月のない夜に

前回のエントリで取り上げた、大手まとめサイト「はちま起稿」が大企業DMMに買収され、再び「はちま起稿」運営者らが関わると見られるITベンチャー「インサイト」に再買収された件、深層は闇に包まれていますが、恐るべきことですね…。はちま起稿の創設者清水鉄平氏は、「はちま起稿」から発信する無数のデマ及び誹謗中傷によって、大手まとめサイト群を管轄するITベンチャー企業群のフィクサーとして絶大な地位を築いているというところが、本当に恐ろしいです…。

上記について報じるニュースを見て、岸田るり子さんのサイコ・ミステリー「月のない夜に」のことを思い出しました。本書は京都を舞台に、新進財界人であるとあるベンチャー企業の女社長がサイコパスであり、他者を貶め破滅させることで地位を獲得してゆき、他者を罠にかけてゆくことでのし上がり成功していくという作品でして、サイコパスを主役的立場に据えた作品として、貴志祐介さんの「悪の教典」よりも優れた作品と思います。本作は現在出版されている岸田るり子さんのミステリーの最高傑作と言えると思います。

「月のない夜に」小説としては面白く読めましたが、これは、小説ですからね…。様々な人々や企業、団体等をデマと誹謗中傷で貶め破滅させてきた「はちま起稿」とその創設者が、その行為によってのし上がり、日本のインターネットのアクセスの大半(大手まとめサイト群)を、大企業と共に支配する立場にいるという、先の小説がより邪悪で悪夢のような形になって現実になったような有様、暗澹とします。

先の小説「月のない夜に」が「悪の教典」より優れているところとして、「月のない夜に」は、構造が二重・三重になっているんですね。非常に上昇欲・権力欲が強く、なおかつサイコパスであり、良心は一切無いが、人を惹きつけ操るカリスマ性に長けた川井喜代という女性社長が、周囲を利用して、平然と殺人等も犯しながら京都の実業界で新進実業家として急速にのし上がっていく様がまずありまして、それと共に二重構造的に、彼女に支配され破滅していく周りの人々を群像劇として描いているんですね。ここまでは、「悪の教典」と似たような構成なのですが、このミステリーは、この女性が目論んだ犯罪計画が、周囲の人々の良心の働きなどで上手くいってないにも関わらず、実際に犯罪(殺人)が行われ、そしてそれによりこの女性がどんどんのし上がっていく、そのミステリーとしてもあるんですね。

この小説の女社長川井喜代は、堀江貴文氏的などんどん表舞台に出てゆくタイプのベンチャー企業経営者で、京都財界人との人脈作りと不動産経営や画廊経営によって成り上がっていく(周囲ではライブドアの重役でエイチ・エス証券副社長であり沖縄で死体で発見された野口英昭氏のような変死が多発する)んですが、だんだんそれが、「彼女が計画した殺人犯罪が上手くいってないのになぜか殺人犯罪が最後まで遂行される」という、ミステリーが現れてくる。

ここに、清水鉄平氏的な、インターネットの裏に潜んで人々を操り破滅させる恐るべきサイコパスの人物の存在がだんだん示唆されていくところが、ミステリーとして三重構造であり「悪の教典」よりも見事と感じたところです。本書は堀江氏的な財界の表舞台に立つことも辞さない実業家と、清水鉄平氏のように決して表には表れずネットの闇に潜んで、裏から人々を食い物にして奪いつくす恐るべき影の実業家の暗い戦いを描いているんですね。善良な人々を破滅させ喰らい尽くすサイコパス実業家同士のおぞましい喰い合いを描いた大変な傑作です。いわば堀江貴文氏対清水鉄平氏的な地獄の様相を描いた作品でして、昨今のサイコ・ミステリーの中でも傑出した作品だと思います。

彼女はもうすでにどうにもならないくらい狂っていたのです。

お金で成功するうちに、お金を儲けることで得られる快楽の中毒になり、それが、彼女の理性を蝕んでいったのでしょう。

喜代は元来良心のない冷酷な人でしたが、強靭な意志と理性のある人でした。冷徹な判断力が彼女の武器だったのです。

その判断力を失ってしまった彼女は、お金のためだったら、危険を顧みずにどんな残虐なことでもする狂気に取り憑かれてしまったのです。

いつ頃からでしょうか。

多分、片山考治の父親が亡くなった頃からです。

あの時、私がアリバイを証言したにもかかわらず、彼は妙なことを言っていました。父親を殺したのは自分ではない。病院を停電させることなど自分にはできない。犯人は別にいる、と。

