けものフレンズ、色々な影を感じさせる垣間見える世界の設定や、かばんちゃんが如何に英雄的に知性を発揮してフレンズを導くか、とか人類とは何か、みたいなところが凄くクローズアップされて、様々なブログやニュースサイトなどで大きく取り上げられています。私もそういったところをこれまで取り上げてきました。ただ、何度もけものフレンズを見ているうちに、私はそれにどうしても違和感を感じてきて、どうしても、そういった、ある種の功利主義的な分析や教養主義的な理解では、けものフレンズの魅力の大きなところが全く説明不可能に感じるのですね。

私は、けものフレンズを何度も見ていると、本当の暖かさ、本当の関係性というものを作品から大きく感じるのです。そして何度も何度も1〜5話見直すとだんだん分かってきた感じがします。『けものはいても、のけものはいない、ほんとの愛はここにある』

けものフレンズは、現在放映中の1話〜5話の全てを通して、かばんちゃんの心が、だんだんほどけて行く物語のように感じます。かばんちゃんは登場時から、自己が何者か分からないことに常に引け目を感じているんですね。第1話とか象徴的ですが、初めてあった他者であるサーバルちゃんに対してかばんちゃんは凄く距離を置いて接している。

そんなかばんちゃんの寂しい孤独な心に、サーバルちゃんが「かばんちゃんが何であっても関係ないよ。かばんちゃんはかばんちゃんだよ」って、かばんちゃんという存在を丸ごと肯定してどんどん踏み込んで行くんですね。かばんちゃんは、だんだんサーバルちゃんを信頼し心を開くようになっていく。

そして道中で出会うフレンズ達も、サーバルちゃんと同じく「かばんちゃんが何であっても関係ないよ、かばんちゃんはかばんちゃんだよ」っていう、かばんちゃんの存在自体を肯定したフレンズさん達なんですね。厳しめのことを言うカバさんとかでもそうでして、このジャパリパークでのフレンズ同士の関係性自体が、相手が何者かで判断するのではなく、相手を相手そのものとして接する世界なんですね。何気ないフォッサさんとかとの会話でもそれが分かる。『何の動物かわからないから、図書館に行くのー!』『気をつけていきなよー!』

そしてそれ(相手を立場ではなく、丸ごと相手としてみること)を可能にする外部世界(徒党を組んで争いあわなくても生きてゆける外部世界)自体がきちんと構築されている(サンドスター、ジャパリまん)。ただ、やはり外部世界の設計は背景であって(世界を背景化しているこの辺はメルヘンに近い)、物語の本質的には、かばんちゃんとフレンズ達の率直で丸ごとの関係性を描いている作品であると感じます。生命と生命の丸ごとの存在自体との相互関係性があるんですね。

生命と生命の存在丸ごと自体との相互関係性があるというのは、まさに動物の関係性であり、そして人間にも根幹的なところにおいて存在する関係性。人間の関係性で最も根幹的なのは、家族関係(生育に携わる非血縁関係や法的には家族とみなされない関係性なども含めた広義の家族関係)ですね。赤ん坊は一人では生きられない、意思疎通もできない、誰かが、赤ん坊の生命としての存在丸ごとを守り助け育てなくては赤ん坊は生きてゆけない。人間もこの、動物の関係性、生命と生命の存在丸ごと自体との相互関係性を生まれた時から持っているんですね。

フレンズ達の関係性は、家族関係に見られるような、存在丸ごと同士の関係性が、丸ごと外部世界の生命同士の間に広がっている。そして、これまで出てきたフレンズ達の無欲(所有欲の欠如)が、フレンズ達の存在丸ごとの関係性に、他者に対する肯定と利他という特性を与えている。

