2008年08月11日 21:37

目覚めさせ、高揚させる音楽演奏家「ホロヴィッツ」、とても好きな演奏家です。

ホロヴィッツ・ショパン・コレクション
ショパン・アルバム(ホロヴィッツ)

先日のエントリに、安眠を誘う音楽として、アシュケナージの夜想曲全集を挙げましたが、そのとき書いたとおり、今のところあまり調子が良くなく、今日もほとんど寝込んでいるため、できることが、音楽を聴くくらいに限られているんですね。猫はよく眠るので、猫と一緒に連日寝込んでいるといった按配です。それで、先日と同じく、寝ながら色々クラシック音楽を聴き比べていました。そして思ったのは「誰も寝てはならぬ」のように、目覚めさせ、高揚させる音楽演奏としては、ホロヴィッツが圧倒的だなあ…と寝ながら思いました。

ホロヴィッツ・ショパン・コレクションを聴いていたんですが、これ聴きながら眠るのは無理です、というか、かえって目が冴えまくって起き出してしまいます。アシュケナージの演奏は静かで美しい演奏が心をリラックスさせて安眠させてくれる感じですが、ホロヴィッツの場合は彼が持つ巨大なパワー、生命力としか云いようのないものがガンガン伝わってきて、それはホロヴィッツが弾くリストやラフマニノフの演奏だけではなく、彼のショパンの演奏とかでも同じだなあと思いました。

僕は昔はホロヴィッツの生命力を超強力に発散しているピアノ演奏大好きで、今も好きな気持ちは変わりませんが、今のうつ病の僕にはちょっと強い演奏かなと。ただ、それでも大好きな演奏家であることには変わりはありません。

また、ホロヴィッツも僕と同じ病気(うつ病)に1953年から掛かっているんですね(53年より自宅療養し、55年に録音演奏にカムバック、65年には公開演奏にもカムバック)。手元にあるライナーノーツから少し引用します。

1953 13年間にわたる演奏旅行と記念演奏会の疲労から鬱病になり、さらに激しい大腸炎にも悩まされて演奏活動を休み、約二年間自宅に閉じこもり、クレメンティのピアノ曲の研究やバッティスティーニなど往年のオペラ歌手のレコードを聴き、その芸術を研究しはじめる。
(ベスト・オブ・ホロヴィッツ3「展覧会の絵」「戦争ソナタ」ライナーノーツより)

こんなパワーのある凄い演奏をする人も、うつ病で苦しんだんだなあと思うと、なんともいえない気持ちです…。今はSSRIやSNRIといった脳内のセロトニン等の量をコントロールする非常に優れたお薬がありますから、うつ病に掛かったら、早めにお医者さんに行ってお薬を出してもらえばかなり楽になりますが、1953年じゃ、うつ病の薬物治療技術は発展していなかったろうし、自宅療養で二年掛けて治したんだなと思うと、その間のホロヴィッツの辛さを思うと、胸が痛みます。

1955年にカムバックできて、その後も素晴らしい演奏沢山残して、本当に良かったなと思います。僕も、はやくうつ病を治して、また元気になりたいです。ホロヴィッツの演奏は生命力に満ち溢れている強い演奏ですが、それでも、今の僕でも聴ける演奏です。1968年のホロヴィッツのライブとか力がみなぎっていて、聴いていると、凄く元気をもらっているような感じです。

僕にとって、アシュケナージが海のような感じで、ホロヴィッツは太陽のような感じですね…。

千家元麿。鹿島茂「あの頃、あの詩を」より

「海」

海が見える
充溢した歓喜で
張り詰めたやうな
海面の美しさ
何といふ静かな力のこもつた海
永遠の緑を深く堪へて
盛り上がつている海
日に輝いて純白な帆が
花のように流れている

アシュケナージが、聴いているとちょうどこんな上記の詩のような感じで、ホロヴィッツは聴いていると、下記のような詩のように感じます…。

ツェザール・フライシュレン。鹿島茂「あの頃、あの詩を」より

「心に太陽を持て」

心に太陽を持て。
あらしが ふこうと、
ふぶきが こようと、
天には黒くも、
地には争いが絶えなかろうと、
いつも、心に太陽を持て。

くちびるに歌を持て。
軽く、ほがらかに、
自分のつとめ、
自分の暮らしに、
よしや苦労が絶えなかろうと、
いつも くちびるに歌を持て。

苦しんでいる人、
なやんでいる人には、
こう、はげましてやろう。
「勇気を失うな。
くちびるに歌を持て。
心に太陽を持て。」

今の僕はもっぱらアシュケナージに助けられていますが、ホロヴィッツも、アシュケナージと同じく、とても大好きな演奏家ですね…。

(ホロヴィッツは)息をのむようなピアニズムと、抗うことのできない魅力をもった音楽によって、彼は他のどのピアニストにも増して大勢の聴衆を魅了した。
(「20世紀の偉大なピアニストたち ホロヴィッツ」ライナーノーツより)

参考作品(amazon)
ホロヴィッツ・ショパン・コレクション
ショパン・アルバム
ホロヴィッツ・オン・テレビジョン(1968年ライブ)
展覧会の絵&戦争ソナタ?超絶技巧名演集
ショパン:夜想曲全集
あの頃、あの詩を (文春新書 (608))

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