2013年09月

2013年09月25日 02:07

9月20日にギフト券をお贈り頂き本当にありがとうございます。気づくのが遅れて本当に申し訳ありません。とても励まされます。ありがとうございます…。

最近は終日臥床してることが多く、なかなか更新などができず本当に申し訳ありません。近日は図書館で借りた山本弘さんのSF「去年はいい年になるだろう」「UFOはもう来ない」を読了しました。

なんといいますか…、山本弘さんのSFは全体的にどこかに希望のある楽天的なところの多い作品だったように思いますが、「神は沈黙せず」あたりからだんだん暗くペシミスティックになってきて、この二作品も非常に暗い感じがしますね。特に「去年はいい年になるだろう」にそれが顕著で、根本的に異質な知性同士が深く干渉しあうことは、致命的な災厄を齎すという、異文化・異質なもの同士の交流は破滅的で協同的交流は不可能という視点が強く現れています。

「去年はいい年になるだろう」は人類とAI(人工知能)の交流を描いていますが、「アイの物語」などで描かれてきたAIの善性というものが、この作品ではある種ひっくり返っているんですね。この作品のAI群は、『人類の為に奉仕する』というAIの善性が極めて独善的で危険なところまで達しており、全人類の歴史を『AIが善とする歴史』に強制的に変更しようとして過去世界へのタイムトラベルを繰り返している。そしてその結果、人類はあらゆるパラレルワールドの時空間において、壊滅的な、惨憺たる目に遭っている(AI群によって増やされる無限のパラレルワールドにおいて人類はAI群の訪れによって発生する無限の悪夢的災禍に遭うだろう)という、非常にシニカルでブラックな終わり方をする絶望的な物語です。

「UFOはもう来ない」の方は、異質な知性同士は交流するべきではないというのがテーマとなっている。宇宙の様々な知性体が所属する汎的な宇宙文明と地球文明が、一瞬だけ接触したが、宇宙文明においては、『異質な知性同士は交流するべきではない』というのが最大の掟になっているため、それ以上の接触を避け去って行く物語です。「去年はいい年になるだろう」を補完するような作品になっていて、宇宙文明において、なぜ『異質な知性同士は交流するべきではない』というのが掟になったかというと、「去年はいい年になるだろう」に出てくるAI群を彷彿とさせるような独善的宇宙種族が、『全宇宙の知性体を善性へと導く』という大義のもとにあらゆる宇宙種族を巻き込む大戦争を起こしたからなんですね。その結果、『異質な知性同士は交流するべきではない』というような形で掟ができている。ちなみにこの宇宙文明では、「去年はいい年になるだろう」のAIのように、AIが暴走して種族が滅ぼされるということがあったようで、AIの技術も厳しく制限されているんですね。

全体的に、知性同士の相互理解の不可能性とそれが齎す悲劇というところに重点が当てられた二作品であり、非常に陰鬱な感じを受けましたね…。これはこれでSFとして面白かったですが、異質なもの同士は理解しあえる希望がない(相互理解の不可能性が絶対的なものとして描かれている)のは、ちょっと辛い感じもしますね…。SFとしてはなかなか面白くてお勧めできる作品と思います。

去年はいい年になるだろう(上) (PHP文芸文庫)
去年はいい年になるだろう(下) (PHP文芸文庫)
UFOはもう来ない
神は沈黙せず〈上〉 (角川文庫)
神は沈黙せず〈下〉 (角川文庫)
アイの物語 (角川文庫)

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2013年09月14日 00:53

時間ループ物語論

9月6日にギフト券をお贈り頂きありがとうございます。臥せっていてネットも全然できない状況で気づくのが遅れて申し訳ありません。先ほど気づきました。本当にありがとうございます。凄く生活費に困っていて、身体を壊していることもあり、貧窮しており、とても助かります…。ありがとうございます。

先日よりなんとか頑張って少し本を読みました。アメリカの作家リチャード・ドイッチの時間ループミステリー「13時間前の未来」と、古今東西のあらゆる時間ループ作品について、神話や文学からアニメやライトノベル、コミックまで、ありとあらゆる大量の作品群を俯瞰的に分析した時間ループ物考察の力作大著、浅羽通明さんの「時間ループ物語論」です。

両方とも凄く面白かったです。お勧めですね。「13時間前の未来」は、何物かに殺される最愛の妻を救うために、主人公が1時間ずつ時間を遡る物語。「時間ループ物語論」でいうところのシングル・イシュー型時間ループ作品にあたります。(シングル・イシュー型時間ループ作品=主人公が何らかの目的を達成するために時間ループを利用する。時間ループ物では最も多いパターン。近年の著名な代表作としてゲーム「ひぐらしのなく頃に」アニメ「まどか☆マギカ」映画「バタフライ・エフェクト」ライトノベル「All You Need Is Kill」筒井康隆の短編SF「秒読み」ミステリー「七回死んだ男」等)