かばんちゃんとフレンズ達の無数の共同作業は、既に様々なブログが指摘しているビジネス的な目的作業から、明らかにはみ出したものを持っている、それは、フレンズ達の外世界と他者に対する肯定と利他から生まれているのだと思います。『ジャパリバスっていうの!みんなで直したんだよ!』これは、真に善良な関係性と呼ぶべきものだと思いますね。ネット上ではこの言葉を使うと批判される訳の分からない残念なことになっていますが、それでもあえて使うと「友愛」という言葉が字義の本来的に適切だと思います。これまでに出てきたフレンズ達の世界は友愛で結ばれている。『かばんちゃんはかばんちゃんだよ!』

涼元悠一@SuzumotoYuuichi
https://twitter.com/SuzumotoYuuichi/status/828577354838482945
けもフレ絡みのつぶやきで『生きてるだけで全肯定』って茶化して書いたけど、これって本当に重要で尊い理念であって、『この世界に今存在するという事実そのものが、この世界に存在していいという揺るぎない根拠』であることは、いつどんな瞬間でも忘れてはいけないと思う。

パウロがコリントの信徒への手紙2-5章で語っていること(「神はイエス・キリストによって世をご自身と和解させた」)は、バルトにとっても同じく根本的なものであった。神はそれを欲したもうただけでない。神はそれを何ものにも取って代わられることのない行為としてなしたもうた。

神はまさに「世」を、世がそれを認識しようがしまいが、承認しようが否認しようが、どちらにしてもそれと関わりなくご自身を和解させた。単に信仰者達とだけでない。単にキリスト者とだけでない。神はここで本当に私達の周りの私達自身の仲間、私達の愛する人々を突き抜けていく。
(エーバーハルト・ブッシュ「バルト神学入門」)

この私が、世の終わりまで、すべての日々にわたり、あなたたちと共にいるのである。
(マタイ福音書28-20)
イエスがガラリヤで十一人の弟子たちに顕現し、彼らに異邦人への宣教を命令する。この言葉によって、宣教命令が閉じられているとともに、福音書全体が締めくくられている。
(聖書名言辞典)

また、フレンズ達の生命としての存在丸ごとの関係性が、全く自己犠牲的なものではないことにも留意すべきだと思います。先に挙げた、肯定と利他の自然性がそれを可能にしている。そしてかばんちゃんもそれを持っていることは、人間に対して希望を与えるものであると思います。

よろこびの感情をひろげるものが善だと、考えた哲学者はいる。それはスピノザだ。よろこびを増やすものを善、へらすものは悪。善は存在者にとって、肯定性の尺度にすぎないと彼は考えた。そうすれば幸福は、究極の目的や最高善にまきこまれずにすむ。
(中山元「思考の用語辞典」)

幸福な人生は、不思議なまでに、良い人生(道徳的な生)と同じである。職業的な道徳家は、従来、自己否定を重んじすぎてきた。そして、重んじすぎることによって、強調の置き所を間違えてきた。意識的な自己否定は、人を自己に没頭させ、自分が犠牲にしたものをまざまざと意識させる。その結果、自己否定は、往々にその当面の目的を達し得ないばかりか、必ずと言っていいほど究極の目的(道徳的な生)も達し得ない。必要なのは、自己否定ではなく、興味を外に向けることである。(中略)

子供がおぼれるのを見て、助けたいという直接の衝動に駆られて子供を救ったとしても、あなたの行為はやはり道徳的と言えるだろう。これに反して(助けたいという直接の衝動を押し殺して)、「無力なものを助けるのは美徳の一部である。私は道徳的な人間になりたい。それゆえ、私は子供を助けなくてはならない」と自分に言い聞かせるとすれば、あなたは、助ける前よりも助けた後の方が遥かに良くない人間になるだろう。この極端な場合に当てはまることは、これほど明白ではない他の多くの場合に当てはまるのである。(中略)

