2010年04月

2010年04月19日 18:07

アイスランドの火山噴火、海外のニュースサイトなど見ると、いまだに噴火が続く上、新たに噴火を起こしそうな噴火口が発見されている手の付けられない状態、日本で報道されている以上の大噴火みたいですね…。アイスランドの火山の噴火は、北欧神話における世界の終わり「ラグナロク(神々の黄昏)」の起源とされていますが、今回のアイスランド火山噴火の写真や被害(火山灰がヨーロッパ中に…)などを見ると確かに世界の終わりの神話伝承として言い伝えるだけのことはあると思いました…。エアゾルという気候を寒冷化させる物質が火山によって大量に空気中に撒き散らされた為、今後、地球の温度を低下させる可能性があるそうです。アイスランドの火山噴火は歴史において世界に寒期をたびたび齎しており、江戸中期、天明の大飢饉を引き起こした寒期もアイスランド火山噴火によるものと言われていますね…。まさに北欧神話に詠われる「フィムブルヴェド」(フィムブルの冬)ですね…。

(世界中の人心は荒廃し)やがて、フィムブルヴェド<冬の中の冬>がミッドガルドを捕え、咽喉を締めつけることでしょう。吹き流される雪の雲は、北から南から東から西から一点に集まってきます。身を切るような霜、刺すような風が荒れて、輝いている太陽も助けにはなりません。間に夏をはさむことなく、そのような冬が三度(三年)続きます。こうして、最後のとき(ラグナロク)が始まります。
(ホランド「北欧神話物語」)

(フィムブルヴェドは)三年も続く冬でした。最初の冬は、「風の冬」と呼ばれ、大嵐が続き、大雪が襲い、霜が酷かったのです。この恐ろしい冬には、人間の子供達は、ほとんど生きていられなかったことでしょう。二番目の冬は「剣の冬」と言います。人間達の中で生き残ったものは、生きていくために残されたものを、奪い合い、殺し合いました。兄弟はお互いに相手を襲って殺しました。そして、世界中いたるところ、酷い戦いになりました。第三番目の冬は「狼の冬」と呼ばれました。
(コラム「北欧神話」)

世界は破滅する運命にあった。(中略)(美の神)バルドルが倒れる前には不吉な前兆があり、神々は不吉な夢を見た。人々の世界においては、多くの戦争と憎悪や裏切り行為があった。そして、(北欧神話に伝承として詠われる)初期のヴァイキング時代にはあれほど力強いものだった、指導者や血族への忠誠心の絆は壊れてゆくように思われた。また、苦い、和らげられることのない寒さの時期、極寒の冬がきた。(中略)

人間によって不安定に創り上げられた文明は、久しいあいだ食い止めてきたにもかかわらず、力によって滅ぼされ、水と火によって覆滅されてしまった。それはかつては人間をはぐくみ、保護してきたものであった。これは人間の功績(生)の傷つきやすく、無常であることに対する特徴的な見解である。
(デイヴィッドソン「北欧神話」)


北欧神話には、火山の噴火とそれに伴う寒期と洪水により、それまで築きあげてきたもの全てを失ってきた古代北欧の民の、滅びに対する諦念、無常観が反映されていると言われますが、僕も生活が極めて厳しく、絶望感に苛まれているので、彼らの無常観をそこから想像したりしますね…。北欧神話は神々と戦士の伝承ですから、避けられぬ破滅を覚悟しながらなお戦うという、戦士道(ヴァイキングの勇猛)があるんですが、僕の場合は生活がきつすぎて心が挫けちゃったみたいで、「全てが消えて何もかもが終わり、永遠の零たる無へと帰すのだろう」といった、諦めの気持ちしか残っていないのが、自分でも無念です…。

現在、預貯金はほぼゼロで収入はなく生活にたいへん困っておりまして、ギフト券・アフィリエイトで助けていただけましたら、深く感謝致します。最後がこのような文章になって申し訳ありません…。

参考作品(amazon)
クロスリイ・ホランド「北欧神話物語」
コラム「北欧神話」 (岩波少年文庫)
エリス・デイヴィッドソン「北欧神話」

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そして戦争は終わらない 〜「テロとの戦い」の現場から
Angel Beats! 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
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BPO(放送倫理・番組向上機構)公式サイト
http://www.bpo.gr.jp/audience/opinion/2009/201003.html
女の子が変身して戦い、敵に対してお尻を向けて攻撃していた。ラジオやバラエティー番組は下品だというが、子どものアニメも下品すぎる。戦いが終わって妖精が身震いして黄色いものを出すことも、日曜の朝にやることなのか疑問に思った。

BPOの公式サイトにおかしな苦情が載っていると聞いて、見にいってみたら、なんじゃこりゃ…。ちっちゃい子向けのほのぼのしているアニメ(プリキュア)に対して、わざわざBPOにこんな苦情を申し付けるとか、本当に「ものは言い様」としか…。BPOに寄せられている苦情、物凄くどうでもいい表層的なレベルでの苦情で、ガクッと来ました。アニメ番組における倫理的問題点というものは、画面にわかりやすく現われる表層的などうでもいいことではなく、もっと深いところに別の形で現われるものだと僕は思いますね。

僕が今のアニメで倫理的におかしいなと一番強く思うものは、ロックなどの歌を作中における軍事的な小道具として、戦争(大規模な戦争とまではいかない、重火器を使った局地戦なども含む)に使うアニメ、音楽(ミュージック)と戦争(ミリタリー)を物語のレベルで無邪気に結び付けているアニメです(例えば今放映中のアニメだとAngel Beats!)。

こういうアニメ作品で音楽と戦争を安易に結びつけたシーンを見ていると、音楽好きとして、非常に悲しい気分になります。なぜならば実際に、現代の戦争において(例えばイラク戦争など)、米海兵隊が敵地に突撃するときとか、メタルとかのロック音楽をスピーカーで流しながら敵地に突撃する訳ですよ。実際の戦場において、自軍士気を高める・敵の士気を下げる、敵の撹乱などの効果を狙って、軍事作戦実行に大衆音楽は使われている訳です。音楽に乗って突撃して敵味方殺しあう訳です。これは音楽好きとしては酷く悲しくて嫌なことなんですが、そういった現状を全く考えずに、アニメにおいてミュージックとミリタリーを「音楽と戦争は二つとも視聴者を興奮させる材料である」として簡単に結びつけるアニメシーンを製作側が無邪気に喜びながら描いている。こういう、あまりにも物知らずに見えるアニメ業界の手法は、もう少し考えられてもいいんじゃないかと思います。

フィクションにおいて音楽と軍事を結びつけることがダメだという訳では勿論ありませんが、現実の戦争において音楽が戦争の小道具にされていることもきちんと鑑みて欲しいです。アニメにおいて音楽を戦争の小道具の一つとして使うならば、もう少し、そのことに対する内省的な視点があってもいいんじゃないでしょうか。音楽を戦いの小道具として安易に戦争と結びつけたアニメ作品を見ると、この作品の製作者にとって音楽も戦争も道具に過ぎないんだな、音楽を愛していないなと感じますよ…。

従軍ノンフィクション「そして戦争は終わらない 『テロ』との戦いの現場から」の「地獄の鐘の音(Hells Bells)」の章から引用致しますね。これはニューヨーク・タイムズの従軍記者による、米軍のイラク戦争・イラク統治の現状を描いた力作ドキュメンタリーでして、2009年全米書籍批評家協会賞を受賞しました。これから引用する部分は2004年11月イラクにおいての海兵隊によるファルージャ制圧作戦での実際の出来事です。

「地獄の鐘の音(Hells Bells)」

イラク、ファルージャ、2004年11月

そのやり取りが交わされたとき、海兵隊員たちは屋根の上で腹ばいになって伏せていた。午前二時のことである。モスクのミナレット(尖塔)が空爆の明かりで浮かび上がり、ロケット弾が光の尾を引いて飛び交っている。そんな中、モスクから最初の呼びかけが発せられた。雷鳴のような銃声をしのぐほどの音量で。

「米軍はここにいるぞ!」ミナレット内のスピーカーから絶叫が響き渡る。
「これは聖戦である。モスクの都市のために今こそ立ち上がり、戦うのだ!」
弾丸が四方八方から、そして際限なく飛んでくる。頭を上げる兵士はいない。
「ひでえな」兵士が相棒に向かって声を張り上げた。
「まったくだ」相棒がそれに応える。「まだ家一軒を奪回しただけなのに」

そのとき地面の下から、聞きなれぬ音が響いてきた。不吉で恐ろしい、激しい音だ。肩越しに振り返り、自分たち(米軍海兵隊)が来たほう、ファルージャ北端に広がる何もない荒野を見る。海兵隊の一団が、(米軍の)巨大なスピーカーの方に立っていた。ロック・コンサートで使用されるようなやつである。

(米軍がスピーカーで流し始めたのはロックバンドの)AC/DCだった。オーストラリアのヘビーメタルバンドの奔放な音が、あたりに吐き出される。曲名はすぐにわかった。「地獄の鐘の音(Hells Bells)」悪魔の力を称賛する歌が戦場に響き渡った。教会の鐘の音に、ギターの旋律がかぶさる。鐘の音の数は十三。

俺はとどろく雷鳴、どしゃ降りの雨
ハリケーンのようにやって来た
俺の稲妻が空に閃光を走らせる
若いからって死の運命からは逃れられないぜ

海兵隊員がスピーカーの音量を上げると同時に、砲撃の音が遠ざかっていく。空爆で目の前の家々が粉々になり、一瞬で建物が消えていた。モスクからは、怒りで我は忘れた声が聞こえ、町の北端まで届いている。

「アラーアクバール!」モスクから、男の絶叫がこだました。「アラーアクバール!(神は偉大なり!)神の道のために、信仰と国のために死ぬのは、最高の誉れである!」

俺に虜はいらない、生け贄もいらない
俺に抵抗しようとしても無駄だ
俺の鐘(ベル)で、お前を地獄(ヘル)に引きずり込む
お前は俺のもの、悪魔のもの!

