書くというのは孤独な作業だ。それは生活をおおいつくしてしまう。ある意味で、作家には自分の人生がないとも言える。そこにいるときでも、本当はそこにいないんだ。
(ポール・オースター「幽霊たち」)

フリーゲーム「バケモノハイツ」、全エンディングを制覇し、おまけ部屋のサブストーリーも全部見てコンプリート。最高に面白かった!!

公式サイト「SEPTET」(GAMEからバケモノハイツDLできます)
http://copelandseptet.web.fc2.com/

いやあ、久々にゲームして深く感動してしまいました。このフリーゲーム「バケモノハイツ」は、「狂い月」や「Ib」のように数年に一度現れるレベルのフリーゲームの稀に見る大傑作だと思いますね!!こんなに時間を忘れてゲームをプレイしたのは本当に久々です。今は完全クリアしてしまい寂しく名残惜しい気持ちで一杯です…。

本作は探索謎解き型のアドベンチャーゲームですが、何よりも雰囲気と物語とキャラクターがどれも最高に魅力的なんですね。まず雰囲気は、シナリオ性と叙情性のある幻想世界を舞台としており、とても不可思議なイメージに満ち溢れた世界が、良い意味で不気味であり、魅力的なんですね。先日読んだエリック・マコーマックの小説「隠し部屋を査察して」が面白かったので(http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1910223.html)、マコーマックの「パラダイス・モーテル」と「ミステリウム」もつい最近読んだんですが、どれも素晴らしい幻想的なイメージのめくるめる世界で素晴らしい読書体験だったんですね。本作「バケモノハイツ」もプレイしていて、「マコーマックぽいな」みたいに感じました。まさに本作「バケモノハイツ」も幻想的なイメージのめくるめる世界を堪能できる作品でしたね。

アンナと私は夕闇の中に出て行った。街灯は霧と夜に立ち向かって弱々しそうに腕をつないでおり、私たちもそうだった。ふつうそうするように公園を横切るかわりに、ぐるりと迂回して教会の前を通った。戦争の終わり以来、そこからはなんの音もしない。そして図書館の前を通り過ぎ、私たちは牡鹿亭へと入っていった。

ロビーは左側の薄暗いフロントで、巨大な鼠が前かがみになって書類のようなものを齧っていた。鼠は顔を上げ、奇跡のように変身して、帳簿に向かっているオーナーのミッシェルになった。

「ふたりともようこそ」彼はいった。「夕食?」

彼は私たちを、色あせた壁紙と暗い風景画の掛かった階段から床がふわふわしている踊り場へと案内した。彼はダイニングルームのドアを開けた。何世代もの死んで久しいキャベツの幽霊が私たちを出迎えた。
(エリック・マコーマック「ミステリウム」)

このようにマコーマックの小説(マジック・リアリズム小説)では幻想のイメージと現実の在り方が重なり合って描写されているんですが、本作もこのような「幻想と現実の重ね合わせによる不可思議かつ魅力的な世界の表し方」がとても上手い。本当に素晴らしいとしか言い様がないです。そして、マコーマックやボルヘス、マルケスらの幻想的なマジックリアリズム作品と同じく、本作において幻想は現実の下位ではなく、また上位でもない、ただ重なり合い混ざり合い影響しあっているという描写が為されている(例えば上記で言うなら、人間と鼠を見違えたのではなく、オーナーは本当に巨大な鼠なのかも知れない)。なおかつ本作「バケモノハイツ」の場合は、幻想と現実の重なり合いが物語の流れと密接に結びついていて、物語性とマジックリアリズムが見事に交じり合っているんですね。本当に見事で素晴らしい精妙な物語構成と演出でして、感嘆致しましたね。

物語は、現実と幻想が重なり合い混じり合う不可思議なマジック・リアリズムの幻想譚であり、なおかつボーイ・ミーツ・ガールの物語としてとても爽やかで感動的で、とても良かったですね。ゲームをやっていて久々の感動を味わうことができました。謎解きや追いかけっこなども難易度がかなり抑え目にしてあり、没入感を削ぐことなく、物語を進行させてゆくことができるのも良かった。一切ヒントを見ずに、全エンディングをコンプリートしておまけ部屋まで行くことができました。謎解きや追いかけっこの難易度が高いゲームは途中で諦めたり、諦めずに何とか突破しても、物語としての流れをそこで一旦断ち切られてしまい物語の全体的な完成度が下がってしまうことが多いんですが、本作は、難易度を抑え目にすることで、物語と謎解きの一体感を上手く出していると思いました。私は「ゲームに追いかけっこは一切いらない派」なので、追いかけっこ部分はいらなかったかなとも思いますが、ただ本作の追いかけっこの難易度はかなり低いので、これなら物語を楽しむ邪魔にはならないと感じましたね。

また、本作は物凄く世界が練られているのも大きな特徴です。マップを歩き回っている時の色んなちょっとした描写とかちょっとした場所を調べた時の発見とかが、最終的には伏線として全て意味あるものとして生まれてくる、とてつもなく精緻に世界が構成されているのも凄い。本作は、物語構成的に複数回プレイを行いますが、同じ描写でも、その背景をプレイヤーが知っていると、全く別のものが見えてくるんですね。まさにプレイヤーの視点そのものが、物語に現れる世界の形を形作る一つの重要なファクターになっている。「狂い月」でも思いましたが、まさにセンスオブワンダーであり、プレイヤー自身が物語世界に参入してその世界の見え方を変えてゆくんですね…。

登場人物達もみな魅力的でして、みんな良心的で優しく、優しいゆえに悩んでいる人々の物語で、共感が持てましたね…。やっぱりヒロインの女の子が一番魅力的だったかな。他のキャラクターもみんな凄く良いんですけどね。ワニさんがシェフだったときのエピソードとかまさに現実的でありながら幻想的でとても良かったなあ…。

本作「バケモノハイツ」、本当に素晴らしい良作なのでぜひプレイして欲しいです。とても良く出来た作品なので「Ib」のようにこれからもっと話題になっていくゲームだと思いますね。大勢の方にプレイして欲しい、プレイしたあとは優しくなれるような、そんなゲームです。

ちなみにゲーム内の展開やおまけ部屋などでも示唆されていますが、本作は物語の根幹としてポール・オースターの幻想小説「幽霊たち」が見事にオマージュされている感じですね。本作の幽霊への優しい眼差しは物語の紡ぎ手への眼差しであり、そしてプレイヤーへの眼差しでもあるんですね…。

「コンピュータゲームを遊ぶというのは孤独な遊戯だ。それは世界の外に出てしまう。ある意味で、プレイヤーには自分の人生がないとも言える。ゲーム内の世界を眺めているとき、本当はそこにいないんだ」

「幽霊ですね」

幽霊たち (新潮文庫)幽霊たち (新潮文庫)
著者:ポール・オースター
新潮社(1995-03-01)
販売元:Amazon.co.jp

ミステリウムミステリウム
著者:エリック・マコーマック
国書刊行会(2011-01-25)
販売元:Amazon.co.jp

パラダイス・モーテル (創元ライブラリ)パラダイス・モーテル (創元ライブラリ)
著者:エリック・マコーマック
東京創元社(2011-11-29)
販売元:Amazon.co.jp

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)隠し部屋を査察して (創元推理文庫)
著者:エリック・マコーマック
東京創元社(2006-05-20)
販売元:Amazon.co.jp

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