2017年01月01日 19:58

あけましておめでとうございます。フリーゲーム・オブ・ザ・イヤー2016。S・ハンター「我が名は切り裂きジャック」読了。

我が名は切り裂きジャック(上) (扶桑社ミステリー)
我が名は切り裂きジャック(下) (扶桑社ミステリー)

2017年あけましておめでとうございます。自分はお金が無くて大変困っており、おめでたさを感じられる状況ではないのですが、全ての人になって少しでも良い年になってほしいと願いますね…。
フリーゲーム・オブ・ザ・イヤー2016
http://www.freem.ne.jp/special/project/31

新年の初ネットでは上記のフリーゲーム・オブ・ザ・イヤー2016を見たのですが、これは2015年12月21日〜2016年12月20日のふりーむDL数総集計なので、2016年の後半に出たゲームが集計的に不利で、全然ランキングに入ってないですね…。2016年のマイベストゲームは以前ご紹介致しました「芥花」(http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1918473.html)なんですが、ランキングに入っていない…。「芥花」は本当に稀に見る傑作なので、ぜひプレイして欲しい作品ですね。2016年後期に出た為にランキングに入っていないフリーゲームの傑作としては以前ご紹介した「バケモノハイツ」「待チ人来たる2」「祭囃子が鳴り止むまで」等の他にも「呪われた人魚姫」(優れたクトゥルフ神話作品です)とか「人間レンジ」(ショッキングホラー短編の秀作)とか「宵闇ノ影」(年末に出た優れたホラーサスペンス)など色々ありますね。2016年後期に公開されたランキング外の傑作は沢山あるのでご紹介していけたらいいなと思っています。

フリーゲーム・オブ・ザ・イヤー2016にランキングしている作品で、ブログで取り上げていませんが、プレイ済みの作品では「徒花の館」「妖刀伝」「朝溶けの魔女」「オロホスの夢」「ここからだして」「人格診断MV」「かわいそうなレイナちゃん!」「ウトピアの双眸」「Wolfarl.exe」はゲームコンプリートまで楽しくできたお勧めの傑作です。特にニーチェ的な遠近法の差異をテーマにした「ウトピアの双眸」と、フリーゲームならではのグロテスクショッキングショートショートホラー(先に挙げた「人間レンジ」もこのジャンル)である「Wolfarl.exe」が面白かったですね。お勧めです。

ちなみに新年の過ごし方としては、昨日の午後11時頃からずっと、スティーヴン・ハンターの「我が名は切り裂きジャック」を年越しで読んでおりました。ある程度読んだら寝ようと思ったけど物凄く面白くて読むのが止まらなかった…。スティーヴン・ハンターは邦訳は全て読了している大好きな作家で、ボブ・リー・スワガーシリーズ、いわゆるスワガー・サーガも昔は大好きだったんですが、どうも近年のハンターは、エルロイ的な歴史と虚構を複雑に組み合わせ、歴史的事件の推理をメインに作品を作るという展開に、無理にボブ・リー・スワガーを混ぜてくるので、整合性や作品の流れにかなり無理がある感じで、読んでいてもあんまり夢中になれなかったんですね…。スワガー・サーガでやるならアクション大作の方が良いのに、歴史背景の緻密さやそこから生まれる謎とその謎解きの方に配分が取られて作品のバランスがどんどん悪くなっている。スワガー・サーガはスワガーやスワガーの血縁達が悪者をばったばったとなぎ倒して超無双してゆく無双アクション小説なのでワンパターンに陥りやすく、なおかつ最近のS・ハンターが重視している歴史的事件を推理していく要素と致命的に相性が悪いんですね…。

特にひどかったのが、ケネディ暗殺事件とスワガー・サーガを混ぜた「第三の銃弾」で、これはもうS・ハンターの作品の中でも退屈すぎてぶっちゃけ最下位クラスの出来ですし…。まあハンターは底力のある作家なので、最下位クラスでも結構面白く読ませてはくれるんですが…。ケネディ暗殺事件を舞台にした小説ではスティーヴン・キングの「11/22/63」の方がダントツに面白かった。

