味深かったので、抜粋して引用致します。

朝日新聞2009年1月5日朝刊「私の視点」
佐藤優(作家・元外務省主分析官)

昨年の二つの出来事で国際秩序は大きく変化した。まず8月のグルジア・ロシア紛争で国家間の係争を武力に訴えて解決するときのハードルが著しく低くなった。また、9月の米国証券会社リーマン・ブラザーズの破綻が世界不況を引き起こした。主要国は「保護主義に陥ってはいけない」といいながら、世界恐慌の足音におびえ、現実には保護主義的傾向を強めている。新自由主義にもとづくグローバル資本主義に代わって、今後、経済に対して与える国家の影響力が強化される。

米国の一極支配は終わった。しかし、それによってよりよい時代が到来するとはいえない。強国が露骨にエゴを主張し、「これ以上、ゴリ押しすると、諸外国の反発を買って、かえって自国が損をする」という状況で初めて国際協調に転じるという(軍事オプションを利用した)帝国主義が再び頭をもたげている。

(現代の)帝国主義において、強国が平和を維持するよりも戦争に訴えた方が国益を圧倒的に増進するという認識を持つと躊躇なく戦争に踏み込む。(中略)帝国主義においては「食うか食われるか」というゲームのルール(ルールなき弱肉強食)が適用される。食われる側に回って、永遠にその状況に耐える人々など存在しない。かつては共産主義と結びついた植民地解放運動が帝国主義に対する抵抗勢力となったが、それに代わって(現代は)イスラム原理主義の影響を受けたテロリストが主要な抵抗勢力となった。テロを軍事力だけで封じ込めようとしても不可能だ。(中略)

今後、想定される最悪のシナリオは、アフガニスタンとパキスタンの一部にイスラム世界革命を輸出する拠点国家ができることだ。そうなると、この拠点国家が司令塔になり、インドネシア、フィリピンのミンダナオ、中国の新疆ウイグル、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタンなどで、現政権を転覆し、イスラム世界帝国を建設しようという動きがでてくる。この動きは国際秩序を著しく混乱させる。わが国(日本)は米国、ロシア、中国、インドなどとの提携を強め、この動きを封じ込める必要がある。(中略)

アフガニスタンにおいてタリバーンとつながる勢力を含めた連立政権ができることを恐れるべきではない。現状でタリバーンを完全に排除することは、アフガニスタンで最も影響力のあるパシュトゥン人を統治から締め出すことになるので非現実的だ。(米国が)いくら(軍事的)圧力をかけても、タリバーンを根絶することはできない。産業を定着させ、中産階級を育成し、タリバーンが策動する基盤をなくしていくという(アフガニスタンを復興させる)中長期戦略を組み立てるべきだ。

テロや戦争の問題は、アメリカの属国である日本国はあまり関与できる余地のない問題ですが、これからの国際世界を思うと暗澹として苦痛を感じます。先ず間違いなく、列強帝国主義が復活してくると思います。しかも、21世紀の戦争は戦術核が軍事オプションとして行使される可能性があり、「歴史は繰り返す、二度目は更なる悲劇として」と僕は感じます。一応、日本国はアメリカの核の傘の中にいるので、核攻撃は仕掛けられないと思いますが、不安は募ります。

テロリズムが軍事的に根絶不可能なのは、松本光弘さん(警察庁公安課長、前国際テロ対策課長)の書かれた「グローバル・ジハード」にも載っています。弱肉強食の不公正な社会から生まれる「相対的欠乏感」が、社会(世界)に不公正感を抱いている人々を牽引してテロリズムに引き付けると書いています。福田和也さんの言う通り、本書は優れた書であると思います。

保護主義については、世界各国が保護主義に走る中、日本だけ経済を全面解放という訳にはいかず、日本もある程度、保護主義化してゆくことは避けられないことであるし、仕方のないことであると思います。グローバル資本主義からいかに日本を経済的に防衛するかを考えた場合、ある程度の保護主義は必要だと僕は考えています。法政大学社会学部教授の田中優子さん(白土三平さんの漫画「カムイ伝」から江戸の社会経済文化システムの考察を行っています。著作「カムイ伝講義」など)の「『カムイ伝』から見えてくる江戸と現代社会」より抜粋引用致します。

