2008年08月13日 00:03
昨日は映画「パンドラの箱」を観ました。原作を昇華した素晴らしい映画と思います。無邪気で自由奔放で美しいファム・ファタルのルルに魅了されました。
パンドラの箱 クリティカル・エディション
昨日は少し病状が和らいだ感じで、なんとか起き上がってG・W・バプスト監督の映画「パンドラの箱」を観ました。原作者は、少女美を描いた名作映画「エコール」の原作者としても有名な作家、フランク・ヴェデキントで、エコールも素晴らしい映画ですが、原作のニュアンスを重視するよりも、少女美をいかに幻想的に美しく描くかに特化していたのに比べ、こちらは原作のルル二部作「地霊・パンドラの箱」を上手に昇華して映画として纏めていて、僕はこの原作(ルル二部作「地霊・パンドラの箱」岩波文庫より出ています)が大好き(先にこちらを読んでから映画を観ました)なので、本映画、とても楽しめました。
本映画は原作とはかなり違う展開(原作の多くの部分は端折られ、変更されています)ですが、ヒロインのルルの造形は、まさに原作のルルそのものという感じで、ルイーズ・ブルックスの熱演もあって、とても魅了されました。ルルは、無邪気で自由奔放な子供のような娘で、あらゆる男達を魅了する(僕も魅了されました)不可思議なとしかいいようのない魅力を持っていますが、ルルが心底から自分に正直で自由奔放であるゆえに、男達は破滅してゆき、そして最後にルル自身も破滅していってしまうんですね。
原作の方もこういったニュアンスで、人間が自由に生きられない、特に女性が自由に生きられないという社会の様々なしきたりを、ルルという魅力的で自由奔放な女性がその自由奔放さゆえに彼女を愛する周囲の男性達とともにそのしきたりに敗れて滅んでいく姿を通して、自由がなく、型に嵌められないと生きていくことができない社会、個々人の思惑を超えた大きな社会全体の問題として描いているところが大きな主題としてあります。本映画も原作からちゃんとその主題を受け継いで、自由に、自分に正直に生きるがゆえに、どんどん社会からも、愛し合っている筈の男達からも、爪弾きにされていってしまうルルの姿が良く描けている、見事な名映画だと思います。原作の昇華のさせ方が実に見事です。
自分自身の自由を捨てて、何かの型に嵌め込まないと、社会から受け入れられず、社会から爪弾きにされるのは、日本社会も同じですので、その点、原作を読んで覚えた共感を映画を観て再度覚えました。ルルはただ、自分に真っ正直に自由に生きているだけなんですね。その点で、ラストは、原作のラストよりも優れているラストだと思います。「お金がなくてもいいのよ、あなたが気に入ったから」と云う台詞にルルは娼婦という商品ではない(決して社会から商品化されない)ことを、原作よりも映画のラストははっきり描いている。その点で、映画のラストのルルは、原作の最後のルルと同じ結末を辿りますが、それでも、彼女は、精神的に、圧倒的にジャックに勝ったのだと思います。
社会は人間を含めて全てを商品化しようとしますが、ルルというヒロインは、自由に生きることで商品化を拒む、決して定義されえないヒロインなんですね。社会のしきたりの側から見ればただの悪女にしか映らないでしょうが、僕には不可思議なたまらない魅力を持っていると感じられました。人間を型にはめ込み商品化するこの社会に生きていることに息苦しさを感じている人なら、きっと、何か大切なものが、感じられる映画だと思います。お勧めの映画です。機会があれば、ぜひご覧になることを、心からお勧めいたします。
参考作品(amazon)
パンドラの箱 クリティカル・エディション
地霊,パンドラの箱―ルル二部作 (岩波文庫 赤 429-1)
エコール
ミネハハ(エコール原作)
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昨日は少し病状が和らいだ感じで、なんとか起き上がってG・W・バプスト監督の映画「パンドラの箱」を観ました。原作者は、少女美を描いた名作映画「エコール」の原作者としても有名な作家、フランク・ヴェデキントで、エコールも素晴らしい映画ですが、原作のニュアンスを重視するよりも、少女美をいかに幻想的に美しく描くかに特化していたのに比べ、こちらは原作のルル二部作「地霊・パンドラの箱」を上手に昇華して映画として纏めていて、僕はこの原作(ルル二部作「地霊・パンドラの箱」岩波文庫より出ています)が大好き(先にこちらを読んでから映画を観ました)なので、本映画、とても楽しめました。
本映画は原作とはかなり違う展開(原作の多くの部分は端折られ、変更されています)ですが、ヒロインのルルの造形は、まさに原作のルルそのものという感じで、ルイーズ・ブルックスの熱演もあって、とても魅了されました。ルルは、無邪気で自由奔放な子供のような娘で、あらゆる男達を魅了する(僕も魅了されました)不可思議なとしかいいようのない魅力を持っていますが、ルルが心底から自分に正直で自由奔放であるゆえに、男達は破滅してゆき、そして最後にルル自身も破滅していってしまうんですね。
原作の方もこういったニュアンスで、人間が自由に生きられない、特に女性が自由に生きられないという社会の様々なしきたりを、ルルという魅力的で自由奔放な女性がその自由奔放さゆえに彼女を愛する周囲の男性達とともにそのしきたりに敗れて滅んでいく姿を通して、自由がなく、型に嵌められないと生きていくことができない社会、個々人の思惑を超えた大きな社会全体の問題として描いているところが大きな主題としてあります。本映画も原作からちゃんとその主題を受け継いで、自由に、自分に正直に生きるがゆえに、どんどん社会からも、愛し合っている筈の男達からも、爪弾きにされていってしまうルルの姿が良く描けている、見事な名映画だと思います。原作の昇華のさせ方が実に見事です。
自分自身の自由を捨てて、何かの型に嵌め込まないと、社会から受け入れられず、社会から爪弾きにされるのは、日本社会も同じですので、その点、原作を読んで覚えた共感を映画を観て再度覚えました。ルルはただ、自分に真っ正直に自由に生きているだけなんですね。その点で、ラストは、原作のラストよりも優れているラストだと思います。「お金がなくてもいいのよ、あなたが気に入ったから」と云う台詞にルルは娼婦という商品ではない(決して社会から商品化されない)ことを、原作よりも映画のラストははっきり描いている。その点で、映画のラストのルルは、原作の最後のルルと同じ結末を辿りますが、それでも、彼女は、精神的に、圧倒的にジャックに勝ったのだと思います。
ルルは気のむくままに男を消費する(セックスする)が、気の染まぬ男には身を任せないという鉄則を守っている。だからこそルルは、一切が(芸術までもが)商品化されている世紀末の市民社会の秩序を、ただ存在することによって揺らがすことができるのだ。
(フランク・ヴェデキント「地霊・パンドラの箱」解説より)
社会は人間を含めて全てを商品化しようとしますが、ルルというヒロインは、自由に生きることで商品化を拒む、決して定義されえないヒロインなんですね。社会のしきたりの側から見ればただの悪女にしか映らないでしょうが、僕には不可思議なたまらない魅力を持っていると感じられました。人間を型にはめ込み商品化するこの社会に生きていることに息苦しさを感じている人なら、きっと、何か大切なものが、感じられる映画だと思います。お勧めの映画です。機会があれば、ぜひご覧になることを、心からお勧めいたします。
参考作品(amazon)
パンドラの箱 クリティカル・エディション
地霊,パンドラの箱―ルル二部作 (岩波文庫 赤 429-1)
エコール
ミネハハ(エコール原作)
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