2008年06月22日 21:10

水木しげる「神秘家列伝」大きな見えない存在たちと共に生きる

水木しげる「神秘家列伝」

水木しげるさんの「神秘家列伝」ずっと読んでました。この本辛い気持ちのときでも読めて、それが、天啓というか、ハッと分るような形で降りて来て、それどうしても伝えたいと思いました。

この本で、水木しげるさんは無数様々なありとあらゆる「目に見えない様々な存在」について肯定的に語っていて、そういう存在と向き合った人達について語っているんですが、そういう存在は世界の救いなんですね。

人間は不完全で、沢山の不運不正に苦しめられて、自分が誤ってなくても弾圧されたりする(神秘家列伝にもそういう苦しむ神秘家沢山出てきます)、だけど、目には見えない沢山のもの、大きな沢山のもの、そういったもの達と人間と動物と植物で地球に暮らしているってことは、人間の世界の尺度だけじゃなくて、人間の不運不正に苦しめられても、そういったことを、別の「見えないもの」の世界も見ていてくれているってことなんですね。

嬉しいとき、みえないものが一緒にいてくれて、嬉しさを共にしてくれていて、苦しいときは、その不正な苦しみのことを知っている見えないものが、一緒に悲しみ苦しんでくれている。そういう、大きな世界、みえないものたち、人間だけの世界じゃなくて、もっと大きな世界として世界があるんですね。

これは、人間の不正と苦しみの世界よりも、ずっと大きな、素敵な世界だと僕は思います。神秘家列伝に出て来る女神様の長南年恵さんの話とか、僕は大好きです(年恵さんの話読んでて、ネパールの女神様クマリを思い出しました)。近年の歴史学の本「世界女神大全」「古ヨーロッパの神々」「女神の時代」等に出て来る紀元前の神話的な女神文化(母権制で武器が発達しておらず、戦争と略奪ではなく、宥和と信仰によって文明が成り立っていたとされる神話的な「黄金の時代」)が僕は大好きなんですが、水木しげるさんの描く世界にも、そういう「黄金の時代」のような、人間よりおおきいものたちと生活している息吹があって、そこには、人間達の不正や悪による苦しみが、人間より大きなものによって、救われていて、すごくいいなと感じました。それは、人間だけの現代文明より、ずっとずっと優しい暖かい繋がりがあると僕は思います。僕はおおきなものを大切に貴く感じます。

伊藤俊太郎
「(旧石器時代は)トーテミニズムとプレアミニズムが基本になっている。………(時代が進んで農耕が開始され)旧石器時代のヴィーナスたちは、新石器時代になると大地や豊饒をもたらす女神たちに変貌する。そしてそれを著したのが、マリヤ・ギンブタスです。彼女は古ヨーロッパというものを考えた。紀元前6500年頃から紀元前3500年の間、これはまさにヨーロッパで農業革命があって、かなり豊かな定住生活がなされた。
そして、そこにおける社会の本質的なものは母権的なものであった。それは、平和というものを原理としていた。戦争というものを思わせるものが何もない。武器が何も出てこない。そしてただ、女神らしきものが妊娠している。あるいは女神が、牛を生んでいる。チャタル・ヒュユクの牛は豊饒生産の象徴を表している。この文明は、平和で、階層がそんなに強くない。住居が同じぐらいの大きさで、本質的に母権制である。ケニヨンが発掘したエリコもまた、チャタル・ヒュユクより少し新しいが、ほぼ同時代の農耕革命が拡大した共同体で、都市の一歩手前。これも同じく母権制ですね」
インタビュアー
………「――古代世界では女性が中心になっていたという発見は、考古学史上では、革命的なことでしたよね」
(水上洋子、葉月純「女神の時代」)

吉崎一美も、「クマリは初潮前の童女に宿った女神タレジュ(ヒンドゥー教徒はその本身をドゥルガー、あるいはパールヴァティーとする、彼女らはいずれもシヴァ神の妃とされる。仏教徒はそれをヴァジュラデーヴィー、すなわちヴァジュラヴァーラーヒー女神とする)への信仰によって成立するが、この場合に女神は童女の身体を壷としてそこに宿る(憑依する)のである。こうして童女の額には女神の存在を示す第三の眼が描かれることになる」と書いている。神を、神そのものとして祀るのではなく、神を宿した容れ物として崇拝の対象にするのは、インド・ネパール社会においてはかなり普遍的なことのように思われる。………
クマリ信仰の萌芽がすでにリッチャビ王朝の時代に見られることは、いまや否定できないことのように思われるが、幾度かに渡るヒンドゥー教の影響や仏教の変遷にさらされて、その姿を大きく変えてきたこともまた確かであろう。そうしたなかで、クマリそのものが観音の化身となったということはいかにして説明できるのであろうか。
(植島啓司「処女神」)

水木しげる
「上の方は神だけれども、下の方とか、中間にはいろいろな精霊や怪物がおり、面白いと思う」
「あんたそれ妖怪のこといってんですか」
水木しげる
「いや妖怪だけじゃないよ。いろいろ目に見えない取り憑くものもいたりして、人間はある程度そういうものに支配されているような気もする」
「自分はナニかということになると」
水木しげる
「そう人生も八十近くなってくると、いろいろなことがわかって面白い」
「ソレ少しボケたんじゃないの」
水木しげる
「……と思いたいけれども、今回のこういう話をみると我々の人生があまりに短いためにわかりにくいのだと思う。そう前に書いたようにめしのために時間をとられすぎるのだ」
年恵さんのように邪心のない素直な心だとカミもよりつくのだ。そう私が海外に行って精霊を呼ぶ「小歌」を聞かせてもらうときみんなの顔を見ると とても純真だ
なんだろうとかそんなのいるわけないだろうという心にはわかりにくいのだろう。

宇宙というよりこの地球には、「見えない存在」というものがいて我々に働きかけたりするが、従来の大宗教に染まらない目でこの「見えない存在」を見ると、また新鮮に見えてくる。いずれにしても、そういう神秘的なことというのは昔の官憲のように(科学的ではないという理由で)弾圧しないで、やはり観察すべきではないかと思う。
(水木しげる「神秘家列伝」)

参考リンク
女神ホロたんと「世界女神大全」 −賢狼ホロの子供達−

参考作品(amazon)
水木しげる「神秘家列伝」

水木しげる著作一覧

アン・ベアリング、ジュールズ・キャシュフォード「世界女神大全 機

アン・ベアリング、ジュールズ・キャシュフォード「世界女神大全 供

マリヤ・ギンブタス「古ヨーロッパの神々」

ジョン・A・フィリップス「イヴ その理念の歴史」

水上洋子、葉月純「女神の時代」

バッハオーフェン「母権論」

支倉凍砂「狼と香辛料」

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