ちなみに余談ですが、スティーヴン・ハンターは共和党支持者で、しかもそれを作品内にある程度反映させてくる保守的思想の作家なんですね(基本的に弱肉強食、自助努力と銃火器による自衛より生まれる自由を重んじる作風)。スワガー・サーガの外伝である「ソフト・ターゲット」ではオバマ大統領をモデルにしたアメリカのリベラルな高官を仇役として超ボロクソに描いたりしています。ハンターとは逆に、リベラリスト作家(反弱肉強食、弱者や敗者にも優しい眼差しのある作風)であるスティーヴン・キングは民主党支持者で、トランプが当選したらもう終わりだ、ツイッターを止めてワンちゃんの写真をUPしたりするのも止めると言っていたほどの民主党支持者なんですね(ちなみにトランプが当選して少し経ったらまた何事もなかったかのようにツイッターを再開してワンちゃん写真もUPしてます…)。

https://twitter.com/stephenking

共和党支持の大ベストセラー保守作家の代表がハンターで、民主党支持の大ベストセラーリベラル作家の代表がキングなので、ハンターの「第三の銃弾」とキングの「11/22/63」は両方ともケネディ暗殺事件をメインテーマとしており、ある種、共和党対民主党アメリカ大作家間戦争みたいな感じでしたが、作品の出来としても巷の評価としてもキングの圧勝でしたね。作家間戦争では今のところキングに軍配が上がっておりまして、まあキングは年を取っても筆力が全く衰えない超人的作家なので、こんな超人王と比較されるハンターが気の毒にも感じるところです…。閑話休題。

「第三の銃弾」の次に出たスワガー・サーガの最新作「スナイパーの誇り」も「第三の銃弾」よりはマシだけど以前のような切れはない…。もうスワガー・サーガ(=無双アクション)の延命は止めて、スワガーと切り離したS・ハンターの作品が読みたいなと思っていたところに!

「今度のS・ハンターの新作『我が名は切り裂きジャック』はスワガー・サーガと関係のない19世紀イギリスの切り裂きジャック事件をテーマにした推理サスペンス」

と聞いて、おお!と思い早速昨日読んでみたら!

期待に応える傑作でした!大傑作と言ってもいいでしょう!!非常に面白いサイコ・サスペンス・ミステリーです。スワガー・サーガと何の関係もないので、無意味にアクション無双要素とか入れなくてよくなったのが本当に功を奏して、作品全体を高みに押し上げている!

新年の年越しの瞬間に切り裂きジャックが被害者を切り刻んでいるシーンを読んでいるのもどうかと思いましたが、そのようなことが頭に昇らなくなるほど、実に面白い、無我夢中で読める作品、S・ハンターの切れ味が再び完全に戻ってきたという感じですね!昨今のS・ハンターは完全にスワガー・サーガに縛られている感じなので(自由を何より重んじるリバタリアン的保守派の作家が自分の大人気シリーズに縛られるとは皮肉ですね…)、本作のように、スワガー・サーガとは関係のない自由に書ける作品の方が切れがあって良い小説になるように思います。私は昨今のスワガー・サーガより本作の方が圧倒的高評価ですね。

「我が名は切り裂きジャック」、サイコ・サスペンスとして傑出の出来、また19世紀イギリスの描写が何とも上手くて良いんですね。ぜひ予断なしにご一読お勧めできる傑作です。S・ハンターファンとして、また最高の切れ味とスリリングなテンポの良さを保った抜群に面白いハンター節が戻ってきて読んでいて楽しい。こんな感じです。

事件から五日が過ぎた今も、新聞はこのネタを紙面から外してはいなかった。夕刊紙と朝刊紙の両方がこの事件を追っているようだった。主要夕刊紙のスターとベルメル・ガゼットは単独犯仮説をさかんに主張していた。なぜかはおわかりか?明らかだろう。控えめな配達人によって配られる朝刊紙とはちがい、夕刊紙の売り子は、通りすがりの人々に手当たりしだい新聞を売らなくてはいけないからだ。それは、鉄道駅に向かっていたり、炭塵の舞う地獄のような職場からの帰り道であったり、軌道式の乗り合い馬車の到着を待っていたり、お楽しみや自己啓発のために一頭立て幌馬車で町に出かけていたりといった人々だ。そういう人々に売りつける新聞は、よりみだらで、より刺激的で、より性や血や破壊の色合いが濃いものでなくてはならない。ひとびとの、より根源的な本性に訴えなくてはならないのだ。