「『カムイ伝』から見えてくる江戸と現代社会」田中優子(法政大学教授)

『カムイ伝』を通してみると(漫画の中に経済システムが克明に描かれていることにより)江戸時代の印象がずいぶんと変わるのではないでしょうか。江戸の前の戦国時代は、とにかく戦争に明け暮れていた時代という印象がありますが、(国際貿易が盛んで)実は現代にも通じるグローバルな時代だったのです。

世界遺産にもなった石見銀山を含め、たくさんの銀山が開発され、発掘された大量の銀は、国外に対する支払いに使われました。当時、日本はインドや中国と貿易をしていて、銀で品物を購入するという、貨幣社会だったんです。しかし、銀にも限りがあるわけで、無計画に掘り起こせば、いずれ底を尽きます。同時に南アメリカの銀が大量にフィリピンに流れ込んだことで競争力が落ちてしまったんです。(日本のグローバル化経済に行き詰まって)焦った豊臣秀吉が海外侵略を企てるのですが、これも失敗してしまいます。八方塞がり(資源国としての地位低下)の状況下で、(徳川家康が)抜本的な政策転換(鎖国という反グローバル政策)を図った結果、江戸時代が成立するのです。だから、江戸時代は自然発生したわけではなくて、(経済的な要請に迫られ)意図的に、政策的につくられた時代だったのです。

鎖国というのも、単なる閉鎖的な社会にあったわけではなく、日本がそのような行き詰まった状況(競争力を失い海外との貿易に敗れる)を乗り越えるために、重要な意味を持っていました。新井白石が銀の輸出を制限しなければ、銀はたちまち尽きてしまったでしょうし、絹織物などについては、鎖国により必然的に国内での生産を迫られたことで、結果的に生産能力を高めること(内需の育成)に繋がったのですから。輸入を制限し、生産能力を高めたことについては、現代を生きる私たちも大いに学ぶ点があると言えるでしょう。

僕も、上記の田中優子さんの意見に賛成で、世界各国が保護主義に走っているなか、日本だけグローバルなんてやっていたら、世界各国の保護主義の餌食になるだけであり、日本も世界各国と足並みを揃えて、自国防衛の為のある程度の保護主義、反グローバル的な施策を行い、日本国民の財産と生活を守る為に努力するべきであると思います。

最後に、先日より書いておりますように、中東で大きな戦乱が起きて、石油価格が高騰すると、ただでさえ衰弱している日本経済は本当に参ってしまうので、和平の道を、どうか探して欲しいと心から願います。今のイスラエルの行為は、まさに佐藤優さんのいうところの「21世紀の新帝国主義」な訳ですが、ガザ地区だけにとどまらない中東全域に広がるような大規模戦乱が起きてしまったら、イスラエルにとっても損害は大きいと思います。どうか当事国及び世界各国に起きましては和平の道をどうか探って欲しいと、心から願います。僕は旧約聖書も新約聖書も全部読みましたが、イエス・キリストは戦争を否定していると思います。イスラエルの人々には、どうか、第六戒の言葉を思い出して欲しいです。心から願います。

「あなたは殺してはならない。」
(出エジプト記20-13)

十戒の中の第六戒。ヘルマン・ヘッセによれば、この言葉がはじめて掲げられた時代の人々にとって、これはほとんど、「あなたは呼吸してはならぬ!」と言うのと同じくらいの意味があった。(『戦争と平和』)。
(聖書名言事典)

参考作品(amazon)
グローバル・ジハード
世界認識のための情報術
第三次世界大戦 世界恐慌でこうなる!
第三次世界大戦 新・帝国主義でこうなる!
暴走する国家恐慌化する世界
カムイ伝講義
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