アニメ「バーナード嬢曰く。」第四話が、ジャレド・ダイアモンドの著書「銃・病原菌・鉄」がテーマで、ネットで要約と感想を読んで読んだ振りをしたり読んだ気になったりするというギャグで、中々面白かったですが、ギャグ漫画原作のギャグアニメですから、ネットで要約と感想を読めば十分じゃないか、なぜオリジナル原典たる本を読まなくてはならないのか、という問題についてはやらないんですね。この問題(なぜネットの要約を読むよりオリジナルの書籍を読む方が良いのか)に関しては、円環少女シリーズの著者長谷敏司さんの回答がとても良いので引用してご紹介致しますね。若者に向けて、なぜ本を読むべきなのかを神坂一、新城カズマ、三雲岳斗などの若者向けラノベなどで活躍する多くの作家が回答している「未来力養成教室」という本に収録された回答で、「日本の若者は本を読まないとこの先生き残れない」と語る長谷敏司さんのこの回答が最も説得力があると感じましたね。

長谷敏司「皆さんに受け渡す未来のバトンについて」

(日本の)現代が、(社会構造が安定していた過去の時代とは違い)想像力を問われる時代になっていると心配しています。2011年以降の震災以降、さまざまな見通しがなくなり、今後も(日本に)大規模な自然災害が控えているからでもあります。1989年まで続いた冷戦という危機の時代から20年以上がたち、再び安全を意識しなくてはならない時期が訪れているということでもあります。厳しい環境の中で、昔ほど豊かではないこの国であなたがたが大人になり、どう人生をまっとうするかを心配しているのです。(中略)

これからの未来は本当に厳しくなる可能性があり、現代の私達はそういう時代になることを止められなかった世代です。当然、現行世代も必死で生き残りを図っています。けれど、そこまでやって薄暗さを払拭できなかった世代から方法を学んでも、それだけでは生き残れないかもしれません。(中略)(近現代の社会変化の激動によって)すでに私達のまわりに想像の余地を挟まないほど強固なものはほとんどなく、今も少なくなりつつあります。

これからを生きる皆さんは、激動の中、かつては強固な立脚点だった肉体すら自分のよりどころにできないかもしれないのです。進歩や変化によって、最低限信じられるはずだったものが、想像の余地を差し挟むものに変わりました。この流れは最近に始まったことではありません。私達は近代市民社会を実現させ、大量生産の手段や科学技術や社会科学を発展させる中、旧来の価値観や倫理を揺るがす様々な出来事を経験しました。(中略)

私達は、心や理解力の隙間に、想像で境界線を引いて、情報を誤読してしまいます。この性質は、予断と呼ばれる判断ミスの発生源です。予断はたくさんの人間に未来を空費させてきた、人類の業病のようなもので、これから完全に逃げるすべはありません。(中略)

私達は(あまりに速く現代社会が変化し激動するため)見通しを失い、安全を脅かされ、貧しくなりつつあり、基準を失いつつあります。今世紀、世界がどれだけ大きな変化を迎えるか、おそらく正確に見えている人間は誰もいません。大人は自分達の限界とせめぎ合いながら、その中で苦闘しているのであって、未来が分からなくても流されるままでは悪化するから劇薬を処方しているのです。

こんな見通しは不明瞭で業病の克服もできず、複雑な利害関係で縛られたものが、皆さんに受け継いでもらおうとしている未来です。嫌な事ばかり言う大人もいたものだと、この本の他の筆者さんと比べて、怒っておられるかもしれませんね。けれど、先にも言ったように、こんなにも大人達は(個々人が)本質的に違っています。にもかかわらず、この本に参加した人々が同じ「(若者の)未来に期待する」という選択に至るほど、未来が刻々と失われるという条件は切羽詰っているのです。(中略)

1980年代、私が小学生だった頃には、未来という言葉には明るい空気がつきまとっていました。当時は、夢や進歩といった言葉とワンセットであることが多かったのです。けれど、(日本経済のバブル崩壊が起き)1990年代中盤に入ると、様々なものが冷え込んでいきました。政治も、経済も、社会も、国際関係も、どの国が豊かでどの国が貧しいかも、軍隊と戦争のありようも、激しく揺れました。21世紀の今は、あまりにも暗い予断がまとわりついていて、想像力と未来について整理する必要にかられる状態になっています。想像力という劇薬を取り扱うにあたって、コンディション変化にともなう計画見直しを迫られているのです。