その一方、彼らが帰宅するころには、猥雑な妄想はすでに尽きていて、その下品な新聞自体は屑缶に詰め込まれてしまうようにしておかなくてはならない。そして、読み終えた男は、非の打ち所がなく道徳的であるふうをよそおい、感謝の祈りを捧げる心の準備をして家に帰り、連れ合いが義務的かつ愛情をこめて用意した肉とポテトの夕食にありつくというわけだ。

それとは対照的に、朝刊各紙は家に配達され、朝食の場で読まれることになる。殺傷事件やむごたらしい出来事は、それなりに控えて報じる必要がある。競争相手である夕刊紙より、かなり節度を守らなくてはならない。清浄な暖炉のわきに置かれた屑缶を穢すことがあってはならず、そのそばで遊んでいる幼児の心を、その子が七歳になって寄宿舎に送り込まれ、そこでの十年間で男色と鞭打ちの味を覚え、それに加えてギリシャ語に堪能になるまでは、穢すことがあってはならないからだ。
(スティーヴン・ハンター「我が名は切り裂きジャック」)

まさにハンター節全開で読んでて笑っちゃうんですが、本書は、切り裂きジャックと、ジャックを追う新聞記者の二人の視点から交互に物語を描いており、まさに上記が述べるところの朝刊(新聞記者の視点)と夕刊(ジャックの視点)の繰り返しみたいな感じで物語がとてもテンポ良く進むんですね。サスペンスに溢れたサイコ・スリラーの傑作、ぜひご一読をお勧め致しますね!!

我が名は切り裂きジャック(上) (扶桑社ミステリー)我が名は切り裂きジャック(上) (扶桑社ミステリー)
著者:スティーヴン ハンター
扶桑社(2016-04-30)
販売元:Amazon.co.jp

我が名は切り裂きジャック(下) (扶桑社ミステリー)我が名は切り裂きジャック(下) (扶桑社ミステリー)
著者:スティーヴン ハンター
扶桑社(2016-04-30)
販売元:Amazon.co.jp

スナイパーの誇り(上) (扶桑社ミステリー)スナイパーの誇り(上) (扶桑社ミステリー)
著者:スティーヴン・ハンター
扶桑社(2014-12-23)
販売元:Amazon.co.jp

スナイパーの誇り(下) (扶桑社ミステリー)スナイパーの誇り(下) (扶桑社ミステリー)
著者:スティーヴン・ハンター
扶桑社(2014-12-23)
販売元:Amazon.co.jp

第三の銃弾 (上) (扶桑社ミステリー)第三の銃弾 (上) (扶桑社ミステリー)
著者:スティーヴン・ハンター
扶桑社(2013-11-30)
販売元:Amazon.co.jp

第三の銃弾 (下) (扶桑社ミステリー)第三の銃弾 (下) (扶桑社ミステリー)
著者:スティーヴン・ハンター
扶桑社(2013-11-30)
販売元:Amazon.co.jp

11/22/63 上 (文春文庫 キ 2-49)11/22/63 上 (文春文庫 キ 2-49)
著者:スティーヴン・キング
文藝春秋(2016-10-07)
販売元:Amazon.co.jp

11/22/63 中 (文春文庫 キ 2-50)11/22/63 中 (文春文庫 キ 2-50)
著者:スティーヴン・キング
文藝春秋(2016-10-07)
販売元:Amazon.co.jp

11/22/63 下 (文春文庫 キ 2-51)11/22/63 下 (文春文庫 キ 2-51)
著者:スティーヴン・キング
文藝春秋(2016-10-07)
販売元:Amazon.co.jp

アマゾンギフト券ストア



アマゾンOTAKUストア
TVゲーム総合ストア
アニメーション総合ストア
漫画コミック総合ストア
ホビー・フィギュア・トレカ総合ストア
食品&飲料総合ストア
ペット用品総合ストア
電化製品・家電製品総合ストア
パソコン及び周辺機器・消耗品総合ストア
PC18禁ゲーム総合ストア
amazon液晶テレビ総合ストア
クラシック音楽総合ストア
アマゾンギフト券ストア
amazonトップページ




Archives
livedoor プロフィール

ねこねこ

記事検索
  • ライブドアブログ