「神は偉大なり!」

叫び声は、目の前の家々が見る影もなく破壊され、(米軍の作戦に合わせて鳴り続ける)曲が終わるまでやまなかった。

ファルージャは、七ヶ月もの間ジハーディ(聖戦を行う戦士)たちによって支配され、中世のような生活を強いられていた。十一月の真夜中、ファルージャを奪還すべく、海兵隊六千人の歩兵が市内に進軍した。私が従軍していたのは、第一大隊大八連隊、通称ブラボー中隊と呼ばれる、総勢百五十名の中隊である。
(デクスター・フォルキンス「そして戦争は終わらない 『テロ』との戦いの現場から」)

Back in Black
Back in Black

音楽は現実の戦争の軍事作戦の一部分として組み入れられているんですよ…。音楽を軍事作戦の一環として使うAngel Beats!の第一話とか、現実の戦争の構造(戦争の部分となった音楽)をそのまま肯定的に無邪気に踏襲している作品で、音楽好きとして、酷く悲しくなるものがありましたね…。たぶんアニメの製作者は深く考えていないというか、おそらくは何も考えずに音楽ネタと戦争ネタを組み合わせてアニメを作っているのだと思いますが、「音楽と戦争」を組み合わせて描くなら、少しは現実において起こっている「音楽と戦争」の在り方というものを考えに入れた方が、作品の出来という観点から見ても良いのではないかと思いますよ。

参考作品(amazon)
そして戦争は終わらない 〜「テロとの戦い」の現場から
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2010年04月18日 21:31

限りなき夏 (未来の文学)

クリストファー・プリーストのSF短編集「限りなき夏」読了。非常に良いですね。古典的なワンアイデアストーリー(アイデア的には藤子・F・不二夫さんのSF短編に似ています)のSF短編集でして、グレッグ・イーガンのように、読み手の意識の陥穽を突くアイデアに唸らせられるということはないのですが、こちらはとにかく文章が素晴らしい。極めて端正できちっとした文章を書く作家さんなのですね。読んでいると優れた端正さの文章にうっとりさせられます。また、この文章に合うよう、物語も非常に整然と構成されており、もはやSFというジャンルを超えて、『小説ジャンル』として、文章の端正さを最大限に活かした良質の短編集と言えるでしょう。表題作から引用しますね。

「きみのお母さんは、ぼくをお姉さんと結婚させたがっている」トマスは言った。
「ええ、シャーロットは望んでないけれど」
「ぼくもだ。この件に関するきみの気持ちを訊かせてくれるかな?」
「おなじ意見よ、トマス」

 ふたりはたがいに少し離れて、ゆっくり歩いていた。歩きながらふたりとも小径の砂利を見つめ、おたがいに視線を合わせなかった。セイラは日傘を指でまわしており、傘のふさ飾りが揺れて、もつれあっている。いま、ふたりは川沿いの草原でほぼふたりきりになった。ウェアリングとシャーロットはおよそ二百メートル後方にいる。

「ぼくらは赤の他人だろうか、セイラ?」
「赤の他人ってどういう意味?」
セイラは少し間を置いてから答えた。
「こうやって親密な感じになったのも、これが初めてだろ?」
「それも計略によって、ね」セイラは言った。
「どういう意味?」
「あなたがいとこに合図するのを見たもの」

 トマスは顔が赤らむのを感じたが、午後の明るさと暑さのせいで、気づかれずにすむだろうと思った。川面では、エイトが方向転換を終え、ふたりのそばをふたたび通り過ぎようとしていた。

 しばらくして、セイラが口を開いた。「あなたの質問を避けているわけじゃないのよ、トマス。わたしたちが赤の他人かそうでないのか、さっきからずっと考えているの」
「で、きみの答えは?」
「多少はおたがいを知るようになったみたい」
「もう一度きみに会えるなら願ってもないんだ、セイラ。計略を巡らせる必要なしに、ということだけど」
「シャーロットとふたりで母に話します。もうずいぶんあなたのことは話し合ってるのよ、トマス。ただし、母とはまだだけど。姉の気持ちを傷つけることは心配しなくていいわ。シャーロットはあなたのことを気に入っているけれど、まだ結婚する気がないし」

 トマスは、どきどきしながら、自信が一気に膨れあがるのを感じた。

「では、きみはどうだろう、セイラ?」トマスは訊いた。「これからも誘ってもいいだろうか?」
すると、セイラはトマスから離れ、小径の端に生えている背の高い芝草を踏みわけていった。トマスは、セイラが長い裾をひきずり、日傘がくるくると光を放ちながらピンク色にまわっているのを見た。セイラの左手が脇でぶらぶら揺れ、スカートを軽くこすっていた。

 セイラは言った。「あなたの申し出がとても嬉しいことだと気づいたわ、トマス」

 セイラの言葉はかすかだったが、その言葉は静かな部屋で口にされたかのようにはっきりとトマスの耳に届いた。

 トマスは即座に反応した。かんかん帽をさっと脱ぎ、両腕を大きく広げた。

「愛するセイラ」トマスは叫んだ。「ぼくと結婚してくれるかい?」

 セイラはトマスの方に顔を向け、しばらく真剣な面もちで彼を見つめて動かなくなった。日傘はセイラの肩に留まり、もうまわっていなかった。ほどなく、相手が本気で言っていることを見てとって、セイラは笑みを浮かべた。トマスの目に、セイラもまた頬に薄く紅を掃いたように朱がさしているのが映った。

「ええ、もちろん結婚します」セイラは言った。

 幸せな思いがセイラの目に輝いていた。セイラは左手を差しだしながら、トマスに近づいてゆき、トマスは片手で麦わらのかんかん帽を高くあげたまま、彼女の手を取ろうと右手を差しだした。
(クリストファー・プリースト「限りない夏」)

クリストファー・プリーストはイギリス人の作家さんでして、いかにもイギリス人作家らしい、自らの使う言語(英語)の精髄を知り尽くしているであろう、美麗に端正な文章、実に素晴らしいと感服です。美しく丁寧に描写される情景と内面が自然と頭に浮びます。現代日本の作家さんに、文章(日本語)の美しい端正さで読ませてくれる作家さん、昔で言えば志賀直哉や川端康成のような作家さんは、僕の知る限り誰一人いないので、文章で読ませてくれるこの短編集は、まさに「珠玉の瓦礫に在るが如し」、丁寧にゆっくり読みながら、一気に読むのが勿体無くなる気持ちでした。外国の短編小説集を読んでこんな気持ちになったのは、マンスフィールドの短編小説集を初めて読んだとき以来です。僕は本作をブーニンのバッハ演奏を聞きながら読んだのですが、小説に音楽がちょうどマッチしていてこちらも良かったですね…。

バッハ・ピアノ・リサイタル

現代の日本の小説は、売れ筋のアイデアやキャラクターといったところは注力されているかもしれませんが、『文章それ自体が端正にて読ませる力がある』というものは全然見当たらないので、その点に置いて、『優れて端正な文章を読むことは、それ自体が優れた読書体験となる』ということを感じるためにも、ぜひ読んで欲しい、お勧めの小説ですね。特に普段、日本の若者向け小説であるライトノベルしか読まないようなお方々には、ぜひ読んで欲しいと願う小説です。アイデアやキャラクターを超えた、優れて美しい文章というものがあるのだということがとてもよく分かります。

参考作品(amazon)
限りなき夏 (未来の文学)
魔法 (ハヤカワ文庫FT)
〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)
双生児 (プラチナ・ファンタジイ)
逆転世界 (創元SF文庫)
マンスフィールド短編集 (新潮文庫)
小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)
掌の小説 (新潮文庫)

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のだめカンタービレ 最終楽章 前編&後編

TVで放映していたのだめカンタービレの映画「のだめカンタービレ最終楽章前編」を視聴。クラシックはやはり良いですね…。映画としての出来はたいしたことありませんが、僕は大のクラシック音楽好きなので楽しめましたね。コミカルな演出とかいらないから、その分、音楽演奏シーンを増やして欲しい&音楽演奏シーンに余計な効果音とか声を入れないで欲しいとは思いましたが、クラシック音楽映画ということだけで僕的に+120点が付くので。また、出て来る音楽家達が、カリカチュアライズはされていますが、皆、音楽に真剣真摯に情熱を持って取り組んでいるところも良かったです。アニメ「けいおん」とか、軽音部が舞台なのに、肝心の軽音部メンバーで真面目に音楽に取り組んでいるのはたった一人(中野梓)しかいない、音楽にやる気のない部員達によるダメダメ部活アニメになっていますし。これはこれで『ダメダメ高校生達のダメダメ部活ぶり』というリアリティの追求なのだとは思いますが…。ただ、僕としてはけいおんのようなリアリティよりも、音楽に情熱を燃やす音楽家達を描いてくれるのだめのような作品の方が、一介の音楽好きとして共感が持てますね。

