2012年07月21日 14:52

アニメ「貧乏神が!」のマルクス主義。桜市子=大資本家、貧乏神の紅葉=コミュニスト、幸福エナジー=金銭ですね。思いやりの共同世界について。

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前回のエントリ(http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1692018.html)を書いていて気付いたのですが、アニメ「「貧乏神が!」って物凄くマルクス主義的な感じのするアニメですね。考えてみれば全てがマルクス主義の符号にマッチする構造になっていて面白いなあ。僕は原作漫画は読んでいないので(読みたいけどお金なくて買えないorz)、アニメの第一話〜第三話を視聴したところからの発想ですが、こんな感じです。

アニメ「貧乏神が!」のマルクス主義

周囲から幸福エナジーを吸収して莫大な幸福エナジーを溜め込んでいる主人公の桜市子…大資本家のメタファー。非常に分かりやすいメタファー。市子は大富豪のお嬢様にして容姿端麗学業優秀、学園の女王様だが、その性格は金と自分しか信じない身勝手なエゴの塊であり、他者から搾取した幸福エナジーを独り占めしようとするというところも、まさに他者から搾取する資本家のメタファーに相応しい。

桜市子が他者から幸福エナジーを奪うのを止めさせて、市子の幸福エナジーを人々に還元しようとする貧乏神の紅葉=コミュニストのメタファー。これまた分かりやすいメタファー。大富豪のお嬢様である市子の対極としてキャラクター造形されており、橋の下に住んでいるホームレス(無産階級)なところがまさに財産の平等化を目指すコミュニストの原点という感じ。

桜市子に幸福エナジーを吸収されてた執事や、市子に札びらで頬をはたかれるような真似をされている貧乏人の一家とか…労働者のメタファー。労働者は資本家に不労所得という形の搾取をされる・貨幣の力で下位に置かれる=幸福エナジーを搾取されたり札束で屈服させられたり。

幸福エナジー=金銭のメタファー。究極に分かりやすい。桜市子が身勝手なエゴの塊のような性格で、札束で貧乏人をはたいて屈服させるようなことをしているのは、市子の幸福エナジーが、市子に人間関係としての幸福をもたらすのではなく、市子の周囲の人間を不幸にするのと引き換えに彼女に莫大な財産を齎し続けてきたであろうことが推察でき、まさに『幸福エナジー=金銭』以外の何ものでもない。


とても分かりやすくて、こんなに分かりやすくマルクス主義でいいのかと思うぐらい分かりやすいですね(^^;

貧乏神の紅葉はいきなり市子の幸福エナジーを全部奪うとかはせずに、身勝手で欲深で、『私にとって大切なのは私だけ!!』なエゴイスティックな市子と一緒に生活することで、市子のエゴを少しずつ改心させて、改心した市子が自分から少しずつ溜め込んだ幸福エナジーを他者に分配するようにしていく、というのは、まさに現代民主主義国家の穏健派マルクス主義(社会民主主義)という感じですね。国民を説得して少しずつ平等の実現を目指します。市子の性格が紅葉との生活で少しずつ変わってゆくのは、「ドイツ・イデオロギー」ですね。

ウィキペディア「社会民主主義」
社会民主主義(しゃかいみんしゅしゅぎ、英: social democracy)は、社会主義思想、民主主義思想の一つであり、自由・民主主義社会における中道左派思想の一つである。政治的目的としては、自由競争市場経済や資本主義経済により発生する、労働者の貧困、失業などの問題を議会や政府の管理と介入により軽減・解決し、実質・実態としての政治的・経済的・社会的な公正や機会平等、人権保護、環境保護、国際協調と国際社会との共生を追求する。

意識が生活を決定するのではなく、生活が意識を決定する。
(マルクス「ドイツ・イデオロギー」)

第三話で大富豪の市子(彼女は莫大な金銭も幸福エナジーも不労所得として得ている)が必死に働いている貧乏人の子沢山一家を、札束で顔を張るような真似をして無理やり屈服させようとするところと、それに抗う貧乏人家族の姿とかもまさにドイツ・イデオロギーでしたね。金銭などの生活の資は社会的構造の中で序列付けられているということです。

生産の仕方を、個人の肉体的存在の再生産という側面から観察するだけでは不十分だ。それは既にして一定の活動形式であり、一定の生命発現の形式であり、個人の一定の生なのだ。(中略)個人の存在はその生産活動――個人が何を、いかに生産するか――と切り離せない。個人のありようは、その生産活動の物質的条件によって決定付けられる。(中略)

生きるために何より必要なのは、食べる、飲む、住む、着るといったことだ。ゆえに、人間の第一の歴史的行為は、こうした欲求を充たす手段を生み出すこと、つまり物質的生活の生産である。(中略)

第二の行為として、最初の欲求を充たす充足の行為と、既に獲得された充足のための道具が、新たな欲求を生み出すということがある。(中略)

