2017年01月09日 01:13

早坂吝「誰も僕を裁けない」読了。上木らいち=ニャルラトホテプ星人説への確信。

エロミス&バカミスのオーソリティたる早坂吝さんのエロエロ女子高生娼婦探偵シリーズ「上木らいちシリーズ」の最新作「誰も僕を裁けない」読了。らいちシリーズの前二作(「○○○○○○○○殺人事件」「虹の歯ブラシ」)に比べると、物凄くエロ度と下品度が低下しており(らいちのエロシーンが非常に少なく淡白になっている感じです)、一般の人向けにソフィスティケイトされたらいちシリーズに仕上がっています。本作はほんとに普通のミステリになっており、前二作の読者としては驚かずにはおれないこの淡白さ、前二作のようなエロ&下品に相当度特化したミステリを講談社のメフィスト・レーベルで売るのは限界があったのかな…。殊能将之さんも「ハサミ男の秘密の日記」のなかで、自主的表現規制による手直しについて書いていますし…。

続いて、(メフィスト編集部の)Fさんはこう言った。

「それから、「マルサイ」「マルキ」はだめです。表現を変えてください」

これには少しびっくりした。

「ハサミ男」には犯罪心理分析官(プロファイラー)が登場するのだが、警察内では「マルサイ」「マルキ」と呼ばれている、という設定だった。初稿から引用すれば

 マルサイとは三年前に警視庁科学捜査研究所内に新設された犯罪心理分析官職を意味する内輪の呼び名だった。サイはサイコパス、すなわち精神病質者を指す。20世紀末から急激に増加した無動機殺人や快楽殺人に対応するため、警視庁が重い腰を上げたのだ。
〔……〕ノンキャリア組の一部では、犯罪心理分析官はマルキという明らかな蔑称で呼ばれていた。キはキじるしのキ、さらに言えば活字にすることがはばかられる四文字言葉の略である。以前、ある署の刑事がマルキ、マルキと連発していたことが週刊誌にすっぱ抜かれて、本人は厳重注意処分、署長が記者会見で陳謝する騒ぎがあって以来、この言葉は警察官にとって禁忌の一つとなっていた。

これはジョークのつもりだったのだが、まさか本当にダメ出しされるとは思わなかった。シャレにならない、とはこのことだ。

「キじるしはともかく、サイコパスもだめなんですか?」

「ええ、もうそろそろ使えなくなってきてますね」

Fさんは奥歯にものがはさまったような口調になって、

「つまり、精神障害者やその関係者の方々が実際にどう思うかではなくて、そうした言葉づかいをもとに講談社になんらかの攻撃をしかけてくるかもしれない人たちが存在するということが問題なんでして……」

さわらぬ神にたたりなし、ということわざが頭に浮かんだ。

そういえば、昔、小沢淳さんが小説に「四つ足」という言葉を使ったら、編集者から訂正を求められた、という話を聞いたことがある。あれも確か、講談社じゃなかったかな。その話をしながら、永田さんがえらく激怒していたのを覚えている。

しかしながら、わたしは編集者の大変さや苦労は少しはわかる身なので、「わかりました、じゃあ、なんか考えますよ」と答えてしまった。志が低くて、どうもすみません。(中略)

サイコパスが不可になったことはすでに書いたが、そのほかこんな表現を不適切と感じるらしい。

躁欝病患者のような〜
中小企業→小さな会社
〜は貧しい子供たちのようだ
日雇い
分裂気質

ところで、「サイコパス」は不可でも、「精神病質者」は可であるらしいのが不思議である。同じ意味なんだけどなあ。

編集部からの指摘以外にも、危ない言葉はなるべく減らした。(中略)第一、いかに表現に配慮しようが、「ハサミ男」を読んで怒る人は怒るのである。こういう発想自体が許せない、と感じる人は少なからずいるだろう。比喩的にいえば、「朝日新聞社からは出版できない小説」なのだ、これは。
(殊能将之「ハサミ男の秘密の日記」「殊能将之未発表短編集」より)