ただ、今回見たのだめの映画、肝心のオケの演奏が下手すぎ…。これはわざと極端に下手に弾いている前半のボレロのオケ演奏だけじゃなく、フランスの新聞に大きく取り上げられるほど見事なオケ演奏であったと、映画設定上はなっている後半のオケ演奏も下手糞すぎて、とても聞いていられたものじゃないのが残念です…。それこそ、練習不足な高校音楽部の部活演奏かと思いましたよ…。映画の後半、見事な演奏という設定でチャイコフスキーの1812年を通しで聞かせてくれましたが、余りにも下手すぎて絶句…。僕は5年ぐらい前、ユーリ・シモノフ指揮ロシアオーケストラの日本来日コンサートに行って1812年を聞きましたが、その時聞いたシモノフ指揮の1812年は、今回の映画で流れた1812年とは比較にならぬほど上手かったです。シモノフ指揮1812年がダイヤモンドだとすると、映画の1812年は石ころレベルとしか…。特に1812年の醍醐味である、ラ・マルセイエーズをからかってド派手で狂騒的に盛り上がってゆくところが全くできていない。わざと下手に弾いている前半のボレロは酷すぎでしたが、後半の1812年もダメなので『オケを見事に指揮できるようになった』という映画の説得力が大幅に欠けています…。

ただ、映画中に流れるピアノ曲だけは良かったです。ウィキペディアで見たら、世界的ピアニストランランの演奏を吹き替えに使っているとのこと、流石はランラン、見事な演奏と改めて思いました。1812年の後に流れたバッハのピアノ協奏曲など特に良かったですね。ピアノ吹き替えをランランにするなら、オケ吹き替えもそれに見合ったレベルのオケを使うべきだと思いました。ただ、ウィキペディアで見ると、オケの吹き替えはチェコ国立ブルノフィルとなっているんですね…。う〜ん、前半のボレロはともかくとして、後半の1812年も、名のある楽団とは思えないほど下手なのは、本気で演奏しないよう指示かなにかあったのかな…?1812年がなんでこんなに下手な演奏だったのか、謎です…。

余談ですが…

唯「コープマンが・・・」
澪「リヒターの・・・」
律「クレンペラーなら・・・」
紬「アルノンクールは・・・」

梓「先輩たち!演奏批評はいいから楽譜の研究をしましょうよ!」

律「ヘンデル読もうぜヘンデル!」
唯「たまにはヴィヴァルディも研究したい!」
沢庵「テレマンの自筆譜が手に入ったよ!」

梓「バッハの研究は・・・」
  (先輩たちあんな下らない音楽にうつつを抜かして・・・)

澪「明日は、明日からはちゃんとバッハの研究するんだから!」

けいおんがこういう内容だったら最高に楽しかったのに(^^;僕としてはけいおんのメンバーはロックとかポピュラーじゃなく、唯:第一ヴァイオリン、梓:第二ヴァイオリン、澪:ヴィオラ、律:チェロ、紬:ピアノでクラシックをやって欲しかったですね…。「くいんてっと!」

参考作品(amazon)
のだめカンタービレ 最終楽章 前編&後編

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2010年04月17日 05:21

Angel Beats! 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
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Angel Beats!第3話視聴。もう笑いが止まらないよとしか…。正直なところ、第3話は1、2話と違って面白いです。ただ、その面白さは、余りにも内容がつまらなすぎて、ついに突き抜けてしまい、逆に最高に笑える面白さに繋がっているとしか…。本作はエド・ウッド監督の映画「プラン9・フロム・アウタースペース」みたいな感じですね。漫画で言うとキユ先生の「ロケットでつきぬけろ!」みたいな。あまりにもつまらないことをドシリアスにやっているのが面白すぎるとしか。

プラン9・フロム・アウタースペース
http://www.akirat.com/cinema_f/c_plan9.html
僕が好きなモンティ・パイソンの笑いは、あらかじめ計算尽くでバカやって、見ている方もそれを解った上で笑っている。が、エド・ウッドの作品は計算なしでバカなことをマジでやっているのだ。だから全然違うモノ。

まさにこの言葉『計算なしでバカなことをマジでやっているのだ』が「Angel Beats!」にも当て嵌まるという感じですね。Angel Beats!第三話の笑えるところとして、まず、ギャグ(スタジオジブリの映画をネタにしたギャグなど)が極限的につまらなく、本当にどうしようもないダメダメっぷりなんですが、それをマジでやっているところが逆に笑えてきます。例えて言えば、「布団が吹っ飛んだ」みたいなギャグを言われても笑えませんが、Angel Beats!の場合は、お笑い芸人が心底から「布団が吹っ飛んだ」というギャグを面白いと思ってそれを自信満々でやった結果思い切り白けているお笑い会場を見てしまって思わず吹くようなギャグになっているんですね。メタギャグという感じです。あまりにもつまらない駄ギャグを本気で面白いネタだと思ってやっている様子が、逆に笑えます。

これは多分、本作の監督である岸監督の苦肉の策なんでしょうね…。岸監督は、「天体戦士サンレッド」などのパロディ・風刺タイプのギャグ作品を作るのを得意としているアニメ監督さんですから、余りにもつまらないギャグが載ったどうしようもない脚本が上がってきたとき、もはやこの脚本は、『つまらないものを真面目にやるギャグ』にするしかないと思ったのでしょう。この策は成功かと。あまりにもつまらないギャグが余りにも突き抜けすぎていて逆に面白いです。

また、本筋も爆笑としか。突然現われた謎のギター弾きが、謎の過去語りをし始めるのですが、これは、もう、これ以上はないと言うほどに陳腐な筋書き。『これはもはやケータイ小説の筋書きとかそういうレベルですらない!!』と驚愕とともに笑いを抑えられなかったです。ギター弾きがヘッドホンしながらモノローグを語るシーンとか余りにも陳腐すぎて逆に面白みを感じました。リアル中学二年生がチラシの裏に書いていそうな面白独白を続けるこのシーン、製作側の意図としては真面目なガチシーンとして作られているだけに、『リアル中二病過ぎて突っ込まずにはおれない独白』『製作スタッフの一部はこれが本当に面白くて感動的な独白だと思いながら作っているんだろうなあ…』と頭に浮んで吹きました。こんな感じです。

Angel Beats!第3話、ギター弾きのモノローグを一部引用
(ギター弾きの両親の夫婦喧嘩が多かったから)どこにも安らげる場所はなかった。そんなとき会ったのがサッドマシーンというバンド。私と同じ恵まれない家庭環境で過して、精神的に辛いときは耳をイヤホンで閉ざしたと聞いた。私もそうして見た。全てが吹き飛んでゆくようだった。ボーカルが私の代わりに叫んでくれる、訴えてくれる。常識ぶっている奴は間違っていて、泣いている奴こそが正しいんだと。孤独な私達こそが人間らしいんだと。理不尽を叫んで、叩きつけて、破壊してくれた。私を救い出してくれた。

『なぜ突然中二病思考に!?』と突っ込まずにはおれませんでした。辛いときに音楽で心を慰めるというのは分かりますが(僕もそうですし。音楽の美しさには心打たれます)、突然『常識ぶっている奴は間違っていて、泣いている奴こそが正しいんだと。孤独な私達こそが人間らしいんだと。』という謎の思考にぶっ飛んでしまうのが訳が分かりません。一体どんな洗脳ソングを聞いたというのでしょうか…。音楽を聞くことで『常識ぶっている奴は間違っていて、泣いている奴こそが正しいんだと。孤独な私達こそが人間らしいんだと。』と突然悟って救われるという、あまりにも僕の理解を超えた展開がガチにシリアスな、おそらくは感動的なシーンとして流されていることに、もはやアハハハハ…と乾いた笑い以外の何も出ませんでした。この時の僕の気持ちを一言で表すならば、

なんだこりゃああ!!

上記で挙げたのはほんの一例で、こういうぶっ飛んだ展開が怒涛の勢いでシリアスシーンとして流れるので、もう笑いが止まりません。いやあ、僕の聞く音楽、メインはクラシックですが、ロックやポピュラーもそこそこ聞きますけど、ロック聞いていて『常識ぶっている奴は間違っていて、泣いている奴こそが正しいんだと。孤独な私達こそが人間らしい』などという発想が出てきたことが一度もないので、驚いたとしか…。音楽の根幹というのは『美』であって、世俗の社会的価値観・イデオロギーとは異なるものと思いますね。それに、CDショップの試聴で音楽一曲聞いただけで価値観が根本的にドラスティックに変わっちゃうようなペラペラな人生なんていくらなんでもありえないとしか…。ちなみにサッドマシーンの歌詞はこれなのかな…?

