タニグチリウイチ@uranichi
https://twitter.com/uranichi/status/827114406701969408
僕も『けものフレンズ』を見ながら泣いているんだが。OPの「けものはいてものけものはいない」という歌詞のところとか、かばんちゃんじゃないサーバルがボスに認知されずバスにはね飛ばされる場面とか、スナネコが砂にサーバルやかばんちゃんやバスの絵を描いて寝ているところとか。切ないよねえ。

私もけものフレンズを見ていて、胸に込み上げる切なさを感じるので、これは凄くよく分かる言説です。けものフレンズ達はみんな自己充足的に楽しく暮らしていますが、それと共に、フレンズ達はとても善良で人懐っこく、他者に対する手助けを惜しまない。色々お手伝いをしてくれたカワウソちゃんやスナネコちゃんやツチノコちゃんも、フレンズ達のために渡し舟を引いているジャガーちゃんも、カフェを開いているアルパカちゃんも、歌を歌いながら仲間を捜し求めているトキさんも(余談ですが野生絶滅種であるトキさんが仲間を捜し求めているという物語内では触れられることのないこの文明批判がまた見事!)、みんな、完全に代価なしの無償で、カバンちゃんやフレンズ達の手助けをしている。私は見ていて、レヴィ・ストロースの「悲しき熱帯」や「野生の思考」を思い出していました。

冷たい社会は、ある制度を作り出すことによって、歴史的な要因が社会の安定と連続性に及ぼす影響をほとんど自動的に消してしまおうとする。
(レヴィ・ストロース「野生の思考」)

けものフレンズ達がみんな人懐こくって善良なのは、フレンズ達の生活とフレンズ達の社会、ジャパリパークのフレンズの人口分布が希薄なことも起因していると感じるのですね。フレンズ達は一種につき一体しかおらず、ジャパリパークの広大さから考えると非常に数が少ないように見受けられる。何より彼らは、一種につき一体のため、みな群れずに個体として孤独な基本生活を送っている。詳細は後述しますがこれは、人類種と同じタイプの言語を持つ知的生命にとっては、そうとうに寂しいことだと思います(また砂漠で一人に戻ってしまったスナネコちゃん…)。ただ、このことによって、フレンズ達の社会はクラストルの言う「抑圧システム」(国家等)を創りだして支配被支配関係のある社会を築いてしまうことを防いでいる。フレンズのユートピアと孤独は表裏一体なんですね。

(共同体の分業生産により)富が蓄積されると、そこには宗教や国家などの体系ができはじめる。メソポタミアの歴史なんかみても、このなりゆきは、避けられないみたいらしいんだ。そしてさらに富が増大するにつれ、生産性の可能性も向上し、人口も増える。そしてこれに対処するために官僚機構が成立し、法や軍隊が形成されて、ますます抑圧的になっていく。こういうのが歴史の流れみたいだ。でも贈与は、このプロセスをぷつりと断ち切れるということなんだ。
(中山元「思考の用語辞典」)

ユートピア論において一番難しい問題は、支配・被支配の関係性がユートピアであろうとした社会をディストピアに変えてしまうということであり、その答えとしては、一人ひとりが基本的に孤独に暮らすしかないという、非常に寂しい答えが出てきてしまうんですね…。真のユートピアと孤独は表裏一体のものとしてあるのです。けものフレンズの世界はユートピアですが、そこを人間の眼差し(言語構造からの眼差し)で見たとき、また切なく寂しいものを感じてしまう。それは広大なサバンナに人間が一人でいるとき孤独を感じるのと同じように…。

獣であったら、群れない動物であれば、一匹で生きていく孤独に強靭に耐えうるでしょう。しかし、けものフレンズ達は人類種と同じタイプの言語コミュニケーションが可能な知性を身につけている。そして、言語こそ、抽象的認識・抽象的思考を可能とし、他者とのコミュニケーションを根源的に求めてしまう、自己充足性の壁に穴を開けて欠如を作り出してしまうものなのです。ゼウスは言語の剣によって自己充足性の壁を切断したのです。

ゼウスは決断した。「人間を真っ二つに両断しよう」。その言葉通り、人間は両断された。両断後アポロンが修正を加えた姿、それが現在の人間の姿である。それ以来、人間は己の失われた半身を焦がれ求めるという。(プラトン『饗宴』))

人類学者レヴィ・ストロースは、奥地でのフィールドワークによって、全く代価なし(物々交換でもなく、完全に無償の贈与。有名なものではポトラッチ等)に見える関係性が、貨幣経済や分業経済の発達していない奥地などに多く見受けられることを研究し、

『人間は、他者に何かを贈与したり贈与されたりすることで(これは物々交換ではない純粋な贈与や純粋な受け取りも含む)、関係性を築くことを根源的に希求する生物であり、それは共同体の言語(言語から生まれる構造)から発露する知性に拠っている』