想像力という友人と向きあうとき、必要なのは、信じることではなく上手く付き合うことです。その手段を身につけるには、積極的に学ぶことです。学ぶことで、予断や幽霊のような想像力の副作用から、どれを受け取るか選り分ける能力を養うことができます。想像力を発揮せねば仕方ないとき、自分のなかにあるものが正しい判断か予断かを切り分けることが、力に振り回されることを防いでくれます。

そして、そのためには本を読んでください。

ネット情報でよいではないかと思うかもしれませんが、本には少なくとも二つ、ネット情報では超えにくい長所があります。

一つ目は、検索を利用してネット情報は日々更新されてゆきますが、この性質は良い面ばかりではないということです。手軽さゆえに内容が書き換わったり、情報共有の精度が下がったりするためです。この点、書籍は簡単には更新がききません。たとえば大勢の人間がミームについて検索で探したとき、検索リスト自体が日々変化しているため、ネット上の情報ではどれが読まれたのか保障されません。けれど、ミームについて『利己的な遺伝子』という本を探したとき、何万人が探しても読まれた内容はリチャード・ドーキンスの著書でしかあり得ません。情報共有の精度が高いことは、良質のブックガイドを見つけられることにも繋がっています。比べて、Wikipediaのような大勢で編集するウェブ辞典は、情報の質が良いか以前に、ネット上で高精度で共有できる情報源がこれしかないから引用されている場合が多いのです。

二つ目に、本ではデータが大きな塊になっています。手軽な小切りの情報のほうが便利に感じられるかもしれませんが、必要な情報が抜け落ちていると、私達はそこを勝手な想像で埋めてしまいがちです。知りたい事柄に予断を入れないためには、さわりだけを知るよりまとまった量の知識を仕入れてしまった方が良いのです。(中略)

長々と書いてきましたが、簡単に言うと、どの程度良好なコンディションの未来を受け渡せるかわからない状態だから、みんなで新しい手立てを見つけよう。そして、想像力は、人間に牙を向きやすいものだから、本を読んで勉強することで飼い慣らそうということです。想像力は、あまりにも人間の生活や文化と密接に繋がりすぎて、まるで人間の本質か何かであるように振る舞っています。けれどこれは未来との厳しい関係を思えば、明らかに劇薬としてしっかり考えて付き合うべきものです。
(「未来力養成教室」より)

長谷敏司さんの回答の面白いのは、世界全体が不安定になって未来の予測不可能性が増してゆきインターネットなどでの情報化が進むポストモダン社会だからこそ、未来に対応する想像力を鍛えるためには、ネット情報だけに頼るのではなく、書籍を読むべきというところが、とても面白い。他の作家さん達が大体において楽観的で希望的な立ち位置から本を読むことを勧めているのに比べ、長谷敏司さんだけは非常に悲観的な見方から、今後の激動の時代を生き抜く為のサバイバルツールとしての読書を勧めているというのが、流石は円環少女の作者さんと思いましたね。ちなみに長谷さんと同じようなことを述べている知識人(激動の時代だからこそ、ネットではなく書籍がサバイバルツールとして重要と述べる知識人)では浅羽通明さんも長谷さんと同じようなことを述べていますね。ラノベを軽く見ているような人々にも本書は読んで欲しいな。ラノベ作家さん達が如何に社会の未来と日本の若者の明日について真剣に真面目に考えているかがとてもよく分かる良書です。

あと、最後に個人的な意見として述べさせてもらうと、やっぱり書籍、特に紙の本という形態は電子情報の形態に比べて読みやすいと感じますね。長編小説とか、青空文庫で無料で読める書籍でも、がっしりと精読したいなと思うものはやはり紙の本で読みますからね。ある箇所を読み返したいと思ったらどのページにも一瞬でアナログなフィーリングでアクセスできる(指で開くだけでアクセスできる)というのが、紙の本の素晴らしさで、この利点がある限り、紙の本が完全に廃れてしまうということはないと私は感じますね。

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