サッドマシーン歌詞
http://www.chordmaster.jp/kasi/?sid=94026
君は俺の祈り 君は俺の欲望その物
そしてそれは消える 音も立てずに崩れて失くなる
君は僕を殺す「まるで機械みたいな笑顔ね」
心閉じたままで 愛したいともがいて

Sad machine
You re sad machine
俺を救って

Sad machine
You re sad machine
精一杯の笑顔で 助けてよ

君は夢の終わり 君は俺の宗教その物
去っていった女は 少し胸を焦がして

Sad machine
You re sad machine
跪くさ

Sad machine
You re sad machine
灰になる前に
助けて 助けてよ

上記、普通にロックの歌詞で、これを聞いて、価値観がドラスティックに変化するとは、どうしても思えませんが…うーむ…。別の曲があるのかな…。この作品、考えたら負けということでしょうか。なんかもう、あまりにも突っ込みどころが満載で吹いてしまう展開の連続で、これはこれで楽しかったですね。ちなみに余談ですが、この作品だけじゃなくけいおんもそうですが、なんでアニメに出て来るギター弾きはロックかポピュラーばっかりで、クラシックギター曲は聞いたり弾いたりしてくれないのかなあと…。僕はギター曲ではアランフェス協奏曲が一番好きなもので…。閑話休題。

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲

Angel Beats!第3話をリアルタイムで見終わった後、ツイッターやアニメ板で感想見たら、ツイッターも信者スレもアンチスレも、誰一人感動しておらず、単にポカーンとしていたのに、また吹きました。僕も見終わった後、単にポカーンとしたので、ああ、みんな思うことは同じだなあと。製作スタッフは今回の話をマジで感動できるシナリオだと思っているならば、すぐさまその突飛な認識を改めた方がいいと思います。これを感動物と認識するようなぶっ飛び過ぎのセンスでアニメを作り続けたらピーエーワークスは潰れてしまうのではないかと心配に…。ただ本作に感動は皆無ですが笑いは沢山ありますね。それはギャグが面白いのではなく、あまりにも各シーンが陳腐でつまらなすぎるのが笑えるということですが…。全体としては余りの薄っぺらさにポカーンとしちゃうようなどうしようもないZ級アニメとなっているので。

ただ、ここまでつまらなさが突き抜けると、突っ込みどころが満載で逆に面白いということで、Z級のお笑いアニメとしては非常に良い出来であると思います。どうしようもなくつまらない展開を本気で面白いと思って作っている感じがして、見ていてとても面白い(ネタ的な意味で)。これはこれでアニメ史に残る面白アニメとなりそうで、今後も楽しみです。

Angel Beats!最終回はぜひ、最後にエヴァ風の極太明朝体で画面に

『痛みを知らない子供が嫌い。心をなくした大人が嫌い。優しいアニメが好き。バイバイ』

と表示して終わりにして、伝説を残して欲しいですね。

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けいおん!!(第2期) 1 (Blu-ray 初回限定生産) [Blu-ray]
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詩学 (岩波文庫)
ギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)

絶対だの永遠の幸福などゝいふものがある筈はない。
(坂口安吾「欲望について」)

けいおん、オリジナル(原作漫画・アニメ共)が基本的に『女子高生達が女子校でのんべんだらりとひたすら毎日を遊び暮らしている』という、突っ込みどころ満載の能天気な作品のため、物凄く二次創作が多いのですが、今回はその中でも、無料で読める、ネットで公開されている二次創作の中から、僕のお気に入り作品を幾つかご紹介致します。楽しんで頂ければ幸いに思います。

唯「ゾロアスター教徒になるよ!」
http://minaminoxxxsummer.blog49.fc2.com/blog-entry-538.html
ゾロアスター教の世界に入り込んでゆくけいおんメンバーを描いた、極めて優れた物語。オリジナルすら遥かに超えているとしか言い様のない、けいおんSSの現時点でのダントツの頂点かと。ゾロアスター教については、エリアーデの「世界宗教史」でゾロアスター教の章を読んだくらいしか知識がなかったんですけど、このSS読んだ後、ゾロアスター教についての関連文献、図書館で借りられるだけ借りて読んでしまいましたよ。関連文献を読むほどに、このSSは凄く確りゾロアスター教を考証していることが分かって、評価が高まりました。ちなみにこれを読むと、アーリマンを世俗的な悪役にしたFate/stay nightに出て来るゾロアスター教は全く現実のゾロアスター教と違う、Fate/stay nightの中だけの別物であることも分かります。僕の理解では、ゾロアスター教は初の世界宗教の萌芽なんですね。ゾロアスター教は最も古い二元論(形而上学的な善と悪の対立)の宗教であり、世界三大宗教を始めとして、世界中の無数の宗教やグノーシス主義などの神秘思想各種に影響を与えています。日本において言えば、このSSの作中で示されるとおり、仏教、そして神道などに影響を与えています。ゾロアスター教は発祥当時(紀元前千数百年前)を考えれば驚くほど論理的でシステマティックで賢明な宗教であり、Fate/stay nightにおいて生贄を捧ぐ邪教として描かれたものとは全く違うものです。

唯「ピカチュー、でんげき攻撃だ」
http://sea-mew.jp/nox/modules/webarc/2ch/ss/1247271665-0.html
けいおんのエロティックな18禁SSにおける最高峰かと。ひたすら異常かつ凄惨な方向へとエスカレートしてゆく唯の幼稚な行動の描き方があまりにも唯っぽくて、「ああ…唯ならこういうことをやりかねないなあ」と思えるところが凄い。キャラクターの特性を非常に上手く掴んで、それを120%活かしている、二次創作の手本のような作品です。唯はアニメにおいては、『幼稚過ぎる』という狂気を孕んだ異様なキャラクター、一般常識が完全に欠如したキャラクターとして造形されていますが、それを創作の中に上手に活かしています。『唯はおかしいよ・・・・なんでこんな残酷なこと笑いながらできるんだ・・・』 の台詞とか、唯の無邪気な狂気を活かしていて本当に上手い。ただ一つの難点は、唯死亡後の展開が、ごく普通のレベルのSSぐらいにまで出来が低下していること。唯の狂気を活かすために、唯は最後まで生かした方が作品として良かったと思いますね。

唯「ごねんご!」
http://yamisoku.blog43.fc2.com/blog-entry-292.html
「ピカチュー、でんげき攻撃だ」は唯の孕む狂気が極端にエスカレートした場合のSSですが、これはもっとゆっくり、みんなが壊れてゆく悲劇。その壊れ方がいやにリアルでなんとも言えない気持ちになります。漫画である蛸壺屋さんの同人誌より遥かに内面心理描写が深いのは、文字媒体ならではの利点ですね…。アニメでけいおんメンバーを見ていると、『ああ…今は楽しそうにしていても、このけいおんメンバーは五年後には、唯は麻薬中毒、律は貧困、澪は精神を病み、紬は不治の病、梓は芽の出ない三流アイドルになるんだなあ…』としか思えなくなるという破壊力抜群のSSです。

澪「唯、今日のエサだよ。」唯「澪ちゃん・・・これ、ゲロだよね?」(残虐系SS、残虐描写ありますので閲覧注意)
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51303711.html
数多あるけいおんSSの中において、おそらくは最も知名度が高く、評価されているであろうSS。残虐系のSSですが、ただ残虐なだけでなく、伏線の張り方や、なるほどと読み手を唸らせる展開が上手い。推理小説(パズルミステリ)的な要素を作品内に上手く取り入れています。読んでいて綾辻行人のパズルミステリにして残虐ホラー「殺人鬼」シリーズを思い出しました。本作はオチも上手く、井上夢人の「ダレカガナカニイル」を彷彿とさせる鮮やかなラストシーンは、やられたと思いましたね。本当に上手いとしか…。以下のところとか、「本当に上手い」と読んでいて心から感服しましたね…。

梓「澪先輩、痛いことも怖いことも苦手でしたよね?」
梓「なんで唯先輩にあれほど酷いことができるんです。」
梓「澪先輩は本当に狂ってしまったんですかっ。」
律「私が、教えてやるよ。」
律「梓はダイエットとかしたことあるか?」
梓「な・・・ありますけど、それがどうかしたんですか?」
律「そういう時って食べ物の話とかされたくないだろ?そういうことだよ。」
梓「そっそんな理由でですか?やっぱり狂ってます。」
律「そうかな、澪は必死でそういうものから逃げて自分を押さえ込んでいたんだぞ。」
律「まぁ、私もそれで澪をからかってたから悪いことしたと思うよ。」

なるほどなあって思いましたね。オリジナル(原作漫画・アニメ)の澪が痛いこと・怖いことを見たり聞いたりするのが苦手という割りには、他人に対して酷く粗暴な面があるところを上手く突いて、澪というキャラクターを再構成している。見事ですね。

澪「ああああゲロ吐いちゃうゲロ吐いちゃうよおおおおおお」
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51280172.html
前回もご紹介致しました、スラップスティック系ハチャメチャSS。救いのない話ですが、爆笑せざる得ない面白みに溢れています。筒井康隆の「トラブル」などを彷彿させる、人体を物として扱って面白みを出すスラップスティックユーモア物の傑作ですね。もともと、アニメで描かれるけいおんキャラは如何にも「物」っぽく描写されているので、読んでいると字面だけでなくイメージが浮び、何度読んでも笑ってしまう作品です。