「時間ループ物語論」で触れられていますが、ミステリーと時間ループというのは凄く相性が良いんですね。この「13時間前の未来」を読んでいてそれをまざまざと実感しました。なぜ相性が良いかと言いますと、時間ループ世界では、たいした推理能力を持たない凡人でも超人的な名探偵になれるんですね。

ミステリーと言うのは、実に解き難い奇怪な謎を解き明かす所に面白みがありますが、そのような謎を快刀乱麻に断ってゆく古典的名探偵というのは、余りに推理力が超人的過ぎて、常人を越えちゃっている英雄な訳ですね。英雄は憧憬の対象であって、感情移入はしにくい。読者の感情移入を助ける役割(感情移入の相手)として、ワトスン役(凡人の助手)が配置されていることが多いですが、せっかくだから、名探偵に感情移入してみたいと思うのが読者のサガ。

時間ループミステリ(ミステリに限らず時間ループ物全般)というのは、そういった読者の願望を叶えるものとして機能しやすいんですね。ループした時間の中にいれば、失敗の経験を積み重ねることで、次のループでは前回よりも良い選択を行える。そうやって段階的に積み重ねた経験の蓄積(ループ経験を生かす主人公の努力)によって、大団円を迎える最終ループでは最高の選択を行ってハッピーエンドに到達できるわけです。時間ループ物主人公に必要なのは超人的推理能力などではなく、失敗ループを繰り返しながらも努力して経験を蓄積して謎に迫って行く地道な努力なので、最終ループでは主人公は、超人的能力ではなく、経験と努力の積み重ねによって生まれた、超人的名探偵と同等の活躍を行って物語をハッピーエンドに導くことができる。時間ループ物の多くは凡人・常人の成長物語、古典的なビルドゥングスロマンとして機能しているんですね。

「13時間前の未来」はまさにこの王道で、主人公はとても良い人、善人ですが、最初の方は最愛の妻が殺された上に時間ループに巻き込まれている動揺もあって行動はかなり考え無しでして、その結果、自分の行動でどんどん状況が悪化するループを幾つか体験することにもなる。そんなループ経験の中、主人公は成長してゆきます。どうすれば最も良い展開になるか考えて行動するようになる。その辺で実に読みやすくて分かりやすい、面白い時間ループミステリ作品でした。

そう、ループする時間によって実現するのは何よりも、戦闘能力のアップとか、難事件の解決といったシングル・イシュー(一つの目標)なのです。目標が単純でわかりやすい。(中略)

従来の本格ミステリーでは、この爽快感(最終的な解決の爽快感)は事件の解決、謎解きという知的な満足でしかなく、犯人逮捕はできても犠牲者達は帰らない後味の悪さがありました。しかし、時間ループというSF的手法の導入は、犯行前、殺人を生むに到る葛藤以前にまで主人公を遡らせて、犠牲者を出さないようにする解決までも可能にします。「ひぐらしのなく頃に」「七回死んだ男」は、それを試みて成功した傑作と言えるでしょう。
(浅羽通明「時間ループ物語論」)

「時間ループ物語論」を読んでいて面白いなと思ったのは、上記のような、同じ条件の時空間を反復(ループ)して経験を蓄積することで、その時空間の最適解を見つけて行くという時間ループの仕組みは、ファミコンから現代に至るまでのコンピューターゲームのプレイヤー体験に近いと考察しているところですね(「ゲーム的リアリズムの誕生」などにも同様の指摘。とくにアクションゲームなどに顕著、同じ時空間を繰り返し練習することで上手くなる)。これはゲーム好きとして実感を持ってその通りだと感じますね。コンピューターゲームの世界は、プレイヤーが時間を操作できる世界、一種の時間ループ世界なんですね。「時間ループ物語論」によると、鮎川歩さんのライトノベル「クイックセーブ&ロード」がまさにそれを意識したゲーム型時間ループ・ライトノベルだそうでして、なかなか面白そうなので今度読んでみたいと思いますね。

ゲームもできたらやってみたいですが、身体を壊しているのと生活が凄く困窮しているので、ゲームは無理かもしれません…。

時間ループ物語論
時間ループ物語論

13時間前の未来〈上〉 (新潮文庫)
13時間前の未来〈下〉 (新潮文庫)
クイックセーブアンドロード (ガガガ文庫)
クイックセーブアンドロード 2 (ガガガ文庫)
クイックセーブアンドロード 3 (ガガガ文庫)