日本に表現の自由があるというのは幻想ですからね…。実際には日本は表現規制派の勢力が強い、世界で最も表現規制(自主規制を含めた表現規制)の厳しい国の一つな訳で…。特に、上木らいちシリーズのようなエロ描写表現は、最も規制を求められるジャンルの一つであって、そんな中、上木らいちシリーズは大手商業出版(講談社)から出ているミステリにおいて表現を最も頑張っている方だと思うので、これからも頑張ってほしいですね、応援しています。

「虹の歯ブラシ」講談社公式サイト
http://kodansha-novels.jp/1502/hayasakayabusaka/
早坂吝
「史上最もHな探偵再臨! 今回の帯はこれで行きましょう!」担当氏にそう言われた時、思わず苦笑してしまったが、事実その通りの内容なのだから仕方ない。上木らいち。どうしてこんなキャラクターを生み出してしまったのだろう。今まで出会った何人かの女性に影響されているような気もするが、真偽のほどは分からない。分からないと言えば、らいちが何を考えているのかもよく分からない。(デビュー前から九年間もらいち物を書いてきた)作者が今更何を言い出すのかと思われるかもしれないが、分からないものは分からない。その分からなさが本作を生んだような気もする。

個人的には上木らいちシリーズは漫画化orアニメ化してほしいミステリナンバーワンなんですが(アニメでらいちの姿が見たいと思っているファンは大勢いるはず!)、シリーズを通して、主人公である好色な美貌の女子高生にして娼婦らいちが高級娼婦的売春を行っているときに事件に巻き込まれ、色仕掛け等を使いながら事件を解決するという作風のため、エロ(お色気ではなくいわゆる本番行為)がシナリオ及びトリックの根幹を占めており、アニメ化とか漫画化が極めて難しそうなんですね…。地上波アニメの表現規制は昔に比べると厳しくなっていますから…。

ちなみに本作「誰も僕を裁けない」は、過去二作に比べエロ度は低下していますが格段とリーダビリティは向上している上に、正統派ミステリとしても極めて面白く、個人的な評価は高いですね。前二作は正統派ミステリとしては佳作ってところですが(「虹の歯ブラシ」はミステリというよりはSFとして傑作)、本作は間違いなく正統派ミステリとして傑作だと思います。ちなみに本作は凄くアニメ等の映像化と相性の良さそうな作品なんですが、一般作品におけるエロ表現に不寛容な日本じゃ映像化無理かな…。

本作は、作中でも指摘されているんですが、パズラー的な「物理トリック」と社会派ミステリ的な「社会的トリック」を上手く融合させていて、前二作に比べると格段とミステリとしてのレベルが上昇したと感じました。若手のメフィスト系ミステリ作家では井上真偽さんや早坂吝さんが好きな作家さんなんですが、井上真偽さんが処女作がぶっちゃけちょいと微妙だったのに比べると(一作目「恋と禁忌の述語論理」は記号論理学に興味がないと読み辛くて厳しい…)、二作目「その可能性はすでに考えた」から素晴らしく面白くなったことを本作を読みながら思い出しましたね。まさに作家として「男子三日会わざれば刮目して見よ」って感じで井上真偽さんは二作目から格段と面白い作品を書くようになったんですが、まさにそれに値するような面白さの長足の進歩を本作「誰も僕を裁けない」からも感じられましたね。

あと、完全な余談ですが、井上真偽さんの奇蹟シリーズ「その可能性はすでに考えた」「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」のメインヒロインである姚扶琳(ヤオフーリン)ぽいキャラがヒロインとして出てくる漫画が18禁漫画雑誌「ガールズフォーム第14号」に載っているので、エロ漫画と性描写に抵抗がなくて、奇蹟シリーズのファンなら読む価値ありだと思います。前述の雑誌に掲載の山畑瑠杏さんの「チャイナオークション」という18禁漫画に小琳(シャオリン)という名前で出てきます。上木らいちシリーズも、ファンフィクションとして同人誌などで漫画化されないかな…。閑話休題。

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ちなみに本作のトリック自体は「物理トリック」も「社会的トリック」もそんな珍しくないものなんですが(特に物理トリックについては隠す気ゼロで序盤でトリックに気が付くでしょう)、「社会的トリック」の方は、こち亀でたまにやっていたネタで懐かしかったですね。思わずこち亀の「敵もさるもの!!の巻」(こち亀2巻収録)とか読み返してしまいました。両方とも結構メジャー(物理トリックの方は大メジャー)なトリックを、上手く融合して叙述トリック的な騙しの手口を鮮やかに決めていて、非常に面白かったですね。