けいおんSSの特徴として、他の作品の二次創作に比べ、ちょっとどうかしているようなダークなSSの数がやけに多く、またそれらに出来の良い作品があるということが挙げられると思いますね。オリジナルのけいおんは、原作漫画・アニメ共に、人間が生きる上での苦しみや哀しみといった深刻な部分をなるべく描かないようにしているので、逆にそれらが『本当はけいおん世界にも在るのにも関わらず、オリジナル作品では描かれていない部分』として、二次創作の魅力的な題材になりやすいのだろうなと思いますね。例えば、「人間、二人いれば争い起き、三人いれば派閥生まれる」と言われるように、けいおん部は五人いるんですから派閥ができない筈はないんですよね。この、派閥(力関係)をネタにしたSSがけいおんSSには圧倒的に多い。ダーク系SSだけでなく、総合的に見て、圧倒的に多いです。五人いるのに派閥(力関係)が出てこないことに、現実でのありえなさを感じて、フラストレーション(欲求不満)になっているところが、<げんじつ!>とも言うべき、派閥のあるけいおん世界を描く二次創作の多さに繋がっているのではないかと思いますね。派閥系のSSでは、唯がテレパスになってけいおんメンバーの心を読むSS唯「読心」がお勧めです。筒井康隆「家族八景」のオマージュとしても面白くお勧めです。

唯「読心」
http://www40.atwiki.jp/83452/pages/2721.html

『けいおん!!』第2話について
http://d.hatena.ne.jp/LoneStarSaloon/20100416/1271348859
今まで何度か書いてきた、否定がなく、強い肯定もない、ということとも被りますが、<げんじつ!>なんてものに出会わないで済むならその方が遥かに良いのです。むしろ、映像として見せ付けられなくても、このように”隠蔽されている”ということに気づければ、それは最も理想的な<現実>との出会い方だろう。しかもデフォルメ化が全てを隠蔽するように、可愛さが全てを乗り越えるならもう文句の付けようもない。

僕はこういった意見には実感として賛成できないものを感じます。<げんじつ!>が隠蔽されている物語は、鑑賞者にもやもやとしたフラストレーションを溜まらせるものではないでしょうか。アニメの「けいおん」を見ていて、表現などの出来の良さに感服しながらも、いまいちすっきりしない気持ちは、けいおんにおいて<げんじつ!>が隠蔽されていることに起因するのだろうと、僕は実感として思いますね。今回の第二期第二話が、神回として大勢の鑑賞者から高く評価されている最大の一因は、今回の話ではけいおんメンバーが50万円を着服したり、先輩四人が、弱い立場である後輩の梓に意地悪をしていたりすることを現すことで、今までの「けいおん」にはなかった<げんじつ!>を示したことによるカタルシスによるものではないかと思います。

アリストテレスも言っていますが(アリストテレス「詩学」)、上記のリンク先さんの言葉風に述べるなら、『物語において、<げんじつ!>というものに出会うとき、人はカタルシスを覚えて浄化されるのです。それが悲劇の効用なのです』ということですね。物語において隠蔽されている<げんじつ!>(=悲劇・受苦と言い換えてもいい)が、物語のなかで明らかになるとき、人はカタルシス(心の浄化)を覚えるのです。それは登場人物達のレベル、物語のレベルにおいては悲劇ですが、鑑賞者にとっては、カタルシス(浄化)なのです。デフォルメ化(=喜劇)が全てを覆い尽くしていれば、それは物語として鑑賞者に何一つ与えるものはないでしょう。純然たるジャンル喜劇にしろ、それが人の心を打つ作品ならば、悲劇の要素をどこかしらに含んでいるのです。そこではキャラクターの固有性ではなく、『物語』こそが重要となる。なぜなら、それは普遍性を持つからです。優れた作品、人の心を打つ作品とは、如何に喜劇・キャラクター劇であろうとしても、どこかしらに悲劇・物語が現われ出でる作品なのです。なぜならば、真に人が心を打たれるのは、『可愛さ』などのどうでもよい表層ではなく、自らの生に共鳴する根底、すなわち、全ての人の生の根源たる『世界に生きる苦しみ(受苦)』であるからです。けいおんの製作スタッフは物語の創り手としてこのことを分かっていると思いますね…。

http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/sigaku.html
(悲劇にとって)もっとも重要なものは出来事の組みたてである。……出来事、すなわち筋は、悲劇の目的であり、目的はなにものにもまして重要である。……悲劇は、行為なしには成り立ちえないが、性格がなくても成り立ちうるであろう。……たとえある作者が、性格をよくあらわしていて、語法と思想によって巧みにつくられた演説をつぎつぎとならべても、悲劇の効果はえられないであろう。しかしこれらの取りあつかいが劣っていても、筋、すなわち出来事の組みたてをもっている悲劇なら、はるかによくその効果をあげるであろう。
(アリストテレス「詩学」)

けいおんと悲劇については、今回はこれくらいにして、最後に二次創作の紹介としてけいおんコラージュ漫画「えんこう!」をご紹介。上手いなあ。けいおんの雰囲気を上手く出していて、これ自体がオリジナルと言われても全く違和感のないところが見事です。アニメの第二期第二話で唯の夢(札束で頬を張られたいという欲望の夢)のシーンを見た後にこの漫画を見ると、恐るべき真摯なリアリティが(爆)第二話の50万の話なんかはそうですが、欲望と悪徳というのは、まさにキャラクターを超えた普遍性な訳ですね…。

要するに人間には社会生活の秩序が必要であるが、秩序は必ず犠牲をともなうもので、この両方を秤にかけて公平に割りだすやうな算式が発見される筈はない。要するに今あるよりも「よりよいもの」を探すことができるだけだ。絶対だの永遠の幸福などゝいふものがある筈はない。(中略)
人間の動物性は社会秩序といふ網によつてすくひあげることが不可能で、どうしても網の目からこぼれてしまふ。そして我々はさういふ動物性を秩序の網にすくひあげることができないので悪徳であるといふのであるが、然しその社会生活の幅、文化といふものが発展進歩してきたものは秩序によるよりもその悪徳のせゐによることが多いのである。
(坂口安吾「欲望について」「日本文化私観」より)

けいおんコラージュ漫画「えんこう!」
けいおん「えんこう!」

参考作品(amazon)
詩学 (岩波文庫)
ギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)
日本文化私観 (講談社文芸文庫)
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2010年04月16日 04:28

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フジテレビの深夜アニメ枠ノイタミナが30分から一時間枠に拡大され、今回は、拡大された30分を使って非実在児童表現規制をしていて、ゲストとして、ガンダム00、はなまる幼稚園などのアニメの監督である水島監督、哲学者の東浩紀氏、法律学者の白田秀彰氏が出ていたんですが、東浩紀氏があまりにも挙動不審な受け応えをしていて飲んでいた麦茶吹きました。フジテレビはなぜこの人を呼んだのか…。こんな感じでした。

東浩紀氏
「規制することはないんじゃないの、という議論はある。しかし他方、それだけでもなくて、やっぱり、その、えーと、やっぱり、その、えーと、(黙り込む)…、う〜ん、まあ、いいじゃん、白田さんに」

白田秀彰氏
「(突然話を振られて驚いて)えっ、とつぜん僕に?」

東浩紀氏
「そういう指示がでているから」

白田秀彰氏
「えっ、マジで。えっ、台本にないよ。…、(仕方なく喋り始める。突然振られてもきちんと語れるのは流石)えっと、僕は法学の先生なんですが(この後、憲法・法律上の観点から非実在児童表現規制の問題点を三点に絞って分かりやすく述べる)」

白田秀彰氏の指摘によると、問題点は三点。まず、非実在児童というのが過度に曖昧で広範な文言の為、これ自体が憲法違反である。第二点として、非実在児童は実在しない為、被害者は存在しない。第三に、表現と行動に関係性があるという前提ならば、先に暴力表現を規制するべきである、とのことでした。分かりやすく語るのは、流石白田先生という感じですね。

テレビで放映される東浩紀氏の醜態が驚くほど甚だしく、なぜこの人をテレビでの議論に呼んでしまったのかと、東浩紀氏の姿を見て吹きながらも、非実在児童表現規制反対派の一人として冷や汗が出るものを感じました。この人、テレビとかにでてまともに語る能力は全然無いのに…。その上、非実在児童表現規制において、この人は基本的に賛成の立場の筈ですし、議論反対の立場の論客として呼ぶなら、竹宮恵子さん辺りの漫画家さん達の誰かを呼べば良かったのに…。水島監督と白田先生は非実在児童表現規制反対派の論客として問題なかったと思いますが、なぜ東浩紀氏をという気持ちで一杯になりました…。

東浩紀氏は、少なくとも以前多少交流があった僕が語れることとしては、実際の対人関係においては極度に冷酷、自分がTOPに立って人を使い捨てることしか考えておらず、言っていることがころころ変わるため、全く何も信用できない、風見鶏のようなデタラメさを持つどうしようもないデマゴーグ哲学者であるとしか…。今回のテレビ放映で、彼のデタラメさの一端が明かされたのならば、それはそれで意味があったのかも知れないなと思うことにします…。

非実在児童表現規制については、本当に馬鹿げているとしか。僕はけいおんのダーク系SS(二次創作)が好きなんですが、例えばけいおんのゲロSSを創作したり読んだりして楽しく笑うことが一体誰に迷惑を掛けるというのか。架空のキャラクター(例えばけいおんのヒロイン)に実在の人物と同等の人権を認めて、表現を規制するなど、全く馬鹿げた話です(ちなみにゲロSSとかレクター博士が出てくるSS書いたのは僕じゃないですよ、いや、ほんとに)。