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2013年09月03日 01:32

最近ブログ更新できず本当に申し訳ありません。体調不良と生活困窮が酷く、ネットに繋げない日々もたびたびで、更新ができず申し訳ありません。身体を壊しておりまして、あまり食事も取れない状況で、身体を動かすのも辛く、何も出来ず申し訳ないです…。

先日より、カポーティの短編集「夜の樹」を読んでおり、先ほど読了致しました。「ティファニーで朝食を」にて世界的に知られた、アメリカ文学を代表する作家であるトルーマン・ガルシア・カポーティ、この作家さんの小説(殺人事件を描いた有名なノンフィクション「冷血」も)は、物凄く暗いんですね。暗いだけではなく、近現代アメリカ社会を舞台に人間の心の闇、狂気、幻想、妄想といったものを迫真の筆致で描き出す作家さんなんですね。幻想に囚われていく心理描写が非常に見事で、実に優れた良作揃いの暗黒幻想短編集でした。

カポーティは実に見事な短編の名手で、日本の作家でいうと芥川龍之介(特に晩年の芥川龍之介の作品)に凄く似ています。芥川龍之介の「歯車」(http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/40_15151.html)みたいな作品群ですね。生活の中で心身共に疲れた主人公が、その疲労の中で悪夢的な幻想に心身が侵食されていくという感じの作品がカポーティの短編には多く、今回読んだ「夜の樹」、まさに今、病苦と生活困窮にある僕自身にとって非常に身に染み入る感じの暗い作品集でしたね…。

晩年の芥川の作品も、カポーティの「夜の樹」の短編もテーマ的には、暗い定めの運命に敗れるということですね…。芥川は自分の中に流れる狂気の血(芥川は母が発狂している)を恐れ、その恐れは晩年肥大化してゆきましたが、これは、もうどうしようもないわけですね。心身の破滅的な不調(病気や困窮)というのはある種、生まれ付いての運命的なもの(遺伝と環境)なので、否定することができない暗い運命として、どうしても幻視してしまう。カポーティの作品の登場人物達も、同じように、どうすることもできない暗い運命の中で、終わってゆきます…。

僕はこのホテルの部屋に午前八時頃に目を醒(さ)ました。が、ベツドをおりようとすると、スリツパアは不思議にも片つぽしかなかつた。それはこの一二年の間、いつも僕に恐怖だの不安だのを与へる現象だつた。
(芥川龍之介「歯車」)

カポーティの短編は、暗く、冷たく、内向的なものが多い。狂気、無意識の闇、生きる恐れ、都市の疎外感、オブセッション(妄執)といった人間の心の負の部分にこだわる。孤独癖の強い人間が見る白昼夢のような、現実とも夢ともつかない淡い幻影の作品が多い。ときに病的ですらある。カポーティは、外部社会の現実に向かうというより、自分の心の中の秘密の部屋へゆっくりと降りて行こうとする。その点で、たとえば男性的なヘミングウェイの世界とはまるで違う。

「夜の樹」のケイ、「ミリアム」のミセス・ミラー、「夢を売る女」のシルヴィア、「無頭の鷹」のヴィンセント……彼らはみんな孤独な人間たちである。目は外部の世界に向かわず、いつも自分の内部に向けられる。よく不可思議な、ときにグロテスクな夢を見る。日常生活から次第に切り離されて行き、夜の世界へ入っていく。自分だけの部屋に閉じこもろうとする。彼らの暗い内面を象徴するかのように、カポーティの世界では、よく雨や雪が降る。
(川本三郎。「夜の樹」解説)

彼女の生活はつましい。友達というような人間はいないし、角の食料品店より先に行くこともめったにない。マンションの住人は彼女がいることに気付いてもいないようだった。(中略)

ミセス・ミラーは立ったまま、ブローチを取り返そうと何かいい言葉を考えようとした。そのとき彼女は、自分には頼りになる人間が誰もいないことに気がついた。彼女は一人ぼっちだった。長いあいだ考えたことがなかったが、それは事実だった。いまはじめてその厳然たる事実に気づいて彼女は愕然とした。しかし、いまこの雪の降りしきる町の部屋のなかには彼女の孤独を示す証拠がいくつもあった。彼女はその証拠をもはや無視できなかったし、驚くほどはっきりとわかったことだが、それに抵抗もできなかった。
(カポーティ「ミリアム」「夜の樹」収録)

僕自身も、病苦と生活困窮で、誰も頼ることのできる人もおらず、完全な孤独で、自分の手を離れていてどうしようもできない、自分の暗い運命というものはあるのだなと感じていますので、「夜の樹」まさに、身に染み入る作品集でした…。

「そのとき彼女は、自分には頼りになる人間が誰もいないことに気がついた。彼女は一人ぼっちだった。」

夜の樹 (新潮文庫)
夜の樹 (新潮文庫)

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