というようなことを発見したんですね。

例えばこれは現代の高度分業社会(私達の住むこの社会)にもあって、昔のインターネットとか無償性が非常に高い世界でしたが、今と同じように普通に賑わっていた訳です。この無償の贈与と受け取りの賑わいは、利害関係を基にした功利主義だけでは説明不可能な訳ですね。ただ、現代のインターネットは経済活動として行われる一部悪質なまとめサイトやキュレーションサイトが圧倒的に蔓延っている、経済功利主義の下部構造になってしまったところが大きいですが…。

余談ですが、レヴィ・ストロースを批判したジャック・デリダは、レヴィ・ストロースの理論を換骨奪胎(脱構築)して『「語りかける言葉」こそが真の贈与である』という理論を構築したんですが、日本に限らず世界中の現在のインターネットの偽ニュースサイトや悪質なまとめサイトや大企業のキュレーションサイトの跳梁跋扈ぶり(「語りかける言葉」の経済的功利主義化)を見ると、あっという間にデリダの理論の重要な部分が技術発達により崩れ去ってしまったなと感じますね…。レヴィ・ストロースの理論こそが、今も燦然と基礎理論として機能している。閑話休題。

フレンズ達は人類種に比べると遥かに自己充足的(孤独に対する耐性が非常に強靭)ですが、それでも寂しそうです。人類種のタイプの言語コミュニケートを取る知的生命の他者に対する善良さと人懐っこさは寂しさと表裏一体なんだと思いますね…。

フレンズ達が獣から変異して言語コミュニケーションを行える高度知性を得たということは、人類種と同じく、言語を持たない動物の自己充足性からは切り離されてしまった、獣の頃に持っていた完全な自己充足性が不完全になったということなんですね。言語を得るということは、それは自分が抽象的世界の一員であることを知るということであり、他者を知ることであり、死を知ることであり、抽象的関係性への希求が生まれることなんですね。

そして、その抽象的関係性の最も大きなものが、フレンズ(他者との無償の友情)なんですね。ゆえに、本作の題名は『けものフレンズ』なのだと思います。

ただ、最後に補足すると人類種は人類種以外の視点を得るというのは不可能な訳で、もしかしたら上記で書いたことは全て的外れであるかもしれない。あくまで人間の眼差しでけものフレンズ達を解釈したものに過ぎず、人間と異なる種であるフレンズ達は真に充足し真に全力で他者を手助けすることを望む知的生命なのかも知れない。相手に思いを寄せる思考の果てを考えさせてくれるところが、けものフレンズの優れたSF性であり、孤独を絶対性から感じさせる詩情であり、寂しく切ないところであると感じますね…。

萩原朔太郎

「さびしい人格」

さびしい人格が私の友を呼ぶ、わが見知らぬ友よ、早くきたれ、ここの古い椅子に腰をかけて、二人でしづかに話してゐよう、なにも悲しむことなく、きみと私でしづかな幸福な日をくらさう、遠い公園のしづかな噴水の音をきいて居よう、しづかに、しづかに、二人でかうして抱き合つて居よう、母にも父にも兄弟にも遠くはなれて、母にも父にも知らない孤児の心をむすび合はさう、ありとあらゆる人間の生活らいふの中で、おまへと私だけの生活について話し合はう、まづしいたよりない、二人だけの秘密の生活について、ああ、その言葉は秋の落葉のやうに、そうそうとして膝の上にも散つてくるではないか。

わたしの胸は、かよわい病気したをさな児の胸のやうだ。わたしの心は恐れにふるえる、せつない、せつない、熱情のうるみに燃えるやうだ。ああいつかも、私は高い山の上へ登つて行つた、けはしい坂路をあふぎながら、虫けらのやうにあこがれて登つて行つた、山の絶頂に立つたとき、虫けらはさびしい涙をながした。あふげば、ぼうぼうたる草むらの山頂で、おほきな白つぽい雲がながれてゐた。

自然はどこでも私を苦しくする、そして人情は私を陰鬱にする、むしろ私はにぎやかな都会の公園を歩きつかれて、とある寂しい木蔭に椅子をみつけるのが好きだ、ぼんやりした心で空を見てゐるのが好きだ、ああ、都会の空をとほく悲しくながれてゆく煤煙、またその建築の屋根をこえて、はるかに小さくつばめの飛んで行く姿を見るのが好きだ。

よにもさびしい私の人格が、おほきな声で見知らぬ友をよんで居る、わたしの卑屈な不思議な人格が、鴉のやうなみすぼらしい様子をして、人気のない冬枯れの椅子の片隅にふるえて居る。

けものフレンズ関連エントリまとめ。随時更新(最新更新17/2/5)
http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1921487.html

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