澪「ああああゲロ吐いちゃうゲロ吐いちゃうよおおおおおお」
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51280172.html
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/29(月) 23:35:47.01 ID:FHQO0kNL0
唯「ん?」
律「いきなりどしたんだ澪」
澪「ゲロ吐くよおおおおおおおおお!!ゲロ吐くよ律うううううううう!!!」
澪はよろめきながら律に近寄り、律の肩をつかんだ。
律はいきなりのことに反応できず固まっている。
律「え?え?」
澪「ゲロ吐く…うっげっ…げっぼぼああああばあああばばばおぼぼぼばば」
  びちゃびちゃびちゃびちゃ
律「うわあああああああああああああっ!!!」
律は逃げようとするが澪の握力は予想以上に強かった
必死に体を反らす律に澪の吐瀉物が容赦なく降り注ぐ
澪「げーろげろげろげろげろおおおおおおおお」
律「ぎやああああああああ」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/29(月) 23:36:24.01 ID:QQmn3/v90
なんだこれwwwww

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/29(月) 23:47:09.47 ID:0X2YKhQ/0
やっぱけいおんSSは良質なのが多いな

けいおんのSS(二次創作)はオリジナルがあまりにも能天気なことに対する反動なのでしょうが、ダーク系のSSが圧倒的に多くて、ダーク系二次創作好きとしてとても良い感じですね。今回の第二話では「紬を除くけいおんメンバーは金の為ならなんでもやる」「梓は先輩達に継続的にいじめられている可能性が高い。亀を新入部員として押し付けられたり、かなり陰湿な意地悪されていることは確実」ということがアニメ公式設定として明らかにされた訳で、今後二次創作のネタにされまくることは間違いないでしょう。僕的には今後のけいおん二次創作アイデアとして、唯「ごきにゃんはいらないよ!」(唯達が梓をいじめるSS)のアイデアが頭に浮んでしょうがないんですが。きちんと完成したらVIP…もといどこかに投稿しようかと思っていましたが、なんとなく筆が乗っているので、ここで書いてしまいましょう。

----------------------------------------------------
けいおんSS

唯「ごきにゃんはいらないよ!」

日曜日、梓は誰もいない部室に一人来ていた。唯達に押し付けられたすっぽんもどきの世話をする為である。「後輩の世話は頼んだよ、梓」と言って、他の部員達に亀の世話の全てを押し付けられたのだ。

唯「ごきにゃん!」

突然聞こえてきた声に梓はびくっとした。後ろを振り向くと、唯が立っている。

梓「唯先輩、今日は日曜日ですよ。こんな朝早くどうしたんですか。それにごきにゃんって何ですか?」

唯は黙って梓に近づいてくると、突然キンチョールのスプレー缶を取り出し、梓に吹きかけてきた。

梓「せ、先輩、何をするんですか!?やめてください!!ごほ、ごほっ」

唯「うわ〜、このごきにゃんしぶといよ〜。えいっ、えいっ〜」

キンチョールから噴霧されるガスを避けようとして逃げ回る梓。しかし唯は梓の後を追ってくる。梓はたまらず、部室の外へと逃げ出した。部室から唯の声が聞こえてくる。

唯「やっとごきにゃんを部室から追い出したぞ〜。二度と戻ってこないといいな。ごきにゃんはみんなの迷惑だもんね。ね、ギー太。みんなごきにゃんのこと嫌いなのに、ごきにゃん、部活から消えないんだよ、困るよね〜」

梓「(ごきにゃんって私のこと?それに、みんなごきにゃんのこと嫌いって…)ゆ、唯先輩、何を言っているんですか」

ふらふらと部室に入る梓。そのとき、梓の頭に重い衝撃が響いた。

梓(えっ、何、頭がガーンってなって…。わたし、頭を何かでなぐられた…)

唯「うわっ、思わずギー太でごきにゃんを潰しちゃったよ。ごめん、ギー太。ごきにゃんの汚いので汚れちゃったね。うわ〜ん。綺麗にしなきゃ〜」

梓(…気が…遠く…なる…)

……

梓がずきずきする頭と共に目覚めたのは昼が過ぎてからだった。周りを見ると、誰もいない。目覚めた一瞬、夢だったのかと思った梓だったが、血を流し腫れあがっている頭が夢ではないことを教えてくれた。

梓「…え…なんで…なんで唯先輩、こんなことするの…うう…ぐすっ」

梓は血で汚れた部室を掃除し、泣きながら家に帰った。


次の日の朝、梓はびくびくとしながら部室を覗き込んだ。もし唯が部室にいたら、すぐさま逃げるつもりだった。

梓(部室に唯先輩はいない…他の先輩に、昨日のことを相談しよう)

梓「あ、あの、おはようございます。あの、私、昨日」

律「おいっ!ゴキブリッ!なんで亀を殺したんだよ!!」

突然、律が怒鳴りつけてくる。梓は訳が分からず混乱した。

梓「えっ、なに…」

澪「水槽を見てみなさい」

梓が水槽を見ると、水槽は割られ、ガラスの破片と共に、梓が世話をしていたすっぽんもどきの亀がバラバラにされていた。

梓「あ、な、なに…」

突然横から蹴り飛ばされる梓。見るとそこにはいつも通りの笑顔を浮かべた紬がいた。

紬「やっぱり害虫は排除しないといけませんね」

梓「私、亀を殺したりしていません!昨日、唯先輩が私のこと襲ってきて、その後に亀のこと確かめ、ごッ!」

梓の言葉は途中で遮られた。梓の前にきた澪に腹を蹴り飛ばされたのだ。吹き飛び部室の床に転がる梓。

澪「唯のせいにするなんて、どこまでもゴキブリ!昨日の夜、唯から連絡があったのよ!ゴキブリが亀を殺しているところを見たって!」

梓(なに、なにいってるの…みんなおかしいよ…!?)

唯「ごきにゃんはいらないよ!」

そのとき、梓が一番聞きたくなかった声が後ろから響いた。痛む身体を捻って後ろを振り向くと、そこには鋏を持った唯の姿が…。

唯「こうなったらごきにゃんを部室から退治しなきゃダメだよ。ごきにゃんが二度と部室にこれないように、ごきにゃんの触覚を取っちゃおうよ!」

紬「流石は唯ちゃんですわ!」

澪「いいね!」

律「GJ!」

倒れた梓の身体に、律、澪、紬がのしかかって動けなくする。そして鋏を持った唯が歪んだ笑顔を浮べ梓に近づく。梓は恐怖のあまり、言葉すら出ない。

梓「……あ…や、やめ…」

唯「このごきにゃん触覚を取っちゃおう!」

唯の鋏が梓の髪を無造作に切り取ってゆく。梓が手入れを欠かさない美しい黒髪が乱雑に切り離されてゆく。心が麻痺した梓はまるで他人事のようにそれを感じていた。

梓(ああ…私の髪をごきぶりの触覚に見立てて唯先輩はごきにゃんっていってたんだ…はは…ははははは…)

梓の地獄は正味10分ほどだっただろうか?梓にとってそれは何日も続く苦しみのように感じた。気が付くと梓は髪をずたずたにされていた。坊主頭にところどころ毛が生えているようだ。唯の乱暴なカットで、頭のいたるところから血がでている。

唯「これでごきにゃんが二度とこの部室にこなくなるといいね!」

唯達はそういうと、ボロボロの梓を置いて部室から出てゆく。梓は心のなかの大切なものが全て粉々に砕けるのを感じていた。

梓「…あ…うあ…あ…」


一週間後、放課後ティータイム。そこにもう梓はいない。

澪「この前は助かったよ、唯」

唯「みんなで計画を立てたおかげだよ〜。うふふ〜」

律「亀を新入部員だって持って行った時点で普通の奴なら辞めてるよな。鈍感な奴を辞めさせるには手間が掛かる」

紬「あれから害虫は一度も学校に来ていないそうですわ。もし彼女が学校に何か言っても、お父様に頼めば何とかなりますし、これでまた元通りの放課後ティータイムですわね」

唯「放課後ティータイムはこの四人のものだもん〜。余計なものはいらないよお〜うふ〜」

四人「うふふ…あはは…」

ガシャッ。ごろっ。

律「ん、なんだ…」

紬「ひっ…!」

部室のドアから投げ入れられたのは、胸元が赤く血にそまったさわ子先生。明らかに死んでいることが分かる。そして、その後から包帯塗れの人影が…。

梓「ひさしぶりですね、先輩方」

澪「あ、梓、なんでお前そんなもの持ってんだよ」

律「その包丁をまずは下ろせ、な」

梓「………」

唯「あ、あずにゃん、まずは落ち着こうよ、ち、近づくな、よせ、うぎゃぁああああああああー」

fin
----------------------------------------------------

けいおん第二期が始まって、またダークなけいおんSS祭りが始まることを思うと、ダーク二次創作好きとして楽しみです。ダークな創作をすることを、「非実在のキャラクターの人権」を盾に国家権力が規制して刑事罰を与えるなどという、全く訳の分からない表現規制である非実在児童表現規制には僕は明確に反対ですね。

