2012年01月31日 21:02

板垣雄三氏の「アラブの春論の欺瞞 市民革命を侵す欧米中心主義」、興味深い論点、ご紹介致しますね。

国際法入門 (有斐閣アルマ)

日本中東学会会長の板垣雄三東大教授が本日の朝日新聞夕刊に載せている論考「アラブの春論の欺瞞 市民革命を侵す欧米中心主義」、興味深い論点ですね。抜粋引用してご紹介致します。

朝日新聞2012年1月31日夕刊
板垣雄三(日本中東学会会長、元日本イスラム研究会理事長、東大名誉教授)
「アラブの春論の欺瞞 市民革命を侵す欧米中心主義」

アラブの春の行方は?チュニジアやエジプトの革命から一年が巡ってきた。中東に発したグローバル市民の立ち上がりは、たちまち、そこに暴力と分裂を持ち込んで破壊をもくろむ反作用を呼びさました。しかも「革命」偽装の反革命を。リビアの場合がそれだ。

エジプト・チュニジアの革命とリビアの反革命との違いをひとくくりにして覆い隠す「アラブの春」認識は、独裁打倒の「民主化」にだけ話をすりかえる欺瞞だ。国連を隠れ蓑にNATO軍が肩代わりした「リビア革命」の実態は、植民地戦争にほかならない。「革命」をひきいる国民評議会では、カダフィが核開発をやめ、バンナム爆破事件の補償金を支払うなど、米欧に屈した後のカダフィ体制を支えていた欧米代弁者らが目立った。リビアでは、市民たちの決起は横から付け込まれ、利用された。彼らが批判していた人々が、「革命」を横領したのだ。

「春」談義は、ブッシュ前大統領の「反テロ戦争」=「民主化」論に沿うもの。中東で強権政権を育成強化してきた欧米中心の秩序が「解放者」を装っている。(中略)

カダフィを倒し「春」論効果に味をしめた「革命」援助気取りの米欧イスラエルの植民地主義は、次はシリアやイランに対して「人道」・「正義」を振りまく戦争衝動に身をよじる。オバマ大統領の対イラン書簡も、サイバー戦争や暗殺攻撃を止めるわけではない。独走気配のイスラエル核は不問にしてイランを責め、中国・インドのイラン石油輸入は黙認して日本や韓国には輸入停止の圧力をかける。

僕も、エジプトの革命は良かったと思うのですが、リビアの革命は、19世紀から20世紀にかけて世界中で見られた、強大な国家群(今回の場合はEU)が、中東の国家の内戦に軍事力を持って内政干渉した事例ではないかと思っていて、それが日本のマスコミでは非常に肯定的に報じられていることに驚きましたので、この文章には納得です。エジプトの場合は、諸外国の軍隊がエジプト国内に攻撃を仕掛けるなどということはしていませんが、リビアの場合は、EUがリビア国内に侵攻させたNATO軍がリビア国内に空爆などの軍事攻撃を仕掛けている訳で、明らかにEUの行為は国家間における最大の内政干渉、他国への軍事侵攻に当たります。国家間における基底的な第一原則として内政干渉はどの国も行うべきではない、これがちゃんと守られないと、またずるずると、戦争だらけの旧世紀に後戻りすることになると思います…。

それこそ、大義は国の数だけある訳で、そういった「大義と大義がぶつかり合う戦争の連鎖を避けるために歴史の中で培われてきた最大の知恵」として、近現代国際法における内政不干渉の原則は存在します。それが21世紀になっても蔑ろにされているのを見るのは、心から暗澹とせざるを得ないです…。今後も戦争の連鎖は続くと思うと、やりきれないですね…。『いかなる国又は国の集団も、理由のいかんを問わず、直接又は間接に他国の国内問題又は対外問題に干渉する権利を有しない。したがって、国の人格又はその政治的、経済的及び文化的要素に対する武力干渉その他すべての形態の介入又は威嚇の試みは、国際法に違反する。(友好関係原則宣言)』

ウィキペディア「内政不干渉の原則」
内政不干渉の原則とは、国家は国際法に反しない限り、一定の事項について自由に処理することができる権利をもち、逆に他国はその事項に関して干渉してはならない義務があるという、国家主権から導出される原則をさす。そしてこういった、国家が自由に処理できる事項のことを国内管轄事項または国内問題という。(中略)

主要な条約的根拠
国際連合憲章第2条第7項
この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7条に基く強制措置の適用を妨げるものではない。

国家間の友好関係および協力についての国際法原則に関する宣言(友好関係原則宣言、1970年国連総会決議2625)
いかなる国又は国の集団も、理由のいかんを問わず、直接又は間接に他国の国内問題又は対外問題に干渉する権利を有しない。したがって、国の人格又はその政治的、経済的及び文化的要素に対する武力干渉その他すべての形態の介入又は威嚇の試みは、国際法に違反する。いかなる国も、他国の主権的権利の行使を自国に従属させ又は他国から何らかの利益を得る目的で他国を強制するために、経済的、政治的その他いかなる形の措置も使用してはならず、またその使用を奨励してはならない。また、いかなる国も、他国の政体の暴力的転覆に向けられる破壊活動、テロ活動又は武力行動を組織し、援助し、助長し、資金を与え、扇動し又は、黙認してはならず、また、他国の内戦に介入してはならない。人民からその民族的同一性を奪うための武力の行使は、人民の不可譲の権利及び不干渉の原則を侵害するものである。いずれの国も、他国によるいかなる形態の介入も受けずに、その政治的、経済的、社会的及び文化的体制を選択する不可譲の権利を有する。前記パラグラフのいかなる部分も、国際の平和及び安全の維持に関する憲章の関係規定に影響を及ぼすものと解釈してはならない。(中略)

不干渉原則の変遷
冷戦後は西欧諸国により、基本的人権や法の支配といった価値観をもとにした他国の国内問題に対する干渉が行われるようになっている。ただし、これらの概念は一般国際法上の強行規範として未だ承認されたとは言いがたく、民主主義の強制のための他国への干渉は国際法上妥当性を欠く。

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