ただ、本作には一つだけ大きな難点が…。アマゾンレビュアーさんが指摘している通り、普通、未成年の犯罪は家裁送致ですよね…。その辺、作内できちんと家裁送致する手順にすべきだったかなと思います…。家裁送致でも全く普通に本書と同じく話は進んだ筈…。もしくは戸田公平を20歳以上の大学生にするとかでも良かった。まあ、現代日本とは法体制が異なるパラレルワールド日本だと思えばなんとか読めますが…。いずれ文庫で出すときは、ここのところは改定して欲しいな…。

誰も僕を裁けない (講談社ノベルス)
「誰も僕を裁けない」アマゾンレビュー
あえてそうしているの?それとも無知?? 投稿者 三毛猫ポアロ 投稿日 2016/5/7
内容は楽しめたが。
ただ,日本には「少年法」という法律があり,20歳に満たない「少年」が刑事事件を起こした場合,まず警察や検察庁から家庭裁判所に事件(場合によっては身柄も)が送られ,家庭裁判所が大人と同じように刑事罰を与えるべきだと判断した場合にのみ,再び事件が検察庁に送られて刑事罰の対象(つまり起訴される)になるはず。従って,主人公の高校生が逮捕されて検察庁に身柄を送られたり,勾留されたり,当番弁護士を呼んだりする手続は正しいが,その時点で「略式で罰金」とはなりえない。

ちなみに、上木らいちの正体が何者なのかについては諸説ありまして(第四の壁を破れますし、「虹の歯ブラシ」から考えて、ただの好色な女子高生とかそういうことはないでしょう)、私は以前より「上木らいち=ニャルラトホテプ星人」であると推理していたんですが、本作により、この推理は確信に変わりましたね!髪が赤いことから「クトゥグア星人説」も考えられる訳ですが、いあいあ、これはミステリですよ。あまりにも分かりやすいダイレクトな提示はフェイクであると考えるべきでしょう!

ピクシブ百科事典「第四の壁」
第四の壁とは、演劇等において観客席(現実)と舞台(フィクション)の間に概念上存在する透明な壁である。 第四の壁は写実主義の出現とともに19世紀から発生した概念であるといわれる。

この第四の壁によって隔てられた現実の世界とフィクションの世界は、基本的には互いが互いに物理的影響を与えることのない、相互的な不可侵の領域である。

しかし、場合によっては演出的手法として、登場人物が現実側の存在である作品の受け手や制作者などの存在、あるいは自分たちのいるのがフィクションの世界であることを意識したセリフを喋ったり、突如観客に対して問いかけや語りかけをするなど、フィクション側から現実側への干渉が行われることがある。
このような演出を俗に「第四の壁を破る」と呼ぶ。

ピクシブ大百科「ニャル子」
問答無用の『這いよれ!ニャル子さん』の主人公。見かけは小柄な体格をした銀髪の美少女(一部ではアラサーという説あり)だが、クトゥルー神話に登場する「無貌の神」ニャルラトホテプであり、種族特性として容姿の変化は自由自在。つまりはどんなものでも変身できることになる。(中略)

ただし本作では「ニャルラトホテプ」とは種族名であり(つまり宇宙人)、小説という形で人類に記録されたニャルラトホテプとは別人である(本人曰く「自分はあれほど性格悪くない」)。

上木らいちの正体を考察する時に真に見るべきは、本作「誰も僕を裁けない」の32〜35頁、本作のラスト(某執事の運命)、そして「這いよれ! ニャル子さん」の最終巻である12巻のラストを読み比べるならば…!!上木らいち=ニャルラトホテプ星人という推理は確信に到達する!!

ピクシブ大百科「エナジードレイン」
エナジードレインとは、生きてる相手から生命力を頂く行為である。

ニャル子さんの最終巻以降の真尋くんの健康が心配です…。だからハス太くんにしておけば…(個人的趣味)

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