2016年07月15日 15:12

フランスで凄惨なテロが起こりましたね。秋葉原殺傷事件を思い出し暗い気持ちになりました…。

フランスで80人以上が大型トラックにひかれて死亡する凄惨なテロが起こりましたね。大型トラックを使った大量殺人ということで秋葉原殺傷事件を思い出し暗い気持ちになりました…。現代の先進国諸国を舞台に陰惨で凄惨な殺人事件の地獄を書き続けている作家ジャック・ケッチャムは、911のテロの後にエッセイの中で、破壊的な狂気と憎悪を持った人間の行動はこの世の誰も止めることができないし、車・飛行機・銃・爆弾と大量虐殺に使える道具が膨大にある現代においては、そういった行動による悲劇は年々大きくなるだけだろう、善良な人々にできることはそういった事態に巻き込まれないことを神に祈るくらいしかないと書いていましたが、それを思い出しました…。個人の破壊的狂気と憎悪を止めることは誰にも出来ないし、銃なら所持規制できますが、車を大量虐殺テロの道具に使われたら、もう如何にしても防ぎようがないわけですね…。

ストループはベルトから携帯電話を外した。ストループはそのクソいまいましい代物を憎んでいるが、便利なこともある。電話をかけた。女が出た。

「タヴェルナ・レスボスです。どのようなご用件でしょうか?」

「助けてくれるってのか?」

「はい?」

「いま行くぞ、カーラ」

「もしもし?」

「どなたですか?」

「いますぐ行くからな!」

ストループは電話を切った。レインコートの下からポンプ式ショットガンをさっと取り出してコロンバス通りを渡った。車が何台も急ハンドルを切り、横滑りした。タクシー運転手さえ罵声を浴びせなかった。ショットガンを持っている男には。

ストループは開いているガラスドアを通り抜けて見まわした。案内係が悲鳴をあげたので、顔にぶっ放した。女性バーテンダーが悲鳴をあげたのでおっぱいを撃った。インド人だかパキスタン人だかの片付け係は悲鳴をあげず、空いた皿やグラスをいっぱい載せたトレイを持ったまま突っ立っていた。どっちにしろ、ストループはそいつも撃った。

客達がテーブルの下にあわてて身を隠した。ストループは彼らのランチを邪魔していた。ウェイター達とコック達とキッチンスタッフが床に伏せる。女達が悲鳴をあげる。男達がわめく。カーラはオフィスに隠れているんだろうとストループは思った。関係者以外立ち入り禁止のプレートか何かでストループを止められるかのように。とりあえず、トイレに入って個室のドアを片っ端から開けてみた。便所には誰もいない。ストループはひとけのない店の裏に行ってドアノブを捻ってみた。鍵が掛かっている。ドアに鍵が掛かっていればストループを止められるかのように。ストループはクソいまいましい鍵を吹き飛ばしてドアを押し開けた。カーラはデスクの後ろで縮こまっている。それを見てストループはスカッとした。ほとんどカーラを犯している気分だった。

「ストループ!ああ、ストループ、あなただったのね!どうしてこんなことをしてるの?」

「俺じゃないさ。人は人を殺さない。銃が殺すんだ」

「頭がイカレたの?」

カーラはヒステリーを起こしかけていた。少なくとも、目新しい反応だった。

「お前が俺の癇癪玉を破裂させたんだ、カーラ」

「お願い、ストループ!」

「俺をろくでなしのダメ男と呼びやがったな、カーラ」

「そんなつもりじゃなかったのよ、ストループ。お願い!」

「お前はこのレズ御用達の串焼きレストランのオーナーだな?お前は大物なんだな?なにしろここのオーナーなんだから」

ストループはポンプ式ショットガンを装填した。カーラが立ち上がろうとしたので、脚を撃った。いい脚だった。かつては。カーラはさらに大きな叫び声をあげながら倒れた。ストループが聞き慣れていた叫び声とは違っていたし、彼はその声をそれなりに気に入ったが、銃口をカーラのぽっかりあけていた口に突っ込んで再び引き金をひいた。

カーラは壁と床と家具を塗り替えた。
(ジャック・ケッチャム「シープメドウ・ストーリー」「狙われた女」収録)

この「シープメドウ・ストーリー」の主人公のストループのモデルは、売れない作家だった頃のケッチャム自身で、上記は生活の上手くいかないストループが夢見ているただの夢にしか過ぎません。彼は生活がとことん上手く行かず、ついに完全にやけになってしまって、現実の世界でリボルバーを持って大勢の人々が集っている公園に出かけるのですが…。

そのときストループは三十代のブロンドの男に目をとめた。そいつはグリーンのスタジアムジャンパーを着ていた。そのジャンパーによれば34番のその男は、十数メートル先で木にもたれていた。ストループが、(この暑い中、あいつはなんだってスタジャンなんて着てるんだ?)といぶかしんだ時、その男は木から離れ、ジャンパーを開いて短くて黒い何かを、ピストルとマシンガンを組み合わせたように見えるものを取り出して、左から右へ、芝生と木々に銃弾を撒き散らし始めた。

ストループは地面に伏せた。シャボン玉を吹いていた女が肩から赤いものを噴き出しながら倒れ、ヘッドホンをしていた若者が、腹を蹴られたように体をくの字に折った。七歳くらいの男の子が額の上の方に弾を食らい、息子の方に向かった父親の尻の、財布の上のあたりが弾けた。人々が悲鳴をあげていた。身を隠せるところを求めて走っていた。

男はオートマチックをカーラの方に振り向けた。カーラとランディは伏せてすらいなかった。手を握りあっている二人は絶好の標的だった。

あいつが俺の代わりをしてくれそうだな、とストループは思った。

その男はカーラとランディを撃とうとしていた。

クソったれめが。

ストループは三十八口径を抜いた。安全装置をはずして狙いをつけ、引き金を引いた。
(ジャック・ケッチャム「シープメドウ・ストーリー」「狙われた女」収録)

生活がとことん上手くゆかず、やけになって殺人をしようとしていた男が、逆に大量殺人鬼のテロリストを射殺して大勢の人々の命を救った英雄になり、生活も好転し始めるというブラックユーモアに満ちた皮肉な話で、人間を絶望と憎悪に彩られた悪夢としてみている、ケッチャムの筆が見事に走った作品です。現代の情勢を見れば、まさにケッチャムの言うように、世界は根幹的に悪夢に彩られた絶望的な世界そのものですね…。

狙われた女 (扶桑社ミステリー)狙われた女 (扶桑社ミステリー)
著者:ジャック・ケッチャム
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