2016年10月14日 17:12

奥村勝彦氏が語る「漫画雑誌はこの先生きのこれるのか」現代の表現者が紙媒体の減少とポリティカル・コレクトネスに苦しんでいることが伝わってきますね…。

コミックビームの奥村勝彦氏による出版不況に対する面白い論考対談。筒井康隆さんの短編「くたばれPTA」みたいな感じで雑誌と漫画の今を語る対談が進んで行くのが(対談はポリティカル・コレクトネスによりどんどん虚構の表現は自主規制されて、逆に現実の事象は攻撃的になっていくというテーマになっていく)、なんともよく分かるなって感じですね…。

コミックビームが「緊急事態」宣言 漫画雑誌はこの先生きのこれるのか
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161014-00000023-it_nlab-ent
奥村 おっかながっててなんか面白いモンやれるかというと、そりゃあ厳しいよな。面白いモンってある意味、無意識の中から生まれてくるわけで、そういうのって身体が強ばっている状況だと、まあなかなか出てこないんだよ。最近のテレビなんかそれを一番感じてるんじゃないかな。

―― 最近はすぐ炎上しますからね……。

奥村 昔だったら単体で電話してきて、「ああスイマセンね」で終わってたんだけど、今はスポンサーに電話するからね。文句付ける側が妙に賢くなって、俺ら(表現者側)のクビ飛ばすのなんて簡単だぞってことに気づいちゃった。(中略)

―― 特にPC(ポリティカル・コレクトネス=政治的・思想的に公平公正であること)にはすごく敏感になった。

奥村 あのね、オレはさ、そういう(表現の自主規制による)縮こまりの先に何があるんだろう、ってやっぱ考えちゃうんだよ。で、1つ結論としてあるのは、(現実の)戦争だろうなと。

―― 戦争?

奥村 オレ昔から思ってるんだけど、最高のエンタテイメントって何かって考えたら、多分戦争なんだよ。自分とか身内が殺されない限り、戦争って一種のエンタテインメントなんじゃないかって。あの「日本チャチャチャ!」なんて足元にも及ばないくらいの爆発力がある。もちろんこれは極端な考えだよ。でもさ、実際戦争なんてやったら悲惨この上ないからね。人間同士殺し合うわけだから。

―― エンタメが萎縮すると戦争に向かうということですか。

奥村 おれはそう思うよ。メディアってそういうのがモロに最初に出てくるものだから。

人類は皆平等。愛。「私は嘘を申しません」。性善説。戦争はごめんだ。まごころ。先人を敬おう。不幸な人に愛の手を。こういうものはみんな嘘であり、それを嘘と認識したところからドタバタ、スラップスティック、ハチャメチャSFは始まる。人間は差別が好きで、肉欲に生きていて、嘘をつかねば生きられず、悪い事ばかり考える。戦争は大好きである。(平和運動は戦争の第1段階だ)裏切りこそ繁栄につながり、老人を馬鹿にし、早く死ねと思い、不幸な奴がいるため自らは幸福だといって喜ぶのである。この真実を、いまやSF以外の文学は、描こうとしない、否、描けない。自らがそうした虚偽の中に取り込まれてしまっているからだ。ただひとつ、下等にして下品にして半気ちがいで嘘つきと思われていて、そしてなにものからも自由な、ドタバタ、スラップスティック、ハチャメチャSFのみが、この真実を描き得るのである。
(筒井康隆「真実の文学」)

娯楽作品における表現の自主規制がここ数十年で急速に進んでいるなということは強く感じますね…。例えば、現在放映中のアニメでいうなら「終末のイゼッタ」とか、明らかに敵役はナチス・ドイツそのまんまなんですが、「ゲルマニア帝国」っていう架空の国家を設定して、それを敵役にしている。ナチスを敵役にすると、例えフィクションの娯楽作品であっても色々ポリティカル・コレクトネスの方面からクレームがつく可能性があって(ナチスの敵役将校をカッコよく描いてるとかクレームはなんでも付けられる…敵役の将校の声がダンディで渋い諏訪部順一さんですし)、そのリスクを避けるために自主規制したんだなというのがひしひしと伝わってくるかの如き作品でした…。まあ、どう見てもナチスなのに「ゲルマニア帝国」とか出てきたときは、「世界首都ゲルマニアか!」って突っ込んじゃいましたが…。

ウィキペディア「世界首都ゲルマニア」
世界首都ゲルマニア(せかいしゅとゲルマニア、ドイツ語: Welthauptstadt Germania)とは、ドイツ首都ベルリンが広く国内外で「世界の首都」と讃えられるよう、アドルフ・ヒトラーがグランド・デザインを考え、建築家アルベルト・シュペーアが細部デザインを任された都市改造構想である。(中略)シュペーアの回想録によれば独ソ戦開始時点のヒトラーの考えでは、1945年に戦争に勝利した後、1950年に世界首都ゲルマニアを完成させて自身は引退する予定であったと記述されている。肝心のドイツが敗戦した事もあり、完成を迎える事は無かった。

また表現発表媒体として紙ベースの媒体が減少しているというのは、先日読んだ「年間日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」でも選者の日下三蔵さんが書いておられましたし、漫画雑誌だけではなく、紙ベースの表現媒体の減少はあらゆる表現にとっての一つの危機だと思いますね…。

(「年間日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」収録作の)十九本の内訳はこのようになった。

A SF専門誌 3
B それ以外の文芸誌 5
C 単行本書き下ろし作品 3
D ウェブ公開作品 3
E 同人誌掲載作品 3
F マンガ作品 2

Cは書き下ろしアンソロジーや単行本初出の作品など。以前は大半を占めていたAとCの割合が、かなり減っているのである。(SFマガジン隔月間化のように)紙媒体の雑誌が減っていくのが世の趨勢なので、今後はC〜Eの占めるウェイトが、相対的に多くなっていくものと思われる。
(日下三蔵。「年間日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ」後記より)
 
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