そもそもの始めから歴史の発展のうちに入り込んでいる第三の事柄として、自分達の生活を日々新たに作り出す人間が、他の人間を作り出し、繁殖してゆくということがある。それが、両親と子供の関係であり、家族というものだ。

生活の生産という活動は、労働という形での自分の生活の生産も、生殖という形での他人の生命の生産も、既にして二重の関係として――自然的な関係、及び、社会的な関係として――現れる。
(マルクス「ドイツ・イデオロギー」)

あと、「貧乏神だ!」のオリジナリティとして、マルクス主義ではありえない発想、つまり、大資本家(桜市子)とコミュニスト(貧乏神の紅葉)の相互理解と和解によって平等(幸福エナジーの還元)を行おうとしているところが面白いなと。マルクス主義というのは階級闘争史観ですから、『搾取する上層階級と搾取される下層階級は絶対的に闘うしかない』みたいな感じの絶対的な闘いを基底とする言説で、階級間が和解するという発想はないんですね。ゆえに「貧乏神だ!」にある階級間の和解というモティーフは、先に書いた穏健派マルクス主義(社会民主主義)、ポスト・マルクス主義的ですね。

ただ、マルクス主義の中にも、他者との交流によって、共同の世界が開けるという発想があるので、その点において、考えることもできるかなと思いますね。今後の「貧乏神だ!」もこういった視点から進むのかなと、今後の放映を楽しみにしておりますね。

マルクスにしても、(社会上層部の)エリート層が努力に努力を重ねて人類の精華のようなものを積み上げるということに否定的であるわけではない。ただ、そのことによって、社会全体が豊かに秩序立てられるとは考えない。やはり、そこには何か欠けていると考えます。ごく普通の人達が当たり前に生きているところで、その人達がどれだけの豊かさを享受できているかが、まず問われなければならない、とマルクスは考えるのです。普通の暮らしの中での活動と享受のうちに社会の本質が現れると考える。それとエリートの活動や享受とのあいだに隔たりがあるとき、エリート層の芸術活動や宗教的信念や学問的研究の精神性を、社会全体の尺度に持ってくるのは違うのではないかとマルクスは考えるわけです。(中略)

(人間は生活の中で他の人間と共に生きてゆくことで)自然の全体や人間の全体が視野に入ってくるということは、人間がただ一人、自分の頭の中で何かしらあれこれ考えているということではなく、色々な人との繋がりの中で――そこでは冗談を言ったり、一緒に遊んだり、喧嘩をしたり、仕事をしたりしながら――、やはりどこかで自分達は共に生きている、と感じている。この共に生きていることの不思議さ、面白さにぶつかるわけです。ぶつかって、それが言葉になってゆく。そういう人間の物質的・精神的動きを大きく視野におさめて、マルクスは、類的存在として人間はどうしてもそういう生き方(他者のことを思いやる生き方)へと引き込まれてゆくのだと考える。それは非常に不思議なことだけれど、そのようにして人類はそれぞれの考えをお互い同士が確かめ合いながら、新しい世界を作り、少しずつ進歩していくようになった、というようにマルクスは考えるのです。(中略)

(人間が他者と生きるとき)自分が大切ではあるけれど、同時に他の人達との繋がりを大切にし、他の人達の考えを自分に受け入れながら考えてゆく。(中略)他人を自分の視野に引き込んで考える(他者の立場になって考える)ことによって、自分を相対化する局面に立つことになります。場合によれば、(他者の立場になって考えることは)これはずいぶん煩わしく、面倒くさく、自分が拘束されるように思えるかもしれないけれど、マルクスの類的存在の考え方からすれば、他人が自分の視野に入ってくる(他者の立場になって考える)ことによって、自分が相対化され、それによってかえってその個人も自由になる。そのようにして個々の人間の考えが豊かになり、開けてゆき、自分だけではない共同の世界というものが考えられるようになる。それが類的存在としての人間の肯定的姿だと、マルクスは考えるわけです。
(長谷川宏「初期マルクスを読む」)

マルクスの理想社会は牧歌的な感じで、それぞれがそれぞれみんな、他者の立場になって考える思いやりのある社会は、豊かな共同世界になるということを言っているんですね。凄く牧歌的で、現実世界の残酷な理不尽さ(昨今のいじめとか本当に酷いですよね…)を鑑みるに、現実世界での実現可能性は0%だと思いますが(マルクスの理想論からは、人間のどうしようもない根源的邪悪さというものが抜けている)、それでも、こういった思いやりのある共同世界に、ほんの少しでも世界が近づいてほしいと心から願いますね…。こういった牧歌的な優しい世界は、ゲームやアニメの中で美しく描かれることが多いので、僕がゲームやアニメ好きなのはそういう美しさが好きというもの一つにありますね…。今プレイしているルーンファクトリー4とかまさにそういう世界(みんな思いやりのある世界)ですし、「貧乏神が!」もそういう優しさみたいなものが描かれてゆくと良いなと思いますね…。

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