もちろん喜代はそんな話を聞く耳は持っていませんでした。

その後、喜代の事業は何もかもが、彼女の思い通りに運んでいきました。そこで彼女は、何かを錯覚したのだと思います。自分の能力以上の力が自分にあると過信するようになったのです。欲望と客観的思考のバランスをなくした彼女は、何かがフェイクであるにもかかわらず、それを直視し、分析する能力を失ってしまったのです。

このフェイクについては、後ほど、お話ししますが、彼女の人生には、ある大胆なフェイクが潜んでいたのです。もちろん、私も、そのフェイクの正体に全く気づきませんでした。最初は小さくて目立たない存在でしたが、それはまるで寄生虫のように喜代の体の栄養を吸いつくして成長し、ついには喜代の肉体を突き破ってしまったのです。

そのフェイクに翻弄され、地に足の着かなくなった彼女は、もう自分の足下を見ることはできなくなっていました。そして、彼女の野心は際限なく膨れ上がっていったのです。彼女の目は、普段は死んだようにどんよりと濁っているのに、お金の話になると爛々と薄気味悪い光を放つようになりました。お金の魔力にすっかり取り憑かれていたのでしょう。しまいには、まるで生き霊のように私の目には映り、目を合わすのも恐ろしくなりました。
(岸田るり子「月のない夜に」)

この「月のない夜に」は小説ですから、「悪の教典」と同じく、善良な人々は権力を持つサイコパスの餌食にされて破滅するしかないであろうことを示唆する暗雲立ち込める終わり方でも、「小説の終わり」として読み終えることができます。

ですが、既に実業界に対して力を持たない堀江氏とは違い(余談ですが、決して表には出ず、裏から大手まとめサイト群を操ってデマ・誹謗中傷などによる情報操作を行い続ける清水氏より、少なくとも表舞台に出るという責任を果たし続けた堀江氏の方が遥かにマシだと感じます)、今現在も「はちま起稿」やその周辺大手まとめサイトが無数のデマや誹謗中傷を行い続けていること。それにより人々を苦しめ不幸にし、そのことによって、彼らが大きな利益・権力を得ていること、DMM等の大企業との繋がり、それらは現実に起きていることです。大手まとめサイト群は今もデマと誹謗中傷を撒き散らすことで情報を操作しアクセス数を稼ぎ大企業と結び権力と財力を得ている。彼ら大手まとめサイト群が力を持てば持つほど、より巨大な嘘がばら撒かれることになるのは自明であり、そして彼らの権力と財力とネットへの影響力は年々膨れ上がっています。

「贋作で儲けるだけ儲けたら、発覚するまでに、金で信用を買うまでのこと」

「そんなことできるん?」

「世の中に買えへんもんなんてあらへん。権威だってなんだって金で買えるもんなんや。行動のみや」

そう、金さえあれば、コマーシャリズムで嘘も本当にしてしまうことができるのだ。そのためには、人に考える余裕を与えてはいけない。なにごともスピーディに進める必要がある。

「嘘は大きければ大きいほど効果的なんや」

「なんでやのん?」

「せこい嘘は誰でも考えることやから、すぐに見抜かれてしまうけど、誰にも想像できひん大嘘は、人の想像力を超えるから、まさか嘘やと思わへんのや」
(岸田るり子「月のない夜に」)

清水鉄平氏ら大手まとめサイト群の上層に位置する人々は、大手まとめサイト群を使った複数のステルスマーケティング・デマ・誹謗中傷による情報操作に特化したフィクサーとして権力と財力を持ち更に仕組みを拡大し、大企業DMMなどとの関係をより深め地位を強固にしているという、私達の生きるこの現実で実際に起きていること、それはもう現実が小説を超えている事態であり、法規制は全く間に合っていない無法な状態のまま放置されている。本当に、日本のインターネットの現実は絶望的な状況に置かれていると思います…。暗澹とします…。

月のない夜に月のない夜に
著者:岸田るり子
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