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2010年04月15日 07:46

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表題通り。今回のけいおん第二話は今までのアニメ放映に比べるとやや異質(というより今までよりキャラがダメっぽい人間味を増して泥臭くなって原作漫画に近くなった)な展開だったのですが、そういうところの視点で評している人全然いないなあと思いながら(商業ライターのたまごまごごはん氏はこのことが分かっているようですが、けいおんに僅かでも批判的なことを書くのは熱狂的けいおん信者を敵に回すため、商業的利害の面から得策ではないのでわざと曖昧に書いているようで、流石は売れっ子ライターでいらっしゃるとしか…)、けいおん第二話感想をブログとツイッターで見てまわっていたら、ツイッターに凄く熱くて同感だなあと思う文章があったのでご紹介。

http://twitter.com/polley26
 しかしながら、それもけいおん!!に比べればなんの問題もないくらいの話。けいおん!!二話の酷さははんぱなかったので切ります。どういうことかというと、もう作品うんぬんの前に話考えたやつ出てこいよ!という感じです。
 ネタばれない程度に内容を描くと、楽器売ったら凄い金になってうはーっ!でもそのお金は熱帯魚を買う金に使いましたやったー!という回。まず普通にお話を作るなら「部員たちがギター売るとこで大金にビビってやっぱり売らない」とか「そのくらい価値のあるギターなんだと感心して大事にする」とか
 最終的にはお金よりも自分たちが好きな音楽や楽器への愛みたいなものを描くべきだろと思う。実際の話はそりゃあ大金が入れば売るのもありだと思いますよ。でもフィクションはそういう嘘をついてナンボだと思う。
 さらに最終的にはその金使って、ペット飼って悦にいるって;なんなんだよ!ホント全世界の軽音部にぶち殺されればいいと思う。簡単にいえば、この話大金に舞い上がる女子高生たちをコミカルに描いているのだが。正直ちょっと引いた。普通に音楽にいそしむ学園生活じゃだめなの?
 別にそれでも売れると思うよ俺は。ちょっと話考えたやつの神経を疑うような回でした。あっ!別にお金がどうとかという道徳的な問題はないです。てか別にそういう話でもいいと思う。ただ本当にこの作品が頭にくるのは
 OPとEDを見れば明白だけど、作り手は一応バンドやってる女の子たちという格好を売りにしてるじゃん!あと一方でキャラクター達は音楽楽しいねという感じだし、恐ろしいことに基本やつらは楽器の演奏もそれなりにうまくて音楽というものに愛されているという情景は多々ある。
 しかしこの作品は音楽の大変さも描かなければ、大金を持ち出されれば音楽を捨ててもいいやという程度にしか音楽は愛していない。だったらめちゃくちゃダメなバンドで楽器もクソ度下手なしょうもない部活生活を描かなきゃ駄目!
 もしこの作品を面白いと感じる人がいるのであれば疑問を持たざる得ない。これが人気があるということが末恐ろしい以外のなにものでもない。挙句の果てにそのお金で何を買うかといえばペットで主人公が「あたらしい部員だよ」とかぬかす。なんか凄くいやーなものを見た感じがしました。

物凄い同感!!アニメけいおんに最大の問題点を挙げるとしたら、この中途半端さなんですよね。これはおそらく唯というキャラクターの初期設定に最大の問題があって、この子を現実味のない天才キャラ、普段はぽや〜んとしている変わり者だけど、なんでも瞬時に学習してマスターできる天才児という、フィクションならではの現実味ゼロなファンタジックキャラに設定しちゃったものだから、けいおん全体がそれにずっと引っ張られているんですよね。これはアニメに限らず、原作漫画からしてそうです。

本当は、あの軽音部の活動は、『めちゃくちゃダメなバンドで楽器もクソ度下手なしょうもない部活生活を描かなきゃ駄目!』なんですけど、最初に唯を簡単になんでもマスターできる天才、音楽も簡単にマスター、なおかつ部活メンバーと仲良しという設定にしちゃったものだから、唯以外の部活キャラも唯とバランスを取る為に、唯には劣るが練習しなくても大丈夫な現実味のない天才みたいな感じになっちゃって、練習せずとも素晴らしい演奏が出来る超常的な音楽の才を持つ娘達が、その才能を軽音部の活動に活かすのではなく、軽音部でひたすらお菓子食べてだべって遊んでいるという話になってしまっていますね…。

軽音部の主となる活動が音楽活動ではなく、お菓子食べてだべって遊んでいることというのは、これはこれで「文化系ダメ部活」としてある種のリアリティを感じるので、それはそれで良いんですが、それでいて凄く見事な演奏が出来るというのは完全に現実味ゼロのファンタジーですね。原作だとこの辺のおかしさに作者さんも気づいていて、遊んでばかりの唯達軽音部メンバーの音楽の腕前をそれなりの評価とする「文化系ダメ部活」路線にシフトしているのですが、アニメだと、唯達軽音部メンバーを『練習しなくても凄く見事な腕前の超人女子高生』として幻想的に描いていますからね…。僕はなんだかなあって思いますね…。

この部分に限らず、アニメだと原作に比べて軽音部メンバーを物凄く理想化しているんですね。原作漫画で描かれる唯達の本当にダメっぽいところが剥ぎ取られて、『オタクが妄想する理想の女子高生』みたいな感じにアニメでのキャラは形成されている。僕は原作の唯達のいかにも生身っぽい人間として本当にダメダメなところが好きでして、そういったダメさを剥ぎ取られて理想化されたアニメの唯達、そして理想化された唯達を褒め称え讃美する風潮には違和感を覚えていたので、今回の第二話みたいに唯達のダメダメな部分が出てきたのは嬉しいですね。僕はフィクションの物語において、視聴者の為に作られたと感じさせる摩擦のないキャラクターよりも、生身の人間性を感じさせる泥臭さが好きなんですよ。今回の第二話はけいおんメンバーが原作に近づいたので、僕は評価していますね。

『恐ろしいことに基本やつらは楽器の演奏もそれなりにうまくて音楽というものに愛されているという情景は多々ある。
 しかしこの作品は音楽の大変さも描かなければ、大金を持ち出されれば音楽を捨ててもいいやという程度にしか音楽は愛していない。だったらめちゃくちゃダメなバンドで楽器もクソ度下手なしょうもない部活生活を描かなきゃ駄目! 』

これは本当にこの通りなんですけど(原作だとこの問題点が分かっていて、ダメなけいおんメンバー達がダメ部活路線の方向性に)、アニメの場合は第一期で唯達を理想化して、『普段は遊んでばかりで練習しなくても、本番となれば見事な演奏ができる理想の天才女子高生!』ってなイメージで描いてしまったので、修正は極めて難しそうですね…。僕としてはダメ部活物の方がリアリティがあっていいなと思いますけど、もうこういう路線になってしまったとしか…。僕も音楽はとても好きなので、練習しないで素晴らしい演奏ができるとか絶対ありえないというのは重々承知、けいおんにおいてこの点は完全にリアリティ皆無なファンタジーの世界ですね…。今回のけいおんアニメは2クールなんで、現状の唯達を理想化している方向からダメダメ部員達のダメダメ部活生活という原作の方向性へ修正する形でゆけば良いんですが…。

僕としては、けいおんのヒロイン達を理想化している風潮は好まないので、今回の第二話みたいな話でどんどん原作に近づけて欲しいなと。生身の人間っぽいダメダメさがある方が、如何にも作り物めいた理想のヒロインよりも、ずっと魅力的だと、少なくとも僕は思いますね。原作の生臭いダメダメさを剥ぎ取って、その分を主に映像の神秘的な美しさによるキャラクターの理想化で埋めるというのは、映像表現に定評のある京都アニメーションならではのソフィスティケート(洗練)ですが、それによって失ったものも大きいと思うので…。 僕が思うに、その失われた結果として現われたのは、欠点のなさだと思います。それは、キャラクターの欠点のなさを超えて、アニメ作品として欠点がない極めて洗練されたものであるところが、最大の欠点になってしまっているかと…。今回のけいおん第二話は、今までの話に比べると明らかに欠点・ひっかかりが多いところが、今までよりも良いなと感じさせてくれましたからね…。

僕はもちろん、『童夢』も『おともだち』も、出版されるや否や直ぐさま手に入れて、その場で繰り返し読んだ口だけれど、何か変な感じがしたんだよ。この二つの作品にはまるで欠点がないんだな。どう言ったらいいんだろうか。欠点がなけりゃ、そりゃ結構なことだって?だがねえ、別にマンガに限ったことじゃないんだけれど、人間の創るものはさ、欠点も含めて魅力的に感じるということなんじゃないだろうか。ぼくはそうだよ。だから、『童夢』の1枚1枚の絵、どこでもいいけれど例えば老人が女の子の超能力でコンクリートの壁ごとへこんでいくシーンなんか見ていると、まるでハイパーリアリズムの絵を見ているときみたいにぼんやりしちゃうんだ。(中略)

『エッカーマンからの対話』でゲーテが言うように〔思わず教養がほとばしってしまったぜ〕僕達の読む作品がどれほど『洗練』されていったとしても、「ぼくらは生きている大部分の時間を、非常に単純、お粗末、古風であるような原因と結果の論理で暮らしている」のです。誰でも分かることですが、もともと感情は積分的現象なのです。積分的現象を微分的に表現すること。このことが作者と読者の距離を無限に遠ざけてきたのではないでしょうか。微分化に我慢できず、そしてステレオタイプにも耐えきれないことが、若い子たちをヘンタイへ、ビョーキへ、ロリコンへと走らせているのです。だが、僕たちだって恋をするのだ〔何だか今日はやけに高揚する日だなあ〕!感情を溢れさせたいのだ。(中略)