もちろん、私達は、愛する人々の幸福を願うべきである。しかし、私達自身の幸福と引き換えであってはならない。実は、自己否定の教義に含まれている、自己とその他の世界との対立は、私達が外部の人や物に本当の関心を寄せるようになると、たちまちことごとく消散するのである。そういう関心を通して、人は、自分が生命のその他の生命の流れの一部であって、衝突する以外に他の実体と関係を持ち得ない、ビリヤードの球のような固い孤立した存在ではない、ということを実感するようになる。
(ラッセル「幸福論」)

サーバルちゃん『わたしたち、あんまり出番ないね』
かばんちゃん『そうだね。お掃除、やっておこうか』

ラッセル(世俗化したスピノザ的幸福論を唱えた)の幸福論は、複雑化した人間社会において、あまりにも楽観的ではあると認めざる得ませんが、それでも、

『私達が外部の人や物に本当の関心を寄せるようになると』
『自分が生命のその他の生命の流れの一部であって、衝突する以外に他の実体と関係を持ち得ない、ビリヤードの球のような固い孤立した存在ではない、ということを実感する』

というのは、まさにフレンズ達やかばんちゃんが自然に生きていく中で示していることで、けものフレンズを見ていると心から感じ入るところでありますね…。

私は、けものフレンズ1〜5話を通して、最も本質的にあるのは、文明論や謎の魅惑ではなく(勿論、こういった面白さがけものフレンズの大きな魅力であることは間違いありません)、その最本質は、フレンズ達の関係性、フレンズ達とかばんちゃんの関係性、それが、最も深くそして肯定的な、存在丸ごとを認めあうという関係性で結ばれていることだと思います。フレンズ達がかばんちゃんの寂しい孤独な心をほどいて、かばんちゃんもまた、フレンズ達を丸ごと存在として認め肯定するようになる。

その関係性の描き方が、とても暖かくて、本当に見ていて気持ち良いですし、これまで書いてきたこのように言語化しなくても、無意識のうちにその暖かさが伝わって、「けものフレンズ、なんだか分からないけど見ていると、とても暖かい」という気持ちになれるように思います。

存在と存在の根幹同士が肯定し認め合っている暖かい関係性を描くことで、心を暖かくするとともに、人間に、人間も存在まるごと認め合う外世界の他者との関係性を築けるかもしれないと感じさせてくれる、それが、けものフレンズの素晴らしい暖かい魅力ではないでしょうか。

見返すと分かりますが、フレンズもかばんちゃんも、本当に心から気持ちよさそうに嬉しそうに笑っている。嬉しいね、楽しいねという気持ちから生まれる笑い。こんなにも登場人物が楽しそうで全編通してよく笑っているアニメは初ではないかと感じます。かばんちゃんは最初は暗くてあまり笑わない、でも、かばんちゃんの存在を丸ごと肯定するサーバルちゃんと出会って、サーバルちゃんがどんどん『かばんちゃんはかばんちゃんー!』って感じでかばんちゃんを肯定してゆく。そしてそんなサーバルちゃんと一緒にフレンズ達と打ち解けていって、かばんちゃんの心がほどけて行くと、だんだん笑顔が多くなってきて、かばんちゃんが笑う、そうするとサーバルちゃんも笑う。一番よく笑っている第3話とか本当に心が和む。本当に生を肯定して丸ごと認め合って生きている、そんな暖かさが伝わってきます。『フレンズのみんな、あつまれー!』

もし、ある人に百匹の羊がいて、そのうちの一匹がさ迷いでたら、彼は九十九匹を山に放っておき、出かけて行って、さ迷い出た一匹を探さないであろうか。そして、もしそれを見い出したとなれば、アーメン、私はあなたたちに言う、さ迷い出てしまわなかった九十九匹よりも、むしろその一匹のために、彼は喜ぶ。このように、これらの小さい者たちのうちの一匹でも滅ぶことは、天におられるあなたたちの父の意思ではない。
(マタイ福音書18-12〜14)

『けものはいても、のけものはいない、ほんとの愛はここにある』

けものフレンズ関連エントリまとめ。随時更新(最新更新17/2/13)
http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1921487.html

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