安田均さんは(「神話製作機械論」の中で)上手いことを言っている。『別に謎解きが悪いのではない。しかし、謎にも「リドル」と「エニグマ」の二種類がある。コンピューターゲームは形而下的なリドルの方にばかり偏りすぎている嫌いがあるのではないか。小説の謎にはやはりエニグマがあって欲しい』。
(高橋源一郎「読むそばから忘れていっても」)

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読むそばから忘れていっても―1983‐2004マンガ、ゲーム、ときどき小説
童夢 (アクションコミックス)
おともだち
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けいおん豚になった唯

先のエントリで取り上げたけいおん、製作スタッフもけいおんの熱狂的ファンをネタにしていますね。上記のシーン、けいおんの熱狂的ファンの一部が「けいおん豚」と呼ばれているのをスタッフ側がからかっていて爆笑。このアニメの製作スタッフ、辛辣すぎる…。だが、それがいい。こういうスタッフの遊び心は僕は好きですね。

以下のようなけいおんファンの、笑いと共にある種の感動すら感じさせるコメントとか、もはや手遅れ感が漂う人生解毒波止場という感じで、「おもしろうてやがてかなしき熱狂ぶり」と思わず一句読んでしまいます。けいおんのアニメ自体よりも、このアニメの熱狂的ファン達の道化的行動の方が遥かに面白いとしか言い様が…。

けいおん見てる時って俺らは「6人目」の部員って感じがしてこない?
自分もバンドの一員になった感覚に襲われる

なんというか、けいおん!ってもう好きとか嫌いとかの域を超えてるんだよな
けいおん!はもう生活の一部で、それこそ空気や食事なんかと同じで、無くてはならない存在
アニメを見るのも、例えば仕事から帰ったあとに風呂に入って癒されるのと同じで
「今日も疲れたからけいおん!見て癒されよう」とかそんな感覚で毎日見てる

今は21世紀だけどけいおんを超えるアニメは今世紀中には現れないよな

けいおん!に出会えたことは人生最大の幸福であり、またある意味最大の不幸でもある
何故ならもうこれ以上の作品には出会えないだろうから

俺達は今、伝説に生きている

お前ら、おはよう、何故『おはよう』なのか、分かるか!?
陽が昇ったんだよ、けいおん!!という名の

おはよう、お前たち

いまもの凄く穏やかなんだ・・・未だ頭がボーっとする
すべてが満たされた、そして頬を一筋の涙が伝った

朝、誰もいない部室でギターの音が響いた、唯がギー太に触れた音
その音を受け取り全身に電撃が走る、鼓動の早まりがピークに達し鳥肌が体を包む

唯の奏でる音をバッグにみんなの登校する姿が映し出される
生きていてホントに良かった・・・また放課後ティータイムが垣間見れるんだね

ここまで来ると、もはや笑いを通り越して、なんとも言えない気持ちに…。いや、まあ、吹かずにはおれませんが…。作品がどうのこうのではなく、もう、「熱狂することそれ自体が目的」という感じですね。機巧童子ULTIMO(現在連載中の漫画の中で僕の最も好きな漫画の一つです)に出て来る爺さんの言葉が思い起こされます…。

己の基準を持たず、モノの「善」し「悪」しさえも他人任せの者達。
そして知らず知らずのうちに他人に支配されていく事にも気づかぬまま生きるのだろうな。
(機巧童子ULTIMO)

もし彼らがあえて道化として振舞っているのならば、それはそれで最高のエンターテイナーとして称賛されて然るべきだと思いますが、彼らけいおんの熱狂的ファンの行動は、本気なのかあえて道化としてなのか全然分からない…(^^;

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2010年04月14日 22:50

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けいおん第二話で描かれたけいおんメンバーがギターの売り上げ50万円を誤魔化して着服しようとした件が、「横領だ」「いや、未遂だから横領ではない」と喧々諤々の論争っぽくなっていますね…。まず、これは法的な横領罪ではないです。なぜなら、横領罪は親告罪ですが、今回のけいおんの第二話を見る限り被害者であるさわ子先生がけいおんメンバーを訴えるつもりはさらさらないので、犯罪(横領罪)は成立しません。

ただ、もしさわ子先生がけいおんメンバーを訴えたら、横領罪の犯罪構成要件は成立しちゃいますね…。横領が失敗したから未遂で罪はないのではなく、横領を開始した時点で、横領罪の要件を満たすのです。考えれば当たり前のことですが、横領が成功して誰にもその事実が分からなかったら、刑事事件として全く成立しない訳で、横領罪は、横領が発覚することが前提の罪(未遂・既遂の区別がない罪)なんですね。今回のけいおん第二話は、そのまま横領罪のテキストに使えるような横領のイロハな展開(横領してそれを誤魔化そうとしてばれる展開)でして、被害者の親告以外の全ての犯罪構成要件(横領罪)を満たしています。

まあ、本作は元々良識外の常識外れなことを描いて笑いを取るのが基本のギャグジャンルの漫画ですし、熱狂的なファンからはまるで『アイドルはトイレに行かない!』ばりの汚れなき神聖なヒロインとして崇拝されているけいおんメンバーが50万円を横領してバレてしまって土下座して謝るという今回のネタは、これはこれでなかなかのメタ的なブラックユーモアで僕は面白いと思いましたね。熱狂的ファン層を持つアイドルが下世話な罪で逮捕されたときのような今回の展開に、けいおんヒロインを純真無垢な天使、けいおんを汚れなき物語として熱狂的に支持しているファンは今回の第二話を見て一体どう感じたのか、考えるだけで面白いなあ…、もとい興味深いなあと思います。

「けいおん!!」第1話の感想
http://d.hatena.ne.jp/LoneStarSaloon/20100411/1270912640
相対化した上で(そもそもあまり相対化しないのだけど)、どっちが優れてるかといった価値判断は提示しない。それは個々の価値観や信条のみならず、今の自分と過去の自分においても。これが意味するところは、否定がないということは、無駄も無意味も無価値も、ここにはまったくないということです。特に中身のない会話も、無駄に思えるような時間も、まったく否定されていない。だから「けいおん!」は素晴らしいなぁと、個人的には思うのです。

上記のレビューはあくまで一例として引用させて頂きましたが、どうもけいおんの批評というのは、上記のようにけいおん世界は全ての価値が全て許された至上の楽園みたいなところに着地しているものが多いのには、一けいおんファンとして僕には違和感がありまして(上記はその中でも論理的でこの手の言説の中ではダントツに出来が良い方だと思うので引用させて頂きました)。

僕は第一期見て原作漫画読みましたが、けいおんの面白みはあくまで、あまりデフォルメされていない、ある種、普通に現実っぽい子達がにぎやかに日々を過しているのを視聴者・読者がぼーっと眺めて楽しむというところにあるのだと思いました。けいおんの女の子達は普通に俗世を俗に生きる人間として描かれているのであって、全てが許される天国の中であらゆる世俗的欲望から解脱したふわふわ天使の群れではないでしょう。特に原作漫画はけいおんの一部のファンが見ているふわふわ天国よりはまだしも蛸壺屋さんのどろどろな愛憎を描いたけいおん同人誌の方に近いかと…。アニメは原作に比べると、女の子達の世俗的なところを脱臭しちゃったような感じで、僕としてはもうちょっと原作のように人間臭い方が楽しいなと思っていたので、今回の第二話は、以前よりも原作に近くなってGJって感じですね。

僕は元々、けいおんの面白いところは、ヒロインをあまり極端な性格に描かず、今時の女の子という形で中庸的に描いているところにあると思っているので、今回の第二話のような描き方は普通にあって良いんじゃないかなと思いますね。梓に後輩部員として亀を買っていくところだって、まあ、あれは普通に梓への意地悪と考えるのが妥当ですし(頭がちょっとどうかしている唯はともかく、他のメンバーは明らかに梓に対して嗜虐心があるでしょう)、普通にけいおんの中に世俗的な対立構造・価値基準は当たり前の前提としてありますよね。今回も泥棒(着服・横領)が悪い(否定されるべき事象)なんてのはどこからどうみても当たり前な訳で、だからこそ最後は土下座して謝っている訳です。

今回の話の原作版のオチ(さわ子先生が『着服しようとせずちゃんと申告すればお金は部費として全部あげたのに』といって、その台詞のあまりのしらじらしさにけいおんメンバーが突っ込む)なんて、もの凄く世俗的なオチな訳ですよ(けいおんメンバーが、さわ子先生の奇麗事に俗の方向から突っ込んでいる)。こういう、俗な普通っぽさがけいおんの最大の面白さ、平凡で俗っぽい世界で過す、平凡で俗っぽい女の子達の日常を淡々と描く、良い意味で平坦な面白みとして、原作でも、アニメでもあると思いますね…。

けいおんはメインキャラクターの女の子達が可愛らしい女子高生だから人気が出ましたが、その構造は新聞の四コマ連載漫画、「サザエさん」とか、「フジ三太郎」とか、「コボちゃん」とか、「ののちゃん」の系列の漫画ですよね。それら四コマギャグ漫画が構成的にどうしても持たずにはおれない、俗を描くことによる俗に対するある程度の許容と風刺精神(後者は常識に対するツッコミとなりますが、それ当然ながら価値を全て等号におくことではないです)がけいおんの土台としてある訳で、そういうところがあってこそのけいおんだと僕は思いますね…。

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